情報活用能力の1つとして挙げられるプログラミングは,論理的思考力や情報社会に参画する態度の育成に関わる重要な学習事項です。令和2年度より完全実施となったプログラミング教育は学校における指導の黎明期であるといえ,授業実践を積み重ねたり,6年間を通した系統的な指導計画を作成したりすることが求められます。本校はScratchを基軸とした学習計画を構築しました。
Scratch(スクラッチ)とは
岩沼小学校のプログラミング教育は「Scratch」「ScratchJr.」を基軸として,6年間を通した系統的な指導を行います。Scratchはアメリカの有名大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボで開発されたビジュアルプログラミング言語です。Scratchはブロックをつなげていくだけでプログラミングをすることができます。ブロックを組み換えるように順序を変えたり、新しいものを足したりできるので、プログラムを書き換えるのも簡単にできます。
岩沼小学校プログラミング教育の
中心教材は「Scratch」
岩沼小学校で選定したプログラミング教材はScratch3.0ならびにScratchJr.です。教材としてScratchを選んだのは,直感的操作に長けている点と進学先の中学校の技術家庭科で採択されているという点,低学年におけるScratchJr.の学習が,中学年以上のScratchに応用されていくこと考えたからです。発達段階を踏まえ,各学年で扱う内容を右記のように設定しました。6年生はこれまでの学びを応用し,フィジカルプログラミング教材「MESH」を活用して,生活における身近な機器のプログラムについて考えます。
6年間のプログラミング教育の流れ
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引第3版(以下手引)」には,プログラミング教育のねらいとして,①「プログラミング的思考」を育むこと,②情報社会に参画する態度を育むこと,③各教科等での学びをより確実なものにすること,の3つが示されています。プログラミング教育スタート期においては,ねらいの①と②を意識した指導を行い,プログラミングの基礎を児童に身に付けさせることが大切であると考えました。手引のねらい①と②について,それに迫るための令和3年度における具体的な手立ては下の通りです。
「課題配布型個別解決学習」でプログラミング的思考を育む
プログラミング的思考を育成することに関しては,Scratch教本に書かれた文章の読解とそれに対応するプログラムを作成するという学習「課題配布型個別解決学習」を展開し,意図的な試行錯誤の場面を設定しました。
この課題配布型個別解決学習を,文部科学省プログラミング教育の手引が示す例示と対応させると,例示①は配布した課題の内容にあたり,②と③は課題文章の読み取りにあたる。④は読み取りをもとにしたブロックの配置予測,⑤がプログラムの検討による試行錯誤にあたります。この整合性から,この課題配布型個別解決学習がプログラミング的思考を育む学びになることが示唆されると考えます。
プログラムと実生活との関連について考える
手引のねらい②「プログラムと生活との関わり」の手立てとして,機器の動作分解,機械と人との行動比較,繰り返しや閾値を使った製品の想起という3つの内容を取り入れた授業プランを策定しました。動作を分解して捉える場面をでは,児童から「ぐるぐる回す。」「水を洗濯槽に入れる。」「脱水する。」など,洗濯機が行う大きな動作について意見が出ました。より細分化して捉えるよう話合いの時間を設けると,「音が出る。」「時間を設定する。」「洗濯物の重さを計る。」などより細かく捉える視点を与えることができました。児童に提示する資料は,Scratchのブロックを組み合わせるイメージを持たせるため,自作の色違いブロックの提示資料を用いました。
右の図はプログラミングの授業後に児童を対象に行った記述アンケートの計量テキスト分析図です。
図の各クラスターに着目するとプログラム処理の視点で機器を捉えることや,デジタル言語の特性についての理解の深まりが確認できました。ここから,Scratchの学びと社会生活とのつながりを意識させる手立ての有効性が示唆されました。実生活とつながるプログラミング教材を6年間積み上げていくことで,プログラミング教育の手引のねらいに迫ることができると考えます。
高学年 アンプラグド「身近な機器のプログラムについて考えよう」の学習分析
生活とプログラムのつながりについて,上記の共起ネットワーク図に挙げられているのは家電製品ばかりであることに気付きました。信号機や自動改札機など社会で活用されている公共的機器についての記述がないことは,児童のプログラムに関する捉えの視野が未だ狭いことがいえます。
そこで,既存の技術の見つめ直しや,広く技術が普及した要因を探る学びを通して,生活とプログラムとの関連をより深く考えさせる授業を設計しました。この授業では日本に広く普及している「自動販売機」を取り上げて指導を行いました。技術の選択・評価については本来であれば中学校技術家庭科の中の指導事項でありますが,小学校段階でも有効な指導を行うことができ,小中の校種間連携という意味でも価値のある試みになったと考えます。
左の図は授業の事前・事後に行った記述アンケートの計量テキスト分析図です。技術の開発・普及に関して,事前アンケートでは,技術面の向上や宣伝をするといった記述しか見られませんでしたが,事後は安全性,社会性,インクルーシブに関わる記述など,テクノロジー以外の要因が記述に表れました。使う人と技術の関係性が普及に関わっていることに気づいた児童もいました。
岩沼市立岩沼小学校 TEL 0223-22-2145 担当:北澤