令和元年11月20日(水) 館林市立第四中学校
11月20日、学校運営コースの鯉沼大介さんの公開授業と実践検討会が、勤務校である館林市立第四中学校で行われました。この公開授業は、群馬県小中学校教育研究会・中学校道徳部会の地区別研究会と同時開催として行われたものです。
鯉沼さんの研究テーマは「中学校における教員の生徒指導能力向上への組織的実践~若手教員の育成に向けてのOJTコーディネーターの役割を通して~」です。
生徒指導は一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めるように指導、援助するものであり、時代の変化に対応しながら学校段階に応じた指導を進めることが求められています。つまり、生徒指導は問題行動等への対応だけではなく、児童生徒の「社会的資質」や「行動力」を高める積極的な教育活動ですから、教育課程の内外において、一人一人の児童生徒の健全な成長を促し、児童生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すことが重要です。そのためには、教員全体の生徒指導能力の向上が不可欠と考え、校内で若手教員の育成を目指すOJTの組織を構築することにしました。具体的には、「リーダー」「メンター」「メンティ」の3人が1つのチームとなり、メンティである若手教員の生徒指導上の課題や悩みの相談に乗りながら生徒指導能力を高めていくという方法です。鯉沼さんは、5つのチームを束ねるOJTコーディネーターとしての役割を果たしてきました。
検討会当日は、以上のような研究の概要が報告されるとともに、担任する1年1組において、道徳科授業、主題名「本当の思いやりとは」が公開されました。授業のねらいは「障がいをもつ人と関わった夫の気持ち」と「妻の気持ち」を考えることを通して、思いやりとは何かを改めて考え、温かい人間愛を深め、だれに対しても思いやりのある心をもってともに生きようとする心情を育てる。」でした。
授業では、「本当の思いやりとは何か」について考える場面で、グループになり、自分の考えを伝えたり他人の考えを聞いたりする意見交換を行い、グループごとの意見をまとめていくことで、考え議論する道徳にしようしていました。生徒からは、「自分がしてあげたいという気持ちだけでなく、相手がしてほしいと思ったことをしてほしいだけするのが本当の思いやりだと思った」など、思いやりを感じる行動は人それぞれであり、相手の立場に立って考えることが大切であるという意見が多く出されました。
授業と検討会には、実習校の先生方をはじめ、校内外の先生方、館林教育委員会指導主事の髙松好則先生、本学教職大学院関係者など、合計30名が参加しました。
検討会では、6つのグループに分かれ、授業中に記入した付箋を基に、良かった点や改善点について協議をしました。「心情円は有効であったが、生徒同士で見せ合うなど使い方に工夫が必要である」「グループの話合いで、1番良い考えを決めるのではなく、なぜ後悔しているのかを話し合わせたかった」などの意見が出されました。
指導主事の髙松好則先生からは、明確な指導観をもって授業に臨んでいることを評価されしていただきました。また、前時で確認した「思いやり」から、本音を出し合いながら考え深めたり広げたりするために、読み物資料から離れることの助言をいただきました。
課題研究についても、研究内容が生徒指導に課題のある勤務校の実態に合っているものであること、OJTの意義は、即効性や実効性があり、ひとり一人の課題に対応できるよさを指摘いただくとともに、「より職員に理解を深めていくこと」「コーディネータとしての助言を繰り返していくこと」など、今後の研究を進めていく方向を示していただきました。また、汎用性のある研究になるよう要望をいただきました。
令和元年11月29日(金) 富岡市立妙義中学校
学校運営コース2年生の新井千鶴さんの公開授業と実践検討会が、11月22日に実践協力校である富岡市立妙義小学校で、11月29日には富岡市立高田小学校で行われました。
紙面の都合上、高田小学校ので実践検討会の様子を中心に報告させていただきます。
新井さんの研究テーマは「児童生徒の学びをつなぐ小学校・中学校外国語科でのカリキュラム開発~中学校区における「外国語部会」の取組を通して~」です。
小・中学校の教科連携がほとんど行われていなかった妙義中学校区(小学校2校、中学校1校)において、連携の基礎をつくることを目的としたものです。3校の校長先生方のご理解をいただき、新井さんが校区内の2つの小学校で英語の指導ができるよう兼務発令をしていただきました。そして、2つの小学校を隔週で訪問し、5・6年生の英語科の授業を担任やALT、外国語活動指導員とのティームティーチングで行うことになりました。
1学期、新井さんはT2として授業の補助をしたり、後半の一部の時間を中心になって授業を進めたりすることが多かったのですが、夏季休業中に行った外国語部会等で「せっかく中学校の英語教員が来ているのだから、中学校に近い授業をしてほしい」という小学校の教員からの要望を受け、2学期からはT1として授業を行っています。また、訪問する時間帯を金曜日の1・2校時から5・6校時に変更することで、担任やALTとの打合せの時間がとりやすいような工夫もしました。
公開授業は「We can2 Unit6 What do you wanto to watch?」という単元で、オリンピックやパラリンピックの観戦計画を立てたり、競技を一緒に観戦できる友達を探したりすることをねらいとした授業でした。
導入のビンゴゲームでは、私たち参観者も児童に質問されるなど、やりとりに参加する場面もありました。中心の活動では、観戦カードを手に一緒に観戦できる友達を探そうと、積極的に英語で友達に話しかける様子が見られ、子供たちの英語力に感心しました。
新井さんがT1となり、ほぼオールイングリッシュでALTとやりとりをしながら授業を進め、T2である担任教師が児童の表情を確認しながら日本語でフォローをしていく、素晴らしい連携のとれた授業でした。
公開授業と実践検討会には、妙義中学校及び高田小学校の校長先生、教頭先生をはじめ、校内の先生方、富岡市教育委員会指導主事の小暮忠史先生、市内の先生方、本学関係者など、合計24名が参加しました。
検討会では、妙義中学校と高田小学校の校長先生からの挨拶、新井さんから課題研究についての発表に続き、研究協議を行いました。
参加者からは、子供たちの英語でのやりとりがよくできていることへの賞賛の言葉や新井さんを含め先生方の負担が大きいのではないかと危惧する意見、人的な教育環境を改善することへの要望などが出されました。また、大学院で学んだことで新井さん自身の授業力が向上したことへの賞賛の言葉もいただきました。
指導主事の小暮先生からは、先週の妙義小学校で行った授業より内容が改善されていたことを評価いただくとともに、活動をより充実させるためにリフレクションを位置づけることなどのアドバイスをいただきました。
令和元年11月27日(水) 長野原町立中央小学校
課題研究テーマ「一人一人のニーズに合った学び方で主体的に学ぶ児童の育成-小学校算数科におけるUDLガイドラインを活用した学習支援を通して-」にそった「ねらいa」の授業実践が,小学校第5学年「算数科」により公開されました。栁田景子教諭はテーマに基づき,児童一人一人の実態,学校教育へのニーズから,児童ともに主体的な学習の在り方を研究してきました。
研究において,主体的な学習の指導観に関するパラダイムの転換を行うため,米国マサチューセッツの非営利団体CAST(Center for Applied Special Technology)が提案しているUDL(Universal design for learning)の理念「一人一人の学びを保証する」に基づいた,UDLガイドライン( CAST2018.version2.2)のカテゴリーを活用しました。
活用にあたっては,学習における児童一人一人の学び方に焦点をあて,算数科の特性と汎用的能力の枠組みをUDLガイドラインによりとらえました。指導案作成段階では,児童一人一人の課題解決場面でのレディネスを既習事項の定着,取り組みから把握し,支援の方法を検討しています。学習指導案の特徴として,指導方針の項目を「UDLガイドラインに基づく支援」「振り返りの場の設定」「学級風土作り」としたこと。さらに指導と評価の計画を縦軸「時」と横軸を「目標・学習活動・評価項目」だけでなく,UDLガイドラインの視点として「予想されるバリア・UDLのガイドラインに基づく支援(感情のネットワーク・認知のネットワーク・方略のネットワーク)」により設計しました。
授業公開の単元名は,「面積の求め方を考えよう」となりました。授業公開に際し,本時(7/13)の授業改善の視点は,「台形の面積を求める活動において,UDLガイドラインにもとづいた支援を行ったことは,児童が主体的に取り組むことに有効であったか。」です。
本時のUDLガイドラインに基づく支援は,
(感情のネットワーク)興味・関心・動機付け・協働どのようにモチベーションを高めるか
「○一人でもペアでもグループで考えてもよい。○他の人の考えを見に行ったり,どこが違うかを考 えたりしてもよい。○友達の発表を聞いて,自分と同じ考えや付け足しなどを考える。」
(認知のネットワーク)情報の知覚や処理・知識の理解どのようにインプットするか
「○三角形や平行四辺形の時の求め方を思い出せるよう,黒板に掲示する。○実物を切ったり付けた り回転させたりして視覚的に理解できるようにする。○マーカーやデジタルコンテンツで視覚的に わかりやすくする。」
(方略ネットワーク)思考・表現・技能・プランニングどのようにアウトプットするか
「○図形だけ切り抜いたものを用意しておく。○床や机を広げて,広い場所で作業できるようにして おく。○画用紙,デジタルコンテンツ,実物など,発表のしやすい方法で発表してよい。」
としました。
ねらいは「台形の面積の求め方を考え,わかりやすく説明することができる。」とし,準備は,教師:プロジェクター,デジタルコンテンツ,ワークシート,台形の拡大図,方眼入りの台形の図,児童:はさみ,定規となりました。
児童一人一人が,ねらいを理解して解決方法を選び,各自のワークシートに台形の面積の求め方をまとめることができました。さらに各自の内容を検討し,求め方を分類し,次時のねらい「台形の面積を求める公式をつくり出し,それを適用して面積を求めることができる。」へつなぎました。
授業後の実践検討会は,「授業の視点」を基に,参加者全員で進めました。学習において,児童一人一人が,各自の考えに基づき,選択した学び方で,めあてに取り組んでいた様子をとらえられたことを参加者間で共有できました。
授業を参加いただいた方々は,指導助言者として,吾妻教育事務所木村裕子指導主事,県内から太田市立沢野小学校長谷川雅美教諭,同宝泉東小学校上田美果教諭,長野原町からは中央こども園中島透園長,第一小学校齋藤有馬教諭,東中学校家本光雄教諭,校内からは関裕之校長,佐藤三枝子教頭,以下17名です。実践検討には,15名の方々に参加いただき,課題研究テーマのついて検討をいただき学習指導の在り方について深めてただきました。最後に吾妻教育事務所木村裕子指導主事から指導助言いただきました。本講座からは,大島准教授が参加,懸川よりお礼を述べさせていただきました。参加された関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 (文責 懸川武史)
茂木 朋美(児童生徒支援コース)令和元年10月23日(水) 富岡市立吉田小学校
10月23日(水)に、児童生徒支援コース2年生の茂木朋美さんの公開授業と実践検討会が勤務校である富岡市立吉田小学校にて行われました。茂木さんの課題研究のテーマは「児童の道徳的判断力・実践意欲を高める学習指導法―考えを深める発問と話し合い活動の工夫を通して―」です。
茂木さんは、学習指導要領の方向性と吉田小学校の推進する「テーマ発問」を中心とした授業を結びつけるかたちで、「多面的・多角的なものの見方や深く考える力を身につけ、道徳的判断力・実践意欲が高まった児童」の育成を目指し、研究、実践に励んできました。その中でも特に、「発問の工夫」と「話し合い活動の工夫」に重点を置き、授業を計画してきました。
公開授業は茂木さんが担任を務める5年1組の道徳科の授業で行われ,吉田小学校の多くの先生方にも参観をしていただきました。本時は、「流行おくれ」という教材(主題名:「自制する心」、内容項目:A〔節度、節制〕)について行われ、「互いに気持ちよく生活をするために大事なことは何か」という発問を中心に展開されました。ともすると「お説教」に堕しがちな教材、内容項目でしたが、茂木さんは「自分のことばかり考えて生活すると、自分や周りの人の快適な生活を乱してしまうこと」に気づけることの大切さを強調したうえで、「自分の生活を見直し、互いに快適な(気持ちよく)生活ができるよう心掛ける」ことに向けて児童の思考をいざなうことによって、単なる内省に留まらない、現実味のある内容の授業を展開していました。児童たちも、話し合いを行った他の児童の考えや他の班の考えを聞きながら、思考が深まっていっている様子が見られました。
授業に引き続き行われた実践検討会には吉田小学校の加藤桂子校長、若林俊作教頭、本学院生等、多くの先生方にご参加いただきました。また、吉田小学校の校内研修と本実践検討会を合同開催というかたちで行っていただいたため、吉田小学校の全先生方にご参加いただき、活発で実りある議論が行われました。富岡市教育委員会の木暮忠史指導主事からは指導講評をいただきました。参加していただいた先生方に改めて感謝申し上げます。(文責:立見・三澤)
黒田 将也 (児童生徒支援コース) 令和元年11月29日(金) 藤岡市立美土里小学校
11月29日、児童生徒支援コースの黒田将 也さん(ストレートマスター)の公開授業と授業検討会が、実習校である美土里小学校の5年2組で行われました。黒田さんの課題研究テーマは「ボール運動の技能を習得してゲームで発揮できる児童の育成―運動のコツの教授と協同学習を通して―」です。黒田さんは昨年度の発見実習Ⅱから、美土里小で実習を開始し、足かけ二年、この学校で実習をしてきました。この5年2組では、一学期から半年以上にわたり、体育科を中心に「走り幅跳び」「フラッグフッドボール」の単元を教えるとともに学級活動なども任されて、教えてきました。研究テーマとしては集団競技の球技、特に最近県内各地で導入されている「フラッグフッドボール」に焦点化して、技能面だけではなく、児童の思考を促し、深いレベルで作戦などを振り返らせる指導を行ってきました。
児童は体育科では当該競技の経験者は中心的に活躍するものの、それ以外の未経験者や運動の苦手な児童では参加したくない、活躍できないという二極化の現象が時として生じることがあります。また体育科では、技能中心の習得のみが目的になってしまうと、作戦を立てるという思考面の育成や、集団競技としてクラスの構成員みんなが活躍できるような態度の育成が難しいという問題があります。こうした課題を改善するため、黒田さんは比較的新しい競技である「フラッグフッドボール」を題材にしました。この新しい競技であれば、ほとんどの児童には初体験であるため、技能面での個人差が少ないこと、ボールが柔らかく当たっても痛くなく、ルール上接触禁止なので恐怖感が少ないといった利点があります。その上ルール面も工夫して全員が参加する仕掛けをして、全員が参加できる作戦を実戦の前後で考えさせることなどの工夫を随所に行い、上述の課題を克服することを目指してきました。授業の最後に振り返りをさせて、OPP(一頁に短い振り返りを書かせるワンページポートフォリオ)を児童に記述させ、このフラッグフッドボールの単元全体に繋がりを持たせる学びをしてきました。
本時は「フラッグフッドボール」の単元の終結部で、全8時間の単元の第7時間目の授業です。ほとんどの授業で実戦を行っていますが、本時では思考力の観点で「チームのメンバー一人一人の役割を考えたり、特徴に応じた作戦を立てたりして、練習しゲームの中でできている」というB基準のルーブリックを設定して、実戦に臨ませるようにしました。児童は準備運動の段階から、ペアを組んで、相手の投げやすい場所を配慮してキャッチボールをしていました。実戦の前後で各チームに分かれて、効果的な作戦を立てたり、それを振り返ったりして、運動をして終わりというのではない、考えさせる授業になっていました。黒田さんの体育教師としての自信に満ちたメリハリのある指示、途中でのデモンストレーションを含んだ指導などは、ほぼプロ教師と言ってもよいほど、立派な授業であったと思います。
公開授業には置籍校の石渕 校長、関根教頭、笹澤担任以外でも、校内でのべ8名、本学からも院生1名、指導教員の平林客員教授、山口課程長らが参観しました。授業終了後の授業検討会では、これまでの実習の取り組みを黒田さん自身が説明した後、石淵校長、関根教頭、笹澤担任らが授業への意見を述べ、さらなる改善点の検討を行いました。総じてその発言からは、この足かけ二年にわたる黒田さんの真摯な努力に対しての多大な賞賛を受けました。指導教員としては、今後教員になったとしても、毎時ごとに黒田さんが授業の中で常に課題を発見し続けて,学び続け向上する教員になるべく、このまま努力を継続して頂きたいと存じます。この二年間、多大な支援をしていただいた美土里小の皆様、ほとんどの授業を参観していただいた石淵校長、集団競技で協力し合うという難しい態度面での基盤を作りあげ、この授業を支援して頂いた笹澤担任に、深く感謝いたします。(文責:山口 陽弘)
松村 延幸(児童生徒支援コース)令和元年11月27日(水) 伊勢崎市立殖蓮中学校
11月27日(水),児童生徒支援コースの松村延幸さんの実践検討会が,勤務校である伊勢崎市立殖蓮中学校で開催されました。
松村さんは,「情報活用能力を育成する学習活動に関する研究-技術・家庭科を中心としたICT機器の継続的な活用を通して―」をテーマに課題研究にとりくんでいます。当日は,研究の一環として3年5組の技術・家庭科技術分野の授業「プロロボを活用した計測・制御」が公開されました。
1989年版学習指導要領で「教育の情報化」が謳われて30年になりますが,現場でのICT機器の活用,とくに生徒自身の学びのツールとしての活用は必ずしも順調ではありません。松村さんの勤務校でも,タブレットPCはグループに1台程度の台数,無線LANも校内全域には通じていないなど条件は必ずしも良好ではありません。こうした中で松村さんは,以前からあるパソコンとタブレットPCの併用,ルータの追加による無線LAN使用可能区域の拡大など工夫を重ねつつ,情報活用能力育成にかかわる技術分野3学年分のカリキュラムを整備してきました。こうした成果は技術分野だけでなく,他教科や総合,特別活動でのICT機器の活用にも広がっていきました。
検討会当日の授業は,教具「制御学習プロロボUSBプラス」(山崎教育システム)を用いた計測・制御に関する学習の最終段階でした。タッチセンサ,光センサ,赤外線センサによる計測と,それによるプロロボの制御とについての学習のまとめとして,生徒たちは6グループに分かれ,ロボット掃除機,搬送ロボット,エスカレータのいずれかについて,制御プログラムの前時からの改良という発展課題にとりくみました。生徒たちは,プログラム作成用のノートパソコン,実験過程の記録やまとめ,発表のためのタブレットPCという複数の機器,さらに必要に応じホワイトボードというアナログなツールも使いこなしながら,意欲的にプログラムの改良にとりくみました。授業の後半では,各グループが,それぞれのロボットの動作を動画で紹介しつつ,プログラムの概要や工夫した点をプレゼンテーションしました。
授業およびその後の実践検討会には,殖蓮中学校の小林校長,宮﨑教頭のほか,近隣の小・中学校の先生方,教職大学院の矢島元教授とM2の院生,大学院指導教員の木村,山崎が参加しました。指導・講評を担当された伊勢崎市教育委員会・後藤直温指導主事からは,松村さんの実践の成果が市内小中学校に普及していくことへの期待とともに,そのために教材,単元等のレベルでの学習活動の端的な提示がなされると更によいとのアドバイスもいただきました。
(文責:山崎雄介)
吉場 広章 (児童生徒支援コース) 令和元年11月21日(木) 桐生市立新里中学校
11月21日、児童生徒支援コースの吉場広章教諭の公開授業と授業検討会が、勤務校である新里中学校の1年D組で行われました。吉場先生の課題研究テーマは「中学校における数学的な思考力・判断力・表現力の育成~説明し伝え合う活動を重視した数学的活動を通して~」です。
吉場先生は勤務校で昨年度の発見実習Ⅱから、生徒一人一人に数学的な思考力・判断力・表現力を培わせるための様々な工夫を模索してきました。数学の問題を深く考えさせるための授業を実施するためには、そのための時間確保や評価などの非常に難しい課題があります。それらを解決するために①単元計画をしっかり立てて時間を生み出すこと、②生徒が問題を解いてみたいと思わせるような問題設定、③説明し伝え合う活動場面の設定、④振り返り方や展開問題の工夫、⑤家庭学習とのつながり、⑥評価の工夫などの様々な手立てによって克服しようとされてきました。
生徒は単元に入る前に、単元全体が一枚で見通せるような各授業でのねらいが示されたプリントを配布され、毎時ごとにそのねらいを音読して意識させられます。ほとんどの時間でペア活動がなされており、考えさせる問題を与えられたときに、自分で考えるだけではなく、それをペアに対して説明する活動が設定されています。その際、表現力カードが各自に渡されていて、上手な説明を受けたと感じた生徒が、説明をした生徒の表現力カードに評価ポイントを与えます。最後に授業ごとに終了時点で振り返りを促して、授業で学んだことを自分でまとめていくという活動がなされます。
本時は、「比例と反比例」の単元のほぼ最終部にあたる部分であり、「身のまわりの問題を、比例のグラフを利用して解決してみよう」という課題でした。全22時間の単元の第19時間目となる単元末の授業です。最初にデジタルコンテンツをふんだんに使って、動く歩道に乗ったAさんと、一緒に歩くBさんの二人の様子をイメージさせた後、その二人の動きをグラフ化していきます。そこで様々な考えさせる問題を設定し、両者の間で何秒の差が出るのか、何m差が出るのかなどを式やグラフで解いて、それを生徒が説明します。吉場先生がいつも複数教科書を元に作成されている、考え抜かれたワークシート1に従って、授業が進行していきました。本時でも、ペア活動を行った後、多くの生徒が指名されて、前に出てきてグラフを使って説明活動をしたりという多くの活動がみられました。その結果、ワークシートの2枚目については、発表した生徒はいたものの、振り返りの時間は少し足りなくなりましたが、全体としては生徒に十分発表・表現をさせる時間があり、かつ考えさせるよい授業であったと思います。
公開授業には置籍校の端井校長、櫻井副校長、重田指導主事、校内・校外の先生、本学からも院生6名、指導教員の平林客員教授、山口課程長、全17名が参観しました。授業終了後の授業検討会では、端井校長に続いて、これまでの実習の取り組みを吉場先生自身が説明した後、櫻井副校長の司会で、本学院生が全員意見を述べた後、重田指導主事からも様々なコメントをいただきました。そのコメントでは、決して数学が得意な者ばかりではない生徒たちをしっかり考えさせる授業を、丁寧に指導されていることへの賞賛が相次ぎました。吉場先生の授業準備の丹念さ、生徒への対応への丁寧さなどには、筆者も頭が下がります。指導教員としては、今後課題研究をまとめるにあたり、本年度の実践の中で吉場先生が気づいた諸問題を言語化し、さらにプロ教師としてのスキルに磨きをかけていただきたいと存じます。この二年間、吉場先生の学びに多大な支援をしていただいた新里中の皆様、そして特に、ほとんどの授業を参観していただいた櫻井副校長に深く感謝いたします。(文責:山口 陽弘)
坂本 裕大 (児童生徒支援コース) 令和元年11月19日(火)伊勢崎市立境小学校
11 月19 日,児童生徒支援コースの坂本裕大さんの課題解決実習に伴う公開授業及び実践検討会が、実習校の伊勢崎市立境小学校で行われました。 坂本さんは、理科の学習において、生徒一人ひとりの気づきを生み出す導入を通して、生徒の意欲や主体性を高める指導の工夫について研究と実践を進めてきました。
坂本さんは、理科教育では探究活動に先立つ導入の段階に、課題があると考えました。演示や資料の提示から得られる気づきは一人一人異なり、多様な課題や予想が生まれうるにも関わらず、往々にして教師が意図した課題のみで進められるため、課題を自分事として捉えることができず、探究活動に主体的かつ意欲的に取り組めないのではないかと考えたのです。そこで坂本さんは、気づきを大切にし、一人一人に予想を立てさせること、そして単元を通しての課題(大きな課題)と、気づきをふまえた小さな課題とを、それぞれ明確にして取り組ませることで、十分な探究が行える授業を目指しました。
研究授業は第4学年、「ものの体積と温度」単元の7時間目です。事前アンケートの結果では、クラスの9割の児童が「理科が好き」と肯定的な回答をしており、「理科の学習を通して新しい発見をしたい」という児童も7割に上っていました。本時も鉄球を使った実験を行うことから、児童の意欲も高まっていることが予想されました。坂本先生はまず、単元の流れを表した「学習マップ」で、これまで学んだことと本時の課題について確認しました。次に、鉄球を示しながら、「鉄球を冷やしたり、熱したりすると体積はどう変わるか?」と問題を提示。そして、一人一人に予想を立てさせました。「環に入る」「入らない」「とけて小さくなる」「体積が変わらない」、様々な声が上がります。坂本さんは、前時までの実験で調べてきた事柄を確認しながら、体積に絞って予想を立てさせました。さらに実験の様子を図解した紙を配り、ノートに貼らせて、そこに鉄球の様子を表現させます。本校の校内研修では本年度、ユニバーサル・デザインによる授業づくりを研修テーマにしていました。坂本さんも研修に同席させてもらい、そこで学んだ「視覚化」、「焦点化」を意識したものです。
予想が立て終わり、次に実験方法を考えます。「冷やすのには水を使う」「氷水のほうがよく冷える」「熱するにはガスコンロを使うと早い」など、これは全体で考えをまとめました。そして、いよいよ実験です。ガスコンロを使うため、全員を教卓前に集めて使い方を示したり、使い方をまとめたチェックシートを配るなど、安全にも配慮しました。鉄球を加熱する時間は、2分。班ごとに置かれたガスコンロで、児童たちは真剣な表情で鉄球を熱していきます。熱した後は鉄球を静かに持ち上げ、金属環にゆっくりと落としていきました。「通らない!」児童たちの声が上がります。どの児童も目を輝かせながら、自分たちの立てた予想を確かめていました。
当日は大谷登志雄校長、笠原達也教務主任を始め、校内の先生方、本学理科教育講座の佐野史教授、教職大学院の院生に参加いただき、授業後の検討会では様々な有益な指摘をいただきました。最後に本学から懸川武史教授が謝辞を述べました。 (文責音山若穂)
木村 剛 (児童生徒支援コース) 令和元年10月31日(木) 前橋市立元総社中学校
児童生徒支援コース2年生の木村剛さんの公開授業と実践検討会が勤務校である前橋市立元総社中学校にて行われました。木村さんの課題研究のテーマは「科学的な思考力,判断力,表現力を育成するための中学校理科での指導の工夫 -適切な課題設定を元にした言語活動を通して-」です。
木村さんは生徒の知識を関連づけたり,論理的に考えたりすることの難しさや,実験に対する考察場面での生徒の意欲の低さを課題と捉え,「既習事項や実験・観察の結果,他者の考えなどをもとに話し合いにより,自分なりの考えを深め,それを表現する生徒」の育成を目指し,研究を行ってきました。また,上記の課題を解決するための手立てとして適切な課題を設定すること,言語活動を充実させることに重点を置き,授業を計画してきました。
公開授業は木村先生が担任を務める1年1組の理科の授業で行われ,実習校の多くの先生方にも参観をしていただきました。本時は,生徒達が既習の水溶液についての知識を活かし,6種類の透明な液体の正体をつきとめるための実験を計画する,1年生理科「単元2物質のすがた」の終章として位置付けられています。木村さんは単元開始時に単元内の学びがどのように終章につながるのかを生徒に示し,それぞれの章での学びを終章とのつながりから振り返る活動を行なっていました。授業では最初に教師が生徒と共に既習事項の確認を行い,生徒にこれまでの学習の知識から課題が解決可能なものであることを示しました。また,実験を計画するにあたり,自身の思考を可視化させ,他者に伝えるツールとして階層図の使用を求めました。最初個人で考えている時にはうまく考えがまとまらなかった生徒も,ホワイトボードを中心に頭を突き合わせて話し合う中で自身の知識を課題につなげ,計画を立てていました。また,班での話し合いの後,班の計画を発表する場を設けたことで,他の班の考えを聞いて自分たちの計画を見直し,修正する生徒の姿も見られ,彼らの思考が他者の意見を聞く中で深まっていることが伺えました。
授業に引き続き行われた実践検討会には実習校の中村正校長先生,新井信男教頭先生,前橋市内の中学校の理科教諭,本学院生と多くの先生方にご参加いただきました。授業の検討の中では,階層図の有効性や,実験を計画する活動の難しさ,また本時における評価のあり方など,様々な視点から活発に意見が交わされました。指導講評をいただいた前橋市教育委員会の阿部恵一様には生徒の主体的な学びという視点から学習の繋がりを生徒にも意識できるように課題を設定することの重要性について改めてご指導いただきました。最後に本学懸川教授が謝辞を申し上げ,閉会しました。参加していただいた先生方に改めて感謝申し上げます。(文責 大島みずき)
中嶋 かずみ(児童生徒支援コース) 令和元年11月7日(木) 伊勢崎市立三郷小学校
11月7日(木),児童生徒支援コースの中嶋かずみさんの実践検討会が,勤務校である伊勢崎市立三郷小学校で開催されました。
中嶋さんは,「意欲的に表現する児童の育成を目指す小学校英語科指導-『つながり』のある言語活動を通して―」をテーマに課題研究にとりくんでいます。当日は,研究の一環として担任クラスの4年3組で,イングリッシュサポーターの瀧本直子さんとのTTでの授業「何になりたいの? What do you want to be?」(伊勢崎式小中一貫英語力向上プログラム)が公開されました。
勤務校のある伊勢崎市では,教育課程特例校制度により,小学校1年生から英語科の授業が実施されています。こうした中で中嶋さんは,それまでの自身の実践を振り返って,ややもすると学びと学びとの間の「つながり」が見えづらかったり,言語活動が人と人との「つながり」をもたらすコミュニケーションに十分なり得ていなかったり,といった課題意識をもち,その解決にとりくんできました。前者の「つながり」については,単元末,さらには学期末に実現したい児童の姿からのカリキュラムのバックワード・デザインやモジュール学習の工夫,後者の「つながり」については,コミュニケーション・ストラテジーの指導,TTの活用,参観者など多様な他者とのコミュニケーションの確保などが手立てとして講じられてきました。
検討会当日の授業では,単元のゴール「将来の夢について家の人に英語で伝えよう」にむけて,将来の夢(就きたい職業)について,相手を変えながらインタヴュー形式で活発に対話が行われました。言い方が難しい職業についてはヒントカードが準備されるなどの工夫も凝らされていました。さらに,当日は多くの参観者があったので,中嶋さんは始業前に,参観者を相手に英語で自己紹介をするよう子どもたちに呼びかけました。子どもたちは無茶振りにも物怖じせず,積極的に初対面の大人たちに話しかけていました。
授業およびその後の実践検討会には,三郷小学校の大塚校長,小渕教務主任,瀧本ES(下の写真右),同僚で教職大学院9期生の小暮さんのほか,近隣の小・中学校の先生方,教職大学院の野村教授,矢島元教授とM2・M1の院生,群馬大学からの教育実習生,大学院指導教員の木村,山崎が参加しました。指導・講評を担当された伊勢崎市教育委員会・久保田純一指導主事(ちなみに教職大学院3期生)からは,子どもたちの主体性や「もっと話したい」という意欲,市の研究会などでの学びをすぐに活用する中嶋さんの柔軟性が高く評価されるとともに,課題として,将来の夢の「理由」を述べさせる手立ての工夫について,中学校カリキュラムとの接続の観点からの指摘がありました。(文責:山崎雄介)
上田 美果 (児童生徒支援コース) 令和元年11月7日(木)太田市立宝泉東小学校
11 月7 日,児童生徒支援コースの上田美果さんの課題解決実習に伴う公開授業及び実践検討会が、実習校の太田市立宝泉東小学校で行われました。 上田さんの研究テーマは「主体的に道徳的実践を行う児童の育成-道徳的実践力を高める単元学習を通して―」で、第3学年で実践を進めて来ました。
上田さんは、“道徳的価値のよさを考え”、“実現することの難しさも感じることができ”、“学んだことを日常生活と結びつけ道徳的実践を行える”、そして“道徳的実践を自分と他者との関係で振り返り、新たな実践につなげられる”の4つを目指す児童像に据え、道徳科の単元学習に加え、各教科等との繋がりを重視した全体計画別葉と年間指導計画の作成や、教育相談の手法を活用した学級経営の充実を手立てに含めた実践を行ってきました。
「礼儀」の教材である「どうしていけないのかな」では、スーパーマーケットでのインタビュー場面をイメージしたモラルスキルトレーニングを行ない、そこで学んだスキルを実際の社会科見学の場で実践し、振り返りを行ないました。さらに朝の会で「ありがとう10回」を行ない、普段の生活でも礼儀正しくすることの大切さ、よさを実感させ、主体的な実践へと繋げました。一連の学習を通して「礼儀」だけでなく、「感謝」や「勤労、公共の精神」の価値についても考えられるようにしたのです。
本時では「公正、公平、社会正義」の教材である「悪いのはわたしじゃない」を取り上げました。教材のテーマである自慢話についてのアンケート結果では、「自慢話をされたことがある」は33%、「自慢話をしたことがある」は17%と、自慢話に関わった経験が乏しいことが示されていました。そこで朝の会で「自慢話大会」を行なって、事前に体験して理解を得ておきました。
まず導入で、学級目標の「みんななかよし」が守られているかを確かめた後、めあて「みんなが仲良くするために大切なことは何だろう」が示されました。教材文の範読に続いて、「どうしてこんなことになってしまったのだろう」、「なおさんのこころはどのように変わっていったのだろう」、「れなさんを心配していたなおさんが『悪いのは、れなだよ』と言ったのはなぜだろう」と児童への問いかけが続きます。そして「なおさんはどうすればよかったのか」をワークシートに書かせ、それをもとに児童同士のペアでロールプレイを体験させました。どの児童も真剣な表情で役割を演じているのが印象的でした。終了後は、この体験を通して何を感じたか、お互いに披露し合い共有することで、「大切なこと」についての考えを深めていきました。
当日は伏島均校長、岡田澄恵教頭を始め校内の先生方、城西小学校から島崎純美代校長、市内小中学校から8名の先生方、教職大学院の修了生や在学生にも参加いただきました。授業後の検討会では活発な議論が行われ、太田市教育委員会の松本昌寛指導主事より指導講評をいただきました。最後に本学から懸川武史教授が謝辞を述べました。 (文責音山若穂)
山野佳奈(児童生徒支援コース) 令和元年10月17日(木)渋川市立渋川中学校
10月17日、児童生徒支援コース2年生の山野佳奈さんの公開授業と実践検討会が、勤務校である渋川市立渋川中学校で行われました。
山野さんの研究テーマは「自分の考えを深める生徒の育成を図る中学校数学科の指導の工夫―思考の過程を表現し振り返ることを通して―」で、自分の考えをより的確に表現する、問題解決過程や意味理解を重視する、テストを学習に活用するツールとして意識する、といった生徒像を目指します。そのため1学期から、①身近で予想を立てられる課題を工夫する、②自分の考えを他者に説明する、③テストでも思考過程を書かせ評価する、④ルーブリックを生徒が振り返りの手がかりにする、⑤授業のポイントを付箋にメモしノートに貼っていく、という活動に取り組んできました。
研究授業は単元「量の変化と比例、反比例」の第11時間目で、「比例の見方や考え方を利用して、紙のゴミがコピー用紙何枚分なのか求め、その求め方を説明する」という学習でした。
生徒はまず、1週間分の紙のゴミと500枚入りのコピー用紙を見比べ、ゴミがコピー用紙何枚分か予想を立てました。その予想を確かめるに、枚数と重さが比例関係にあることを利用する、という意見が出され、500枚入りコピー用紙の重さ(2㎏)、ゴミの重さ(3㎏)をその場で実際に測りました。そして表・式・比例式・グラフと様々な方法を用いて答えを求め、ホワイトボードを活用しながらグループ内で説明し合い、互いの説明をルーブリックに即して評価し合いました。さらに全体で4通りの考え方を確認し、「1.4㎏の紙のゴミはコピー用紙何枚分か」という発展問題に取り組みました。
授業と検討会には、実習校の校長先生・教頭先生と先生方、渋川市教育委員会指導主事の坂口延弘先生、本学教職大学院生等、合計20名が参加しました。検討会では問題の工夫が評価されるとともに、「y=axの式を使う方法は取り上げるべきだった」「1枚=4㌘と求めたが説明につまずいた生徒がいた。そのつまずきをポイントとして生かせないか」等、生徒の学びの姿に即して、多様な観点から深い協議が行われました。
坂口指導主事様からは、ルーブリックの有効性やテストでも記述式の問題を出すことの必要性など、山野さんの研究を励ますコメントとともに、理科と数学の違いなど教科内容に関わる深い御指導も頂きました。最後に本学・佐藤浩一教授がお礼を申し上げ閉会しました。
(文責 佐藤浩一・田村充)
新井範子(児童生徒支援コース) 令和元年10月11日(金)高崎市立塚沢中学校
10月11日、児童生徒支援コース2年生の新井範子さんの公開授業と実践検討会が、勤務校である高崎市立塚沢中学校で行われました。
新井さんの研究テーマは「学んだことを活用して課題を解決し考えを深める国語『読むこと』指導の工夫-自己調整学習を通して読解方略を身につける指導-」というものです。「自己調整学習」は、学習者が見通しを持って学習に取り組み、自分の学習を評価して次の見通しを持つという姿で、新学習指導要領でも強調されています。
国語「読むこと」の自己調整学習に不可欠なのが「読解方略」で、例えば「繰り返し出てくる言葉に注意する」といった上手な読み方です。方略を知ることで生徒は、読解に取り組む見通しが持てます。そして自分の読みを振り返ることで、「次もこの方法で読めそうだ」という新たな見通しと意欲につながります。
研究授業で扱った教材文は「水の山 富士山」。富士山に降り注いだ水がどこへ行き、どのように人々に恵みをもたらすのかを説明する文章です。生徒は1・2時間目に、「問いと事例を探す」など読解方略を生かして、内容を読み取りました。研究授業は3時間目で、「筆者の問いに対する答えをまとめる」という学習でした。生徒は「答えの中心を探す」「不要な表現を省く」といったコツを参考に、個々で要約に取り組みました。その後、要約文をペアで読み合ったり全体で共有したりし、互いの共通点や相違点をもとに、意見交換をしました。説明文の要約に苦手意識を持つ生徒は多いのですが、本時は全員が要約をまとめることができ、「次もこの方法でできそう」という感想が聞かれました。
授業と検討会には、実習校の校長先生・副校長先生や先生方、高崎市教育委員会指導主事の黛哲雄先生、高崎健康福祉大学の武井英昭先生、市内の小中学校の先生3名、本学教職大学院生等7名、合計18名が参加しました。協議では、読解方略指導の重要性、要約における目的意識など、多様な観点から議論が交わされました。黛指導主事様からは「読解方略の活用は重要だ、各時間で身につけたことを単元の目標に結び付けるという単元構想の考え方を今後も大切にして欲しい」等、研究テーマに即した御指導をいただきました。最後に、本学・佐藤浩一教授がお礼を申し上げ閉会しました。
(文責 佐藤浩一・田村充)
荒木 翔太 (児童生徒支援コース) 令和元年10月10日(木) 前橋市立桂萱小学校
10月10日、児童生徒支援コースの荒木翔太さん(ストレートマスター)の公開授業と授業検討会が、実習校である桂萱小学校の4年1組で行われました。荒木さんの課題研究テーマは「小学校社会科における表現力の育成―知識や情報を関連付ける思考ツールを活用して―」です。
荒木さんは昨年度の発見実習Ⅱから、桂萱小で実習を開始し、足かけ二年、この学校で実習をしてきました。特にこの4年1組では、一学期から半年以上にわたり、社会科を中心に、ほぼ三つの単元「安全」「ゴミ処理」「わたしたちのくらしと水」を任されて、教えてきました。その際の工夫として、各種の思考ツール(ウエイビングマップやOPPシートなど)を取り入れ、児童の思考を促し、深いレベルで記述して人前で発表ができることを目標にして教えてきました。
児童は社会科という授業を、ともすると暗記物であると思い込み、模範答案を写せばよい、さらに一コマごとの学びを読み切り形式で理解して、ばらばらの知識にとどまりがちです。そうした浅い学びでとどまらせないように、毎時ごとに振り返りをさせて、OPP(一頁に短い振り返りを書かせるワンページポートフォリオ)を児童に記述させ、単元全体に繋がりを持たせた上で、ペアでの話し合い活動などを通して、対話的な学びを少しずつ学んできました。各単元末では、パフォーマンス課題を設定し、先生の話を聞いて終わりにするのではなく、児童自らが主体的な学びにとり組むように工夫してきました。
本時は、「わたしたちのくらしと水」という単元の最後であり、小学校四年生の児童に、「節水にチャレンジ!~わたしたちが使う水を大切に~」というパフォーマンス課題にとり組ませ、みんなの前で発表させるという授業でした。全11時間の単元の第11時間目となる単元末の授業です。その記述が「成功」のレベルというB基準に加えて、「大成功」レベルというA基準のルーブリックを二種類提示し、児童にこれまでの授業を振り返って、文章を記述させて、個人ごとに発表させました。
児童が自分でできそうな節水を、カタコトではなく、意味ある長い発言としてまとめさせ、発表させるのは、なかなか難しいものですが、本時ではペア活動(両隣・前後など)もよく機能し、発表も最終的に六名が発表しました。最後には、振り返りのOPPシートの最後のパーツも完成させて、これも四名が発表し、さらに児童にOPPへの感想を言わせたところ、「疲れた」「難しかった」という発言もあると同時に、「楽しかった」というプラスの意見も見られました。ほとんどの児童がこれまで自分が書いたOPPシートやノートを参照して考えながら記述しており、優れた授業がなされたと私は感じました。毎時ごとの授業を繋げる・振り返ることの重要性、そのためには日々のノートテイキングが重要であることを認識させる一連の授業になったと思います。
公開授業には置籍校の校長、教頭、大島担任以外でも、校内でのべ7名、隣の桂萱中の松島校長、本学からも院生2名、平林客員教授、指導教員の立見客員教授、山口課程長らが参観しました。授業終了後の授業検討会では、これまでの実習の取り組みを荒木さん自身が説明した後、校長、教頭、大島担任、本学院生M1の加藤・長竹先生、山口・立見・平林が、各々授業への意見を述べ、本時について、さらに改善点の検討を行いました。ともあれ、この足かけ二年にわたる荒木さんの真摯な努力に対して、多大な賞賛を、特に実習校の先生方から受けました。指導教員としては、今後課題研究をまとめるにあたり、本年度の実践の中で荒木さんご自身が何を得たのかを言語化し、来年度以降、群馬の教員になったときに、それを自分の財産にして有効活用して頂きたいと存じます。この二年間、多大な支援をしていただいた桂萱小の皆様に、深く感謝いたします。
(文責:山口 陽弘)
岡野 典子(児童生徒支援コース) 令和元年10月4日(金) 片品村立片品中学校
10月4日(金),児童生徒支援コースの岡野典子さんの実践検討会が,勤務校である片品村立片品中学校で開催されました。
岡野さんは,「中学校国語科における叙述に即して読む力をつけるための指導の工夫-『書く活動」と『読みの交流」を取り入れて―」をテーマに課題研究にとりくんでいます。当日は,研究の一環としての1年生「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ作,高橋健二訳,三省堂『現代の国語1』)の授業が公開されました。全6時間中の第6時,単元のまとめとなる回です。
岡野さんは,単元全体の学習課題を「大人になった『ぼく』の心の中を解き明かそう」とした上で,単元を貫く「書く活動」として,「ぼく」の心情を日記の形で綴るというものを設定しました。具体的には,第3時では,自慢のコムラサキの標本をエーミールに見せた場面,第4時では,エーミールのクジャクヤママユの標本を潰してしまった場面について,当時の「ぼく」の心情を生徒たちは書きました。さらに書いた日記をグループ内で回覧して相互に評価・コメントし,そのコメントを見て自身の日記に加筆する,という「読みの交流」と「書く活動」の往還に生徒たちはとりくみました。
そして,第5時での作品の構成の検討(前半は現在から回想場面への転換が明示された「枠物語」の形をとっていながら,終末では現在に戻ってこず,回想で終わっていることの効果)をふまえ,公開された第6時では,「少年の日の思い出」を語り終え,帰宅した現在の「ぼく」の視点で日記を書くという活動が設定されました。
回想場面の最後,クジャクヤママユのくだりでの「ぼく」やエーミールの年齢は作中では12歳前後となっており,生徒たちと同じか少し下くらいですが,とはいえ,描写されている心情は,現在の日本の中学校1年生とはかなり距離があります。そうしたこともふまえ岡野さんは,日記の書き出しはあらかじめワークシートに提示して「続きを書いてみよう」という形式にする,「エーミールのことをどう思っているか」,「なぜ,自分のチョウを潰してしまったのか」,「今,どんな気持ちか」という3つのポイントを指定するなどして,書くことへの抵抗感を減じる工夫をしました。その効果もあり,生徒たちは熱心に書くとともに,他の生徒が書いた日記についても的確に評価・コメントをしていました。
授業およびその後の実践検討会には,片品中学校の雲越校長,佐々木教頭のほか,近隣の小・中学校から5名の先生がたと,大学院指導教員の木村,山崎が参加しました。討議の中では,生徒たちを送り出した片品小学校の先生から,その成長ぶりを評価する指摘があるとともに,書かせる時間を確保するための単元・1単位時間の構成をどうするかなど,具体的な意見交換が行われました。
(文責:山崎雄介)