風間研究室:研究内容1
イオンを光の約60%程度のスピードまで加速して発生させる重イオンビームを植物に照射し、新しい形質をもった植物を創り出す研究を行っています。私たちの研究室では、イオンのエネルギーを調節することによって、突然変異の種類や規模を調節できることを発見しました(風間教授と理化学研究所の研究成果)。現在、理化学研究所や若狭湾エネルギー研究センターの加速器(図1)から発生するビームを用いて、世界で1つだけの花を創るプロジェクトを推進しています。色々な変異体が得られていますが(図2)、まだ皆さんにはお披露目できないきれいなお花もたくさんあります。
図1:若狭湾エネルギー研究センターの加速器
図2:トレニアの変異体 (Matsuta and Mayuzumi et
al. 2021 Cytologia 86, 317-322)
スケールバー:2 mm
風間研究室:研究内容2
イチョウやキュウイフルーツで知られるように、植物にもオスとメスの区別がある種が存在します。それらを雌雄異株植物といいます。私たちの研究室では、雌雄異株植物の1つ、ヒロハノマンテマ(図3)に重イオンビームを照射し、性転換を起こすことに成功しました。ヒロハノマンテマの性はXY型の性染色体で決定されます(図4)。性転換変異体では、Y染色体に突然変異が生じたと考えられます。現在、性を決める遺伝子について研究を進めています。
図3:ヒロハノマンテマの花(左がオスで、右がメス)
スケールバー=1cm
図4:ヒロハノマンテマの性染色体 (Kobayashi et al. 2021 Cytologia 86, 323-328)
スケールバー:5 µm
2022年9月28日に、雌ずいの発達を抑制する性決定遺伝子(GSFY)を本研究室 が同定しました。GSFYはシロイヌナズナのCLAVATA3のホモログであり、ヒロハノマンテマの茎頂分裂組織と発達初期の蕾で発現していました。GSFY には、X染色体上にパラログ(GSFX)が存在しており、GSFXも発現していることがわかりました。しかし、GSFXの塩基配列には変異が生じており、機能不全であることがわかりました。このことから、雌ずいの発達を抑制する性決定遺伝子の進化には、X染色体上に存在するGSFXの偽遺伝子化が関わったことが示唆されました(Kazama et al. 2022 MBE 39, msac195) → 詳しくはYouTubeで!
池田研究室:研究内容1
植物細胞は、通常時には個体を形成する「組織」の1細胞として、特定の機能を果たしていますが、必要に応じて受精卵のような分化全能性を発揮し、新たな組織や個体を形成します。それはまるで、超人的な能力を持つヒーローが普段は能力を隠して一般市民として生活しているようなイメージです。
では、通常時には分化全能性を抑制し、必要な時のみ発揮させる、植物特有の分化全能性制御システムとはどのようなものなのか。私たちの研究室では、転写因子に着目して、そのシステムを研究しています。また、そのシステムを応用した組織培養を用いて、有用物質の効率的な生産に寄与する研究も行っています。
図5:分化制御因子の発現によって根の先に形成された芽
図6:分化制御因子の発現によって双葉の上に形成された芽
池田研究室:研究内容2
最近、集中して仕事や学業を行うには、休養時間(=オフタイム)でリフレッシュ・リセットすることが効果的と言われています。動物と違って、植物は動きませんし、働いたり休んだりしているようにも見えませんが、実は、植物の体内では動物にはない「オフ」の因子が多数存在しており、この「オフ」因子を効果的に機能させることで、さまざまな植物特有の能力を獲得していることが、私たちの研究によってわかってきました。現在は、特に植物の発生や形態形成、環境応答などにおける「オフ」因子の働きに着目して、その働きを研究しています。
西嶋研究室:研究内容
コムギ祖先野生種の現地採集材料・実験系統のDNA分析から、起原地の推定などを行っています。また、現存する栽培品種がもたない有用遺伝子(特に出穂性/開花性、穂形態、花器官形態関連)の発現機構を分子生物学的に解析し、その育種的利用を図っています。
図7:コムギ起原地の推定
その他にも・・・
この他にも、カーネーション、シロイヌナズナ、アサガオ、など、それぞれの学生さん達が興味のある研究を主体的に進めています。今日も、学生さんが新しい発見をしているかも知れません。そのような学生さん達の一人一人の個性を重んじ、主体性を伸ばすラボ!それが、植物遺伝資源学分野です。
図8:研究のディスカッションの様子