研究テーマ

1)気候変動に適応したイネの開発-洪水耐性の向上

 イネは水田で栽培されることからも分かるように、浅い水に適応しています。しかし、イネは、植物体のすべてが完全に水没する「冠水条件」では傷害を受け、長期の冠水下では死んでしまいます。アジア、南米、アフリカなどの熱帯地域では、「冠水」により毎年1000億円以上の稲作損害が生じており、冠水耐性イネの作出が急務となっています。 深尾研究室は、冠水耐性を制御する遺伝子の同定や機能解析の分野で研究をリードしてきました。深尾教授は、冠水耐性イネの開発に成功した国際研究チームの主要メンバーであり、本チームが開発した耐性イネは、現在、熱帯アジアを中心に500万件以上の農家で栽培され、7千万人以上の人々の主要な栄養源となっています。近年の地球温暖化の影響で、熱帯アジアの洪水は長期・高頻度化しており、イネ冠水耐性のさらなる向上が望まれています。新たなイネ品種の開発に向け、深尾研究室では、ストレス耐性に関わる新遺伝子の発見やその利用に関する研究を実施しています。


「植物生理学」テイツ/ザイガー著

 深尾教授の研究成果は、欧米で最も使用されている「植物生理学」の教科書にも取り上げられています。

 また、米国CNN、米国ロイター通信、英国BBCなどでも紹介されています。




洪水耐性イネの応用:イネを田植えせずに、直接水田にまけるようにする研究

 省力・低コスト稲作を目的として、種子を直接水田にまく「直播栽培」が注目されています。しかし、直播栽培は、移植に比べて10%ほど収量が低いため、広範な普及に至っていません。直播栽培がうまくいかない主な原因は、イネ種子が水中で発芽するものの、水面近くまで幼芽を伸ばして苗になれないことにあります。日本のイネ品種は田植えで育てることを前提に開発されたものばかりであり、直播栽培に適した高品質・良食味品種は存在しません。一方、米国では、10-15cmの深度まで湛水された水田に種子を直播する栽培法が主流となっています。深尾研究室では、上記(1)の冠水耐性イネ開発の技術を応用し、「コシヒカリ」や「いちほまれ」などの品種を直播可能にするための研究を実施しています。

3)海外での招待講演

 深尾教授は、これまで、世界各国で開催された国際学会で招待講演に招かれています。

2004年 アメリカ 2006年 アメリカ 2009年 フィリピン 2010年 イタリア 2011年 アメリカ

2011年 ブラジル 2012年 タイ 2013年 アメリカ 2013年 ブラジル 2013年 フィリピン

2015年 オランダ 2016年 デンマーク 2018年 ケニア 2019年 台湾 2022年 ドイツ

2023年 インド

2018年 ケニアでの招待講演

2019年 台湾での招待講演

2022年 ドイツでの招待講演

博士号授与式(2002年 テキサス)

写真左は、当時のTexas A&M大学学長
ロバート・ゲイツ氏(学長就任前は、CIA長官、国防総省長官を歴任)


博士号授与式(2016バージニア

深尾研究室は、これまで3名の博士号取得者を輩出してきました。

現在は、2名の博士後期課程学生を指導しています。