「集団活動を通して、一人一人が輝く特別活動の創造」
~よりよい人間関係や社会を築く子どもの育成~
<研究主題設定理由>
近年、情報化やグローバル化といった社会的変化が、かつてない予測を超えて加速度的に進展するようになってきている。多様な価値観をもった社会、情報通信機器の急速な普及、情報化、技術革新による生活の質的変化、少子高齢化、核家族化、地域コミュニティの弱体化など先行きを予測することの困難さは増すばかりである。社会のこのような変化は、どのような職業や人生を選択するかに関わらず全ての子どもたちの生き方に影響を及ぼすことは必至である。これからの教育は、子どもたち一人一人が、予測できない変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して自らの可能性を発揮し、より良いよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにしていかなくてはならない。
また一方で、本県の子どもたちの実態に目を向けてみると、全国学力・学習状況調査の結果から、学習意欲、自尊感情や社会参画意欲が低いこと、また、話の意図をとらえながら捉えながら聞く力、話の展開に沿って質問する力などの言語能力が低いことが、ここ数年来の課題となっている。
特別活動は、よりよい人間関係を築く力、社会に参画する態度や自治的能力の育成、道徳的実践の重要な学習の場とすることに重点を置いて、その充実を図るとともに、構成の異なる集団活動を通して、他者の多様性を認め合い、協調して活動し、集団への所属感、連帯感を育て、社会で生きていく力の基盤を育成してきた。現代の子どもたちが抱える課題に向き合うためには、このような特別活動のもつ強みを発揮した教育活動の展開が期待されている。
新学習指導要領解説では、特別活動における指導の重要な視点として次の3点が挙げられている。
〇人間関係形成
集団の中で、人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成する視点。
〇社会参画
よりよい学級・学校生活づくりなど、集団や社会に参画し様々な問題を主体的に解決しようとする視点。
〇自己実現
集団の中で、現在及び将来の自己の生活の課題を発見し、よりよく解決しようとする視点。
これらの指導の視点から、特別活動で育成を目指す資質・能力は以下の3点にまとめられる。
①知識及び技能(何を理解しているか、何ができるか)
・集団と個の関係について理解することや、集団活動のよさや価値を理解すること。
・集団や人間関係をよりよく構築していく中で大切にすべきことを理解し、実践できるようにすること。
・将来、自立した生活を営むことと現在の学習がどのように関わるかということを理解し、現在、自分でできることを意思決定し、実践していく こと。
②思考、判断、表現力等(理解していること・できることをどう使うか)
・多様な他者と互いを認め合いながら協力したり、コミュニケーションを図ったり、協働したりしていくこと。
・自分自身や他者のよさを生かしながら、合意形成を図ってよりよい解決策を決め、それに取り組むこと。
・自己実現のために、自己のよさや可能性を発揮し、置かれている状況を理解し、それを生かしつつ意思決定することや、将来を見通して自己の 生き方を選択・形成することができるようにすること。
③学びに向かう力、人間性等(どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか)
・多様な価値観や個性を受け入れ、協力し、よりよい人間関係を築こうとする態度。
・集団や社会の形成者として、問題を解決し、よりよい生活をつくろうとする態度。
・日常の生活や自己の在り方を主体的に改善しようとしたり、将来を思い描き、自分にふさわしい生き方や職業を主体的に考え、選択しようとしたりする態度。
これらの資質能力は、特別活動における集団活動を通してこそ育てることができるものである。そこで、本会では、これまで以下の4点に視点を当てて研究を積み上げてきた。
〇自分たちが抱えている問題に子ども自身が気付き、向き合う集団活動を推進する。
〇自主的・実践的な集団活動の中で、子どもたち一人一人が自分のよさを発揮し、自分らしさを見つめ、自分らしさを磨くことができるようにする。
〇相手の多様性を認め、それぞれのよさを生かした集団活動を創造し、その中で、自分も他者も成長できるようにする。
〇集団の中で生き生きと自分を発揮できる活動をつくりあげる。
上記の視点を踏まえ、積み上げてきたこれまでの研究を基盤として、本年度も研究主題を「集団活動を通して、一人一人が輝く特別活動の創造」と設定した。「一人一人が輝く」とは、学級や学校の集団生活の中から今抱えている課題に子ども自身が気付き向き合う姿、自主的・実践的な集団活動の中で、子ども一人一人が自分のよさや可能性を発揮し生き生きと活動する姿であると本研究会では捉えている。一人一人の輝きは、互いの多様性やよさを認め合う温かく質の高い集団活動をつくりあげていく中で生まれてくる。また、そのような集団活動の中で、認められることにより、子どもたちは自己有用感をもつことができ、多様な他者とのかかわりの中で、ともに生きていく喜びを味わうことができると考える。
学校は子どもたちと教職員で構成され、保護者、地域の人々などの支援を受け教育活動を行う一つの社会であり、子どもたちにとって一番身近な社会である。子どもたちはその学校で行われる特別活動に取り組む中で、社会をよりよくすることの大切さや楽しさ、充実感、達成感などを味わうことができ、それらは一人一人の活動が身近な地域や社会をよくし、発展させていくことができるという子どもたちの自信につながると考える。さらには、豊かな人間関係やよりよい社会を築く集団活動の中で、子どもたちは、生き方を学び、これからの自分について考えるいくことができるのである。
これらの力こそが、今の時代に求められている社会を築く力であると考え、今年度も本主題の下に特別活動を推進していきたい。なお研究を進めるにあたっては、次の3つの視点を大切にしたい。
<研究の視点>
〇「主体的な学び」の視点
課題を主体的に見いだし、活動を振り返り、よい点や改善点を見つけだし、新たな課題を発見するというPDCAのサイクルを意識した集団活動を展開する。
〇「対話的な学び」の視点
「話合い」を全ての活動の中で重視し、異年齢の子ども、地域、教職員等の多様な他者との対話を通じて自分の考えを広げたり、多面的・多角的に考えたり、考えを深めたりする。
〇「深い学び」の視点
課題の設定から振り返りまでの一連の過程を「実践」と捉え、育成する資質・能力は何なのかを明確にした上で意図的計画的に指導に当たる。