第 2 回 分子ロボット倫理研究会
開催日︓2023 年3月10日(金)13︓30-17︓30
場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)知識科学研究科中講義室
jaist.ac.jp/top/access/index.html
プログラム
13:30-13:35 オープニング (小長谷明彦,恵泉女学園大学)
13:35-14:00
豊田太郎︓分子ロボティクスのためのリポソーム操作技術(オンライン)
細胞膜の主要成分であるリン脂質が水中で自発的に形成する袋状二分子膜をリポソームという。リポソ
ームはその内部に DNA やタンパク質を閉じ込めたり表面に結合させて機能化することができ、さらに、それ
ぞれの機能化リポソームを配置・連結させることで、高次の機能を発現させることが可能である。本発表
ではそうしたリポソーム操作技術を紹介し、最近報告されるようになった機能化リポソームの応用例につい
て解説する。
14:00:-14:30
葛谷明紀︓分子ロボットの部材としての DNA
自然界では遺伝情報の記録と伝達を担っている DNA は、非常に厳密な相補的塩基対形成能や、整
った右巻き二重らせん構造など、その役割に最適化された化学構造・性質を有している。近年では、この
ような DNA を「分子のものづくりのための素材」とみなし、分子ロボットを構築するための中心的な部材と
して活用する動きが盛んになってきた。本講演では代表例として、事前の配列プログラミングにしたがって
自在に組み立てられる「ナノスケールの丸太」として DNA を取り扱う「DNA ナノテクノロジー」、およびその
最新技術である「DNA オリガミ法」について概説する。
14:30-15:00
Mst Rubaya Rashid, Mousumi Akter, Arif Md. Rasheule Kabir, Jakia Jannat Key,
Kazuki Sada, Akira Kakugo: Force measurement of kinesin propelled
microtubules in swarming (online)
The microtubule-kinesin-based molecular swarm robot mimics the natural
swarming of motile entities. The swarm robot can generate motion to perform work.
However, the fundamental properties of the swarm in terms of work done or force
generation is yet to be revealed. The study demonstrated a DNA-based
microtubuleʼs swarm on a kinesin-coated substrate. Introducing a magnetic bead
and an electromagnetic tweezer to the swarm system, the force was estimated.
15:00-15:30
小長谷明彦︓自己組織化を目指した分子シミュレーション
分子ロボットの分子部品の合理的設計のために VR シミュレーションを開発してきた。DNA やタンパク質
を自己組織化させるためには斥力と引力のバランスが重要であり、エネルギー的に安定的であるが静止し
ているわけではなく、少しの条件変化ですぐに構造は大きく変化してしまう。このことから分子シミュレーショ
ンにおける実時間可視化の重要性について論じる。
15:30-16:00 休憩
16:00-16:20
河村賢:未来を洞察する責任は何によって根拠づけられるか:理論と実践の往還からの考察(オン
ライン)
自らの研究が生み出した知識や技術がどのようにして用いられ、あるいはどのようにして社会のあり方を変
えるのかという点について、科学者はどこまで予見する責任を負っているのか。近年ヨーロッパの科学技術
政策において掲げられる責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and
Innovation:RRI)の理念の中核には、このような前向きの責任に対する配慮が明らかに存在する。
また分子ロボット倫理綱領・研究ガイドラインをめぐる議論や、日本科学未来館の対話イベントにおいて
も、分子ロボット研究者自身がこうした責任に言及したり具体的な未来像を提示したりという実践は、ごく
日常的に行われている。本報告では、このような前向き責任は一体何によって根拠づけられるのかという
点についての理論的考察を深めることで、生命科学という研究の適用範囲と射程が広い分野にとってフィ
ージブルな責任の概念の構築を試みたい。
16:20-16:40
森下翔︓「分子ロボット ELSI 論点モデル」の構築︓さらなる展開にむけて
発表者は「分子ロボット倫理研究会」のメンバーとして活動している。今年度は分子ロボットの農業応用
等をめぐる市民対話ワークショップ(全 7 回)の分析から、分子ロボットに関する 17 の論点を抽出・要
約した「ELSI 論点モデル」を作成した。本発表では本「論点モデル」の内容と構築のプロセスを紹介する。
さらに、本「論点モデル」を踏まえたさらなる実践の可能性について論じる。
16:40-17:00
西 千尋、見上公一︓自然科学分野の研究者のための RRI コミュニケーション支援ツールとしてのミ
ニレポート(オンライン)
先端科学技術が社会に浸透するために、責任ある研究・イノベーション(Responsible Research
and Innovation︓RRI)の観点は重要である。本発表では、分子ロボティクス分野の研究者をはじめ
とした理系研究者が、先端科学技術と社会の適切な関係を構築するための一つのコミュニケーション支
援ツールとしてミニレポートの可能性を提示する。ミニレポート作成に関するこれまでの動きを紹介した上で、
研究者のニーズに合わせた支援ツールにするための課題について検討する。
17:00-17:30
総合討論︓ 「分子ロボットの RRI」の実現に向けて
ファシリテーター 見上公一(慶應大学)(オンライン)
分子ロボット研究者はこれまで人文・社会科学の研究者と友好な関係を構築し、積極的に連携を行っ
てきた。しかし、RRI の実現を目指すという観点からは、そのような連携はあくまでも広くステークホルダーと
の共創を推進し、分子ロボットが社会のために適切な形で活用されるという大きな目標を達成するための
過程であることを忘れてはならない。これまでの連携の成果として幾つかの資料が公開され始めているが、
それらの資料は作成プロセスに重要な意義があったことに加え、今後は社会との対話のための「ツール」と
しても活用されることが期待される。そこで、分子ロボット研究の今後の展開も見据えながら、それら資料
の活用の可能性について検討するとともに、今後の連携を通じてどのような「ツール」を増やしていくことが
求められているのかも併せて議論したい。