2023年度 実践発表報告

館林市立第一小学校 増山肇さん 令和5年12月14日(木)

12月14日(木)、教職リーダーコース2年生の増山肇さんの実践検討会が、勤務校である館林市立第一小学校で行われました。


増山さんは、生徒指導・教育相談にあたって児童のWell beingを達成するためには、何より教師が余裕を持ち、仕事内容を充実させることが不可欠であると考えました。そこで本研究では、全ての児童を対象とした支援シートを活用しながら児童理解と支援チームの定着をはかることで、生徒指導を計画的・積極的なものとし、生徒指導・教育相談を「ジョブクラフト」化を目指しました。取り組みの柱となるのは次の3つです。


1点目は、「児童生徒理解をはかるための取組」です。児童支援シートを活用し、複数の教師で複眼的な広い視野から児童生徒理解ができるようにしました。2点目は、「支援チームの定着の取組」です。本実践では増山さんの所属学年である4学年を中心に、チームづくりを進めました。道徳の授業をローテーションで行ったり、教師が一人で抱え込まずに、どんなことでも話せるようにするための雰囲気づくりをしたりするとともに、学年、生徒指導・教育相談部会との連携にも取り組みました。そして3点目は「ソーシャルスキルトレーニングの取組」です。児童のソーシャルスキルを高めることで児童がSOSサインを発しやすくなり、教師対児童、児童同士の共感的な関係が作られることで、より一層児童のニーズにあった支援が可能となると考えられます。


検討会では増山さんの一連の取り組みを振り返った後、活発な意見が交わされました。「道徳の授業をローテーションで行うことで他のクラスの児童と関わりをもつことができ、児童理解につながった」、「児童支援シートには児童のプラスの情報も書かれており、積極的な生徒指導していく方向性が表れている」といった意見があげられました。本研究全体としては「児童のウェルビーイングを達成させるためのきめ細かな支援と、同時に今求められているのは教員の業務改善働き方改革である。児童のウェルビーイングと教師の業務改善の両立をさせようとしているところにこの研究の価値があるのではないか」という指摘もありました。


一方、「支援シートの活用においては、特定の児童だけに目を向けてしまうと内容に偏りがでてしまうことに留意する必要がある」、「問題の背景には保護者がいる。家庭での問題が児童の行動にどのように関係するのかを洞察することが大切である」といった課題もあげられました。これからの研究の方向性としては、「多忙も『時間的に切る』のは困難なところまできている。その中で、多種多様な学校課題が次々に起こる中で、チームで力を合わせて一人ひとりがスキルをアップさせるということが必要である。その方法の一つとして、全員で一つのことを考え合うチームづくりとチームの定着は重要である」という意見も出されました。


本研究は取組としてはスタートアップの段階であり、本年度は増山さんの所属学年を中心に行われました。今後はこの実践を全学年に発展させ、学校全体で体系的に児童理解とチーム支援を進めていくことが課題となります。児童と教師の双方のWell beingを達成すべく、増山さんは修了後も引き続きこの実践を進めていきたいと考えています。

(文責:音山若穂) 

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高崎市立東部小学校 今井紀恵さん 令和5年11月28日(火)

11月28日(火)に教職リーダーコースの今井紀恵さんの実践発表(公開授業)及び実践検討会が勤務校である高崎市立東部小学校で行われました。


 今井さんは,「自分たちで考え,判断・決定し,行動できる児童を育成する学級活動―学習サイクルに基づいた係活動と学級会を通して―」をテーマに実践研究を重ねてきました。その中で,「①問題の発見・確認→②解決方法等の話合い→③解決方法の決定→④決めたことの実践→⑤振り返り→次の課題解決へ」という学習サイクルを,担任を務める5年生の学級の児童が自分で回せるようになるための支援を積み重ねてきました。特に係活動では児童が「学級を楽しく,仲良く,賢くする活動を行うこと」を目的として,その頭文字をとった「タナカさんを目指す」ことを合言葉にして係活動を行ってきました。


 実践発表は,2学期の係活動の振り返りから問題の発見・確認を行った後の,具体的な解決方法を話し合って決定し,次の実践に繋げるための授業を公開しました。前時に,児童は係ごとに学級の他のメンバーからの評価(学級のみんなを楽しく・仲良く・賢くできていたという評価である「Goodタナカさん」と,改善するともっと学級のみんなを楽しく・仲良く・賢くできるだろうという「Mottoタナカさん」)を数個ずつ受け取りました。その中から改善の必要がある「Mottoタナカさん」を1つ選択し,実際何ができるかを個人で考えて付箋紙に記述しました。本時では,それぞれの児童が考えたことを係で発表し合いながら,改善策について具体的に話し合うことができていました。授業の後半では,各係で話し合われた改善策の発表(ロイロノートの提出箱などのICTを活用)とその内容についての質疑応答・共感を通して,児童の中でさらに具体的な実践へのイメージが膨らみました。今井さんは授業の中で本時の活動が学習サイクルのどこに位置するのかを児童全体に確認していました。また,各係の話合いの進捗を把握した上で,児童が自分たちで考え,具体的な改善策について学級として合意形成できるよう丁寧に支援していました。


 実践検討会では,「主体的に活動に取り組んでいた児童の姿」と「解決方法の話合いと決定の過程で有効だった教師の支援」という二つの視点から,グループに分かれた活発な意見交換が行われました。それぞれのグループからは,児童が学習サイクルを理解できているので解決方法の話合いや決定がスムーズに行われていたことや,それを支えている今井さんの支援や学級経営についての言及がありました。最後に,高崎市教育委員会の星野浩指導主事より,本実践において係活動の目的と振り返りの視点(タナカさんを目指す)が児童に共通理解されていることや,自分たちの活動に関わるMottoの前にGoodが十分伝えられていることの良さなどを評価していただきました。また,児童が自ら学習サイクルを回していくための原動力としての他者評価について今後の示唆もいただきました。


実践発表はおおよそ30名の方々に参観していただき,実践検討会には東部小の先生12名,近隣の小学校の先生4名,高崎市教育委員会の指導主事1名,教職大学院の院生3名,教職リーダー講座の教員として川野,佐藤,立見,大島の4名が参加しました。実践の公開,検討会にご協力いただきました高崎市立東部小学校の武井校長先生,中島教頭先生をはじめとする先生方,当日参加していただき,深い議論を交わしていただいた皆様に深く感謝いたします。


(文責:大島) 

2023今井さん実践検討会報告.pdf

渋川市立渋川中学校  上ノ内  道さん 令和5年11月27日(月)

 教職リーダーコース2年の上ノ内 道さんの実践検討会が、11月27日に勤務校である渋川市立渋川中学校で行われました。

 上ノ内さんの研究主題は「若手教員を育成する校内体制の構築と実践~メンターチームによる若手教員への支援を通して~」です。

 前年度、勤務校の職員に行った聞き取り調査や観察から、若手教員に対して、個々の教員による自発的な支援があること、初任者研修におけるメンター研修では話しやすい雰囲気があるなどの強みが明らかになりました。一方、学年により支援体制の差が大きいこと、校内で組織的な取組が弱いこと、メンター研修の実施日やテーマ設定があいまいなど、課題も明らかになりました。

 また、若手教員は、教科指導、生徒指導、学級経営について、困り感や悩みを抱えていることが分かりました。

 そこで、個々の若手教員の悩みや困り感を踏まえ、若手教員と中堅・ベテラン教員による協働的な学びの場づくりを通して、若手教員育成に向けた支援を行おうと考えました。

具体的には、メンターチームが中心となって行う初任者研修の年間6回のメンター研修を「定期的な研修」として年間計画に位置づけました。また、若手教員の希望や必要感に応じて行う「即時的な研修」も設定しました。

メンターとメンティは、教科と学年のつながりを重視しながら人選するとともに、研修主任である上ノ内さんがメンティの困り感に応じて、研修のテーマや講師を調整してきました。

6月20日は「学級経営で大切にしていること」、8月1日は「教科指導で大切にしていること」、8月21日は「行事指導(体育大会や合唱コンクール)のポイントについて」、10月4日は「三者面談に向けて(進路指導について)」というテーマでした。前回までの反省を基に、メンターとメンティに分かれて話合いをした後、一緒に話し合うなど、形を工夫しながら、充実した内容となってきました。

実践検討会当日は、「道徳教育について」というテーマのメンター研修を公開しました。

 上ノ内さんが進行役となり、前半では、「意見が出ない」「読み取り道徳になってしまう」「内容項目に迫る方策」など若手教員の困り感に沿って意見交流が行われました。また、後半では、2年「足袋の季節」を教材文として、前半の解決策を意識しながら、具体的な発問や活動など授業づくりについて話し合いました。

 その後、実践検討会が行われました。上ノ内さんの実践説明と課題研究成果発表の後、質疑応答が行われました。メンター研修の参加者からも研修の成果についての感想等が発表され、充実した意見交換ができました。

最後に、渋川市教育委員会の小暮和宏次長から指導講評がありました。

上ノ内さんの課題研究について、先行研究を参考にしながら、渋川中学校の実態を踏まえ、組織的な若手育成の校内体制が整っていること、メンター、メンティ両者にとって学びのある研修となっていること等について、肯定的な評価をいただきました。 

(文責:髙橋 望、野村晃男)

20231127 上ノ内道 実践検討会まとめ.pdf

伊勢崎市立境剛志小学校  筏井隆平さん 令和5年11月10日(金)

 11月10日(金),教職リーダーコース2年生の筏井隆平さんの実践検討会が,勤務校である伊勢崎市立境剛志小学校において開催されました。


 筏井さんの課題研究のテーマは「道徳科授業の質の向上を目指して-授業改善と校内組織への働きかけを通して-」です。筏井さんはこのテーマに,①「教材分析シート」の活用や発問,板書の工夫などを通じた授業改善,②「パッケージ型ユニット」の導入,家庭・地域との連携などカリキュラム編成,③校内研修での教材研究など校内組織への働きかけ,といった手だてを通じて取り組んできました。


 当日は,こうした研究成果の一環として,「支えあい」をテーマとした4時間構成の「パッケージ型ユニット」の第2時となる授業「ブランコ乗りとピエロ」([相互理解,寛容],文科省『私たちの道徳 小学校5・6年』ほか)が公開されました。教材文のあらすじは,ほかの演者のことを考えず,自身の持ち時間を超過して演技して喝采を浴びるブランコ乗りのサムに憤慨していたサーカス団リーダーのピエロが,演技終了後に精魂尽き果てた様子のサムの姿を目にして,認めるべきところは認めるようになる,というものです。


 授業では,考えたことを隣同士で交流する場面などを頻繁に挟みながら,サムの行為に立腹するあまり,人としての彼を丸ごと嫌悪するところから,サムの姿勢の認めるべきところは認めつつ,改めてほしいことを指摘するようになったピエロの認識・心情の変化が丁寧に押さえられました。


 研究発表および授業参観・授業検討会には,三木俊幸校長をはじめ境剛志小学校の先生方はじめ,大学院指導教員の3名,市内他校の先生方,本コース1年生3名が参加し,グループに分かれて活発な討議が行われ,筏井さんの授業の良かった点とともに,課題についても忌憚のない意見が多様に出されました。最後に,伊勢崎市教育委員会学校支援係の櫻澤直明指導主事より,本時を貫く中心発問の明確さ,これまでの積み重ねを通じた発言しやすい授業の雰囲気,児童の意見が反映された板書などについて高い評価をいただくとともに,登場人物の道徳性についての読み取り,話しあうことから聴きあうことへの発展など課題のご指摘もいただきました。


(文責:山崎雄介,平林茂,鈴木豪) 

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高崎北高等学校 岡本隆司さん 令和5年11月9日(木)

11月9日,教職リーダーコースの岡本隆司教諭による公開授業(一二年生による探究活動の成果発表会)が,勤務校である高崎北高等学校で実施され,その後,実践検討会(授業研究会)が開催されました。岡本先生の課題研究テーマは「普通科進学高校におけるインターンシップの充実~探究活動への位置付けと事前・事後学習の再考を通して~」です。


高崎北高等学校は,県内でも代表的な普通科進学校であり,従来は高校時代に職業経験などを体験するインターンシップなどへの取り組みは不十分でした。しかし,令和元年度から群馬経済同友会や外部アドバイザーと高校が連携し,一年生240人全員の県内での生徒のインターンシップを実施することに果敢に取り組みました。その後コロナ禍によって,オンラインでのハイブリッドな形態に変化したりしましたが,生徒自身が一部は希望して自己開拓して県外の新たな企業や各種団体にも職業経験をするようになりました。それが令和2年は28名もの自己開拓者が生まれ,令和3年はコロナ禍による全面中止を経て,令和4年は91名の自己開拓者,本年度令和5年はなんと149名の生徒が,学校側が提供したものではなく,新たにインターンシップ先を自己開拓して,「探究型インターンシップ」に取り組んできました。11月9日には,一年生は自分が企業などでインターンシップをして得た経験を,今度は他の生徒に発表するということを,240名全員が,一人十分で10人が24会場で,110分にわたり発表していました。


これが二年生ではさらに各自が「テーマ探究」に深化・進化していきます。テーマはメイン・クエスチョン(MQ),サブ・クエスチョン(SQ)を立てて探究します。これらは新聞記事などをもとにした社会課題をまず発見し,それを専門家(大学教授や企業経営者など)にインタビューをして内容を検討し,自分なりにそれらを深めて調査発表をしていきます。この中間発表が,同じ11月9日に,やはり240名全員によって,一人六分で10人が,24会場で60分にわたり発表していました。この二年生の発表がなされてから,一年生の発表がされるという順序・時間割であり,お互いの発表時間は異なるため,相互に視聴することができます。先輩の発表を聴いて,自身のプレゼン能力を高めることにも繋がります。


以上の生徒による発表が終了した後,県内でこうした「探究型インターンシップ」を取り入れようとする総勢十三校(17名)の中学・高等学校の先生が参加し,髙北の教員主催の実践検討会(授業研究会)が実施されました。その中で最初に,選出された一年生二人による「探究型インターンシップ学習」の報告が,この生徒たちによってなされました。二人とも高校一年生によるものとは思えぬ,大学生並みの素晴らしいプレゼンテーションであり,一人は博物館などの学芸員の業務をインターンシップで経験し,もう一人は英語のイマージョン教育をしている幼稚園のインターンシップを経験し,自身の将来の職業について具体的なイメージを深めていることが十分うかがえました。その後,岡本先生による現時点での課題研究の成果の発表がなされ,上述の探究活動の歴史的経緯や今後の課題などが説明されました。岡本先生の課題研究が着実に進んでいることがうかがえる発表でした。


公開授業には,上記のように県内の高等学校でインターンシップを既に導入していたり,今後導入を考えている上記の他校の先生方が参加するとともに,置籍校の校長ほか管理職,校内の多くの先生,本学からも教職大学院の院生2名,指導教員の山口が参観しました。


この数年のコロナ禍もあり,この探究型インターンシップが中断されることもありましたが,そうした苦難を経て,確実に高崎北高等学校内でこの活動が浸透しています。指導教員としては,この探究活動が実証的にも効果があることを検証していただきたいと存じます。おそらく今流行の「非認知能力」を育てることに役立っていることでしょう。まずはキャリアレディネスなどが高まっていることを確認していくことになります。岡本先生はもともと優れた教師としての力量がある方ですが,この探究活動に大変な努力を重ねてこの活動を発展させておられます。それを属人的なものにとどめず,できるだけこの知見を他の学校にも広げるための英知を論文にまとめてください。この二年間,岡本先生の学びに多大な支援をしていただいた高崎北高等学校の皆様に深く感謝いたします。


(文責:山口 陽弘)

実践検討会報告20231109岡本先生.pdf

高崎市立吉井西小学校 岡村朋也さん 令和5年11月6日(

教職リーダーコース2年の岡村朋也さんの実践検討会が、11月6日に勤務校である高崎市立吉井西小学校で行われました。

 岡村さんの研究主題は「コミュニティ・スクールの仕組みを生かした学校と地域の連携・協働体制の構築~地域学習カリキュラムの実践と改善を図る校内研修を通して~」です。

 前年度、勤務校の職員に行った聞き取り調査から、個々の教員は熱意と指導力を備えているが、その力を協働の場で発揮できていないこと、教職員間のコミュニケーションの機会が不足していることなどの実態が明らかになりました。また、コミュニティ・スクールに関して、地域の幅広い支援に感謝しつつも、支援を頼むだけの一方通行で、学校支援コーディネーター等との連携が十分にできていないという課題も明らかになりました。地域の方々からも、コロナ禍で地域と学校の教員とのつながりが薄れていることや、地域の行事や伝統も子供達に伝えられず、なくなってしまうのではないかという心配の声を聞くことができました。

 そこで、先行研究等を基に、地域連携担当教員の働きを活性化させ、学校と地域による意見交換や地域人材参加型の校内研修を行うとともに、生活科や総合的な学習の時間で行う地域学習の充実を図ることにしました。

まず、前年度の11月の校内研修において教職員に、12月にはコーディネーターさん方に、さらに、1月には学校運営協議会で委員さん方に実践の概要を説明し、協力を得ることができました。

研修主任である岡村さんは地域連携担当を兼ね、地域の方々を招いた意見交換会を行い、学校と地域で育成を目指す児童像「探究心をもち、他者と協働しながら自分事として課題を解決できる子」を創り上げました。また、校内研修全体会にも地域の方々に参加していただくことで、学校と地域が協働することの意義を双方が実感することができました。

 実践検討会当日、4年生の担任である岡村さんは、総合的な学習の時間「地域の伝統芸能について考えよう」の12時間目を公開しました。地元の吉井太鼓や獅子舞・神楽舞を体験した子供達が自分達で発信したいことや解決したい課題をまとめ、今後の見通しをもてるようにするという内容でした。子供達がタブレットを操作しながら、グループごとに意見交換したり、学級全体で発表し合ったりする積極的な姿を見ることができました。また、子供達が学校支援コーディネーターさんにアドバイスを求める場面もたくさんあり、地域人材と共に創る魅力ある授業となっていました。

 その後、検討会が行われました。岡村さんの課題研究成果発表とそれに対する質疑応答の後、5つの班に分かれて公開された授業についての協議に移りました。授業参観しながら書いた付箋を「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つの観点でYチャートに分類しながら意見交換を行うとともに、協議の結果を全体で共有しました。

最後に、高崎市教育委員会の山田芳紀指導主事から指導講評がありました。

岡村さんの課題研究について、校内研修に地域の方々に入っていただくことで、研修内容が深まっていることや、生活科と総合的な学習の時間を軸とした地域学習が充実できていることについて、肯定的な評価をいただきました。

(文責:髙橋 望、野村晃男)

20231106 岡村朋也 実践検討会まとめ.pdf

富岡市立富岡中学校  上田将大さん 令和5年10月27日(金)

 10月27日、教職リーダーコース2年生の上田将大先生の実践発表と実践検討会が、勤務校である富岡市立富岡中学校で行われました。上田先生の研究テーマは「生徒エージェンシーを高める授業改善―中学校数学科を中心とした自律性支援を通して―」です。

 生徒エージェンシーは、「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」(秋田他, 2020)とされ、その考え方は次期学習指導要領にも反映されるとも言われています。生徒エージェンシーは、一種の生徒の主体性と考えることもできます。現行の学習指導要領においても「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められており、現時点でも生徒エージェンシーを育むことは重要であると考えられます。

 上田先生は、生徒エージェンシーを育むために、生徒の自律的な学びを支える自律性支援と生徒と共同で授業を構成することを意識し、数学を中心とした授業実践を行ってきました。日々の数学授業では、「生徒に学習方法を選択させる」「生徒の学びたいことを引き出し、それを授業で扱う展開にする」などの複数の点に注意しながら、授業を構成しています。また、「授業を振り返る会」として、生徒たちが自身の授業中の様子を動画で振り返り、自分たちの学びの良い点や改善点を考える実践も行ってきました。

 加えて、生徒エージェンシーが発揮された様子や、良い自律性支援の様子を通信の形で発行したり、校内研修において自律性支援の重要性を確認する研修を開催したりし、学校全体で生徒エージェンシーを育むことにつながる実践も行ってきました。

 実践発表と実践検討会には、実習校の校長先生・教頭先生・先生方、西部教育事務所指導主事の岡部隼人様、近隣の小中学校の先生方、本学教職大学院生等、合計30名が参加しました。上田先生からの研究説明に続いて、1年生の数学授業が行われ、参加者はそれを周囲で参観しました。生徒たちは、y=-2xのグラフがどのようになるのかについて、数学班(数学授業における学習グループ)ごとに、自分たちで座標平面の意味やグラフのかき方を調べ、授業の最後では、代表班の生徒が他の生徒たちに向けてかき方を説明していました。生徒たちが互いに話し合いながら、教科書や教師から能動的に情報を得て、グラフのかき方を学んで行く様子が見て取れました。

 続く研究協議では、まず、授業に出席した5名の生徒に対して、参加者からの質疑応答が行われました。「数学班での学びなど、生徒からの要望によって授業方法が変わっていること」「当初よりも生徒が発言する機会が多くなっていること」などが生徒の言葉で語られ、生徒エージェンシーを育む授業実践ができていることや、生徒と教師が共同で授業を構成していることが生徒にも理解されていることが伺えました。

 その後、協議会の参加者がいくつかのグループに分かれて協議を行った後、岡部指導主事様から指導助言をいただきました。「主体的・対話的で深い学びの実現が目指されている一方で、教師が話しすぎてしまうのは、いまだにしばしば見られる課題である。上田先生の授業では、先生が生徒を動かすのではなく、生徒が先生を活用し、動かして授業が構成されている様子が見られた。生徒が必要感をもって授業に臨めている」というご講評をいただきました。

 最後に本学 立見康彦客員教授がお礼を申し上げ、閉会しました。

(文責:鈴木豪・立見康彦・佐藤浩一) 

実践検討会報告_上田先生_20231130時点.pdf