東大中間赤外線グループ/宮田研究室では一緒に研究を進めてくれる大学生・大学院生を広く募集しています。博士入学、またPDの受け入れも可能です。
研究室訪問の他、オンラインでの相談も可能ですので、まずはご連絡ください。
以下では、宮田研究室をよりよく知るためのキーワードを紹介します。
中間赤外線(波長3-50ミクロン)は可視光や近赤外線(波長3ミクロン以下)に比べても波長が長く、宇宙の中では比較的温度が低い領域から放射されています。具体的な温度で言えば50-500K程度、ちょうど星間空間と星表面の間にあたります。 このような温度を見ると何が見えるのでしょうか?例えば生まれたての星の方向を見れば、星に加えて星の周りを取り巻く物質がよく光って見えます。このような物質の多くは円盤を形成し(原始惑星状円盤)、やがては惑星系を作るもととなります。したがって惑星系形成のメカニズムを研究するのに、中間赤外線は有効な波長域となります。また、死に行く星は大量のガスやダストを星間空間に放出します。この質量放出現象は恒星進化の最終段階を決めるだけでなく、宇宙の物質・化学進化を支配する重要なプロセスです。中間赤外線で見れば放出されたガスからダストが形成され、星間空間に拡散してゆくまでを詳しく調べることができます。
このように観測的には重要な中間赤外線ですが、観測研究は他の波長に比べて進んでいるとは言えません。これは中間赤外線の観測が熱放射の影響を受けやすく、また工学的にも利用が進んでいないため技術的にも未開発な波長であるため、です。我々の研究グループでは基礎技術を含めた開発を独自で進め、中間赤外線観測の精度を格段に向上していきます。特に中間赤外線で高精度時間モニタ観測を実現することで、死にゆく星の様子や星の周りで惑星が形成されゆく動的な姿など、これまで見えなかった宇宙の諸現象をとらえていきたいと考えています。
中間赤外線は大気などの放射の影響を受けやすいため、スペース望遠鏡からの観測も精力的に行われています。スペース望遠鏡での観測は感度の点で大きな有意性がありますが、一方で回折の影響から原理的に空間解像度が低いという問題を抱えています。例えば20ミクロンの中間赤外線を観測するとすると、Spitzerやあかり衛星などで達成できる空間解像度は~7秒角程度です。地上大型望遠鏡を用いれば、同じ20ミクロンでも0.6秒角の空間解像度が達成できます。高い空間解像度は星間空間などを調べる上で重要なアドバンテージになります。
また、モニタ観測を行うには地上望遠鏡は非常に有利です。スペース望遠鏡は一般に観測機会が限られており、変光測定や突発天体の追観測を行うのが難しい傾向にあります。また運用年数が限られるため、長期にわたる継続観測なども行えません。一方、年老いた星や若い星などは何らかの変光・突発現象を伴うことが多くあります。このような星をモニタし、その実情に迫るには地上望遠鏡での観測が欠かせません。
技術開発の観点からも地上望遠鏡用の装置開発は重要です。スペース望遠鏡はコストが高くまた修理ができないため、新規技術を取り入れる前に、十分な実績を積む必要があります。地上望遠鏡用装置はその良いテストベンチになります。また、プロジェクトの期間が(スペースに比べ)短いため、大学生・院生が中心となって研究を進められることも良い点です。将来の研究開発を担う人材を育成する意味でも、地上望遠鏡用装置の開発は有効だと考えています。
昨今は望遠鏡の数も増え、日々莫大なデータが世界中で取得されています。その意味ではもちろん観測だけでも十分素晴らしい成果が挙げられます。しかし今後新しい研究成果を出し続けるには、既存の機材だけで十分でしょうか?それで本質的に新しい研究が切り開けるでしょうか?次世代の研究者に、最新の観測システムを供給し続けられるでしょうか?
我々のグループでは研究を「開発」レベルから行うことで、新しい観測分野を切り開きたいと考えています。また「開発」から「観測」までを一貫して行うことで、基礎土台の部分から観測研究を深く理解した人材を育てたいと思います。
研究のベースは「感動」です。自分の作った観測装置で、だれも見たことがない宇宙をみる、その感動を一緒に味わってみませんか?