近畿図画工作・美術教育研究協議会 第2回実践研究交流会
2025年2月22日(土)に大阪府立男女共同参画・青少年センターにおいて、近畿図画工作・美術教育研究協議会の第2回実践研究交流会が開催されました。
開会に当たり、代表の福岡知子先生より本協議会の趣旨についてお話がありました。本協議会は、近畿各地区の図画工作・美術教育に関わる研究団体の代表が集まり、情報交換を行うとともに、各地区の図画工作・美術教育の次代を担う人材育成を目的に実践研究交流会を行っています。交流会では発表だけでなく運営もみんなで協力して行う持続可能な新しい形の研究会を目指しています。
今回の交流会では、本県からは金石考弘先生が発表、永井麻希子先生と才田愛有美先生がコメンテーター、岡本卓也先生が司会を担当し、運営を支えました。
金石先生は、「おはなしからうまれたよ」という題材を通して、児童が想像したことから自分の表したいことを見付け、主体的に活動するための工夫について発表されました。具体的には、想像が広がりやすいように児童の好きな絵本を選ばせたり、児童相互の対話の機会を適宜、設けたりすることや多様な材料や用具に触れることができるように系統的な指導を行うことなどについての成果と課題についてまとめられました。
研究協議では、絵本の選定を児童に委ねるのでなく、他教科等の活動を通して児童が共有している知識や体験と関連付けた図書を、指導者がある程度絞って提示した方が、児童が表したいことを見付けやすくなるのではないかという意見もありました。児童生徒が主体的に学ぶことができるようにするためには、指導者はどこまで教え、どこから児童生徒に委ねればよいかという授業づくりの大切な視点について改めて考えさせられました。
このような機会を通して、児童生徒だけでなく教員も主体的、対話的で深い学びによって、多様な見方・考え方を身に付けることが大切だと感じました。
令和6年度 児童生徒作品研修会(兼 第6回研究委員会)
2025年1月17日(金)県立教育研究所にて、研究委員、運営委員合わせて39名の先生方に参加いただき、児童生徒作品研修会を開催しました。
作品研修会は、県内の先生方の日頃の実践から生まれた作品を持ち寄り、交流することを通して、指導力向上を図ることを目的としています。図画工作・美術科の目標に「表現や鑑賞の活動を通して」とあるように、絵や立体などに表すことは手段であり、目的ではありません。図画工作・美術科は、絵や立体などに表す活動などを通して、造形的な知識・技能を身に付けたり、思考力・判断力・表現力等を育むことを目的としています。したがって、本研修会でも、作品そのものではなく、作品から、子供がどのようなことを考え、それを形・色などを用いてどのように表そうとしたのかを見取るようにしました。
全体会の後、小学校と中学校の部屋に別れ、子供の姿に思いを馳せながら、作品を発達の段階ごとに鑑賞しました。持ち寄った作品について、各先生方から「題材のねらい」や「作品から見える子供の姿」などについて話していただき、講評を本研究会副会長の山田校長と平松校長が行いました。優れた題材や実践ほど、作品から一人一人の子供の声が豊かに聞こえてくるように感じました。
また、参加された先生からは、「日頃、図工の授業や課題について同じ図工科の先生と相談する機会がないので、悩みが聞けたり、こうするとよかったという具体例が聞けたり、今後の授業計画を考えるうえでとても役立つことばかりだった。」「実際に作品を見ながら先生方の話を聞かせてもらうことで、子どもたちの工夫したところや悩んだところが理解しやすくなった。また、実際にやってみたい!と思う題材もたくさんあり学びになった。」などの感想をいただきました。
本年度の本研究会の事業は、これをもって全て終了しました。いつも多くの先生方にご参加いただき、感謝いたします。先生方からいただいた貴重なご感想、ご意見は、今後の研究会運営の参考とさせていただきます。
次年度2026年1月23日、24日には、第77回全国造形研究大会 奈良大会を開催します。図画工作・美術の時間が、子供にとってより豊かな時間となるように研究を推進していく所存ですので、今後も、先生方の積極的な参加をよろしくお願いいたします。
令和6年度 近畿中学校美術展
奈良県や近畿圏内の各中学校より選ばれた個性あふれる作品が展示されています。今年度、奈良県からは24作品展示しております。友達やご家族の皆様と大阪芸術大学スカイキャンパス(あべのハルカス24F)へお越しください。
会 期 : 令和7年1月17日(金)~1月19日(日)
17日 13:00〜19:00(入館は18:30まで)
18、19日 11:00 ~17:00(入館は16:30まで)
会 場 :大阪芸術大学スカイキャンパス 〒545-6090 大阪市阿倍野区阿倍野筋 1-1-43 あべのハルカス24F
入場料:無料
第5回研究委員会
2024年11月29日(金)県立教育研究所にて、研究委員、運営委員合わせて36名の先生方に参加いただき、第5回研究委員会を開催しました。
本研究会では、年度初めに各郡市代表の研究委員を小中学校それぞれ3つのグループに分け、それぞれの研究方針を決めて実践研究に取り組んでいただきました。その後、対面やオンラインなどで研究の進捗状況を共有していただき、そのまとめとして、今回は実践と研究の報告会を行いました。
・天理市立二階堂小学校 森舞美先生 第5学年「絵から想像を広げよう」
・宇陀市立菟田野小学校 中嶋一幾先生 第4学年「まぼろしの花」
・広陵町立広陵東小学校 中田清香先生 第6学年「子どもたちが思いを持って活動するための取組について」
・天理市立西中学校 石田哲也先生 第2学年「グラフィックデザイナーになろう」
・奈良市立登美ヶ丘北中学校 竹本亜典先生 第3学年「セルフポートレート 〜内面の自分を描く〜」
・桜井市立大三輪中学校 國丸和人先生 第2学年「石の中の世界」
・斑鳩町立斑鳩南中学校 米田芽生先生 第2学年「パッケージデザイン 〜創造力と表現力の育成〜」
の合計7本の発表をしていただきました。
1つの題材を基に指導の手立てとその成果を検証されたこと、複数の題材を基に導入や発問等について研究されたこと、それらを通して新たに課題として見えてきたことなどを詳しく発表してくださり、先生方がとても丁寧に実践研究されたことが伝わる発表ばかりでした。
時間の都合により全ての先生方にご質問・ご感想をいただくことはできませんでしたが、発表者やフロアからは「これまで自分がしていた子どもたちへの声掛けを見直すきっかけになった。」「授業の参考になった」という感想をいただきました。
実践発表を提供していただいた先生方をはじめ、今年度の研究に携わっていただいたすべての研究委員の皆様、どうもありがとうございました。
2025年1月には児童生徒作品研修会を開催します。今回紹介されたような素晴らしい作品が多数集まります。児童生徒の豊かな表現力に触れ、持ち寄られた先生方と直接お話していただける絶好の機会ですので、ぜひご参加ください。
奈良県図画工作・美術教育研究大会 宇陀市・宇陀郡大会
令和6年11月15日(金)に奈良県図画工作・美術教育研究大会 宇陀市・宇陀郡大会が開催されました。県内の図画工作・美術教育に関わる先生方や教職を目指す大学生を含め計79名の参加がありました。
「つくる つながる 未来の自分へ」を研究主題として、宇陀市立菟田野小学校と宇陀市立榛原中学校で授業が公開されました。菟田野小学校では1年生「スルスルビューン」、3年生「これでかきたい」、6年生「音のする絵」を、榛原中学校では2年生の「一点透視図法でインテリデザイナー」をそれぞれ公開していただきました。
全体会では、宇陀市立室生中学校の森口先生、宇陀市立室生小学校の田中先生、御杖村立御杖中学校の打川先生に発表をしていただきました。
大会全体を通して、宇陀市・宇陀郡が2年間を通して、一人一人の子どもが表したいことを見付け、工夫して表すことができるように熱心に研究に取り組んでいただいてきたことを感じました。
指導講評では、福呂当起指導主事からは、今大会の各校での実践の一場面を取り上げて、図画工作・美術科における主体的、対話的で深い学びについてや造形的な視点を持つことについて、具体的に示していただきました。
来年度はいよいよ全国造形美術教育研究大会が橿原市で開催されます。今年度の県大会で学んだことを生かしてよい大会にできますよう、今後ともみなさんのご支援、ご協力をお願いいたします。
夏期実技研修会
8月20日(火)に、奈良女子大学附属小学校にて本研究会の夏期実技研修会が開催されました。第3回研究委員会も兼ねており、運営委員16名、研究委員15名、一般21名の、合計52名の参加がありました。
1つ目のワークショップでは、小学校と中学校に分かれ、「児童生徒が自ら表したいことを見付け、表し方を考えられる導入」をテーマにグループで話し合いました。まず小学校では研究部の服部先生より、また中学校では長友先生より、導入の大切さや目的を説明していただき、実際にグループで題材と導入を考える活動を行いました。
2つ目のワークショップでは、小学校と中学校合同で「児童生徒のどこを見るのか~表現者と評価者に分かれて~」をテーマに活動しました。はじめに服部先生と長友先生より、図画工作科と美術科の評価の仕方について説明いただきました。その後、ペアで児童生徒役と教師役に分かれ、「ここが開いたら」という題材の体験を通して、児童生徒役の先生は自由に表現し、教師役の先生はその姿をスマホ等で撮影し、評価をしました。児童生徒のどのような姿から、何をどのように評価するのか、実際に体験することで深く考えることができました。
振り返りアンケートでは、「導入を普段、道具や作り方の説明しかしていなかったので、工夫しようと思いました。」「特に評価の仕方が、今まで作品から評価してたことが多かったので、今後は作品を作っている様子をしっかり見取るようにしたい。」「ワークショップ2では、写真で自分の姿を撮ってもらって分析したことを聞くと、思ってもなかったところを気付いてもらってることが分かり、評価の仕方の参考になった。」というような感想が多く、もっと知りたくなったという前向きな意見もありました。振り返りアンケートの内容は、また今後の研究活動に生かしていければと思います。
第3回近畿地区図画工作・美術教育研究協議会
7月6日(土)に大阪府教育会館「たかつガーデン」にて、第3回近畿地区図画工作・美術教育研究協議会が開催され、本研究会からは会長を含む4名が参加しました。各研究会のミドルリーダー同士がつながりを深めることで、これからの各地区の研究会をけん引する人材を育てることを目的として、近畿の研究会の代表者が集まり、情報交換と親交を深めるとともに、本年度の本協議会の取組について協議しました。
本年度は、令和7年2月22日に第2回実践研究交流会が計画されており、各研究会の代表者が授業実践の交流を行います。従来のトップダウンではなく、ミドルリーダーが中心となって交流を進めることで、より主体的で活気のある研究を目指しています。
また、当日は、東良雅人先生によるミニ講演もありました。(【当日配布資料】参照)
若い世代の先生方は、今を生きる子どもたちに一番近い目線で物事を考えられる。だからこそ、本協議会が、ミドルリーダーの育成に重点を置いていることをお話しいただきました。
また、昨今よく使われる「個別最適な学び」や「協働的な学び」はそれ自体が目的ではなく、子どもに生きる力を育むために必要な資質・能力を身に付けさせる過程で、「子どもたちが一番学べる方法を考え」たときに、その方法として、「主体的、対話的で深い学び」があり、「個別最適な学び」や「協働的な学び」があることを確認しました。加えて、図画工作・美術科がこれまで大切にしてきた「子どもを中心に据えた授業環境づくり」こそが、「個別最適な学び」や「協働的な学び」につながっていることも再確認できました。
最後に、これからの教師の課題は、「子どもの自主性の尊重と教師による指導との調和」。つまり、子ども一人一人の姿を的確に見取り、子どもに委ねることと教師が教えることのバランスを見極める力が必要とされていると感じました。なかなか難しい課題であり、だからこそ様々な角度からの研究が必要であると思います。
キーワードは、「すべては子どもたちのために。すべての子どもたちために」「子どもたちが一番学べる方法を考える」。その中心となるのが教育研究会であるということを念頭に置き、今後も近畿地区図画工作・美術教育研究協議会に参加するミドルリーダーを増やし、奈良県の図画工作・美術教育の発展を目指したいと思います。
東良雅人先生による「第3回近畿地区図画工作・美術教育連絡協議会」での配付資料
※二次利用は固くお断りします。
第1回研究委員会
6月20日(木)に、県立教育研究所にて本研究会の第1回研究委員会を開催しました。各郡市を代表する研究員の先生方と運営委員合わせて38名の参加がありました。本年度の研究を進めるに当たり、2つのワークショップを行い、その後、6つのグループに分かれて研究の進め方について話し合いました。
1つ目のワークショップでは、図画工作や美術の学びを通してどんな児童生徒に育ってほしいかを互いに話し合いました。研究員の先生からは、「表現したいことに自信を持てない子がいるので、自分の表現に自信を持てる子になってほしい。」という話がありました。
2つ目のワークショップでは、本年度の研究会活動で何を持って帰りたいか(何を得たいか)を話し合いました。普段の授業の中で、例えば、導入、題材設定、造形遊び、これまでの指導の振り返りなど、各先生方の中で課題や疑問に思うことから、研究したい内容を考えていただきました。
研究部長の服部先生から、本年度の研究の進め方の確認と、それぞれのグループの中で「今、何が知りたいのだろう。何をできるようになりたいのだろう。」と個人の課題設定について話がありました。
本年度は、先生方の課題を基に研究を進め、各グループで研究発表をしていただきます。課題から題材を決定し、解決するための手立てをいくつか考えて実践していただき、成果と課題を発表します。校務忙しい中ですが、本県の図画工作・美術教育の発展のために、研究員の先生方を中心に本年度も研究を進めていきたいと思いますので、1年間どうぞよろしくお願いします。
令和6年度 評議員会・総会
令和6年5月31日(金)県立教育研究所にて、本研究会の評議員会・総会が開催されました。総勢67名の方にご参加いただき、今年度のスタートを切ることができました。評議員会・総会で提案させていただいた議案については、すべて承認されました。
記念講演では、講師として一級建築士の居場英則さんをお招きし、県立奈良高等学校創立100周年記念事業・中庭整備プロジェクトにおける、学生との「羅針盤」制作ワークショップを通して、デザインを言語化することの重要性と価値についてお話をいただきました。
プロの方がされるデザインには全てのものに意味があり、普段何気なく見ている空間や場が、いかに考えて創られているかを知ることができました。日々の図画工作・美術の時間でも、児童生徒が表現しているものの中に、それぞれの意味や思いがあるということを改めて考えていきたいと思います。今後の図画工作・美術教育における展開例の一つとして貴重なお話を聞かせていただくことができました。
閉会行事では、11月15日(金)に行う令和6年度の研究大会開催地を代表して、榛原小学校の山田知治先生に研究大会の二次案内をしていただきました。また、令和7年度に開催される全国造形教育連盟研究大会奈良大会についても、垣内会長より案内をさせていただきました。それぞれの研究大会の実施に向けて、皆さんのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。