宮崎特任准教授になってから、文化をキーワードにしたプログラム運営が促進されました。文化をめぐる国際情勢や制度設計はその動きを加速しているところであり、戦争や開発、気候変動という様々な社会課題と切り離すことはできません。その観点から、(1)文化遺産のポリティクス(2024S)を実施し、文化をめぐる政治性について歴史、法制度、経済、社会などの観点から学生たちと議論をしてきました。授業期間中は、特別ゲストに、第8代ユネスコ事務局長の松浦晃一郎先生による拡大講義を行い、国際機関のトップとして推進されてきた文化遺産制度設計の現場でのリーダーとしての役割についてお話いただきました。また、ユネスコ・ナイロビ事務所 Cultural Officerの長岡正哲先生による講義内講義では、文化遺産をめぐるエキサイティングな政策の考え方や実施方法について、学生の心をくすぐる講義をお願いしました。学生たちは通常・特別授業で学んだことを踏まえ、それぞれが興味の持っている「遺産」をめぐるテーマを深堀り、発表・ディスカッションをすることで、文化遺産を保全管理することの複雑さを理解することにつながったでしょう。
また、国際的な視野を持った人材育成の観点から、東京大学が力を入れて推進しているグローバル教育に対して、学生の視点で切り込む(2)「グローバル人材」とは何か(2024A)を実施しました。世界各国で活躍する若手から後輩を育てる立場にある方まで、総勢9名の豪華ゲスト講師をオンライン・オンサイトでつなぎ、学生たちとの密なディスカッションを中心とした授業を行いました。グローバルに活躍するそれぞれの方達のキャリア形成の中で、ファミリープラニングをどうしてきたか、大学から続く学びとは何か、この次にどこへ進むのか、というお話を伺い、学生たちは「グローバル・シチズン」を育てるために大学ができるグローバル教育とは何かを提言にまとめました。この提言は、東京大学グローバル教育センターに提出しています。
国際機関プログラムに関連した記事はこちらをご参照ください。
(1)東京大学教養学部国際交流センター『カンボジアへ。文化遺産と人々の共存を考える』2025年1月28日
(2)東京大学『学生が専門家と考える世界遺産と「グローバル」/全学自由研究ゼミナール「文化遺産のポリティクス」「「グローバル人材」とは何か」』学内広報No.1592
2024年度は、目まぐるしく変わる「文化」の国際制度設計の現場に立ちながら、研究・社会貢献も実施してきました。
©Aya Miyazaki
2023年度サントリー文化財団「研究助成「学問の未来を拓く」」
『世界文化遺産保護のための「オーセンティシティ」概念の再構築 −「本物」の判断基準に関する学際的研究−』(分担者)
2024年は連続研究会の運営を補佐しながら、その様子を記事に集約。2025年1月9日~11日にかけて実施された国際シンポジウムの運営も補佐。
©Aya Miyazaki
2024~2025年度【基盤研究(B)】
『被征服者が生んだ現代メキシコとその軌跡:歴史的資源の通時的研究による新たな歴史像』(分担者)
メキシコ現地調査を実施し、科研研究会(2024/10)、古代アメリカ学会(2024/12)、科研研究会(2025/2)で研究成果を発表。
口頭発表: 渡辺裕木・宮﨑彩「トレン・マヤ(Tren Maya)沿岸地域視察の報告:21世紀の大型開発事業による文化遺産の影響に関する考察」 古代アメリカ学会 (2024/12)
©ICCROM-BFU
ICCROM Heritage Place Lab 2024-2025
Researcherとして参加し、開発問題を抱える世界遺産のサイトマネージャーと共に、問題の根底を分析。北京での対面ワークショップとオンライン会議を通じて、最終原稿を提出。
口頭発表: “Participation of Local Communities in the Historic Centre of Mexico City (CHCM), Mexico”(2024/10)
©Aya Miyazaki
ICOMOS General Assembly @ Ouro Preto
口頭発表: “Whose ‘Heritage’ is International Conservation System Protecting?”(2024/11; 査読あり)
Proceedings投稿。
2023年のITC運営補佐 (UNESCO Chair Memberとして)を行い、成果物出版。
Shakya, L., Miyazaki, A., Li, M., Kim, D. and Jigyasu, R., eds. (2024). Proceedings of UNESCO Chair Programme on Cultural Heritage and Risk Management: International Training Course (ITC) on Disaster Risk Management of Cultural Heritage, Ritsumeikan University in collaboration with ICCROM. Kyoto: Institute of Disaster Mitigation for Urban Cultural Heritage, Ritsumeikan University.
Nara+30ワーキンググループメンバーとして会議運営事前準備・当日補佐・通訳。
口頭発表: “Multileveled Actors in a Heritage Ecosystem: A Case Study of Mexico City Historic Centre” (2025/1; 査読あり)
東アジア未来フォーラム2024学術会議『安全革命時代におけるリスクマネージメントと東アジア国際協力の模索』
口頭発表: 『「資源化する文化遺産」と「文化遺産化する資源」:持続可能な文化遺産とその弊害』 (2024/12)
Expert Meeting and Global Workshop on World Heritage and the Nara Document
広島大学で開催された会議に designated listener/reactorとして参加(2025/1)