松島博昭(教職リーダーコース) 令和4年10月27日(金)太田市立沢野小学校
10月27日、教職リーダーコース2年生の松島博昭先生の実践発表と実践検討会が、勤務校である太田市立沢野小学校で行われました。松島先生の研究テーマは「教師が成長する校内研修の方法−互いの良さを見つけ、発信・共有し、自主的に学ぶプロフェッショナル研修を通して−」です。
学力向上や個別の支援等の学校課題を解決するには、教員個々人と教員集団の力量を向上させる必要があります。校内研修がその機会ですが、教員自身が学ぶ場として不十分なケースもあります。しかし勤務校での教員アンケートによると、教員は研修に負担感を感じていますが、「授業力・学級経営力を高めて、児童や学校全体をよりよくしたい」という願いも強いことが分かりました。
そこで、自主的研修会の開催やプロフェッショナル通信の発行などの取組を組み合わせた、「プロフェッショナル研修」を考えました。そして、①自分の実践を振り返る、②みんなが主役になれる、③遠慮なく意見を交わせるという三つのアプローチにより、教員集団が学ぶ「成長職場」を目指しました。
自主的研修会は毎回1~2名の教員が講師となって自分の授業実践のコツなどを紹介し、参加者が意見を交わし会う機会です。教員の負担に配慮して自主参加を旨としました。その上で、参加しやすい運営(1~2週間に1回程度、1回20分)と、参加したくなる内容(教員のニーズを把握する)となるよう校内研修委員会で検討するなど、学校として組織的に運営しました。また今年度は、学校の研修テーマ「伝えたい!聞きたい!と思える授業作り~自分の考えを表現する手立ての工夫を通して」に基づく授業改善を自主的研修会で検討するなど、主題研修と自主的研修会を補完的・発展的に実施することもしました。さらに自主的研修会をやりっぱなしにせず、Jamboardを活用して参加者の感想を共有したり、研修会で学んだ内容を自分で試みた教員がその成果や課題を報告する機会を設けたりもしました。
プロフェッショナル通信は、指導技術や教職大学院での学びなどを伝えるA4判1枚の通信(1~2週に1回発行)です。当初は松島先生が一人で発行していましたが、今年度は他の先生方も発行するようにしました。
さらにこれらの手立てはデジタルデータとしてアーカイブして、いつでも研修会の動画を視聴したり通信を読んだりできるようにしました。
実践発表と実践検討会には、実習校の校長先生・教頭先生・先生方、太田市教育委員会指導主事の岩間昌央様、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計40名が参加しました。松島先生からの研究説明に続いて、その場で、いつもの自主的研修会と同じかたちで研修会が開催され、参加者はそれを周囲で参観しました。研修主任の野村愛美先生が「自分の考えを表現する手立ての工夫」というテーマで、ご自身の道徳の実践を紹介し、それを踏まえてグループワークが展開されました。
続く研究協議では、研修の成果、参加教員の負担への配慮、主題研修との関連などについて、質疑応答が行われました。「(参加者として)実際の指導に生かせることが多く学べた」、「(講師として)自分の実践を振り返るとともに参加者の意見を聞くことができ、自分のためにもなった」、「研修をやりっぱなしにしないことで研修が活発化した」など、多くの評価を頂きました。また、澁澤校長先生は「この実践はどの学校でもできる。今の時代の先生方には必要なので、ぜひ市内に広めていってもらいたい」という期待を述べて下さいました。
指導助言の岩間指導主事様からは、「8月に出された文部科学省通知(※)によると、これからの校内研修を活性化させるためには、各学校の課題やニーズに対応した協働的な学びを学校組織全体で行い、その成果を教職員間で共有することが必要であると明記されている。松島先生の研究は、こうした校内研修の活性化による教員の資質向上を率先してやっていることが素晴らしい。太田市の教員の資質向上の一つの指針になることを期待する」というご講評を頂きました。
最後に本学・鈴木豪准教授がお礼を申し上げ、閉会しました。
(※)令和4年8月31日付文部科学省総合教育政策局長・初等中等教育局長通知「改正教育公務員特例法に基づく公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針の改正等について」
(文責 川野文行・佐藤浩一・鈴木豪)
茂木亜希子(教職リーダーコース) 令和4年11月25日(金)桐生市立梅田中学校
教職リーダーコース2年の茂木亜希子さんの実践検討会が、11月25日に勤務校である桐生市立梅田中学校で行われました。この実践検討会は、東部地区の地区別人権教育研究協議会と同時開催として行われたものです。
茂木さんの研究テーマは「小規模中学校における学び合う教員集団づくり ~相互授業参観を核とした校内研修を通して~」です。
昨年度、勤務校の職員に行った聞き取り調査から、7名の教員が全てのクラスの授業を受け持っているため、全教員が全校生徒との関わりを持てることや、それぞれの教員が把握した情報が共有しやすく、それをもとにきめ細かな対応ができるなど、協力体制が築きやすいという小規模校の強みが明らかになりました。一方、各教科の教員が一人ずつしかいないため、教科指導について学び合う機会がないことや、授業研究会でも意見が出にくく、学び合いが深まらないという課題も明らかになりました。
そこで、組織の強みを生かしながら課題を解決し、より教育力の高い学校を目指していきたいと考え、校内研修という全職員が関わる場において、全職員が創り上げた研修テーマに基づく授業実践を行うことで、学び合う教員集団づくりを進めたいと考えました。
また、勤務校を会場として、地区別人権教育研究協議会の開催が決まっていたため、公開する授業の質を高めていくことも併せて行えると考えました。
まず、1月の校内研修全体会では2つのグループに分かれ、勤務校の「生徒の実態」について話合いを行いました。事前に同様のプログラムで話合いを行っていた研修委員会の委員である教務主任と研修主任が各グループのファシリテーターを担当し、実態認識を深めることができました。その後の研修委員会で「生徒の実態」の整理と集約を行うとともに、2月の全体会のリハーサルを行うなど、あまり機能していなかった研修委員会を校内研修全体会と交互に行うことで、協働化を促進させる工夫をしました。
2月以降の全体会や研修委員会では「目指す生徒像」と「それに迫るための手立て」について協議を繰り返し、「『想いを伝え合うことで、自分の考えを深めようとする生徒』の育成 ~梅中メソッドを生かした授業づくりを通して~」という研修テーマを全職員で創り上げました。
そして、5月からは、ほぼ月1回のペースで、一人1授業の実践と相互授業参観を実施しました。勤務校は各学年1クラスの小規模校なので、小規模校非常勤講師が来校する日に合わせて授業公開を行うと、全教員が授業参観できるという利点があります。
また、全教員が全校生徒との関わりを持てていることから、教科専門の視点ではなく、生徒の学びの姿を基にした授業研究を行うことにより、話合いが深まると考えました。
さらに、校内研修全体会で行う授業研究会は形態をワークショップ型にし、授業を参観した職員が生徒の姿からの気づきや感想などを記述した付箋を持ち寄り、模造紙に類型化しながら貼っていくことで、話合いを活性化させることができました。
実践検討会当日、研修主任である茂木さんは、開会行事の中の研究発表において、教員の人権感覚を高める資質向上研修とともに、課題研究の一環として取り組んできた一人1授業や授業研究会の成果について発表しました。
その後、1学年は学級活動、2・3学年は道徳の授業を公開しました。3学年の主任でもある茂木さんは、3年の授業づくりに大きく関わってきておりましたが、当日の授業は3年A組の担任が行いました。
授業後の研究協議では、「人権に関する協議」と「授業研究会」を行い、最後に、東部教育事務所の半田敦子指導主事から指導講評がありました。
茂木さんの課題研究について、半田指導主事からは、研究テーマと学校教育目標の整合性が図られていたこと、生徒の課題である「自己有用感」の捉え方を全職員で共通理解することで、目指す生徒像が明確になり、組織的・協働的な取組が充実できていたこと、学校の規模を生かした一人1授業を通して授業の質を高めていたことなどについて、肯定的な評価をいただきました。
(文責:大島みずき、髙橋 望、野村晃男)
関 加世子(教職リーダーコース) 令和4年11月24日(木) 高崎市立片岡中学校
11月24日,教職リーダーコースの関加世子教諭の公開授業と授業検討会が,勤務校である片岡中学校の1-1のクラスで行われました。関先生の課題研究テーマは「中学校社会科における思考力・判断力・表現力を育む授業づくり―「逆向き設計」に基づくパフォーマンス課題を中心に―」です。関先生が担任もされている1-1クラスでの公開授業となりました。社会科は,暗記中心の教科と誤解されていますが,現在においては資料などをもとにしっかりと考えて表現する力が求められている教科です。実際に群馬県の公立高校の入試では記述問題が全体の半分程度,出題されています。しかし,生徒たちはなかなか社会的事象について,資料と関連付けたり活用したりしながら説明することが苦手です。これは全国的な問題であると同時に,勤務校での生徒たちの課題でもあり,思考力・表現力・表現力を育むための教え方については教師の課題でもあります。
これに対処するため,関先生は,毎時ごとに教科書見開きの終末部で求められている記述問題を,自分なりに練り直して,パフォーマンス課題にする実践をしてきました。また,パフォーマンス課題を達成するために,課題解決に向けて授業を組み立てる授業の「逆向き設計」にも取り組んでこられました。同時に,一昨年度から導入されたICT機器(タブレット端末)の活用にも積極的に取り組み,適宜グループでの活動を取り入れて発表をさせることで,思考力・判断力・表現力の養成に努めてきました。
本時の課題は「社会科 歴史」における室町期の東アジア文化圏の国と国との交流について記述させるという大変難しい課題です。明,朝鮮,琉球,蝦夷地という四カ国(地域)と日本との関係を学ぶことで,日明貿易だけではなく,明を中心とした東アジア文化圏での華夷秩序を理解させるのが前時・本時の二時間のねらいです。日明貿易が朝貢貿易であることが十分理解されないままに浅い理解で済まされてしまうことを乗り越える授業でした。記述問題が得意ではない生徒でも,無回答の者は基本的に1人もいませんでした。記述型のパフォーマンス課題に継続して取り組んできた結果,ほぼすべての生徒が四月の時点よりは記述問題に慣れ,記述力がかなり定着・向上していることが十分うかがえました。
公開授業には,置籍校の校長,教頭,校内の多くの先生,本学からも教職大学院の院生4名,指導教員の鈴木准教授,山口が参観しました。また,高崎市の指導主事の山田先生にもご出席いただき,指導講評を賜りました。ちょうどコロナ第8波が生じつつあり,生徒に休む者も散見される状況でしたが,生徒たちは最後までこの難しい課題に取り組み,ほとんどの者が記述をしており,その結果をタブレットで取り込んで共有していました。
この数年のコロナ禍もあり,関先生におかれましては,授業や各種の実習には様々な困難があったと思います。しかし,立派にそれを乗り越えてこられました。指導教員としては,今後課題研究をまとめるにあたり,本年度の実践の中で関先生が,感じた課題を明確化し,それを乗り越えるための知恵をまとめて,さらにプロ教師としてのスキルに磨きをかけていただきたいと存じます。そして,ここで得た知恵をぜひ学校全体に還元してください。この二年間,関先生の学びに多大な支援をしていただいた片岡中の皆様に深く感謝いたします。
(文責:山口 陽弘)
齋藤 一紀(教職リーダーコース)令和4年11月21日(月)伊勢崎市立宮郷小学校
11月21日(月),教職リーダーコース2年生の齋藤一紀さんの実践検討会が,勤務校である伊勢崎市立宮郷小学校において開催されました。
齋藤さんの課題研究のテーマは「教員の協働意識を高める校内研修の充実―『研修ふりかえりシート』とICTの活用を通して―」です。
齋藤さんは,児童の「個別最適で協働的な学び」を実現するためには,教員の学びも「個別最適で協働的」であるべきだとの理念のもと,校内研修副主任として町田研修主任と協力しつつ,実践に取り組んできました。具体的には,校内研修での「学級づくり部会」,「授業研究部会」,「ICT活用部会」の3つの部会での活動や「一人1授業」で教員それぞれが自ら課題設定して実践に取り組む(個別最適)とともに,「ふりかえりシート」やGoogleフォームを活用して実践を交流・共有する(協働的)という形で校内研修を進めてきました。
その中で齋藤さんは,ICT活用部会のリーダーとして部会を運営するとともに,ふり返りシートの記入にタブレット,ノートパソコンを活用する,各自が記入した結果をスプレッドシートで共有し,容易に参照可能にするなどの形で,教員同士の協働を容易にするとともに,必然性をもって教員自身が自らの学びにICTを活用する場面をつくる(が無理強いはしない)ことで,授業での利活用のトレーニングにも貢献してきました。
当日は,齋藤さんによる研究説明に続いて,校内研修全体会が公開されました。全体会では,前半は上記の部会ごとの小グループによるここまでの実践のふりかえり,後半は各テーブルのホストを除いてメンバーが移動し,ワールドカフェ的な形の交流が行われました。そこでは各自がタブレットで授業風景の写真・動画や児童の作品を観せたり,指導案や教材・教具を提示したりと,授業と子どもの具体像にもとづく学びあいが展開されました。ふりかえりシートの記入場面では,リアルタイムでの共有も行われました。
それをうけての検討会には,宮﨑孝宏校長をはじめ宮郷小学校の先生方,指導教員である音山教授,山崎教授のほか,大学院教職リーダーコース1年生4名,市内の小学校から3名の先生が参加しました。参加者からは,宮郷小のとりくみを自校の参考にしたいとの視点から活発な質疑が交わされました。指導講評を担当していただいた伊勢崎市教育委員会学校指導課の久保田純一指導主事(教職大学院3期生)からは,「単に『みんなで学ぶ』を超えて,実践記録,ふりかえりという具体的な工夫・手だてが講じられていること」,「『授業をやって終わり』でなく,作成した指導案などが事後に徹底的に活用されていること」などの点で齋藤さんの実践を高く評価していただくとともに,今後にむけて,実践のポイントを他校等でも活用可能なように端的に整理して明示してもらいたいという期待が表明されました。
(文責:山崎雄介,音山若穂,坂西秀昭)