分子ロボット倫理キックオフ研究会
開催日:2022年3月11日(金)2:00-5:00
場所:金沢大学サテライトプラザ
プログラム
2:00-2:05 オープニング (小長谷明彦,恵泉女学園大学)
2:05-2:25 「細胞を模倣した分子ロボットを創る」(瀧ノ上正浩, 東京工業大学)
細胞は生物を形作る基本素子であり、非常に優れた機能を持っている。たとえば、自律的に
動き、環境の情報を察知し、判断し、その時に生物にとって必要な仕事をこなす。このよう
な優れたシステムを人工的に作る研究を人工細胞工学、または、広く分子ロボティクスと呼
ぶ。本発表では、DNA を利用した人工的な細胞(DNA マイクロカプセル)を構築する研
究を紹介し、今後の展望について議論する。
2:25-2:45 「分子サイバネティクスが目指すケミカル AI の社会的イノベーションへ向けて」
(豊田太郎,東京大学)
分子サイバネティクスは、分子ロボティクス研究によって生み出された人工細胞とその知
見を活用して、人工細胞が集団で織りなす化学的な情報処理システム(ケミカル AI)を構
築することを目指している。ケミカル AI は化学と情報工学の新たなフロンティアであるた
め、どのような産業がそこから育つのか、私たちの物質観をどのように変えうるのか、とい
う関心を集めている。本発表では、分子サイバネティクスが目指すケミカル AI の概略と、
基礎研究の推進と同時に開始している、社会との接点を研究者側からつくる活動について
紹介する。
2:45-3:05 「分子ロボット技術の将来像を共創する対話と研究者の自治」(小宮健,海洋研
究開発機構)
先端科学研究を推進する上で,その成果が社会にもたらす「倫理的・社会的・法的課題(ELSI)」
について,研究の萌芽段階から社会との対話を行なって検討することが,近年より強く求め
られるようになってきた.本講演では,分子ロボット技術の将来像を研究者が市民と共創す
ることで,研究開発の現場からは出てこない発想や課題を把握し,科学研究そのものの発展
を目指す取り組みと,研究者の自治のあり方について議論する.
3:05-3:25 「分子ロボット技術をめぐる倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の検討」(標葉
隆馬,大阪大学)
科学技術の発展がもたらす「倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal, and Social Issues:
ELSI)」の研究において近年、「責任ある研究・イノベーション(Responsible Research &
Innovation: RRI)」の枠組みでの分析・議論が進められている。そのような背景を踏まえ、
分子ロボティクス領域では、早期からの ELSI/RRI 議題の探索的検討が行われてきた。本
発表では、その経緯とこれまでの結果を共有したうえで、今後の求められる多様な視点から
の熟議と対話について提案する。
3:25-3:30 休憩
3:30-3:50 「監督者」から「共犯者」へ」(見上公一,慶應義塾大学)
科学技術イノベーションの創出に向けた人文・社会科学の役割が議論されるようになって
久しい。日本の科学技術政策の文脈においても、科学技術コミュニケーションから科学技術
の倫理的・法的・社会的課題の検討、そして近年では理工学との連携のもとでの総合知の産
出など、その役割の中身自体が変化している。そのような変化を踏まえ、本発表では人文・
社会科学の研究者がどのように萌芽的科学技術領域に関与することができるのか、その可
能性とともに注意点についても考察を行う。
3:50-4:10 「分子ロボットの農業利用を考える上での諸課題」(吉田省子,北海道大学)
分子ロボット倫理研究会は,2020 年 8 月から 22 年 1 月にかけて,当初予備知識の全くな
かった北海道の農業者を中心に 4 回,オンライン対話ワークショップを開催した。分子ロ
ボットで優しい農業をという科学者の主張に対する,農業者からの使用場面を想定した上
での具体的反応。挙げてもらった様々な農業技術に対する各自の評価。農業分野における遺
伝子関連技術の受け入れにくさの順位付けと意見表明。ここでは,手短な概説の後で,農業
者側の論点を示す。
4:10-4:30 「分子ロボット医薬品研究ガイドライン策定に向けて」(河原直人,九州大学)
分子ロボットに係る知見の応用の可能性は多岐に及び、情報、工学、化学、農学・農業、環
境の分野はもとより、医学・医療等の分野にも期待されているところである。しかし、その
大いなる可能性ゆえ、逆に、個別具体的な研究開発テーマを想起し、例えば、当該テーマに
即した製法、特性の解析、規格・試験方法、品質評価や管理のあり方といった事項まで射程
に入れて検討するには至らない状況もあったといえるかもしれない。こうしたことを踏ま
え、本発表では、医薬品研究分野への応用に焦点を当てることで、今後、実務的な手立てを
さらに講じていくための課題や展望を示してみたい。
4:30-4:50 「臓器移植と E LS I」(小野喜志雄,C B I 研究機構先端領域 E LS I 研究所)
臓器移植を必要としている患者さんたちにできるだけ早く臓器移植できるようにというこ
とで、豚の遺伝子を編集して、拒絶反応が起こりにくくしてヒトに移植手術が昨年 9 月に
腎臓を脳死者に移植する手術が行われた。豚の臓器移植の E L S I 上の問題点として、①コ
ストの問題、②このような豚を食用にすることの問題、③環境中に出てしまった場合の問題、
④移植術を受けたヒトへの影響、⑤がん化や奇形が起きることなどについて考えてみたい。
4:50-5:00 クロージングと総会