2021年度

課題研究実践発表・実践検討会報告

実践検討会報告 11月1日(月)  小板橋 徹治 さん

小板橋徹治(教職リーダーコース) 令和3年11月1日(月)群馬県立富岡高等学校 


 教職リーダーコース2年の小板橋徹治さんの実践検討会が、11月1日に勤務校である群馬県立富岡高等学校で行われました。

 小板橋さんの研究テーマは「授業改善を目指して学び合う職員集団づくり~実践的な職員研修をとおして~」です。

 昨年度、勤務校の先生方に行った聞き取り調査から、富岡高校の実態として、素直であるが学習意欲が低い生徒がいること、先生方は個々の能力は高く日々努力しているが、年度や教科で取組による差が生じていることが明らかになりました。

 一方、高等学校に対して、一人一台端末の導入や新学習指導要領への移行に伴う指導と評価の一体化など、様々な教育施策が展開されており、教師一人一人の努力では対応が難しいという現状があります。

 そこで、小・中学校と比較すると校内全体での研修の機会、授業研究の実施が少ない高等学校において、校内での職員研修を積極的に進めていくことで、新たな教育施策などの課題に対応していくことにしました。そして、授業改善を目指して学び合う職員集団づくりをするという目標の下、1学期は一人一台端末を活用した授業づくり、2学期は新学習指導要領で重視される指導と評価の一体化についてを研修の視点として取り上げることにしました。また、研修に前向きに取り組んでもらうためには、必要性の認識、効果の実感、定着が必要であると考え、計画、実行、評価、改善のPDCAサイクルを用いるとともに、できるだけ職員同士の意見交換、学び合いを促進するため、教科を基本とした6つのグループによるワークショップ形式での研修としました。

 具体的には、Planにおいて授業を公開・参観する視点を確認し、Doで授業を公開し参観し合います。Checkにおいて成果や課題を検証し、Actionでは、Checkでの成果や課題を踏まえた授業を全員で実践し、効果を体感するというサイクルを構想し、このサイクルを前述した視点に基づき、学期に1周させることにしました。

 実践検討会当日の研修は、2学期のサイクルのCheckにあたるもので、A:シラバスを活用した指導と評価の一体化を実現する授業、B:主体的に学習に取り組む態度を評価する授業という2つの視点から、授業づくりの成果や課題を共有しようとするものでした。

 授業者へのインタビューの後、「視点について達成できていた点」「達成が難しく感じた点」「達成が難しい点の解消案」「その他ICTの活用など」について、事前に記入した4色の付箋を模造紙に貼り、分類したり、グループで今後取り組む活動などを話し合ったりしました。その後、3つのグループの代表者が、話合いの結果を発表しました。発表の中で、理科グループから、11月の会議において自主的にGoogle Formの研修をするという前向きなコメントがあり、職員研修を行ってきた成果が表れたように思いました。

 最後に、群馬県教育委員会高校教育課の島田聡指導主事から指導講評をいただきました。

島田指導主事からは、本日のような研修により、先生方の生徒を見る視点が深まり、授業改善がスムーズになること。教科横断的な指導が必要なカリキュラム・マネジメントにもつながっていくこと。指導と評価から学校組織を変える、学校組織が変わることなどを指摘いただくとともに、先生方が熱心に協議し発表していたことの取組の素晴らしさを評価していただきました。(文責:野村晃男)

実践検討会_小板橋.pdf

実践検討会報告 12月6日(月)  笹澤 弘紀 さん

笹澤弘紀(教職リーダーコース) 令和3年12月6日(月) 伊勢崎市立赤堀南小学校 


 教職リーダーコース2年の笹澤弘紀さんの実践検討会が、12月6日に勤務校である伊勢崎市立赤堀南小学校で行われました。

 笹澤さんの研究テーマは「育てたい児童の姿を目指して学び合う学校組織文化の形成 ~教師の協働を促す校内研修を通して~」です。

 昨年度、勤務校の職員に行った質問紙調査から、3点の組織の強みや弱みが明らかになりました。1点目は、児童に関する情報の共有はできているものの、毎日の教育活動を「こなす」ことを優先してしまい、「目指す児童の育成」という上位目標が後回しになっていることです。2点目に「同僚から学びたいという気持ちはあるものの、同僚の授業を参観することが少なく、その教育実践を知る機会が少ない」ということです。3点目に「教師として、自分の力を高めたいという思いはあるものの、日々の教育活動に追われ、自己研鑽が後回しになっている」ということです。

 そこで、組織の強みを生かしながら、より教育力の高い学校を目指すとともに、課題を解決していきたいと考え、校内研修という全職員が関わる場において、協働を促す手立てを行うことにより、育てたい児童像の具現化という上位目標に向かって職員同士が学び合う学校組織文化をつくろうと考えました。

先行研究を参考にして「実態認識のステップ」「課題生成のステップ」「実践するステップ」を踏んでいく「教育活動の良循環サイクル」をもとに進めていくことにしました。

 特に、校内研修において省略されがちな「課題生成のステップ」、その課題を探るための「実態認識のステップ」を職員全員で協働的に行うことを重視しました。

まず、「実態認識のステップ」において「赤堀南小の子どもたちってどんな子?」という問いを設定し、グループでの協議を行いました。事前に同様のプログラムで協議を行っていた研修推進委員会の委員が各協議グループのファシリテーターを担当し、実態認識を深めることができました。

次に、「課題生成のステップ」では「3年後、赤堀南小の子どもたちになっていて欲しい姿とは?」という問いで協議を行い、「育てたい児童像」を設定していくことで、職員全体でゴールイメージをもつことができました。

 「実践するステップ」では、個々の職員が「育てたい児童像」を意識しながら教育活動を実践できるよう「自己研修テーマ」を設定し、テーマを基に、6つの取り組み部会を編成し、相互行為の中心の場としました。そして、部会ごとに共通のゴールの設定、授業改善とその省察、相互授業参観を行ったりする実践のサイクルを1学期と2学期の2回行いことにしました。個々の職員の「やりたいこと」を基に3~6人の部会を編成したことで、「何をやるか」が明確な研修組織となり、主体的に研修に取り組むことができました。また、本年度導入されたタブレットも研修のツールとして活用することにしました。

 実践検討会当日の校内研修は、2学期の実践を振り返り、「現れて欲しい姿」の表出に有効であった手立てや仕掛けを整理してまとめていく協議の場です。

 先生方は、タブレットを操作し、部会ごとのジャムボードの付箋に記入した「有効であった手立て」を、取り組みの柱ごとに分類したり、トピックごとにグルーピングしたりして、2学期の実践を振り返ることができました。

 最後に、伊勢崎市教育委員会の久保田純一指導主事から指導講評をいただきました。

久保田指導主事からは、学校の強みを生かした研修であり、一人一人にスポットライトが当たっていること、また、校内研修でのタブレットの活用は市内の学校でもトップレベルであり、その活用によりフィードバックにスピード感があることを評価していただきました。研修に取り組む先生方の雰囲気がよいことなど賞賛の言葉もありました。

(野村 晃男)

実践検討会_笹澤弘紀.pdf

実践検討会報告 11月25日(木)  内藤 裕之 さん 

内藤 裕之(教職リーダーコース) 令和3年11月25日(木)館林市立第一小学校


 11月25日(木),教職リーダーコース2年生の内藤裕之さんの実践検討会が,勤務校である館林市立第一小学校において開催されました。

 館林市では,数校での先行実施を経て,2022(R4)年度から市内全小中学校がコミュニティ・スクール(以下CS)として指定されます。そこで内藤さんは,課題研究のテーマとして,「コミュニティ・スクールの導入に向けた学校内外の連携体制の構築~関係者の共通理解と当事者意識の情勢を通して~」を設定し,勤務校の教務主任兼学校支援センター(CS準備)主任として,校内外の体制づくりに注力してきました。検討会では,実践の経緯が詳細に報告されました。

 本来,CSの設置準備や運営は,教職員と保護者・地域住民との熟議にもとづいて実施されるものですが,コロナ禍のもと,「人が集まる」こと自体が困難な状況が続いています。そこで内藤さんはまず,非対面でできる情報発信を工夫してきました。具体的には,①CS通信,②CS解説動画の学校ウェブサイトへの掲載が実施されました。

 CS通信は,事前予告やボランティア募集といった号外を除き,現時点で8号が発行されています。そこでは,CSの法的根拠や制度の概要,CSの保護者・地域へのメリット,学校から保護者・住民への期待,従来のとりくみとの相違などが簡潔に説明されています。

 また,動画は現在,Q&A形式で保護者・住民が抱きがちな疑問に回答するもの,校長先生へのインタヴュー形式で学校の準備状況や方針を説明するものの2本となっています。

 校内体制づくりについては,市内で先行実施している学校のCSディレクターを招いての校内研修,学校評議員会,総合部会でのカリキュラム見直し,保護者の協力のもとでの授業実践の事例などが報告されました。特に,第2回の学校評議員会で話しあわれた「育てたい子どもの姿」「学ばせたい地域のこと」が総合部会での検討につながったことは特筆されます。

 検討会には,上村哲也校長をはじめ第一小学校の先生方,指導教員である山崎教授,立見客員教授,新藤准教授のほか,市内の小・中学校から3名の先生が参加しました。指導講評を担当していただいた館林市教育委員会学校教育課の峯﨑正樹指導係長からは,対面でのかかわりが難しい中での積極的な情報発信,総合部会など教師の資質向上への活用などを高く評価いただくとともに,さらに広範に情報を伝えるためのアドヴァイスもいただきました。

(文責:山崎雄介,立見康彦,新藤慶) 


実践検討会報告_内藤裕之.pdf

実践検討会報告 10月26日(火)  大佐古 倫徳 さん 

大佐古倫徳(教職リーダーコース) 令和3年10月26日(火) 甘楽町立甘楽中学校

 10月26日、教職リーダーコース2年生の大佐古倫徳先生の公開授業と実践検討会が、勤務校である甘楽町立甘楽中学校で行われました。

 大佐古先生の研究テーマは「生徒の学習力を育成する学習システムの開発と実践-学校と家庭での学習をつなぐ効果的な学習法の指導を通して-」です。中学校になると「どう勉強すればよいかわからない」という悩みを抱える生徒が多い、同時に学校側も勉強の方法を教えてこなかった、という課題の解決を目指しています。こうした課題を解決して生徒が学習力をつけるために大佐古先生が着目したのが、「認知主義的な学習観」です。これは、考えるプロセスや意味理解や学習方法の工夫が勉強では大切だという発想です。

 大佐古先生はこうした学習観を校内研修で先生方に伝え学校全体で共有しました。そして、特別活動の時間に「学習法講座」を実施して生徒に学び方を教える、講座の内容を振り返る『通信』を発行する、『学習の手引』を改訂する、といった取り組みを重ねてきました。このうち学習法講座は4月から既に5つのテーマで開催してきました。最初はホールに一学年全員を集めて実施したのですが、現在は大佐古先生が作成した原案を学年で検討し、担任の先生方が学級単位で実施しています。1~3年のすべての学年で実施されています。

 公開授業「よりよい家庭学習の仕方を考えよう」(1年・学級活動)も学習法講座です。「2学期の期末テストで目標を達成するにはどうしたらよいか」というテーマで、1年1組・2組・3組それぞれの教室で担任の先生が実施しました。

 目標を達成するためには「計画的に」努力することが必要であることを確認し、各自が、実際に数学のテスト範囲を教科書とワークで確かめて、テストまでの学習計画を立てました。その中で、①ワークには問題の解き方が分からないときに教科書や既習問題のどこをみればよいか書いてある(リソース活用)、②誤答した場合は「何に気を付けるか」というポイントを赤字で書いてテスト前に再確認する(教訓帰納)、③英語など他の教科も取り組み方は同じである(学習の転移)など、1学期から伝えてきた認知主義的な学習方法を再確認しました。実際にワークの問題を解いて、ワークと教科書のつながりを確認することで、生徒は「取り組めそう」という手応えと見通しを持つことができ、自分がやる気を出せる計画を立てていました。

 研究授業と検討会には、実習校の校長先生・教頭先生、本日の授業を担当して下さった担任の先生方、西部教育事務所指導主事の中澤伸一先生、甘楽町教育委員会指導主事の新井綱人先生、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計13名が参加しました。

 本時について「切実感のある内容で生徒は真剣に取り組んでいた」、「家庭学習の方法を教えるのは必要なことだと実感した」といった感想を頂きました。さらに、4月からの一連の取り組みを通して「生徒は自己調整的に家庭学習に取り組めるようになってきた」、「大佐古先生のリードで学習法講座を学校組織として取り組むことができた」など、多様な観点から大佐古先生の研究と実践を評価して頂きました。中澤指導主事様からは、「学級活動においては、学ぶことについて考え、自己決定し、自己実現につなげるのがキャリア形成の一つの柱。本時は、学習方法について生徒が自己決定することにより、自らの学習を調整する力をつける授業であった」等、きめ細かな御指導を頂きました。最後に本学・新藤慶准教授がお礼を申し上げ閉会しました。

(文責 川野文行・佐藤浩一・新藤慶)



実践発表会報告 大佐古.pdf

実践検討会報告 10月7日(木)  木戸 健裕 さん 

木戸健裕(教職リーダーコース) 令和3年10月7日(木)太田市立西中学校

 10月7日(木)、教職リーダーコース2年生の木戸健裕さんの実践検討会が、勤務校である太田市立西中学校で行われました。

 木戸さんは教育相談主任として、校内のサポート体制の充実に取り組みました。課題研究のテーマは「生徒の困り感の解消を目指す校内サポート体制の見直し -児童生徒理解の充実と外部機関との連携を通して-」です。

 木戸さんは、さまざまな困り感を抱えている生徒への支援にあたって、①生徒の「できにくさ」「困り感」に寄り添った支援を行うため、すべての児童・生徒に対してアセスメントを行うこと、②一人一人の児童・生徒と向き合い、個に応じた支援を組織的に行っていこうとする体制を構築すること、そして③必要に応じて外部の関係機関と連携したサポートチームを編成すること、の3つに取り組むことにし、これらの取組を推進する手立てとして「児童・生徒理解シート」を作成しました。これは生活記録やいわゆるいじめアンケートとは異なるもので、全ての児童・生徒について小1から中3までの9年間、児童・生徒の様子や家庭環境、人間関係、支援・指導の記録を学年ごとに記載して、記録を積み上げていくものです。データの入力や校内での共有、小学校から中学校への情報の引継ぎについても工夫を施しました。そして校区内の小学校に、新年度に中学へ入学する児童のシート作成を依頼し、それを基に小・中情報交換会を行ないました。

 新年度に入ってからは教育相談部会を中心として、各担任に「児童・生徒理解シート」の意義や活用法について説明する機会を繰り返し持ち、教育相談(三者面談)や学期末などの節目には「児童・生徒理解シート」への記載を改めて働きかけるなど、積極的に定着を図りました。また、毎週開催されている教育相談部兼生徒指導部会においてもこのシートを中心として情報の共有化を図った。「児童・生徒理解シート」の導入によって、詳細な情報が整理、可視化され、効率的に共有することができるようになりました。

 検討会には、生徒指導主事、学年担当、養護教諭のほか、教育相談員、スクールカウンセラー、そして太田市教育委員会学校教育課指導係伊東卓也指導主事も参加し、シートについての率直な感想を交わしてもらいました。「小学校にシートを作成してもらうことで生徒の状況を事前に知ることができた」、「生徒一人ずつあるので、じっくり生徒に向き合うことができた」と長所が指摘された一方、「一生徒一シートで見やすいが、一覧も欲しい」などの課題も挙げられました。伊東指導主事からは、「市の教育課題の1つが不登校対策と言われており、このシートは、生徒全員分が学年毎に、9年分を蓄積できるようになっていて、市のモデルとなることを期待している。児童・生徒一人一人を複数の目で理解し、情報を共有・蓄積し、次年度以降に継続していくことで効果的な支援も継続されていくと思う。シートを活用して目の前の子どもに、どのような支援をしていくのか、学校全体で取り組む体制を整えてもらいたい」とコメントを頂きました。

 検討会では「児童・生徒理解シート」に焦点を当て、意義やメリット、課題について議論が展開されました。教職大学院の研究としてはここで区切りとなりますが、木戸さんの実践はこれから先が本番と言えます。今後、このシートを軸として、校内外のサポート体制の充実を進め、その成果を他校にも広めていくことが期待されます。

(文責 音山若穂)



実践検討会報告_木戸.pdf

実践検討会報告 9月28日(火)  千葉 貴子 さん

千葉貴子(教職リーダーコース) 令和3年9月28日 桐生市立南小学校

 教職リーダーコース2年生の千葉貴子さんの公開授業と実践検討会が勤務校である桐生市立南小学校で行われました。なお,公開授業と実践検討会については当日が新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下であったことから,規模をできる限り縮小しての実施となりました。

 千葉さんの課題研究のテーマは「インクルーシブ教育システムの構築を目指した教育実践〜多様性を認め合い共に学ぶ児童を育む学級における3つの取り組みを通して〜」です。千葉さんは児童が学級の中で多様性を尊重し自分も認められながら共に学び合っている姿を「主体的に学ぶ児童」「多様性を理解する児童」「安心して学ぶ児童」と設定し,小学6年生の担任としてその実現のために「すべての児童がわかる授業づくり,「多様性についての学び」,「児童の発達への支援」を3つの柱とした実践を行ってきました。具体的な方法としては「すべての児童がわかる授業づくり」についてはUDLの考え方を取り入れた算数の授業を実践しました。また,「多様性の学び」については道徳の授業を中心に教科横断的に小学6年生が多様性についてどのような学びを進めているのかを確認し,児童に対して様々な意味での多様性が意識できる機会を多く持つように課題を設定してきました。さらに「児童の発達への支援」については課題のある児童について教員間で共通認識を持つことを目指してきました。今回の公開授業ではその中でも「すべての児童がわかる授業づくり」として,UDLを取り入れた算数の授業を校内の先生方に見ていただく機会となりました。

 千葉先生が担任を務める6年2組で行われた算数の「円の面積」の中の「四分円を組み合わせた図形の面積を求める」授業では,児童が前時に学習した図形式を利用しながら複雑な図形の面積を求めることがねらいとして設定されました。課題を全員で確認したのち,使用してもいい具体物によるヒントブースや, 課題となる図形が描かれた用紙が置かれたブースが教室内に設定されました。児童は自分一人で黙々と考えたり,ヒントブースに行ったり,他の児童と一緒に考えたりと各自がそれぞれのやり方で一生懸命課題に向き合っていたようでした。一つの解き方がわかった後も,解き方が3つ想定されていることに気がつき他の解き方を考えようとヒントブースに友だちと頭を寄せ合い説明しあう姿も見ることができました。その後,授業では児童それぞれが自分の考えた図形式をタブレットを使用して全体で共有し,さらにそこから数人に実際にヒントブースの具体物を使用して全体に説明をしてもらいました。最後には図形式に実際の数字を代入しながら,課題の面積を求めました。「2つまではわかったんだけどな」「私の考え方は〇〇さんと一緒だった」などの言葉が児童から自然に聞こえ,楽しみながら解き方を考えることができていたことが伺えました。

 授業後に行われた検討会は勤務校の校長先生,教頭先生,校内研修主任,さらには桐生市教育委員会の矢内指導主事にもご参加いただきました。群馬大学の教員からは大島が出席し,坂西・三澤はオンラインで参加させていただきました。検討会の中では,「すべての児童にわかる」授業であるために様々な児童のつまずきを予測して千葉さんが準備した誰もが使えるヒントや,解き方への道筋を立てるために,今までどんな図形を学んできたか基本図形の面積の求め方を思い返すための言葉がけ等を評価していただきました。また,児童の中から自然に「そうか」「なるほど」「なんで」という言葉が出ることの大切さについてもお話しいただきました。さらに,今後の課題として児童が言葉で伝えることをもっと意識することや,さらに難しい問題に挑戦するための工夫についてもご指摘いただきました。最後に大島から謝辞を申し上げ,閉会いたしました。本実践については映像が記録されており,今後は学校の先生方にも研修等でご覧?いただき,さらにご意見をいただける予定です。大変な時期の中,関わっていただいた先生方に感謝申し上げます。

(文責:大島みずき)

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実践検討会報告 10月8日(金)  杵渕 恵美子 さん

杵渕 恵美子(教職リーダーコース)令和3年10月8日(金)高崎市立六郷小学校

 

 10月8日(金),教職リーダーコース2年生の杵渕恵美子さんの公開授業および実践検討会が,勤務校である高崎市立六郷小学校において開催されました。


 杵渕さんは,課題研究のテーマとして,「校内組織活用による『考え,議論する道徳』への転換に向けたアプローチ-カリキュラム・デザインと問題解決的な道徳科授業の開発・実践を通して-」を設定し,勤務校の研修主任として,来年の「関東甲信越地区小学校理科教育研究大会群馬大会」にむけた理科の研究と並行して,学校全体での道徳科の授業づくりを道徳教育推進教師と連携して主導してきました。加えて,自身の学級において,問題解決的な道徳授業,小単元のカリキュラム開発を行ってきました。


 検討会当日はまず,5年1組での授業,小単元「ネットと上手につき合おう」(全5時間)の第3時「名医,順庵」([相互理解,寛容],『新訂新しい道徳5』東京書籍)が公開されました。導入で,児童への事前アンケートから,家族や友達にされたさまざまな行為についての「許せる」,「許せない」という判断やその根拠について少し考えた後,教材文の学習に入っていきました。そこでは,順庵の「寛容」を単に称賛するのでなく,「孝吉の行為がより深刻な実害をもたらすものだったら?」という思考実験も交えて,多面的・多角的な思考が促されていました。最後に,あらためて自分たちの生活場面に立ち返り,他者に寛容になるための条件としての「相手の事情への理解」が浮上してきました。


 場所を移しての検討会では,道徳部会によるカリキュラム・デザインと校内の指導体制の構築について説明されたうえで,メンター研修や全体研修,学年でのその具体化の様相,杵渕さん自身の5年生でのカリキュラム・デザインや授業づくりが詳細に紹介されました。

 授業公開および検討会には,六郷小学校の大山校長,杉山教頭のほか,近隣の小・中学校から7名,教職大学院からは指導教員の山崎,平林,三澤のほか,新藤准教授が参加しました。参加者からは,「ここでの学びを自校に持ち帰って活用したい」との声が複数あったほか,校内組織の実際の動き,児童や教師の変容などについて質問がありました。


 校内組織については,教員全員を強引に動かそうとするのでなく,まずは杵渕さんの提起に積極的に呼応してくれるメンバーと具体的な成果を出すことで学校としての動きにつなげていこうとしていること,「一人1授業」で道徳をとりあげる若手が出てきていることなどが紹介されました。


 また,小単元については,適切な規模や内容項目の扱いなどについて,課題の指摘も含め,活発な議論が交わされました。コロナ禍の中での会としては,規模・質ともに充実していました。


(文責:山崎雄介)


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実践検討会報告 10月4日(月)  柚木 崇 さん

柚木 崇(教職リーダーコース) 令和3年10月4日(月) 高崎市立上室田小学校

 10月4日、教職リーダーコースの柚木崇教諭の公開授業と授業検討会(校内研修兼ねる)が、勤務校である上室田小学校の6年生のクラスで行われました。柚木先生の課題研究テーマは「小学校社会科から始める思考力や表現力を育成する学習指導~少人数学級における学習課題やグループ活動の工夫~」です。柚木先生の勤務校は、小規模校であり、担任されているクラスは、3名という少人数学級です。児童間に学力差が大きくとも、教師による個別指導が行き届く反面、先生に依存してしまうという、少人数学級特有の様々な問題があります。

 そこで思考力・表現力に焦点を当てて、僅か3名ではありますが、グループ活動を意識して授業に取り入れています。さらにそこにOPP(ワンページポートフォリオ)や単元末のパフォーマンス課題などをうまく取り入れることで、児童の思考力や表現力を育てる試みをしてきました。同時に、本年度から導入されたICT機器(タブレット端末)の活用も柚木先生は主担当としてなさっています。

 本時は「社会科」の歴史における織田・豊臣の天下統一の単元の、ほぼまとめとなる部分です。教科書の章末課題でもある、この二人の武将の天下統一の働きをまとめるという一種のパフォーマンス課題です。これを考えさせるに当たって、信長か秀吉のどちらの方が天下統一に寄与したかを児童に自分で選ばせ、文章にまとめさせて発表をお互いが行いました。

 児童3名のうち2名が信長、1名が秀吉とうまく分かれて、お互いに信長、秀吉についての天下統一の働きを発表することで学びあいました。最後に、信長・秀吉の両方が天下統一に寄与したことを柚木先生が確認し、児童とやりとりをしながら、両者の働きをまとめました。

 児童間で発表・表現をさせる時間があり、教科書の資料などを記述し、発表する力を養成する、よい授業であったと思います。特に、文章での表現が得意ではない児童であっても、指名された際に、きちんと説明できていたこと、すべての児童が四月の時点よりはOPPシートに慣れて、活用できるようになっており、記述力が定着・向上していることが十分うかがえました。また、信長・秀吉のこれまでの学びを短時間に復習するために、タブレットを効率的に活用されていました。

 公開授業には、置籍校の校長、教頭、校内のすべての先生、本学からも院生1名、川野教授、指導教員の立見客員教授、鈴木准教授、山口が参観しました。その後授業検討会と兼ねて、第五回校内研修「「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善~学びの循環に視点を当てた指導の工夫~」が開催されました。ここで教頭、校長から柚木先生への本授業に対する、多くのご意見とともに賞賛がありました。

 昨年来のコロナ禍もあり、少人数での授業や各種の実習には様々な困難があったと思います。しかし、立派にそれを乗り越えてこられました。指導教員としては、今後課題研究をまとめるにあたり、本年度の実践の中で柚木先生が、感じた課題を明確化し、それを乗り越えるための知恵をまとめて、さらにプロ教師としてのスキルに磨きをかけていただきたいと存じます。この二年間、柚木先生の学びに多大な支援をしていただいた上室田小の皆様に深く感謝いたします。(文責:山口 陽弘)