ホログラフィックデータストレージ / Holographic data storage

ホログラフィックデータストレージとは

光ディスクは,CD から DVD を経て,BD に至るまでに約40倍の大容量化を達成し,コンテンツ市場の発展を支えてきました.これらの光ディスクは面内に記録されたピットの反射率の違いによりデータを記録するという点で全て同じ原理に基づいた技術です.光ディスクの記録密度はピットサイズによって決まりますが,ピットサイズはピックアップ光学系の回折限界より小さくはできません.そのため従来の光ディスクでは,光源の短波長化とレンズの開口数 (NA) 向上により光学系の分解能を上げることで,記録密度を増やしてきました.しかし NA には1という上限があり,BD の 0.85 という値を超えることは容易ではありません.波長についても,BD の 405 nm 以下になるとプラスチック材料では吸収が大きくなるため,短波長化によるこれ以上の大容量化は困難です.従って,光記録において記録密度をさらに向上するためには,従来の光ディスクのような平面ビット記録以外のアプローチが必要になります.

アプローチの一つには回折限界を超えた分解能を実現する技術が挙げられ,具体的には超解像と近接場光を用いたストレージがあります.もう一つは体積(3次元)記録であり,3次元多層光メモリやホログラフィを用いたストレージが挙げられます.このうち,ホログラフィの原理に基づいた光ストレージであるホログラフィックデータストレージ (HDS) は,大容量かつ高転送速度の実現が期待できるストレージ技術です.

ホログラフィックデータストレージの原理

HDS では記録データを QR コードのような2次元のデータページとして表現し,これを画像として記録媒体に記録します.データページは液晶 (LCOS) やデジタルマイクロミラーデバイス (DMD) などの空間光変調器 (SLM) により表示されます.記録時はレーザーを SLM に照射し,その透過光もしくは反射光と参照光を記録媒体中で干渉させ,干渉縞をホログラムとして記録します.このとき,SLM により変調された透過光あるいは反射光を信号光と呼び,通常はレンズを通して絞り込みます.データの再生は記録時と同じ参照光をホログラムに照射することで行い,再生された信号光はイメージセンサにより検出します.ホログラムの記録媒体にはフォトリフラクティブ結晶やフォトポリマーなどの材料が使用されます.

HDS.MOV

多重記録

HDS ではデータを体積ホログラムとして記録するので,記録媒体の同じ場所に複数のデータページを多重記録できます.そのため,従来の面内記録方式と比較してより大きな記録容量が実現可能です.多重記録を行う際には,記録条件を変えながらホログラムを記録媒体に重ね書きし,再生時には記録時と同じ条件で参照光を照射することで,選択的にデータを再生することができます.

厚い記録媒体を用いた HDS では,ブラッグ選択性に基づいた多重記録が可能です.ブラッグ選択性を利用した多重方式としては,角度多重,波長多重,球面波シフト多重,回転多重が挙げられます.一方,光学的相関に基づいた多重方式もあり,位相コード多重,スペックル多重,コアキシャル(同軸)多重が挙げらます.

研究テーマ

  • 記録再生実験による光学系評価

  • 機械学習を用いた信号処理方式の検討

  • 変調符号,エラー訂正符号の検討

  • 計算機シミュレーションによるトレランス評価