研究テーマ紹介

 私たちの周りには多くの化学物質(医薬品、農薬、食品添加物、環境化学物質)が存在し、その恩恵を受けながら生活をしていますが、同時にそのリスクにもさらされています。このような化学物質と安心して共生するには、そのリスクを正しく分析し、安全に使用するための方向性や対策を示すことが必要不可欠です。

 このような観点から当研究室では、分子生物学的手法や遺伝子改変動物を用いて、化学物質によって誘導されると考えられる様々な健康影響・毒性(発生毒性、内分泌かく乱作用、発達神経毒性、糖脂質代謝異常、アレルギー誘発性など)の発現メカニズムを解明するとともに、その評価手法を開発を行っています。特に最近では、イメージング技術を駆使したリスク評価手法の開発に力を入れています。またヒトの健康影響のみならず、水系環境中の野生生物を対象とした環境影響評価にも取り組んでいます。

 さらに当研究室では、「核内受容体を介した化学物質の生体影響に関する研究」について中国胡建英教授:北京大学およびポルトガル(Filipe Castro教授:University of Porto)との国際共同研究を積極的に展開しています。北京大学との共同研究では、強力な抗エストロゲン作用示すフルオレン - 9 - ビスフェノール(BHPF)がペットボトルの飲料水中に存在し、生殖発生毒性を誘発する可能性を見出しました。BHPF についてはその曝露リスクや毒性に関する報告が全くなかったことから、Nature Communication 誌(vol.8:14585, 2017)に掲載された当該データが、Nature Asia Website のハイライト等に取り上げられ、世界的にも注目を集めています。

【研究課題】

1 . 核内受容体を介した化学物質の生体影響に関する研究

2. 化学物質の発達神経毒性の誘導(神経発達症誘発性)に関する研究

3 . イメージング技術を応用した新規リスク評価手法の開発

4 . 性分化および性分化疾患に関する研究

5 . 生体の環境応答と疾患との関わりに関する研究

6 . 化学物質によるアレルギー誘導性の解明とアレルギー試験法の構築