卒論作成の手引き
中央大学文学部哲学専攻
1.論文とは
論文とは、たとえるならば材料(資料)を自分なりに調理した新しい料理といえましょう。
材料(資料)を並べただけではレポートにすぎず、料理にはなりません。この場合、調理とは「推論を立てて証明すること(論証)」です。推論だけをそのまま「○○は~~かもしれない」と書いたのでは随筆や感想文になってしまいます。
自然科学分野では、実験の結果を証拠として「○○は~~である」という論文ができます。社会科学分野では、アンケート調査やデータの統計を証拠にすることもあります。人文科学分野では、文献資料の中から証拠をさがします。
ですから、まず、できるだけ多くの文献資料を読みながら「なぜ~~だろう」という疑問をもち、「それは~~かもしれない」という推論を立てます。次にその「~~かもしれない」が「~~である」となる的確な証拠を文献資料の中から見つけます。以上は同時に行われることもあります。
どんな料理でも材料のよさが一番大事です。あやしげな材料からはいいものは生まれません。新しいしっかりした材料で調理するのもよし、従来の材料を新しい調理法で見せてくれるのもよし、切り口を変えたり盛りつけ方を変えてみると新しい味が、つまり発見があるかもしれません。
そして、自分の発見を論理的に文章に書いて、他人を説得させることが重要です。
2.卒業論文とは
大学で受けた教育の成果を論文として書いたものです。
しかし、専門的な教育を2、3年受けた段階では「1.論文とは」に述べたような論文はなかなか書けないのが当たり前です。そこで求められるのは個性です。
しっかり自分で思索をくりかえし、努力したものには必ず個性が光ります。また、まじめに取り組む姿勢も大事です。キラリと一点光るものがあれば、卒業論文としては成功といえましょう。
3.学年ごとの取り組み
卒論作成に向けて、各学年ごとに次の点を心がけましょう。
【1年生】
多くの書物を読み、語学力・読解力を養っておくこと。
講義の中から卒論についてのヒントを得られるように問題意識を持っておくこと。
単位に関係なく、いろいろな講義を聴き、広い視野を持つようにすること。
【2年生】
興味のあるテーマについて、関連書を読んで知識を深めること。
だんだんと具体的なテーマ設定を意識するようにすること。一人の人物、あるいは一冊の書物というように限定するのが望ましい。
12月頃に「第1回卒論ガイダンス」があり、1月頃に「卒論テーマ届」を提出してもらいます。皆さんのテーマ届をもとに指導教授を決定し、3年生から本格的な卒論指導が始まります。卒論ゼミによっては、合宿をおこなう場合もあります。
【3年生・4年生】
指導教授とはコンタクトを密にして、自分の研究内容について積極的に意見を聞くこと。
同じテーマでもそれぞれの性格に応じた研究方法があるので、それを指導してもらうこと。
4年生の5月頃に「卒論題目届」(=具体的な卒論タイトル)を提出してもらいます。中間発表会や個別指導など、ゼミ活動が活発になります。それに加えて授業や就活、教育実習や大学院受験など、いろいろと忙しくなりますので、計画的に卒論を進めていくことが大切です。
4.卒論の日程
5.研究準備―文献の探し方
研究にとりかかる準備として次のものが必要になります。
A 基本文献の整備
B 参考文献の検索
C 研究論文のリスト作成
Aは研究テーマそのものに関する文献。原典などのテキスト。訳注本も含みます。どの本を用いるかを決めます。
B・Cの探し方はテーマによって違います。
図書館が毎年発行している『資料のさがし方ガイド』を参考にしてください。
単行本については中央大学図書館の蔵書検索システム(CHOIS)でキーワード検索をするのもいいでしょう。
先行論文については、分野によっては年次の論文目録が発行されています(WEB目録の場合もあります→哲学関連リンク集)。また概説書の巻末に文献目録がついている場合もあります。
手続きをすれば中央図書館の閉架書庫に入れるようになります。実際に関連テーマの書架を眺めながら探すのも楽しいものです。また、貸出冊数を増やすことも出来ます。
6.資料の取扱いについて
インターネットは文献検索の工具として使ってください。WEBサイトに掲載された無記名の文章をそのまま資料として用いないようにしてください。ただし、学術雑誌のWEB版の場合は使用してもかまいません。著者名の有無が判断基準です。
探す本や学術雑誌が本学図書館にないときは、次の方法があります。
(a)CiNii(サイニイ)で検索する。
(b)蔵書目録や索引類でさがす。
(c)中央図書館のレファレンスに相談する。本の取り寄せやコピーの入手(有料)が可能な場合があります。
論文には使用した文献名を明確に書く必要があります。
ですから実際に使うか否かは別として、コピーやメモをとった場合はその文献の詳細(著者、論文名、掲載誌あるいは書名、出版社、発行年)を必ず書き込んでおくことを忘れずに。
コピーするときは表紙や奥付けもコピーしておくとよいでしょう。他の研究者が引用した文は、自分であらためて原本を見て、間違いがないか確認しておきます。特に原典引用の場合は必須です。
努力して集めた資料でも、論を進める上で不必要であれば切り捨てることが必要です。
7.卒業論文の書き方
※書き方については、必ず指導教授の指示に従ってください。
技術的な点
わかりやすく書く :
人に読んでもらって、自分の意図することが正確に伝わらなければなりません。難しく書くことと、論文のレベルはまったく関係ありません。誤字脱字に注意 :
自分で必ず読み返すこと。友人同士でお互い読み合っておくのも一つの方法。漢字の変換ミスにも気をつけましょう。括弧の付け方 :
書名・誌名には『 』をつけます。篇名にはつけません。論文名には「 」をつけます。むやみにさまざまな括弧記号を使わないようにしましょう。引用文 :
文中に引く短い引用文は「 」をつけ、長い引用文は二段下げて書きます(「 」は不要)。引用文は典拠(何に基づくか)を明示します。文末の( )内に書く場合と注記する場合があります。注について :
次のような箇所に注をつけます。注は各頁の後、章末、全文の後のいずれでもかまいません。
・引用文の典拠。繰り返される場合は最初にのみつけることも可(例:「以下訳文はすべて同じ」など)。
・文中にあげた研究者の論の典拠。関連することがらであっても本文に入れる必要がないと思われること。
・本文に訳文をあげた場合、原文を注記することもある。
・その他、必要と思われる場合。参考文献 :
巻末にまとめて書きます。本文や注であげた書名、誌名、発行所、発行年月も書きます。本文や注で使用しなかった文献はあげる必要はありません。辞書・辞典は参考文献に入れません。
内容的な点
まず、目次を作ります。目次ができたということは全体の構成ができたということです。4年の夏休みの終わりには目次ができるようにしてください。
序論・本論・結論の形式が基本ですが、内容によってはこれにとらわれることはありません。
(例) 序章 ○○○○○(なくてもよい)
第一章 ○○○○○
第一節 ○○○○○
第二節 ○○○○○
第二章 ○○○○○
第三章 ○○○○○
本論の中で個々の問題を的確に論証しておけば、改めて結論を書くには及びませんが、結論としてまとめたほうがわかりやすいと思えば結論をつけるといいでしょう。既定の説、概論は要点だけをまとめてください。何に基づいて書いたかは注記してください。
他人の説の肯定否定ははっきりさせ、自分の説は堂々と述べてください。証明はひとりよがりになっていないか、よく検討してください。
Philosophy Course, Faculty of Letters / Chuo University