12月9日(月)~13日(金)の4泊5日で見学旅行に行ってきました。私自身はもう何度目の引率なのか分からないくらいですが、今回は私としても初めての体験となる「クラウドをフル活用した引率」となりました。これは私が考えたものではなく、学年主任のアイデアによるもので、非常に素晴らしい取組みとなりました。(詳しくはこちら)
上の写真は、班長会議の場面です。生徒はiPadでその日の振り返りと翌日の留意事項をメモしています。もはや、紙のしおりや筆記用具はそこになく、旅行中のさまざまな連絡もすべてクラウド経由で行いました。ここまで徹底して紙を使わない引率は、本当に初めてでした。そして改めてペーパーレスの価値、クラウド利用の意義を強く感じたしだいです。
さて、今回の見学旅行で重要な鍵を握ったのが、やはりチャットでした。チャットの利便性はすでに本校の校務DXで実証済みですが、生徒と教員の間に導入するメリットもこの見学旅行で実証されました。今までどうやって指示していたのだろう?と思ってしまうほど、チャットによる指示や連絡があまりにも便利でした。もう、従来型には本校は戻れないと思います。
生徒にチャットを使わせることについては、まだ一部で否定的な声があります。不適切な使い方への心配、ダイレクトメッセージを使った水面下のやりとり等、リスクが全くゼロとはいえません。しかし、何にしてもそうですが、リスクを避けて古い方法にとどまるのか、リスクをあえて抱えながら前進するのか、その判断が求められるわけです。本校はすでに校務DXを大々的に動かしているので、今さら紙媒体に戻す理由がなく、選択は当然クラウドになります。結局、いつも言っていますが校長の腹ひとつだと思います。
ちなみに道教委管理アカウント(道立学校の生徒・教員が学校で使用しているもの)については、チャット等でのやり取りは道教委がその内容を確認できる権限を有しており、不適切使用が明らかになった場合は然るべき措置・対応がとられることになります。そこが一つの抑止力になっています。
もともと本校では生徒が利用するチャットを作成していませんでしたが、学年主任の判断により見学旅行専用のチャットを2つ動かしてもらいました。ひとつは生徒・教員全員が参加する一般チャット、もうひとつは教員のみ参加する業務用チャットです。この両方を駆使して、効率的に引率業務を遂行できました。
旅行中、私はこのチャットを見学旅行後もそのまま残して、生徒と先生がお互いにやり取りする場(学びの場)として活用できないだろうか、と強く感じました。学年主任に伝えると、同じように旅行後もそのまま使おうと思っていたとのこと。これはもう、やるしかありません。2学年でのチャット活用実証実験を今年度内に行い、次年度戦略として全学年への本格的なチャット導入に漕ぎつけるよう、メリットとデメリットを整理しながら方向性を見出そうと思います。
旭川市の中学校など、先進校ではすでに生徒どうしがチャットでお互いの学びを公開・共有し、相手から何かを学んで自分の理解を深めるという取組みがなされています。本校でもこのような用途にチャットを有効活用して、先生が一方的に知識を教え込むスタイルから脱却し、あらゆる考え方とリンクしながら学びを深める「多方向学習」のようなものを実現していきたいものです。学びの場・媒体としてのチャット活用は、学びのDXの中核になると私は確信しています。なぜなら、校務DXですでにチャットが中核の存在になっているからです。校務DXと学びのDXは相似形であると言われますが、その通りだと今まさに感じているところです。つまり、チャットの使いこなしがうまくいけば、必ず学びのDXが実になると言えるわけです。
チャットがDXの中核になり得るというのは、言い換えれば結局「人は人とコミュニケーションをとることで、見識を深め自分の生き方を変革する」ということだと思います。画面の向こうに必ず人がいる。昔から言われることですが、DXを進めれば進めるほど、より強くそのことを感じさせられます。つまり、DXの行きつくところは人間社会の最適化・再構築、そんなところなのではないでしょうか。負の要素もありますが、その向こうにある面白い世界を見ずにDXを否定するのは、あまりにももったいないですし、世界の潮流から脱することになります。
最後まで完璧な安全性が認められなければ取り入れられない、という旧来の学校文化を、いよいよ捨て去るべきときが来ています。リスクを背負いつつも、メリットを最大限に取り入れる。そういう姿勢が今学校現場に求められているのではないでしょうか。そして、それを最初に示すのは校長の仕事です。そもそも、これだけ「不確実な時代」だと言われているさなか、学校だけが盤石で確実に安全な道を歩めるはずがありません。その意味で、学校はもっと変わらなければならないと私は思います。いつまでも高みの見物では、間違いなく取り残されます。そのことの方が、私はむしろ怖いと思っています。
とにかく何でもDX的視点で眺めてみる。今、校長がやるべき仕事はそこですね。
R6(2024).12.17 北海道羅臼高等学校長 古屋順一