2020年度

課題研究実践発表・実践検討会報告

過去の実践発表報告 2019年度

実践検討会報告(11月23日青木 理恵さん)

青木 理恵(学校運営コース) 令和2年10月23日(金) 沼田市立沼田南中学校

10月23日(金)に、学校運営コース2年生の青木理恵さんの公開授業と実践検討会が勤務校である沼田市立沼田南中学校にて行われました。青木さんの課題研究のテーマは「チームで取り組む「特別の教科 道徳」―授業改善のための協働の仕組みづくり―」です。

青木さんは、学習指導要領の方向性と沼田南中学校の教員文化や背景を考慮に入れながら、「協働による指導形態や授業づくりの仕組みを組み込むことにより、道徳の授業改善を図る」ことを目指し、研究、実践に励んできました。具体的には、以下の3点に特に重点を置き、授業実践および校内組織の活性化を図ってきました: ①道徳の授業づくりの難しさを協働により解決する、②学年職員のこれまでの実践や経験・得意分野、思いやアイデアを生かしてねらいや発問を協働で検討する、③TT 指導を組むことで、お互いの授業を見合う機会、相談し合う機会をつくり、授業改善につなげる。

 公開授業は2年2組の道徳科の授業で行われ,沼田南中学校の多くの先生方にも参観をしていただきました(T1: 青木さん、T2: 松井教諭)。本時は、「ネット将棋」という教材(主題名:「誠実な行動」、内容項目:A(1))について行われ、「勝敗などの結果を誠実に受け止めることの難しさや、その難しさを乗り越えることがどんな自分につながるのかを考えることを通して、自己の言動に責任を持ち、そこから学ぼうとする誠実な態度を育てる」というねらいのもと展開されました。本授業に先立つ学年別研修、校内研修での他の先生方との協働立案により、学習活動のスリム化、主発問の吟味が十分になされていたため、負けを認めることの難しさを自覚することに留まらず、さらにそこから踏み込んだ内容の授業を行うことが可能となりました。「負けを認めることの難しさを乗り越えた先の自分」をめぐり、多くの生徒たちは熟考と活発な意見交換を両立させていました。

授業に引き続き行われた実践検討会は、新型コロナウィルスの影響と前週に沼田市教育委員会の訪問があったという二つの理由から、教職大学院関係者(大学院生を含む)のみで行いました。青木さんとは初対面だった参加者からも多くの質問やコメントが寄せられ、さまざまな議論がなされました。本研究の実践にご協力いただいている小室校長、平形教頭を始め、沼田南中学校の先生方に改めて感謝申し上げます。(文責:木村・三澤)

実践検討会報告(11月24日長井 敦則さん)

長井 敦則(学校運営コース)

令和2年11月24日(火)  高崎市立吉井西中学校  

 

 学校運営コース2年の長井敦則さんの実践検討会が、11月24日に勤務校である高崎市立吉井西中学校で行われました。

 長井さんの研究テーマは「主体的に学ぶ生徒を育成する学校づくり~『柔軟なスタンダード』を活用した授業改善と家庭学習改善の組織的取組を通して~」です。

 昨年度、勤務校の教員に行ったインタビューから、教員には真面目でパワーがあり、生徒や行事に対して想いをもっていること、生徒には素直で打てば響く力があり、与えられた課題にはしっかり取り組めるというそれぞれの魅力が明らかになりました。一方、学ぶことには消極的な生徒が多く、学力不振の要因にもなっていることから、学校全体で主体的に学ぶ生徒の育成を進めていく必要があると考えました。

 そこで、様々な先行研究を基に、吉井西中「学習過程スタンダード」と「家庭学習スタンダード」を活用した授業改善と家庭学習改善を組織的に行うことで、主体的に学ぶ生徒が育成できるという仮説を立て、実践することにしました。

 コロナ禍による臨時休校が終わり、学校が再開された6月からは、グランメゾン「学習過程スタンダード」を基に、めあて、課題解決、まとめ、振り返りの中から教員一人一人が重点項目を選び、授業改善に取り組みました。

研修主任である長井さんは、「学習過程スタンダード」を活用した授業を公開したり、家庭学習改善に向けた特別活動の授業を1学年と3学年の全クラスで行ったり、生徒用、職員用の「吉井西中研修通信」を作成したりするなど、中核的な役割を果たしてきました。

2学期からは、同じ重点項目を選んだ教員同士で授業を参観し合い、フィードバックし合う「一人一参観」という取組も始めています。

当日の公開授業は、英語科1年「Lessn7 Sports for Everyone」という単元で、クラスで行うレクリエーションを決めるために、「can」を用いた文を活用することをねらいとした授業でした。生徒は「Can you play ~~?」「Can you prepare for ~~?」の表現を使いながら、全員ができて楽しめるとともに、準備が可能なレクリエーションを考え合っていました。1時間の中に、めあて(GOAL)、課題解決、まとめ(POINT)、振り返り(REVIEW)を意図的に位置づけた授業でした。

 授業後の実践検討会には、吉井西中学校の校長先生、教頭先生をはじめ、校内の先生方、高崎市教育委員会の4名の指導主事、本学関係者など、約30名が参加しました。

 検討会では、校長先生からの挨拶、長井さんから課題研究についての発表に続き、研究協議を行いました。参加者からは、家庭学習改善に向けた特別活動の授業内容、「家庭学習コーナー」の利用状況、グランメゾン「学習過程スタンダード」を禍での自宅学習期間中に「吉井西中家庭学習の手引き」を作成し、家庭学習改善に取り組んだことは、タイムリーな取組であったこと、学校全体の指導力を高め、主体的に学習する生徒を育成しようとしていることについて、吉井西中学校の生徒の実態に合った研究内容であることなど、肯定的な評価をいただきました。                                              (文責:野村晃男)



実践検討会報告(11月19日佐藤 玲子さん)

佐藤 玲子(学校運営コース)

令和2年11月19日(木) みどり市立大間々東小学校

 

 学校運営コース2年の佐藤玲子さんの実践検討会が、11月19日にみどり市立大間々東小学校で行われました。

 佐藤さんの研究テーマは「教員の実践力向上に向けたOJTの仕組みづくり~組織と人をつなげるミドルリーダーの活躍を生かして~」です。

 サブテーマにあるミドルリーダーとは、30~40代の中堅教員を指します。大間々東小学校では中堅教員の割合が高く、全体の6割以上を占めています。この特徴を生かし、これからの学校教育を担う世代の教員が、これまでの経験や特性を生かして様々な場面で活躍することで、学校を活性化させようと考えました。また、これまでの校内研修では、授業改善研修が中心で、教員の日常の困り感に寄り添った内容が少なかったことや日常の多忙さから校外の研修に参加することが難しいという課題を解決しようと考えました。

 そこで、日常的な職務を通して、必要な知識や技術、意欲、態度などを意図的、計画的、継続的に高めていく取組(OJT)として、「大東小カフェ」と「日常的な教育実践」を計画し、4月から、毎月1回のペースで進めていく予定でした。

 4・5月は、コロナ禍による臨時休校のため、予定していた活動ができませんでしたが、学校が再開した6月からは、企画委員会で検討し、「大東小カフェ」を実施するというサイクルを続けてきました。「大東小カフェ」で学んだ知識や技術を「日常的な教育実践」で生かすとともに、実践結果を全体で共有していくことで、教員一人一人の実践力の向上を目指しています。研修副主任である佐藤さんは企画委員会で「大東小カフェ」の企画・運営をリードしたり、講師役となるミドルリーダーと事前打合せをしたりするなど、OJTコーディネーターを務めています。

 これまでに実施した「大東小カフェ」のテーマは、教育相談事例研究(ノンバーバル・コミュニケーション)、密にならない集団ゲーム、QUを用いた学級経営、学級の中の特別支援など、先生方からのニーズを受けての内容でした。

 当日は、「新学習指導要領に基づく新しい評価」というテーマでの「大東小カフェ」を公開しました。研修主任が講師を務め、評価規準と指導計画の作成について、パワーポイントを使って講義をした後、5つの教科に分かれ、具体的な評価規準づくりを体験するという流れでした。「大東小カフェ」後のアンケートには「とても役に立った」「評価について勉強し直したい」「もう少しやりたかった」という回答が多くありました。

 実践検討会には、大間々東小学校の校長先生、教頭先生、研修主任、みどり市教育委員会の神山亮一指導係長、市内の先生方、本学関係者など、20名を超える参加があり、校長先生からの挨拶、佐藤さんから課題研究についての発表に続き、研究協議を行いました。

 参加者からは、日常的な教育実践での様子や多忙の中で「大東小カフェ」を行うための勤務の効率化等について質問が出されました。

 神山指導係長からは、スポーツに例えながら組織マネジメントの重要性を指摘していただくとともに、この研究は汎用性があるものであり、継続的な取組を期待するという助言をいただきました。

 (文責:野村晃男)


実践検討会報告(12月4日大野 大樹さん)

大野 大樹(学校運営コース)令和2年12月04日(金)館林市立第三中学校

 124日(木),学校運営コース2年生の大野大樹さんの公開授業および実践検討会が,勤務校である館林市立第三中学校において開催されました。

 大野さんは,課題研究のテーマとして,「多忙な学校における効率的かつ効果的な授業力向上体制の確立」を設定し,勤務校の学力向上コーディネーターとして,研修主任と協働しながら実践を進めてきました。

 具体的には,「相互授業参観」と「ランチタイムミーティング」という2つの手だてが講じられました。まず前者については,グループ(当初は教科部,のち教科部を再編し,道徳部を追加)内で,特定の2日間・10コマの間に授業公開者の授業(特別な指導案は準備しない,通常の授業)を他のメンバーが参観し,一両日中のランチタイムミーティングで授業研究会を実施するというものです。コロナ禍のため6月頃までは当初予定通りにはできませんでしたが,通常の「一人1授業」などのとりくみに比べると,授業参観・授業研究会参加の頻度は明確に向上しました。

 また後者の「ランチタイムミーティング」は,給食指導の時間に,担任は学級での指導を副担任に任せるなどして,グループのメンバーが授業研究会や校内研修テーマについての議論,公開授業の指導案検討などを行うというものです。昼の休憩時間にはかからないよう,給食指導という業務の時間に限定して効率的に運営されました。

 検討会当日は,まず,大野さんによる数学の授業「携帯電話の料金プランを考えよう」(1年生,1次関数)が公開されました。教科書の当該単元の学習は終えた上で,発展的な学習として設定された授業です。生徒たちはまず,基本料金と1分あたりの通話料,無料通話時間の有無が異なるA,B2つの料金プランについて「毎月60分通話する人はどちらが得か」,「通話時間と料金との関係をグラフにして,各々のプランが有利になる通話時間を明らかにする」という課題にとりくみました。次いで,携帯電話会社の社員になったつもりで,ある利用者の5か月分の通話時間をもとに,料金プランを考えるという課題にチャレンジしました。条件としては,「当該の利用者が契約したくなるような『お得感』があること」,「むやみに安くするのでなく,電話会社にとってもメリットがあること」くらいで,通常の数学の問題とは異質な課題でしたが,生徒たちは意欲的に,ユニークなプランを考案していました。

 会場を移して行われた,授業研究会を兼ねた実践報告には,第三中学校の外山一郎校長,笠原壯一教頭,牛田美樹研修主任のほか,指導教員である木村客員教授,山崎,大学院同期の青木理恵さんが参加しました。とくに,大野さんとともに授業力向上のとりくみを進めてくださった牛田先生には,参加者からの質問に答えたり,大野さんの実践についてのコメントをいただいたりしました。

 指導講評を担当された館林市の木村淳史主幹・指導係長(ちなみに本学教職大学院2期生)には,大野さんの実践が,「『働き方改革』論議が,ややもすれば教育活動の質・量の問題を置き去りにしている現状に,実践を通じて一石を投じるものである」,「持続可能な授業力向上体制を,コロナ禍という困難の中で実現したこと」などを高く評価いただくとともに,生徒の反応の分析,とりくみの可視化など,研究の精度を高めていくとなおよいと,先輩としてのエールをいただきました。時節柄少人数だったのは残念ですが,充実した会でした。   (文責:山崎雄介)

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実践検討会報告(11月26日 森 圭広 さん)

森 圭広 (児童生徒支援コース) 令和2年11月26日(木)安中市立東横野小学校

 11 月26 日,児童生徒支援コースの森圭広さんの課題解決実習に伴う研究授業及び実践検討会が、実習校の安中市立東横野小学校で行われました。 森さんの研究テーマは「学級や自己の課題を見つけ、話し合い、解決しようとする児童の育成」で、第4学年で実践を進めて来ました。

森さんは、児童たちに主体的に課題解決に取り組ませるためには、まず課題解決への必要感を持たせる必要があると考えました。そこで、学校の再開直後から、GWTや集団的対話(ワールドカフェ)を通して、児童自身が学級や自己の課題を捉える場を意識的に設定してきました。実践で特に意識したのは、話し合いの内容や振り返りを可視化し、いつでも意識できるようにすることでした。話し合い後の気づきや感想はOPPにまとめるとともに、模造紙に貼り付け、教室内に掲示しました。また、次の話し合いや協同での学習場面では、導入において模造紙を見渡しながら振り返りを行ない、活動の動機づけとしてきました。

次第に児童は他者を意識し、居心地のよいクラスとは、自分だけでなく他者にとっても心地よいものである必要があることを自覚できるようになりました。そこで本授業では、これまでの一連の活動を振り返り、学級における自己の役割を自覚し、学級の一員として役割を果たすために必要となることを具体的に考えられるようになることを目指しました。

本時の話し合い活動は、ワールドカフェ形式で行われました。カフェテーマ(めあて)は「理想のクラスにどのくらい近づいたか話し合い、より理想のクラスになる作戦を考えよう」でした。話し合いの流れとカフェエチケットを確認した後、「私たち、理想のクラスに近づいたね! どんなところが成長した? 何ができるようになった?」のラウンドテーマのもとグループで話合わせました。机上には大きなホワイトボードが置かれ、気づきを自由に書き留められるようにしました。ワールドカフェはすでに2度経験しており、どの児童も慣れた様子で会話したり、ボードに書き込んだりしていました。席替えの後は「もっと理想に近づきたい! いや理想をこえたい! 自分たちには何ができる? よりよいクラスになるためのアイデアを出し合おう」をラウンドテーマに話し合い、続いてギャラリーウォーク、そして付箋紙に理想のクラスにしていくための作戦を書かせてハーベスティングを行いました。森さんが一人一人の付箋紙を示しながら、気づきや共感を丁寧に促していたのが印象的でした。

検討会は校内研修の一環として行われ、品田弘道校長先生、瀧川仲男教頭先生を始め多くの校内の先生方と充実した検討を行うことができました。最後に、感染症対応が続く状況のもと、充実した実習を行わせていただけたことに対して、坂西秀昭教授により謝辞が述べられました。 (文責音山若穂)

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実践検討会報告(10月23日 大塚伸一 さん)

大塚 伸一 (児童生徒支援コース)  令和2年10月23日 太田市立北中学校

 児童生徒支援コース2年生の大塚伸一さんの公開授業と実践検討会が勤務校である太田市立北中学校にて行われました。新型コロナウィルス感染予防の観点から,本授業の公開範囲は校内に限定し,実践検討会についても最小の人数で行うこととしました。大塚さんの課題研究のテーマは「中学校理科における探究の過程を主体的に進められる生徒を育てる指導法―探究の過程を可視化し,「見通し」と「振り返り」をしやすくする工夫―」です。

 探究の過程には課題の把握,課題の探究,課題の解決の段階があり,この中の課題の探究の過程には仮説の設定,計画の立案,観察・実験の実施,結果の処理が含まれます。本研究において大塚さんは特に課題の探求の段階を大切にすることで,生徒に見通しをもって仮説を設定する力や考察・推論で仮説を振り返り解決していく力を育むことを目指しました。具体的には,生徒をアセスメントする中でそれぞれの単元や内容ごとに課題の探求過程において必要な既習事項を整理し,より生徒の思考の流れに合う単元構成へと修正し,その上で課題探究の過程を丁寧に繰り返すことを1学期の化学分野の単元より実践してきました。

 公開授業は大塚さんが担任を務める3年3組の理科の授業で行われました。管理職の先生方を初め,勤務校の複数の先生方,及び当日北中にいらしていた指導主事の先生方にも参観いただきました。本時は「単元3運動とエネルギー」の中の「第3章エネルギーと仕事」の中で仕事と力学的エネルギーの関係について,実験計画をたて,その結果を予測する活動を行ないました。授業開始時,大塚さんは実験の計画をたて,その結果を予測するために必要になる既習事項について実験映像やスライドをモニターに示し,さらにそこから理解できる日常における位置エネルギーや運動エネルギーの話を織り込んで確認を行いました。この時間の中で生徒は興味を持ちながら自然な形で本時に使用する知識を整理することができていました。また,生徒はこれまで課題の探究の過程について丁寧に繰り返す経験を積んできていたため,実験の計画,結果の予測段階になると探究の過程が示されているワークシートを元に自主的に頭を突き合わせ,図や身振りを使いながら,それぞれの考えをグループに伝えようとする姿が見られました。この間「それはなんで?」「なんでそう考えたの?」などの発言も生徒間で交わされており,課題を探究するにあたり根拠が大切になることもこれまでの経験の中で身につけている様子が伺えました。

授業後に行われた実践検討会には,実習校の校長先生及び,太田市教育委員会指導主事の岩崎千佳先生にご参加いただきました。検討会の中では「主体的である」生徒の姿とはどのようなものなのか,知識を生徒が自分で整理し利用することの難しさとそのための工夫,本時における評価など様々な点から議論が交わされ,子どもの目指す姿を教師がしっかり持つことの重要性についての指導をいただきました。最後に本学坂西秀昭教授が謝辞を申し上げ閉会いたしました。関わっていただいた先生方に改めて感謝申し上げます。(文責:大島みずき)

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実践検討会報告(11月19日 加藤 慎一 さん)

加藤慎一(児童生徒支援コース) 令和2年11月19日(木) 前橋市立駒形小学校

 

 令和2年11月12日(木),児童生徒支援コースの加藤慎一さんの課題解決実習にともなう研究授業および実践検討会が,実習校の前橋市立駒形小学校で開催されました。加藤さんの研究テーマは,「小学校理科における知識を確実に習得し、理解を深められる児童の育成―『逆向き設計』による単元構想を通して―」であり,第6学年の理科授業を中心に実践を進めてきました。


 加藤さんは,単元全体を見通し,単元の最後の児童の姿から授業を設計する逆向き設計と,様々な単語や概念をつないで構築していくコンセプトマップを手立ての中心におき,知識を確実に習得し,理解を深められる児童の育成をめざして研究・実践を進めてきました。


本時では,逆向き設計を念頭に設定された単元全体を貫くめあて「5つの水溶液を特徴や性質に着目して,見分けられるようになろう」を目標に,5つの水溶液の酸性・中性・アルカリ性の性質について,リトマス紙を使って調べる実験を児童たちが行いました。児童たちが,互いに協力し合いながら主体的に活動し,実験結果をプリントに書き込み,まとめている姿が見られました。このプリントは「直感プリント」と名付けられ,必ずしも科学的な表現でなくともよく,まずは自分の言葉で書くことを促すものでした。加えて,単元全体を貫くめあてが設定されていることで,児童たちも見通しをもって実験に取り組み,結果をまとめられている様子でした。


また,学校の廊下の壁には,これまでに児童が書いたコンセプトマップのうち,良くできているものがいくつか掲示され,他の児童が参考にできるようになっていました。


授業終了後には検討会が行われ,実習校の校長,教頭,前橋市の阿部指導主事,本学の野村教授,指導教員である立見客員教授,鈴木が加藤さんの研究・実践について意見を交わしました。また,本学3年生の4名が見学に訪れており,授業についての疑問・感想が述べられました。


阿部氏からは,実験結果等に関する児童の表現や解釈を教師が無理やり修正せずに,科学的事実とうまく折り合いをつけることについて,ご指導いただきました。最後に,立見客員教授が謝辞を申し上げ閉会となりました。研究・実践に関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。

(文責:鈴木 豪)


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実践検討会報告(11月12日 長竹 裕美 さん)

長竹裕美(児童生徒支援コース) 令和2年11月12日(木) 玉村町立中央小学校

 

 令和2年11月12日(木),児童生徒支援コースの長竹裕美さんの課題解決実習にともなう研究授業および実践検討会が,実習校の玉村町立中央小学校で開催されました。なお,本研究授業および実践検討会は,玉村町主催の授業発表会と合同開催でしたが,新型コロナウイルス感染拡大に伴い,対面では学内のみの公開となりました。長竹さんの研究テーマは,「小学校理科において自然事象を科学的に説明し理解を深める児童の育成―見通しと振り返りを充実させて―」であり,第5学年の理科授業を中心に実践を進めてきました。


 長竹さんは,実験や観察において特に重要な過程と考えられる,「見通し」「振り返り」活動を充実させるため,単元や授業導入時における児童主体の問題づくり,イメージ図の活用,(感染防止に配慮した)意見交換活動の充実,児童自身による授業内容の振り返りの援助,ノートテイキング指導の充実を通じて,学習指導を行ってきました。


本時では,前時までに学習した「流れる水の働き」の応用として,川のカーブの両岸における様子の違いから,浸食・運搬・体積の働きの違いについて考察を行いました。本時の内容は,教科書では補足的に扱われる発展的なものでしたが,長竹さんが自身で撮影した利根川の河岸の動画や,既存の写真・動画資料を交えて児童に提示し,「川のカーブの内側と外側で様子がちがうのはなぜだろう」という児童の疑問をもとにした課題が設定されました。これまでのノートテイキング指導やイメージ図の活用指導によって,多くの児童が,図や絵も用いながら自らの意見をノートやワークシートに書き,他の児童を見せ合いながら,自身の考えを深める様子が見られました。


授業終了後には検討会が行われ,実習校の校長,教頭,玉村町の近藤教科指導係長,中部教育事務所の山口指導主事,本学の平林客員教授,指導教員である立見客員教授,鈴木が長竹さんの研究・実践について意見を交わしました。

近藤氏からは,授業中の課題設定につながる導入について,山口氏からは,動画資料による児童からの疑問の喚起といった資料の扱い方について,改めてご指導いただきました。最後に,立見客員教授が謝辞を申し上げ閉会となりました。研究・実践に関わっていただいた皆様に感謝申し上げます。

(文責:鈴木 豪

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実践検討会報告(11月9日 髙木 慎也 さん)

髙木 慎也(児童生徒支援コース)令和2年11月9日(月) 甘楽町立甘楽中学校

 11月9日、児童生徒支援コースの髙木慎也教諭の公開授業と授業検討会が、勤務校である甘楽中学校の3年3組で行われました。髙木先生の課題研究テーマは「主体的に学習に取り組む態度の育成に向けた中学校数学科指導法の工夫-自己調整学習サイクルの内在化を通して―」です。髙木先生はもともと卓越した指導力がありましたが、本研究では、個人単位で数学の理解をとどめるのではなく、他人と交流し、説明することで、さらに深いレベルでの理解を促してきました。まさに「主体的に」学びに向かう態度を育成するためにも、他者との交流活動は有効だと考えられます。唯一の解法を教え込むのではなく、できるだけ別の解法を髙木先生は提示することで、どれがもっとも自分(他者)に納得できるかを示す授業をされてきました。

本時では、「関数 y=ax^2」の単元の、ほぼ終末部の「いろいろな関数の利用」の最後の部分でした。「2つの携帯電話会社の通信料金プランを比較し、通信料金を安くするにはどちらのプランで契約すべきなのかについて考えて、他者に説明する活動を通して、式・表・グラフを利用して、自分の意見を表現したり、他者に説明したりすることができるようにする」というねらいでした。全14時間の単元の第13時間目となる授業です。最初に、前時で学んだ二つの会社d社とs社のGBと料金のグラフが示されています。片方は階段関数、片方は一次関数です。その上で、式は「正確な値を求める」、表は「情報を整理しやすい」、グラフは「変化の特徴をとらえやすい」という各々の特徴があることを確認した上で、Aさんの四ヶ月のGBの通信量を提示し、その四ヶ月間の合計金額を計算させたり、一ヶ月当たりの金額や通信量の平均を出させます。

こうした結果から、合計額ではどちらが安いか、しかし、未来に通信量が変化したときには、どちらが得だろうかということを、単一の解答に到達するのではなく、生徒に説明させることを通して考えさせます。そこで生徒に提示するめあては「2つの問題を比較するときの式・表・グラフの効果的な使い方は?」というものです。ほとんどの生徒たちの間で、活発な交流がなされ、どちらが得かという単一の答えではなく、両方の意見があることを確認した上で、その答えに到達するための説明重視の活動がなされました。生徒たちは自主的に説明活動に積極的に参加し、まさに主体的に学ぶ態度が育成されたことがうかがえました。

公開授業には置籍校の校長、校内の先生2名、校外からも7名、本学からも院生2名、指導教員の平林客員教授、山口課程長が参観しました。授業終了後の授業検討会では、校長から髙木先生への実践や指導力への賞賛がありました。コロナ禍の中、四月五月の段階では実習も危ぶまれ、しかも生徒の説明活動などに、多くの制約があるなか、髙木先生のご苦労は大変なものだったと思います。しかし、完全にそれを乗り越えてこられました。本年度の実践の中で髙木先生が、本年度のコロナ禍で感じた課題も明確化して、さらにプロ教師としてのスキルに磨きをかけていただきたいと存じます。この二年間、髙木先生の学びに多大な支援をしていただいた甘楽中の皆様に深く感謝いたします。(文責:山口 陽弘)

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実践検討会報告(11月2日 増山由貴子さん)

増山 由貴子(児童生徒支援コース) 令和2年11月2日(月) 桐生市立清流中学校

 11月2日、児童生徒支援コースの増山由貴子教諭の公開授業と授業検討会が、勤務校である清流中学校の2年1組で行われました。増山先生の課題研究テーマは「中学校数学における思考力・判断力・表現力を育成する学習指導-思考過程を表現し伝えあう活動を通して―」です。

 増山先生は、生徒一人一人に数学的な思考力・判断力・表現力を培わせるための様々な工夫を模索してきました。数学の問題は、一人で解いて答えに達すれば良いと生徒の多くは考えがちです。それは学力が上位の生徒にもみられることです。しかし、それにとどまらず、答えに達するためのプロセスを、他人に説明することを授業実践に増山先生は取り入れています。その上で、他人に解き方を理解させることが、自分自身の深い理解に繋がるということを、生徒たちに実感させるような授業を行ってきました。

本時では、「平行と合同」の単元の、平行の部分のほぼまとめとなる部分であり、「くさび形の角の大きさを、根拠となる図形の性質を使って、求め方を説明する」というねらいでした。全16時間の単元の第6時間目となる授業です。最初にこれまで学んだ図形の性質の復習をした後、くさび形の四角形のある部分の外角を、分かっている内角から導き出すという課題を解いていきます。前時は平行線を主とした図形の角度を求めるというものでしたが、本時はそれがくさび形の四角形になった場合を想定して考えていくというものです。

この問題を解く際には、補助線をどう引けば解けるかを、一つの考え方だけではなく、複数の考え方を促して、その解法プロセスを説明することを、ペアに求めます。その際、説明のルーブリックを示し、生徒が隣同士で説明します。このペア活動を行った後、複数の生徒が指名されて、前に出てきて図形に補助線を引きながら説明活動をするという、活動主体の授業でした。その結果、追加のワークシートの振り返りの時間は少し足りなくなりましたが、全体としては生徒に十分発表・表現をさせる時間があり、かつ考えさせるよい授業であったと思います。特に、指名されて前で説明していた、「先生」役の生徒が、それにふさわしい生徒側への「問いかけ」や「わかりやすい説明」をしていた点が印象的で、他者へ説明するということが少しずつ生徒側に定着していることがうかがえました。

 公開授業には置籍校の校長、教頭、校内の先生、本学からも院生1名、指導教員の平林客員教授、山口課程長が参観しました。授業終了後の授業検討会では、教頭、校長から増山先生への本実習への取り組みの熱心さへの多くの賞賛がありました。コロナ禍の中、四月五月の段階では実習も危ぶまれ、しかもペアでの説明活動などに、一学期は多くの制約があり、増山先生のご苦労は大変なものだったと思います。しかし、立派にそれを乗り越えてこられました。指導教員としては、今後課題研究をまとめるにあたり、本年度の実践の中で増山先生が、本年度のコロナ禍で感じた課題も明確化して、さらにプロ教師としてのスキルに磨きをかけていただきたいと存じます。この二年間、増山先生の学びに多大な支援をしていただいた清流中の皆様に深く感謝いたします。(文責:山口 陽弘)


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実践検討会報告(10月21日 金子雅代さん)

10 月21 日、児童生徒支援コース2年生の金子雅代先生の公開授業と実践検討会が、勤務校である吉岡町立明治小学校で行われました。

金子先生の研究テーマは、

「豊かな語彙を獲得し活用する児童の育成-様々な学習活動にマイディクショナリーを生かして-」

というものです。

20201021 金子「ねらいa」報告.pdf

実践検討会報告(10月14日 関上秀さん)

10 月14 日、2 年生の関上秀さんの公開授業と実践検討会が、勤務校である渋川市立古巻中学校で行われました。


関上さんの研究テーマは

「中学校国語科において考えを振り返り読みを深めていく生徒の育成
―「根拠・理由・主張」の3点セットによる考えの形成と協同学習の理論を生かした交流活動の工夫を通して―」

というものです。

20201015 関上「ねらいa」報告 (1).pdf