2025年10月10日、教職リーダーコース2年生の真下一平先生の実践発表と実践検討会が、勤務校であるみなかみ町立新治小学校で行われました。真下先生の研究テーマは「教職員の『働きやすさ』と『働きがい』を高める取り組み―ボトムアップ型の業務改善と研修の工夫を通して―」です。
本研究は、教職員が心身の健康を損なうことなく働ける「働きやすさ」と、仕事に熱意や誇りを持って達成感を得られる「働きがい」が両立した職場環境を目指すものです。
真下先生は、教職員へのアンケート調査や聞き取り調査から実態を把握した上で、具体的な手立てとして、教職員の実態に対応して行う「ボトムアップ型」の業務改善提案と、全教職員を対象とした「メンター研修+(プラス)」の企画・実施という2つの取り組みを進めてきました。昨年度は沼田市立沼田北小学校で、今年度はみなかみ町立新治小学校で研究を継続しています。
実践発表と実践検討会には、勤務校の本多利典校長先生・福島栄典教頭先生を始めとする先生方、みなかみ町教育委員会事務局学校教育課 管理主事兼指導主事の久保野雅之様、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計23名が参加しました。当日は、第5回メンター研修+(プラス)として「みんなの時短テクニックを伝え合おう」をテーマとした公開研修が行われました。参加した先生方は、テストの採点方法や仕事に対する向き合い方など、様々なアイデアを付箋に書き出して共有し、グループで活発に意見を交換しました。明日からすぐに実践できるアイデアも多く含まれ、熱心に意見を交わす姿が見られました。
公開研修の後、真下先生からの研究説明と質疑応答が行われました。質疑応答では近隣の学校の教員や本学教職大学院生からの質問があり、参加者全体で教員の働き方を考える貴重な機会となりました。その後、久保野管理主事兼指導主事から指導助言をいただきました。教職員の多忙化解消に向けた協議会による「提言R7」が示される以前から「働きがい」という視点に着目している点の先見性や、感覚的なものになりがちな教員の心理状態や日々の業務の捉え方を「見える化」しようとする研修内容について肯定的な評価をいただきました。
また、言われて行うのではなく、教教職員自らが取り組みたくなるような「ボトムアップ型」の改善アプローチの価値についても言及していただきました。
最後に本学 鈴木豪准教授がお礼を申し上げ、閉会しました。
(文責:鈴木豪・川野文行・佐藤浩一)
10月8日,教職リーダーコースの井野祥太郎教諭による実践検討会が,勤務校である大泉町立東小学校で開催されました。井野先生の課題研究テーマは「自己調整学習による自律した学習者の育成に向けた小学校算数教育~一斉授業と単元内自由進度学習の循環を通して~」です。このテーマ設定の理由は,井野先生自身の課題として,授業進度をそろえようとして,低位児童や外国籍児童が十分に理解できないうちに進んでしまうこと,理解が不十分な児童に進度を合わせると,上位の児童に物足りなくなることがあったそうです。できるだけ児童が自分に合ったペースで学び,しかもその際足りないところは自分で補っていけるようにするため,児童に自己調整学習を獲得させることを井野先生は考えました。その手立てとして,一斉授業と単元内自由進度学習を循環させるという授業設計です。
単元内自由進度学習とは,一単元の学習を子どもに委ね,各自が学習の手引きをもとに計画を立てて自分のペースで学ぶもので,教師はチェックポイントや個別支援で支え,学ぶ形態(個人・ペア・グループ),学ぶ方法(教科書・動画・体験活動),学ぶ場所(教室・特別教室など)を選択可能にするものです。しかし,これはいきなり児童ができるものではなく,一斉指導の中で学習方略などを身に付けさせた上で,一学期に一単元程度自由進度学習を取り入れるという具体的な手法を考えて,実践しておられます。
公開授業には,自由進度学習に関心を持った近隣大泉町内の先生方4名が参加するとともに,置籍校の校長,教頭,校内の先生,本学からも教職大学院の院生3名,教職大学院の指導教員の山口教授,平林教授,大島准教授,大泉町教委からは荻野教育指導係長,総勢15名が出席しました。公開授業でも児童が教師の開始時の指示後3分で,各部屋,各グループなどに分かれて,自分なりの学びを開始し,しっかり三十分以上自学自習した後に元の教室に戻って,全体での振り返りをしていました。
公開授業終了後の検討会では,平林教授の司会で,井野先生自身によるこれまでの研究の歩みの発表が丁寧になされ,その後,出席者から活発な質問があり,特に上述のような児童の学びの態度への賞賛を伴うものが出されました。荻野係長からも,本研究に取り組むこと自体が非常に挑戦的で有益であること,最近重要視されている非認知能力の育成にも役立つだろうというお褒めの言葉を頂戴しました。本格的な「自律した学習者」に育つためには,まだ時間はかかると思いますが,これを長期的に実践していっていただきたいと存じます。井野先生はもともと優れた教師としての力量がある方ですが,このきわめて斬新な「自由進度学習」に大変な努力を傾注されてきました。この取り組みを少しずつ他教科や置籍校の学校全体に広げていくことが期待されます。この二年間,井野先生の学びに多大な支援をしていただいた大泉町立東小学校および大泉町教委の皆様に深く感謝いたします。
(文責:山口 陽弘)