「あなたが目指したい2040年はどんな世界ですか?」
これは、イノベーションユース2040の中でみなさんに考えてもらうテーマです。
未来とは、言い換えれば、この先みなさんが生きることになる世界であり、みなさんが子孫に受け継いでいくことになる世界です。
その未来は、必ず過去と現在の延長線上にあります。
だからこそ、過去と現在について、しっかりと向き合う必要があります。
ステップ1ではまず、みなさんの「現在」に焦点を当てて考えてみましょう。
※ここまでの話で、「当たり前じゃん」と思う人もいると思います。ただ、それをしっかりと意識することが大事なのです。「何を当たり前だと思っているか」を意識することは、自分が「現在」に立つことを可能にし、自分自身の現在地を考え始めるための、重要なステップです。
「現在」について考えるときの、最も身近な手がかりは『自分自身』です。
今の世界や社会を考えるために、自分自身への問いかけをしてみましょう。
世界・社会の中で興味を持っている現象・技術・対象・モノ・思想はどういったものですか?
今の世界・社会は、自分にとって生きやすいものですか?生きにくいものですか?
世界・社会が「こうあって欲しい」と思う事はありますか?
将来の自分の子孫に残したい世界/残したくない世界はどのような世界ですか?
ここで挙げた問いかけは、『自分自身』を考えるための切り口の例で、これ以外の問いかけ方もたくさんあります。
様々な観点から『自分自身』に問いかけをして、今現在、自身がどういう価値観・世界観で世界や社会を見ているのか、考えてみてください。
ステップ1で「手がかり」を掴んだら、それについてより深く知り、視野を広げ、理解を深めていきます。
「手がかりを掴んだら、すぐにアイデアを練るのがいいじゃん!」と思う人もいるかもしれません。
ですが、今回のイノベーションユース2040では、「実現したい未来」を描くことが求められていて、それをプレゼンして他の人にも魅力的なものだと共感してもらう必要があります。
その過程で、他の人から、みなさん自身とは異なる視点でコメントや意見を受けることも、たくさんあります。
そのとき、相手の意図を汲み取るための想像力や、相手の質問を自分のアイデアの文脈に置き直して受け答えすることは、研究に限らず、社会で仕事をしていくためのコミュニケーション能力として、非常に重要なものです。
想像力を働かせるためにはその土台となる知識が必要であり、それを形作っていくのがこのステップ2です。
「知り・広げ・深める」ことについて、科学や学問という視点からも考えてみましょう。
科学や学問は、先人たちが行ってきた実験や思想・思考の積み重ねに他なりません。
だからこそ、そこにあるのは、教科書に書いてある科学の知識だけではありません。みなさんがこれから行うのと同じように、考え、試し、議論してきた人たちの営みの姿が、そこにはあります。
「巨人の肩に乗る」という言い方が良くされますが、科学や学問を行うことは、この積み重ねの歴史の中に参加することです。
そして、科学や学問は、自然や社会、"世界"の中で行われてきた営みです。だからこそ、その積み重ねに参加することは、社会や未来を創っていこうとすることになるのです。
ステップ2ではこういった形で、社会や自然といった、自分たちが生きている世界にも目を向けてみましょう。
ここからは、「知り・広げ・深める」には具体的にどうすればいいのか?という話をしていこうと思います。
みなさんの手元には今、自分自身について考えながら得た「手がかり」と、イノベーションユース2040のテーマである、『SDGs』という「手がかり」があると思います。
これらの「手がかり」を元に、調べ、議論し、考えていきましょう。
そうは言っても、『どこから手を付ければいいか分からない!』という人もいると思います。
ですので、ここからはいくつかにヒントになるような手法・コンテンツを紹介します。
この解説はあくまでヒントなので、実際に試す際には、その手法について調べたり、周囲の先生や大人にアドバイスを貰いながら進めましょう!
ブレイン・ストーミング
多くのアイデアを出すときに使われる手法です。
複数人で行うことが多いですが、個人で行っても大丈夫です。
重要なことは、連想を許容すること、質を問わないこと、他のアイデアを否定しないこと。
付箋にアイデアを書き、それを模造紙や黒板に貼りながらやってみるとよいでしょう。
ブレイン・ストーミングで出したアイデアは、似たようなアイデアをまとめたり整理することで、どういった種類のアイデア・考え・つながりがあるかを考えることができます。(KJ法・マインドマップ)
インタビュー
話を聞くことで、インタビュー相手の持っている知識や考えについて調査する方法です。
聞きたいことを予め用意して、そのリストを元に行うインタビュー(半構造化インタビュー)や、全く何も聞きたいことを用意せずにその場で聞きたいことを聞くインタビュー(非構造化インタビュー)などがあります。
インタビューを行う場合は、相手に失礼のないように、しっかりと意図を伝えた上で、インタビューの形式を事前に調整しておくことが重要です。
初めてインタビューをするときには、質問リストを事前に作っておくことがオススメです。
また、インタビューは、自分の考えを深めるための手法として活用することもできます。
自分の考えを紙などにまとめたものを学校の先生や友人に渡し、自由に質問をしてもらいましょう。
自分の考えを再確認することはもちろん、予想していなかった方向からの質問を受けることもあり、そういったやり取りを通して自身の考えを深めたり、自分の中に欠けていた視点に気付くことができます。
みなさんの周りには、その歴史や文化に触れ、社会や自然、科学について知ることのできる環境に溢れています。
学校の図書館や科学館、博物館や民族館、水族館や植物園・動物園といったような施設はもちろん、書店やスーパーマーケット、服屋といったような店舗、公園や神社、海や山、道端の草木といった自然など、全てです。
そして、これらの環境を通して、学ぶこと・気付けることはたくさんあります。
その方法は、資料や本を読むことや、観察や体験など、多種多様です。
身の周りにある環境をどう活用できるか、今一度考え直してみてください。
そうは言っても、みなさんの周囲の環境は、人によっては限られていると感じることがあるでしょう。
そういったときに、インターネット上のコンテンツは1つの手がかりになります。
インターネット上には、世界や社会について視野を広げるコンテンツが数多くあります。
もちろん、その情報の真偽や質を見極める力(情報リテラシー)は必要ですが、上手く使えばみなさんの視野を広げ、深めことを助けてくれます。
ステップ1では『自分自身』について考え、ステップ2ではそれやSDGsを手がかりに、身の周りの社会や世界にも目を向けて考えました。
ステップ3では、さらに、社会や世界と、自分自身がどう関わっていきたいかを考えていきましょう。
繰り返しになりますが、今回の「あなたが目指したい2040年はどんな世界ですか?」というテーマを考えることは、みなさんが生きる未来について考えることです。
その未来像は見ず知らずの他人が生活している世界のものではありません。みなさんは、その未来の社会や世界の中に、何らかの形で関わって生きることになります。
この「関わり方」は、どういう職業に将来就きたいのか?という話だけではありません。
どういう職業に就くかは、まだまだ想像できないことも多いでしょう。2040年という先の未来の職業がどうなっているかも、なってみないと分かりません。
ですが、『人としてどう生きるか』『市民としてどういう態度でいるか』ということは、今からでも考えることができます。
ステップ1やステップ2で自分自身や社会・世界と向き合う中で考えたこと・感じたことをヒントにしながら、改めて「こうあったらいいな」と思う未来や、その社会・世界の中でのみなさんの役割について、考えてみてください。
ここまでで、自分自身と向き合ったり、他の人と話したり、本やインターネットで調べたりして未来について考えてきました。
その中で、また違った視点や興味が生まれることもあるでしょう。元々興味や関心を持っていたことでも、更に「こういう角度からも考えられるんじゃ」といったアイデアが浮かんでいることもあるでしょう。
そういったときは、少し前のステップに戻って、もう一度自分自身と向き合ったり、新たな調べ物をしたり、他の人と話したりして、その考えを整理し直すことが必要です。
もちろん、整理しきれないところがあっても大丈夫です。「整理しきれていない自分」を捉えることが重要なのです。
このプロセスを繰り返す中で、新たに見えてくる自分自身への発見もあるはずです。
研究は、一直線に進むものではありません。
研究・科学の過程を通して、豊かな『自分像』『未来像』を描くことを意識してみてください。
ステップ4までの段階で、いつもより一層自分自身と向き合い、また未来や社会、自然や世界について考えてきました。
その中から、いよいよ『今のみなさんが取り組もうと思う、アイデアの種』を選ぶのが、このステップです。
『アイデアの種』に取り組む動機となるのは、「強い好奇心」だけではありません。
もちろん、好奇心に基づいた情熱は、自分自身を強く支える動機になります。
ですが、「自身にとって切実な問い(問題)」「大切な人達の困難」「自身が生きる自然や社会への愛着」などといったものも、研究の動機になり得ます。
その中でも、1つを暫定的(一時的)に選び取り、今回応募するテーマ・題材を選びましょう。
ここで心に留めておいていないといけないのは、今回選ばなかったテーマ・題材を捨てる必要はない、ということです。
今後、みなさんが生きていく中で様々なことに出逢い、そのたびにみなさん自身も変わっていきます。それに応じて、みなさんの興味・関心・問いは変わっていくでしょう。
半年後、1年後、5年後、10年後あるいはもっと先に、取り組みたいテーマが変わってもいいのです。
その時々に、自分自身や社会・世界と向き合い、自分や社会にとって重要なテーマ・題材を考えることができればよいのです。
「今の自分がこれだと思っているからずっとこれ!」と考える必要は、全くありません。
ステップ6は、『アイデアの種』を応募内容に沿うように練っていく段階です。
ステップ5で選んだ『アイデアの種』に絞って、膨らませたり深めたりしていきましょう。
「応募内容について考える」というと、緊張や難しさを感じるかもしれません。
しかし、これまでのステップに比べて、特別なことをするわけではありません。
ステップ2で知り・広げ・深めたように、ステップ3で未来の中にそれを位置づけたように、『アイデアの種』についても知り・広げ・深め、そしてそれを、みなさんの描く未来像の中に位置づけていきます。
今回の応募内容の中にもある、SDGsとの関連性を考えることも重要ですね。
ステップ2やステップ3で紹介したような手法も、必要に応じて使いながら、アイデアを練っていきましょう!
行き詰ったら、前のステップに戻ったり、別の手法・論理展開を試してみたり、別の視野から考えてみたりと、いろいろなことを試して考えてみましょう。
試行錯誤を繰り返す中で、徐々に見えてくるアイデアの輪郭を捉えていってください。
『アイデアの種』をある程度練れたな、と思ったら、ここまでで考えてきたアイデアを元に、応募フォームを埋めていきましょう。
応募フォームに書くことになる内容は、これまでのステップの中で考えてきているはずです。
応募フォームを書きながら、「あれ、まだ少し言語化しづらいな」と思ったら、もう一度以前のステップに戻ってアイデアを練ってみましょう。
書く段階で初めて自分の中で曖昧になっていることに気付く、というのは良くあることです。
ですので、拙くても、一度書いてみることが大事です。
「応募書類を出す」ということは、応募先の相手とのコミュニケーションを取ることでもあります。
応募フォーム自体はインターネット上のもので機械的です。ですが、その先にいるのは、みなさんの周囲にいるのと同じ、人間です。
コミュニケーションだからこそ、しっかりと応募フォームの内容にそって、書類を提出することが重要なのです。
「なにが食べたい?」という質問の返答が「車!」「海底火山!」とかだと困りますよね?
応募フォームで聞かれたことを元に、しっかりとコミュニケーションのキャッチボールをすることを意識しましょう。
First Roundの書類審査をする人達や、研究アドバイザーの人達は、みなさんのアイデアの優劣をつけようという目でみなさんを見ているのではありません。
『一緒に未来や社会を創っていく仲間になる人達ってどういう人達なんだろうか?』という想いでみなさんと向き合い、新たな出逢いを楽しみにしています。
科学や研究を通したコミュニケーションは、みなさんの世界を広げ、豊かにしていきます。
「出逢う楽しさ」を実感してください!!