2025年11月20日,教職リーダーコース2年生の髙野真史先生の実践発表と実践検討会が,勤務校である高崎市立南陽台小学校で行われました。髙野先生の研究テーマは「小規模小学校における学び合い、高め合う組織の形成―「話し合える場づくり」「研修体制の構築」「校務支援体制の構築」を通して―」です。
髙野先生は,小規模・単学級で若手教員が多い勤務校の実態から,学年業務を相談する相手がいない,若手・異動初年度でも重要な分掌を担わないといけないといった状況からくる多忙感や不安を解消するため,研究テーマ副題にある3つの手立てについて,昨年度の予備実践を経て定着させてきました。
「話し合える場づくり」としては,低・中・高学年の3つのブロック部会が定期的に開催され,児童の様子,直近の行事や校務などについて,交流や相談が濃密に行われ,業務のスムーズな実施や不安の解消に大きく貢献してきました。また,「校務支援体制の構築」については,先行研究を参考に考案された「校務分掌別業務集中期得点表」で,各分掌で業務が集中する時期を得点化して可視化したり,業務についての引継内容も参照できるようにしたりといった工夫が行われました。
そして,「研修体制の構築」については,研修主任との協力のもとで,校内研修の全体テーマに即した個人テーマの設定と追究,各回の研修での「ラウンドスタディ」(ワールドカフェに類似した手法だが,それと異なり,最後にグループごとに一定の結論・まとめを出す)という手法の導入,研修通信『Fantastic!』の発行といった手立てが講じられました。
実践検討会当日は,髙野先生自身の理科授業「電気と私たちのくらし」(6年生)が公開されたうえで,この授業についての授業研究会とともに,髙野先生の課題研究についての報告が行われました。
授業研究会は,南陽台小学校の先生方と参観者が混じったグループ編成で,上述のラウンドスタディによって行われ,授業についての気づき,今後の自身の授業に活かしたい点などについて活発に意見が交わされ,共有されました。
授業および検討会には,福山昭弘校長はじめ南陽台小学校の先生方,他校からの参観者と,本学からは田村,新藤,村上,山崎各教員および大学院1年生2名,総勢27名が参加し,活発な討議が行われました。
高崎市市教育委員会の角岡裕美指導主事からは,授業,課題研究の両面にわたり,髙野さんの取り組みが時宜に即したものであり,高崎市教育委員会の方針にも合致していることを高く評価いただくとともに,この取り組みが他校にも広がっていくことへの期待のコメントをいただきました。
(文責:山崎雄介)
11月13日(木)に教職リーダーコースの髙木理恵子先生の実践発表(公開授業)及び実践検討会が勤務校の太田市立休泊小学校で行われました。
髙木先生は「学級会で話し合い,児童が自治的に活動する学級づくり~学級目標を指針にファシリテートする教師の指導を通して~」をテーマに,児童が自律した自治的な学級を作っていくことを目指して実践を重ねています。研究では一人ひとりが学級の課題を見つけて話し合い,自分のすべきことを実践し続ける児童の姿を目指し,特別活動,特に学級会において児童が学級目標という行動の目的を意識すること,教師が児童の話し合いを支えるファシリテーターとなることを手立てとしています。
5年生の担任である髙木先生は4月の学級開きから計画的に学級目標を作成し,児童に学級目標を意識して行動することを伝え,学級目標を使って行動を振り返る時間を設定してきました。また,児童が主体的に学級課題と向き合うために,学級会の運営をできる限り児童に任せてきました。学級の児童はこれまで学級会を進めた経験があまりありませんでした。そこで髙木先生は学級会の進行を務める計画委員(順番に全員が経験する)と事前に打ち合わせを行い,司会の進め方を伝えたり,学級会の流れを想定したりすることで司会の進行を支えてきました。学級会の時間では髙木先生は参加児童と同じ目線に立ち,発表者を支えてきました。さらに,児童が十分に話し合って出した結果を髙木先生自身が大事にすることで,児童に話し合ったことの意義を実感できるよう努めてきました。これらの経験を経て,担当クラスの児童は少しずつ学級会を自分で進め,その中で学級目標を自分たちの行動を決める指針としながら話し合いを実践できるようになってきています。
実践発表ではその学級会を公開しました。今回の学級会の議題は「学級目標に照らし合わせてクラスの成長を振り返り,12月につなげよう」であり,事前の学級目標達成のアンケートに基づく計画委員との打ち合わせにより「整理整頓を続けるために何ができるか」を話し合うこととなりました。授業公開には校内外を含め約15名の先生の参加がありました。太田市教育委員会教育部の先生方にも参観していただきました。多くの大人が見守る中で,児童はどうすれば整理整頓を実践し,学級目標に近づくことができるのか多くの意見を出していました。出てきた意見に対して理由を示しながら賛成反対を表明したり,他の児童の発言が聞こえない場合は「静かにしよう」「大きな声で言って」と言ったり,児童同士が協力しながら積極的に学級会を進める姿が見られました。その間,髙木先生は教室内を動きながら,その時に支えを必要とする児童に声をかけていました。
授業後に行われた実践検討会には休泊小学校の先生方,近隣の小学校の先生方,教職大学院の院生計7名と休泊小学校の校長先生,教頭先生,太田市教育委員会学校教育課の金澤指導主事にご参加いただきました。群馬大学教職大学院の教員としては小林,平林,大島が参加しました。研究と本時についての説明後に行われた協議では,髙木先生の実践を軸に学級会を実施することの意義と難しさ,教師がファシリテーターとなるための事前の準備の必要性とその労力についての話題が上がりました。その後の金澤指導主事による指導講評では髙木先生の研究のおける実践の手立である学級目標を指針とすること,ファシリテーターとしての教師の立場についてその意義を改めて評価していただきました。また学級活動は教師が力を入れた分だけ子どもに変化をもたらす活動であり,社会で必要な力を育成している大事な機会であることについても説明していただきました。最後に教職大学院の客員教授の小林先生が謝辞を述べ,実践検討会を閉じました。
実践の公開,検討会にご協力いただきました太田市立休泊小学校の星野校長先生,岡田教頭先生をはじめとする休泊小学校の先生方,当日参加していただき,深い議論を交わしていただいた先生方に深く感謝いたします。
(文責:大島みずき)
2025年11月4日,教職リーダーコース2年生の加藤敏子先生の実践発表と実践検討会が,勤務校である桐生市立新里北小学校で行われました。加藤先生の研究テーマは「互いに認め合い,よりよい人間関係を築くことができる児童の育成-PBISの実践を通して-」です。
加藤先生は,勤務校の教師集団や児童たちのよさを活かしつつ,「授業中,おしゃべりに夢中になってしまうことがある」,「時によって,強い口調になってしまう」といった,児童の気になる行動を管理的ではない仕方で減らすため,ポジティブ行動支援・介入(Positive Behavioral Interventions and Supports, PBIS)やソーシャルスキル・トレーニング(SST)を導入した学級経営の実践を進めてきました。
PBISの特徴は,児童生徒の気になる行動・問題行動を懲戒などによって減らそうとするのでなく,伸ばしたい・望ましい行動を増やすことをめざすことにあります。そのため,望ましい行動が起こりやすい状況をつくったり,望ましい行動に肯定的なフィードバックを行ったりといったことが実践の焦点になります。そうした状況づくり,フィードバックの場として,加藤先生はSSTで開発されたアクティビティや,増やしたい行動を児童が考える「ステキな行動チャート」づくり,毎日の帰りの会での「今日のMVP」といった活動を積極的に採り入れてきました。
当日は,こうした実践の一環として,担任する5年生クラスでの,SSTを採り入れた学級活動「おもしろレジャーランド」の授業が公開されました。これは,5つのゾーンからなるレジャーランドについて,児童各自が自分に配られた情報カードの情報を口頭で伝えることを通じ,各ゾーンの支配人,そこのレストランで出す料理,掲げられている旗などを確定し,与えられた課題を解決するというものです。課題解決に向けた話しあいの中で,児童たちは互いのよさを発見していきました。
授業後の検討会では,この授業についての検討とともに,加藤先生の課題研究についての報告が行われました。検討会には,星野晋一校長,松田美穂教頭ほか新里北小学校の教員,他校からの参観者と,本学からは田村,新藤,山﨑各教授が参加し,活発な討議が行われました。
桐生市教育委員会の福田守宏指導主事からは,SSTを単発でなく年間通して実践していることの意義と,その効果がふり返りでの児童の記述に現れていたことを指摘いただくとともに,今後この実践を全校的に展開していくことへの期待などのコメントをいただきました。
(文責:山崎雄介)
2025年10月10日、教職リーダーコース2年生の真下一平先生の実践発表と実践検討会が、勤務校であるみなかみ町立新治小学校で行われました。真下先生の研究テーマは「教職員の『働きやすさ』と『働きがい』を高める取り組み―ボトムアップ型の業務改善と研修の工夫を通して―」です。
本研究は、教職員が心身の健康を損なうことなく働ける「働きやすさ」と、仕事に熱意や誇りを持って達成感を得られる「働きがい」が両立した職場環境を目指すものです。
真下先生は、教職員へのアンケート調査や聞き取り調査から実態を把握した上で、具体的な手立てとして、教職員の実態に対応して行う「ボトムアップ型」の業務改善提案と、全教職員を対象とした「メンター研修+(プラス)」の企画・実施という2つの取り組みを進めてきました。昨年度は沼田市立沼田北小学校で、今年度はみなかみ町立新治小学校で研究を継続しています。
実践発表と実践検討会には、勤務校の本多利典校長先生・福島栄典教頭先生を始めとする先生方、みなかみ町教育委員会事務局学校教育課 管理主事兼指導主事の久保野雅之様、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計23名が参加しました。当日は、第5回メンター研修+(プラス)として「みんなの時短テクニックを伝え合おう」をテーマとした公開研修が行われました。参加した先生方は、テストの採点方法や仕事に対する向き合い方など、様々なアイデアを付箋に書き出して共有し、グループで活発に意見を交換しました。明日からすぐに実践できるアイデアも多く含まれ、熱心に意見を交わす姿が見られました。
公開研修の後、真下先生からの研究説明と質疑応答が行われました。質疑応答では近隣の学校の教員や本学教職大学院生からの質問があり、参加者全体で教員の働き方を考える貴重な機会となりました。その後、久保野管理主事兼指導主事から指導助言をいただきました。教職員の多忙化解消に向けた協議会による「提言R7」が示される以前から「働きがい」という視点に着目している点の先見性や、感覚的なものになりがちな教員の心理状態や日々の業務の捉え方を「見える化」しようとする研修内容について肯定的な評価をいただきました。
また、言われて行うのではなく、教教職員自らが取り組みたくなるような「ボトムアップ型」の改善アプローチの価値についても言及していただきました。
最後に本学 鈴木豪准教授がお礼を申し上げ、閉会しました。
(文責:鈴木豪・川野文行・佐藤浩一)
10月8日,教職リーダーコースの井野祥太郎教諭による実践検討会が,勤務校である大泉町立東小学校で開催されました。井野先生の課題研究テーマは「自己調整学習による自律した学習者の育成に向けた小学校算数教育~一斉授業と単元内自由進度学習の循環を通して~」です。このテーマ設定の理由は,井野先生自身の課題として,授業進度をそろえようとして,低位児童や外国籍児童が十分に理解できないうちに進んでしまうこと,理解が不十分な児童に進度を合わせると,上位の児童に物足りなくなることがあったそうです。できるだけ児童が自分に合ったペースで学び,しかもその際足りないところは自分で補っていけるようにするため,児童に自己調整学習を獲得させることを井野先生は考えました。その手立てとして,一斉授業と単元内自由進度学習を循環させるという授業設計です。
単元内自由進度学習とは,一単元の学習を子どもに委ね,各自が学習の手引きをもとに計画を立てて自分のペースで学ぶもので,教師はチェックポイントや個別支援で支え,学ぶ形態(個人・ペア・グループ),学ぶ方法(教科書・動画・体験活動),学ぶ場所(教室・特別教室など)を選択可能にするものです。しかし,これはいきなり児童ができるものではなく,一斉指導の中で学習方略などを身に付けさせた上で,一学期に一単元程度自由進度学習を取り入れるという具体的な手法を考えて,実践しておられます。
公開授業には,自由進度学習に関心を持った近隣大泉町内の先生方4名が参加するとともに,置籍校の校長,教頭,校内の先生,本学からも教職大学院の院生3名,教職大学院の指導教員の山口教授,平林教授,大島准教授,大泉町教委からは荻野教育指導係長,総勢15名が出席しました。公開授業でも児童が教師の開始時の指示後3分で,各部屋,各グループなどに分かれて,自分なりの学びを開始し,しっかり三十分以上自学自習した後に元の教室に戻って,全体での振り返りをしていました。
公開授業終了後の検討会では,平林教授の司会で,井野先生自身によるこれまでの研究の歩みの発表が丁寧になされ,その後,出席者から活発な質問があり,特に上述のような児童の学びの態度への賞賛を伴うものが出されました。荻野係長からも,本研究に取り組むこと自体が非常に挑戦的で有益であること,最近重要視されている非認知能力の育成にも役立つだろうというお褒めの言葉を頂戴しました。本格的な「自律した学習者」に育つためには,まだ時間はかかると思いますが,これを長期的に実践していっていただきたいと存じます。井野先生はもともと優れた教師としての力量がある方ですが,このきわめて斬新な「自由進度学習」に大変な努力を傾注されてきました。この取り組みを少しずつ他教科や置籍校の学校全体に広げていくことが期待されます。この二年間,井野先生の学びに多大な支援をしていただいた大泉町立東小学校および大泉町教委の皆様に深く感謝いたします。
(文責:山口 陽弘)