研究内容

移動機構の開発と応用

双輪キャスタ型全方向移動車いす

段差乗り越え性能が高い全方向移動機構の開発

全方向移動機構は,前後左右自由に移動できます.
通常の自動車や車いすのように,狭い場所での切返し動作が不要なため,操作の負担を軽減できます.
オムニホイールやメカナムホイールなど,一般に市販されている全方向移動用の車輪は,簡単に全方向移動を実現できる反面,段差乗り越え能力が低いという欠点があります.

本研究室では,全方位に対して高い段差乗り越え性能を実現するための機構開発に取り組んでいます.

球体型移動ロボットの開発

球体型の移動機構は,幾何学的対象性から,あらゆる方向への移動を可能とします.

本研究室では,全方向に移動可能な球体移動機構の開発を行っています.
球”殻”の内部に全方向移動機構を用いた駆動ユニットを搭載し,球殻内部を走行することで全方向移動を実現します.
球体型移動機構は,衝突した際の安全性や,段差乗り越えが期待できることから,家庭内やオフィス内での見守り等のホームエージェント機能を搭載したロボットとしての活躍を期待して開発に取り組んでいます.

球体型移動ロボット
球殻(左)と内部ユニット(右)

小型実験機による階段昇段実験の様子

階段昇降可能な電動車いすの開発

車いす利用者にとって,階段は日常生活の障害となっています.Cybathlonという障害者の日常生活の困難を技術で解決するための競技会の車いす部門でも階段と螺旋階段が課題として設定されています.

本研究室では,実用性を考慮し,できるだけシンプルな機構で階段昇降を実現可能な移動機構について検討を行っています.

これまで,車輪移動機構のみで階段昇降を実現する際の課題を検討し,ロッカーリンクと差動機構,左右独立したホイールベース調整機構,車輪ピッチ軸可変機構を搭載した機構を提案し,小型の実験機により運動性能を確認しました.

操作支援システム

パワーアシスト操作型全方向移動ロボット

パワーアシストシステムの開発

パワーアシストは,少ない力でロボットや機器を操作可能にする制御手法です
重量物の運搬などに応用することで,作業者の身体的負担を軽減できます.

本研究室では,移動機器/ロボットの操作支援としてのパワーアシストシステムの開発に取り組んでいます移動機器には産業分野で用いられる搬送用の台車やリフターなどはもちろん,福祉・介護分野で用いられる車いす,ベッドなど様々な機器が含まれます.
これら機器を思った通りに動かすための操作支援システムに関する研究にも取り組んでいます.

操作支援システムの開発

パワーアシスト操作中には,物体への衝突の危険性があります.
また操作者が目標とする場所へ正確に位置決めする必要があります.
これらを同時に実現する手法として,「タウ理論」を用いた操作支援法を検討しています.
タウ理論は生態心理学の分野において,鳥が枝に着地するときや,人が自動車のブレーキングをするときに,物体までの予測到達時間(タウ)を知覚したうえで動作を行っていると言われているものです.さらに鳥が枝に止まるときは,タウの時間微分であるタウドットが一定になるよう,動作を行っていると言われており,我々は周囲の障害物情報をもとに,障害物までのタウドットが一定になるようロボットに支援入力を与えることで自然な操作感が得られると考え,実現に向けて研究を行っています.

対象物とタウの関係

タウ理論_回避.mp4

障害物回避アシスト

タウ理論_停止.mp4

位置決め操作アシスト

パワーアシスト操作型全方向移動ロボット

Weber-Fechnerの法則を用いたロボット意図伝達手法の検討

視覚障害者の移動支援にロボットを用いることが期待されています.

本研究室では,誘導する際に,ロボットの動作意図を明確に提示することで人とロボットの親和性を高める研究を行っています.人にとってわかりやすい動作を実現するために,人の知覚特性である,Weber-Fechnerの法則を利用することを検討しています.これまで,ロボットの移動速度や加速度に対して,この法則が成り立つことを検証しています.

筋シナジーによる人の特性解析と応用

物体持ち上げ動作実験の様子(左)と
抽出した筋シナジー(右)

筋シナジーの抽出と解析

人は筋肉を動かすときに微弱な電気信号を発生しています.これを皮膚の上から電極で捉えたものを「表面筋電位」と言います.侵襲性のないこの手法は,リハビリテーションなどにも応用されています.

本研究室では,人が動作を行う際に,筋肉ごとに指令を与えているわけではなく,特定の筋群(束)に対して指令を与えているとする,筋シナジーの原理に基づいた筋電位の解析手法を用いて,人の特性解析を行っています.

これまで,起立動作や物体持ち上げ動作などを対象に筋シナジーの抽出を行い,動作中の人の運動方策の解析を行ってきました.
また抽出した筋シナジーから,そのシナジーに支配的なチャンネルを分析し,計測対象とする筋数の削減手法も提案しています.

パワーアシスト操作における筋シナジーの活用

筋シナジーは運動との相関性が高いため,特定の動作を行った際に特徴的な筋シナジーが観測できます.この特徴を生かして,筋シナジーによるパワーアシストシステムの操作性改善を検討しています.

まずは簡単なパワーアシスト操作として平面2自由度を操作可能なマニピュランダム型操作器を用いて,特定の操作を行った際の筋シナジーの抽出を行い,特徴の確認を行いました.現在筋シナジーを用いた操作性改善を検討しています.

マニピュランダム型操作器

実験に用いた上肢挙上作業アシスト機器

等活動度線図を用いた作業時筋負担の評価

工具などを頭上に上げて行う作業(上肢挙上作業)は筋負担が大きく,長時間続けることができません.

本研究室では,上肢挙上作業のアシスト機器の実現を目指し,筋負担の解析手法の検討を行っています.

これまで上肢挙上動作時の筋負担解析では,等活動度線図を用いた例が存在します.しかしながら本手法は垂直平面での解析にとどまっていたため,本研究室では3次元動作解析装置を用いて手先位置に対する筋負担を3次元的に評価する手法の検討を行いました.得られたデータから,任意の平面で筋の等活動度線図を作成する手法を提案し,挙上作業時の筋負担の特徴を明確化しました.