PUBLICATION

2024


プレスリリース 日本語 Press release in English

2023


べき的サイズ分布を持つ粒子集団が、ジャミング点で示す静的パターンに関する論文。サイズのべき数 a <3 の領域では、接触点数分布も冪的となる。その冪数は全体のサイズばらつきに依存せず、共通した構造となることを実験と数値計算から示した。さらに2< a <3のべき数領域では、ジャミング点における体積分率が均一分散系での値0.84よりも大きな0.9以上となり、多分散性が強く表れることから、このべき数的見方が多分散系の分類としても活用できることを述べた。プレスリリースはこちら→東大教養理物)(英語)(掲載情報,日刊工業新聞(2023年2月20日)など)

2022

(DOI: 10.1007/s12551-022-01001-0) (Free Access)Commemorative paper of the Michèle Auger Award for Young Scientists’ Independent Research

細胞サイズの空間が多様な分子挙動に対して及ぼす影響をまとめたレビュー招待論文。物理的現象としては、分子拡散やタンパク質のナノ構造転移、相分離、ゾルゲル転移、生化学的現象としてはMinタンパク質系による反応拡散波、タンパク質発現などを扱っている。

マイクロリットル量以上のバルク溶液では相分離しない高分子溶液であっても、細胞サイズ空間では相分離すること、またより小さな空間で分離の度合も大きくなることを報告した。この現象を、膜がより親和性の高い分子を選択する現象(膜濡れ)が細胞サイズで強められることから説明した。高分子は一般に分子量分布をもち、構成単位レベルでは濡れ性に違いがない場合であっても、高分子鎖に僅かな違いがあれば、それだけで膜濡れの競合が起こる(一部の分子が膜に引き寄せられる)ことが重要である。この結果は、細胞サイズでの相分離では、凝集する分子のみならず周囲に存在する膜まわりの環境がその制御に関わることを意味する。 東大理生・國枝先生らのグループとの共同研究。クマムシに含まれるCytoplasmic-abundant heat-soluble (CAHS) タンパク質が、浸透圧差等の外部刺激に応じて線維化し、力学的補強をすることを人工細胞を用いた再現実験と力学測定(UBI全学ゼミでラボに来ていたB2増田君が担当)とAFMによる細胞の力学測定(特任助教の本田さんが担当)からサポートした。
広大渡邊さんとの共同研究。PEG/dextran溶液が乾燥に伴い示すパターン形成を報告した。過去文献よりも希薄な高分子濃度領域から蒸発させると、濃度上昇に伴いガラス基板面との濡れ性がPEGとDextranでは反転すること(低い濃度ではdextraの方が親和性が高いが、濃度が高くなるとPEGの方が高くなる)、Dextranの粘性が増すことにより、コーヒーリング的なリング状と同心円状の紐からなる特徴的パターンが生じることを報告した。

2021

膜接着して連結した2, 3液滴中で高分子混合系が2相分離し,ドメインが部分濡れを示したら,どんな相分離パターンになるでしょうか?という問題について報告した.相分離界面が、液滴間の接着界面に接すると、界面エネルギーを最小化するため,接着界面に垂直に配列する。一方,相分離界面が接着界面に接するか否かは,接着界面面積の比率や2相の体積分率に依存した確率で決定される。従って、2液滴系では垂直だけでなく,非垂直パターンも見られるが,3液滴では垂直パターンの比率が増える。東工大の倉科さん、慶應義塾の尾上先生らとの共同研究.ゲル化する2種類の高分子,アルギン酸とN-isopropylacrylamide (NIPAM) からなる高分子液滴に対し、相分離させながらゲル化させることにより,NIPAMゲルをコアとするアルギン酸ゲルのカプセルを作製する手法の報告.ゲルの弾性評価で貢献しました. 
(† contributed equally.) Watanabe, et al., J. Phys. Chem.B 2020 の続報。グルコースとそれが複数連結した多糖であるデキストランを混雑高分子として用い、細胞サイズ液滴中での分子拡散をFCSにより測定した。過去の報告(BSA, PEGを混雑高分子として用いた)と同様、高分子であるデキストランでのみ、高濃度かつ小さな液滴中でのみ遅い分子拡散が見られた。さらに、膜に高分子PEGを結合させることにより、遅い拡散の程度が変化することも見出した。これは、遅い拡散が膜と高分子との相互作用により生じることを明快に示している。
相分離の基本的原理から、細胞空間における相分離の特異な現象までをわかりやすく解説しています。

2020

マイクロ流路を用いて液滴を形成する際、吸着速度が速く液滴を安定させる界面活性剤と、吸着速度が遅く液滴同士を接着させる脂質を特定濃度比で混合することにより、脂質2分子膜で互いに接着したハニカム状の液滴集合体を形成できることを報告した論文
マイクロキャピラリーを用いて周期的にミクロゲル表面を吸引することで、従来調べられてきた大きなゼラチンゲルと、脂質液滴中でゲル化させたミクロなゼラチンゲルの粘弾性が異なることを明らかとした。過去論文(Sakai, et al., 2018, ACS Cent. Sci.)や(Sakai, et al., 2019, J. Soc. Rheol. Jpn)の続報。また手法は、以下の特願2020-15270として特許申請中。
静電相互作用と高浸透圧下での脱水変形によりリポソーム同士を膜接着させた系を用いて、レーザーピンセットによる膜張力測定とFRAP(光褪色後蛍光回復法) による分子拡散測定を行った結果、膜接着により張力も分子拡散係数も共に上昇することを見出した。細胞組織は、リポソームと同様に2分子膜が互いに膜接着することで形を成していることから、その形態制御や膜面での分子輸送について物理化学的に考える上で有用な情報となるはずである。
2020年の論文(Watanabe, Kobori, et al., JPC)等、細胞内の高分子混雑環境と膜閉じ込めによる分子の振る舞いに対する影響についてのコメンタリーを発表しました。 東京農工大学の渡邊敏行先生、跡見順子先生らとの共同研究。光重合したゲルポスト上で細胞が動く際のけん引力の解析に関わりました。(† contributed equally.)北海道大学の金城政孝先生、産総研の山本条太郎氏らとの共同研究。2018年の論文(Watanabe & Yanagisawa, PCCP)の続報。高濃度の高分子溶液が存在している細胞内環境を、細胞サイズの高分子液滴により再現し、内部でのサブミリ秒スケールでの分子運動を分子相関分光法(FCS)により測定した。その結果、高濃度の高分子を内包した液滴が細胞サイズ(半径 20 um以下)である時のみ、分子拡散が低下することを見出した。このいわゆる細胞サイズ効果を生む要因として考えられる「微小体積」と「膜界面」の寄与を、液滴を変形させることで独立変化させた結果、「膜界面」の寄与がより支配的要因であることを明らかにした。また近年注目される異なるタンパク質間の液液相分離が、細胞サイズ液滴で誘発される現象(下,左図)も報告し、それと上記の遅い分子拡散を対応づけることで、高分子間相互作用が細胞サイズで強まる可能性についても議論した。
リポソームを化粧品や医薬品として応用する研究の進捗状況や更なる応用に向けた課題について紹介しています。

小さな細胞モデル中で誘起される液-液相分離

小さな細胞モデル中での遅い分子拡散

2019

東京工業大学の瀧ノ上正浩氏,石川大輔氏、東京農工大学の川野竜司氏らとの共同研究。穴のあいたDNAオリガミナノプレートによるマイクロエマルションの安定化と、その穴を利用したエマルション間の物質輸送を実現した。プレスリリースを行い、日刊工業新聞(9/23)にて紹介された。
慶應義塾大学の藤原慶氏,光山隼史氏,東北大学の義永那津人氏らとの共同研究。微生物の細胞分裂面を決めるタンパク質(Minタンパク質系)の反応拡散波を安定的に発生させる条件を、細胞モデルを用いた再構成実験と理論的解析から解明した。プレスリリースを行い、日刊工業産業新聞(7/31)にて紹介された。
2018年の論文(Sakai, et al., ACS Cent. Sci.)の続報。ゼラチンのミクロ液滴中でのゲル化による弾性率上昇は、液滴を覆う脂質膜が無しの状態でも生じることを示した。これにより、弾性率上昇は、ゼラチンと膜との相互作用ではなく、ミクロ空間閉じ込めに由来することを導いた。また非球形ミクロゲルの局所ヤング率測定法も紹介している。
  • K. Koyanagi, K. Kudo, M. Yanagisawa, Langmuir, 35:2283-2288 (2019), "Sol-gel coexisting phase of polymer microgels triggers spontaneous buckling",カプセルゲルを作成する際に生じる座屈に対し、高分子間の相分離とゲル化が同時進行すると、特定ゲル厚でのみ座屈が生じること、ゲル厚がカプセルサイズに依存すること、を実験と理論の両面から説明した。また、Suppl. Cover Imageにも採用された。 
2018年の論文(Watanabe & Yanagisawa, PCCP)の日本語紹介記事が、日本化学会コロイド界面化学部会の2019年春号部会誌に掲載された。

2018

脂質膜で覆われたミクロ液滴中でゲル化させたゼラチンミクロゲルの表面弾性を、マイクロキャピラリーを用いて測定した。その結果、ゼラチンミクロゲルは通常のゲルに比べて弾性率が10倍程度大きいこと、またその起因がゼラチン分子の一部がβシート構造へ転移するためであることを見出した。マイナビニュース(3/16)、日経新聞オンライン(3/16)、毎日新聞オンライン(3/16)、化学工業日報(3/27)、EurekAlert、Science Newsline、Lab Managerなど国内外で紹介されました。
細胞内には、高濃度かつ少量(ピコリットル)の高分子溶液が存在している。この環境を細胞サイズ液滴で再現し、内部でのサブミリ秒スケールでの分子運動を分子相関分光法(FCS)により測定した結果、高分子で混雑した環境かつ細胞サイズ閉じ込めの両方がある時、分子運動が変化することを見出した。

2017

九州大学の西澤賢治氏、水野大介氏、慶応義塾の藤原慶氏らとの共同研究。細胞質として存在する非常に多成分な生体高分子溶液である細胞抽出液と、球状コロイドとして近似可能であると知られているタンパク質BSAの濃度と粘度の相関を調べたもの。同質量濃度下における粘度は、BSAと比べて細胞抽出液の方が遥かに高く、細胞内濃度に該当する領域ではすでに粘度散逸(ガラス化)していることが分かりました。細胞抽出液はいわば死んだ細胞内の溶液に該当すると考えると、細胞内粘度が活性によって変化する(活性が高いと低粘性、低いと高粘性)ことが大腸菌系で見られることからも、生きている状態がガラス化を阻害している可能性を強く示唆しました。
DNAナノテクノロジーを用いて人工細胞に骨格構造をもたせ、細胞レベルの力学的補強を実現した. 日刊工業新聞(6/27)、化学工業日報(6/27)、日本経済新聞(6/27)、マイナビニュース(6/27)、Phys.ORG(6/26)、EurekAlert(6/26)等で紹介されました。

2016

2015

東工大・瀧ノ上先生らとの共同研究。ミクロチューブに固定したガラス細管から液体を遠心力下で放出し,先端で形成された液滴をマクロな油水界面を通過させることで,サイズが揃ったリポソームを作成する新規手法について報告した。 
高分子溶液の構造形成に対する細胞膜界面や空間閉じ込めサイズの影響について,細胞モデルを用いて明らかとなった実験結果について説明した日本語の解説記事。

2014

ゲル化する高分子とゲル化しない高分子からなる混合溶液を,脂質膜で覆われたミクロ液滴とし,高分子間の相分離と脂質膜への濡れ,ゲル化を動的に制御することで,マイクロカプセルや三日月型ゲル,円盤型ゲルなど,様々な形のゲルを自発的に形成できることを報告した.(TBSテレビ番組「未来の起源」(12/7),科学新聞(11/14),日経産業新聞(10/30),サイエンスポータル(10/30),マイナビニュース(10/31)、科学雑誌「ニュートン」2015年2月号 等で紹介された) 

2013

2012

2011

-2010