Research

研究ビジョン

データ科学 × 制御理論  

近年のAI技術の発展は自然言語処理で著しいですが,こうした技術を時系列データへ転用することは容易ではありません.なぜなら文章はその一部を入れ替えても意味が通じる一方,正弦波信号の一部を入れ替えるとそれはもはや正弦波とはみなせないように,時系列データは各数値よりもその順序にこそ本質があると考えられるためで.したがって,将来の時系列データが望ましいものとなるようにその振る舞いを動的に予測・制御するためには,既存の機械学習技術の転用ではなく,動的システムの予測や制御を目的として構築されてきた制御理論と機械学習の融合技術が必要でしょう.以下はこの視点に基づく過去の研究成果の一端です

・Small-data driven control: 近年はビッグデータの時代」とよく言われますが,これは時系列予測や制御を扱う上では必ずしも正しくありません例えば銀座中央通りの熱中症予報を考えると良いでしょう.その広さに比べて設置可能なセンサー類の数はあまりにも少ないうえ,状況が時々刻々変化するため過去のデータも十分には利用できません.このように動的システムの予測や制御においては,むしろ,目的達成のためにはどの程度のデータが必要なのか?それより少ないデータしか利用できない状況ではどこまで達成可能なのか?ーなどの疑問に答える"スモールデータ"駆動型制御の理論こそが重要かもしれませんの研究の一環として,上記の2つの疑問はこの文献この文献でそれぞれ一つの答えを与えており,その応用として安全な制御系構築の基礎理論を小木曽研究室との共同研究により与えています.

・Policy gradient for control: 少ないデータから逐次的に方策を改善してゆく方策勾配法は近年の多くの強化学習で広く用いられていますが,動的システムへの展開,特にその数理の解明は十分になされていません.これを目指した一つの研究成果として,上記の研究で開発された数学的ツールとnon-convex optimizationに基づき動的出力フィードバック制御器の方策勾配法のglobal linear convergenceを示しています.今後は,Koopman theoryに基づく非線形システムへの展開や分散学習を目指しています

電力工学 × 制御理論  

発電所で電気を作り,変電所を通って皆さんの家庭へと電気が送られるシステム全体を電力システムと呼びますが,その電力システムは,太陽光発電(PV)に代表される再エネ電源が急速に普及するとともに電力自由化により多数の一般送配電事業者が参入するなど複雑性は増す一方で.このような構造変化のため,これまで培ってきた電力工学の方法論が根本的に通用しない状況となりつつあります.むしろ,変化を許容し,再エネを積極的に活用しながら受給バランスや安定性が担保可能なcontrol-theory-guided power engineering の開発が急務でしょう.以下にこの研究成果の一例を示します

・Power flow optimization for balancing economy and stability: 電力系統の安定性は潮流状態に大きく依存することが知られていますが,これまでは経済性のみを考慮した潮流設計が行われており,動的システムとしての安定性は陽には考慮されてきませんでした.慶応大学の井上先生とノースカロライナ州立大のChakrabortty教授とのこの共同研究では,発電所の無向電力を調整パラメータとして燃料費と安定度のパレート最適解を探索することにより,経済最適性をほとんど損なわずに減衰性能を強化する潮流状態の新しい探索手法を提案ています.この成果を電気自動車の充電スケジューリング問題へと転用した研究を実施中で

・Control-theoretic analysis of wind power generator: 二重誘導給電(DFIG)型風力発電機を系統連系すると振動を引き起こしうることは知られていますが,状況によっては振動抑制制御も困難です.これは,落雷等の擾乱に対して風力発電連系系統が脆弱になりうること,そしていかなる制御手法を用いても安定性向上が難しいことを意味していますノースカロライナ州立大のChakrabortty教授とのこの共同研究では,DFIGの可制御性解析を行うことで振動抑制が難しくなる条件を理論的に明らかにするとともに可制御性の高い新しいDFIG機構を提案しています 

現在の研究

・M2の学生研究:LQG制御器設計のための方策勾配法に関する研究

・M1の学生研究:ノイズデータの方策勾配法に関する研究

・B4の学生研究: 離散時間非線形システムを対象とした入出力履歴フィードバック制御

・Aranya先生との共同研究

MSCS2023

B4~M1の学生研究

連合2022,IFAC2023,連合2023

M1~M2の学生研究

過去の研究

MSCS2023

B4の学生研究

IEEE Transactions on Automatic Control [Paper(open access)]

ECC2022,MSCS2021,SICE2021,MSCS2023,IEEE TAC (Re-Submitted)

M1~M2の学生研究,電通大の修士優秀学生賞(2021年度),目黒会賞(2022年度),SICE優秀学生賞(2022年度)

SICE2022,連合2021,ISCIE,IEEE TCNS,電通大の修士優秀学生賞(2022年度)

B4~M1の学生研究

IEEE L-CSS 2021, IEEE L-CSS 2020 など.NCSUとの共同研究

SICE2021,MSCS2023

M1~M2の学生研究



ASCC2022,European Journal of Control, [Paper(open access)]  


IEEE CCTA2021, SICE2020, MSCS2020

B4~M2の学生研究,電通大の修士優秀学生賞(2020年度)

SICE2021

2022年計測自動制御学会学会賞論文賞

IEEE TAI2021 ,ISCIE(B4の学生研究),NCSUとの共同研究

2022年システム制御情報学会学会賞論文賞

電気学会2021,慶応大(井上先生)との共同研究


IEEE TCNSUEC e-Bulletin2021 ,North Carolina 州大(Aranya先生)との共同研究

M2の学生研究: 最悪外乱に対するデータ駆動型の参照信号決定,2021

B4の学生研究: 次世代電力システムのリアルタイム潮流設計,2020,MSCS2020

B4の学生研究: データ駆動制御の制御性能解析 [SICE2020]

B4の学生研究: データ駆動型最適制御と強化学習の耐ノイズ性の比較検証

入出力履歴フィードバックに基づくレベルド準同型暗号化制御系設計(小木曽研との共同研究)[Preprint]

暗号化制御系におけるセキュリティの定量化(小木曽研,North Carolina 州立大Aranya先生との共同研究)[Preprint]

日本電気株式会社様との共同研究,2021

電力潮流の設計による動的性能の強化,(慶応義塾大学 井上先生とその学生さんとの共同研究,2018-2019),解説 

目標応答追従のためのデータ駆動制御型参照値整形(金子研の学生との共同研究,2019)[SICE2020], [IFAC2020]