Seminar
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社会調査論研究室は2000年度、担当教員・今西が福島大学行政社会学部(現・行政政策学類)に着任して開設した研究室です。開設以来、「開発による地域空間の変容とコミュニティ」をテーマとして、各地の市街地開発事業(特に土地区画整理事業・市街地再開発事業)をめぐる計画課題、そして住民による「まちづくり」のあり方を中心に研究・調査を行ってきました。
特に2006年度からは上記のテーマを具体化し、「都市の再生と住民による『まちづくり』-コミュニティ・空間・計画-」をテーマに研究・調査を進めています。そのねらいは昨今の「都市再生」という時代潮流のなかで、自主的な住民による「まちづくり」はいかなる可能性を持つのか明らかにすることにあります。そこから「あるべき」都市像の構想につなげるよう、研究・調査にとりくんでいます。
1のテーマにとりくむ上で、社会調査論研究室では研究の作法にも関わる目標を設定しています。それは、主に都市開発の現場における社会調査と演習室における理論的な検討(関連文献や資料の検討、分析、議論等)とを往復することから、テーマについて明らかにしていくという態度を獲得することです。
社会調査による研究とは、現場に立てば事実が見えてくるという安易な実践ではないように思います。現場を見ている自己に自覚的になり、視点あるいは方法の設定によって事実らしきもののいかなる断片を切り取ることができるのか。そして、それらの断片を元に事実らしきものを多面的に再構成することができるのか。そうした研究態度の確立をメンバー個々の目標として達成していくことが課題です。
このテーマ・ねらい・目標に即し、社会調査論研究室では(1)社会調査(フィールドワーク)、(2)文献輪読、(3)卒業研究、という三つの柱を年間計画として配しながら活動を進めています。
前期の(1)社会調査では例年5月頃、1~2日の日程で第1回フィールドワークを行い、その実施に慣れるようにします。引き続き前期から後期にかけて、行政政策学類学生論集『嶺風』に研究室として論文を投稿することを目的に、第2回フィールドワークを行います。調査票調査やフィールドとの往復を行う、やや長丁場の活動となります。
(2)文献輪読では「まちづくり」や社会調査の基礎を学ぶ文献・論文を取り上げ、通読します。
(3)卒業研究について、4年生は執筆に向けた章立て構成の検討と基礎的な社会調査を行います。3年生はテーマの確定に向けた文献・資料の収集や、現地との接点づくりを行います。
後期の(1)社会調査(フィールドワーク)では例年9~10月頃、2~3日の日程で主に首都圏を対象とした第3回フィールドワーク(ゼミ合宿)を行い、テーマに対する先端的な事例研究を行います。開発をめぐる住民運動や行政・企業・NPO等への聞き取り調査を行うとともに、都市空間の意味を解読するための現地踏査を行います。
その後、後期共同研究として3年生を中心としたフィールドワークを行います。この後期共同研究ではテーマ設定からメンバー自身で考えます。「演習」を超えた研究を目指し、テーマに対する多面的な調査と分析を行います。
(2)文献輪読では後期共同研究にも関連する内容の文献を選び、通読します。卒業研究のことも念頭に置いて議論を行います。
そして(3)卒業研究について、4年生は大学での学修の成果として論文をまとめます。3年生は4年生に進級するにあたって、後期を終える段階でテーマを概ね確定します。
年間、4セットに分けて行う社会調査(フィールドワーク)、各自のテーマ設定に即してとりくむ卒業研究、この他にもメンバーを募って行う単発的な調査など、社会調査論研究室の特徴の第1は「まちづくり」の現場に足を向けることにあります。研究・調査という視点を基本としつつ、「まちづくり」の実践に関わることもあります。
こうした研究スタイルの基本的なねらいは、現場の論理を理解することにあります。その理解を深めるために、事前・事後の学修を重視しています。具体的に、それぞれのフィールドワークを終えた後には「フィールドノート」として、検討対象の概要の整理、考察を含めたまとめを行います。その過程では研究室としての議論やワークショップを行います。
また、外部からの研究費も得て、プロジェクト的な研究・調査に研究室としてとりくむこともあります。
共同研究として行う社会調査・文献輪読とともに、社会調査論研究室では個人研究としてとりくむ卒業研究を重視しています。3年生として研究室に所属してから、それぞれの卒業研究は始まります。テーマ設定は「まちづくり」との接点のあるところで、各自が行います。例えばスライドに示すのは最近の卒業研究のテーマです。
卒業研究を進めるにあたっては、演習において定期的に研究の進捗状況を報告します。その過程でそれぞれテーマを決め文献を読み、社会調査や「まちづくり」活動への参加など、現場との往復を行います。
特に4年生の夏休み前後からは、卒業研究を目的とした4年生だけでの「卒研ゼミ」、秋を過ぎてからは個別指導も行いながら完成をめざします。
「社会調査とは公表も含めた一連の過程である」。これを実践することも社会調査論研究室が意識している特徴の一つです。具体的なとりくみとしては、年度末の「公開研究発表会」の開催と『年報』の発行があげられます。
「公開研究発表会」では主に卒業研究の発表、後期共同研究の発表を行います。発表会は研究室のメンバー・卒業生に加え、調査でお世話になった方々、学類を中心とした学内の教員・学生の参加を得て行います。
『年報』はその年度に行ったフィールドワークの「フィールドノート」、主に後期共同研究のまとめである「特集」、文献輪読を終えての「書評」、そして卒業研究の要旨などを掲載します。この『年報』は発表会と同様、研究室とゆかりのある方々にお届けしています。
この他、行政政策学類学生論集『嶺風』への投稿も行っています。
関連ホームページ
研究室紹介リーフレット(2023年度・pdf)
講義ログ
福島大学シラバス検索
※番号は提出期別に著者五十音順。
2020年度後期提出
6.「資源型都市」の観光業への転換過程と影響分析-福島県いわき市を事例として-
2017年度後期提出
5.地方都市中心市街地での土地区画整理事業-活性化に向けた活用について-
2016年度後期提出
4.総合計画策定過程における市民討議会の活用-中核市規模の自治体での活用に向けて-
2011年度後期提出
3.都市計画の住民参加制度における公共圏の拡大の意義と課題-下北沢再開発問題を事例に-
2009年度後期提出
2.地域資源を活かした「まちづくり」における尊崇の念の研究-新潟県内の事例を中心に-
2005年度後期提出
1.成熟型住宅地における居住環境維持・向上のための活動-コミュニティによる「まちづくり」の意義-
※番号は提出期別に著者五十音順。
2023年度前期提出
85.紙媒体のハザードマップの配布に関する研究
2021年度後期提出
83.スポーツ施設の改修要求と自治体による対応の実態について
84.商店街への福祉機能の導入と再生に関する研究
2020年度後期提出
80.コミュニティバスの運行における持続可能な事業採算運営に関する研究
81.在留外国人の入居支援に関する研究-かながわ外国人すまいサポートセンターを事例に-
82.市街化調整区域における廃校の民間活用に関する研究-伊達市梁川地域の廃校を事例に-
2018年度後期提出
77.聖地巡礼における地域活性化について
78.現代社会における「郷土愛」のありか
79.町並み保全型まちづくりの担い手についての研究
2018年度前期提出
76.居場所づくりとコミュニティ・カフェに関する研究-AOZカフェを事例に-
2017年度後期提出
70.観光列車を活用した地域活性化のあり方と地域との関わり方についての研究
71.空き家を利活用した地域コミュニティの再生についての研究
72.空き家の適正管理についての研究-市町村の空き家条例からの考察-
73.公衆衛生のためのインフラメンテナンス-都市の下水道を事例に-
74.地域資源を利活用した道の駅の研究-全国モデル「道の駅」を事例に
75.縮小都市の移動手段として位置付ける自転車交通の役割に関する一考察-新潟市の自転車利用環境計画と立地適正化計画の比較から-
2016年度後期提出
65.地方創生のなかで交通政策が果たす役割
66.都市における公共図書館の立地に関する研究-南相馬市立中央図書館を事例に-
67.NPO法人が発行主体の地域通貨-地域経済の衰退や地域コミュニティの崩壊を解決するツールとして-
68.地方中核規模都市における再開発と中心市街地再生に関する一考察-中心市街地再生と変化する再開発-
69.復興公営住宅のコミュニティに関する研究-あすと長町復興公営住宅を事例に-
2015年度後期提出
57.指定管理者制度に基づく官設民営NPO支援センターの運営のあり方に関する研究
58.地域交通と住民参加の視点から見る都市型コミュニティバスのあり方に関する研究
59.近代産業遺産を活かした「まちづくり」と地域再生-常磐炭田における石炭産業遺産を事例に-
60.まちづくり会社と地域の連携による「まちづくり」の可能性
61.地域社会におけるゲストハウスの役割に関する一考察-ゲストハウス品川宿を事例に-
62.空き家の適正管理に関する研究-酒田市空き家等見守り隊モデル事業を事例に-
63.「道の駅」の可能性-「市街化区域内」に設置された「道の駅」を事例に-
64.地域防災における地区防災計画の役割に関する研究-桑折町半田地区を事例に-
2014年度後期提出
52.第二種市街地再開発事業の変貌-生活再建措置の後退-
53.河川緑地の住民団体による整備の可能性
54.韓国に聞く「町並み保全型まちづくり」-韓国ソウル北村地区の韓屋保全政策を事例に-
55.地方都市における着地型観光による地域活性化に関する研究-会津若松市を事例に-
56.国体に使用された公共スポーツ施設の有効利用に関する研究-福島県福島市を事例に-
2013年度後期提出
49.店舗前空間の有効活用による中心市街地のにぎわいづくり-福島市パセオ通りを事例に-
50.シングル・マザー支援から地域コミュニティのあり方について考察する
51.循環バスの利便性向上と中心市街地活性化-福島市内循環ももりんバスを事例に-
2013年度前期提出
48.地方都市における市民と行政のまちづくりの手法に関する研究
2012年度後期提出
45.既成住宅地における景観形成を意図した街路整備の必要性
46.地方都市中心市街地におけるまちなか居住推進に寄与する公園整備に関する研究
47.人口減少社会下における公共施設集約の可能性-過疎地域の小中一貫教育を事例に
2011年度後期提出
38.「観光まちづくり」運動における地域資源の活用と「地域マネジメント組織」の確立に関する研究
39.パーキングパーミット制度を用いた思いやり駐車場の利用実態に関する研究
40.持続可能な都市の構築-公共交通を基軸とした多芯連携型のコンパクトシティ-
41.コレクティブハウスの普及に関する研究
42.住宅企業によるコミュニティ形成について
43.木造密集市街地における修復型整備の実態と展望-墨田区一寺言問地区を事例に-
44.文化政策による都市の魅力の形成の試み-市民の活力とシビックプライド醸成の視点から-
2010年度後期提出
32.農住組合制度から考える「農と住が調和した『まちづくり』」
33.郊外住宅団地における子ども文庫活動による「まちづくり」-福島市蓬莱団地・蓬莱子ども文庫の会を事例として-
34.都市の住宅地における「共」の領域の考察-伊達市諏訪野を事例に-
35.公園から育てる地域コミュニティの可能性
36.協働の「まちづくり」-提案公募制度から考える-
37.地域社会教育施設としての公民館-福島市各学習センターを事例に-
2009年度後期提出
29.地方都市における大型店と住民居住に関する研究-福島市野田町を事例として-
30.郊外住宅団地での住民活動におけるアウトリーチの可能性-福島市蓬莱団地を参考にして-
31.条例による「まちづくり」-都市計画法34条11号・12号条例を事例に-
2008年度後期提出
22.まちづくり会社の可能性-中心市街地活性化のためのあるべき姿とは-
23.「平成の大合併」後における住民自治のあり方についての考察-合併特例法による地域自治区を事例に-
24.マンション管理における管理組合と管理会社の関係形成
25.広域行政の展開の意味と今後の広域連合-広域連合の実態調査から見えるもの-
26.第三セクター再建に求められるもの-地域の柱となるために-
27.路地を活かしたコミュニティ形成に関する研究-大阪市平野郷地区を事例に-
28.持続可能な中心商店街の構築とは-郊外への大型小売店舗の出店と中心商店街の衰退から考える-
2006年度後期提出
19.市民・行政の協働へのプロセスデザイン-福島市子どもの夢を育む施設を中心事例に-
20.地方都市郊外型大型店の撤退と「まちづくり」-岩手県盛岡市を事例として-
21.地方都市のコンパクトシティ政策推進における民間からの参画
2005年度後期提出
14.「開発投資型」の新幹線開発が地域社会にもたらしたものとは-東北新幹線を事例に-
15.住民主体による既成市街地改善の展望と課題-上尾市仲町愛宕地区・足立区関原地区を事例に-
16.歴史的建造物の保全・活用による「まちづくり」の意義と今後の展望-イギリスにおけるとりくみとの比較を通じて-
17.合併自治体における都市計画マスタープランの調整課題と都市構造の変容
18.企業城下町における産業構造の転換と「まちづくり」の諸課題-茨城県・鹿嶋市を事例に-
2004年度後期提出
12.地方都市における土地利用問題-福島市大森地区を事例に-
13.「まちなみまちづくり」における「新しい公共」とは何か-仙台市を事例に-
2003年度後期提出
9.TMOの「ひとづくり」について-特定会社タイプTMOを事例に-
10.都市計画マスタープラン策定後の「まちづくり」活動に関する研究-策定に関わった住民による「まちづくり」活動の展望-
11.高齢者の外出支援活動が地域社会にもたらす意義-地方都市・福島市を事例に-
2002年度後期提出
4.成熟型住宅地におけるコミュニティの役割と「まちづくり」
5.ベッドタウンにおける「福祉のまちづくり」と住民参加-埼玉県戸田市を中心事例に-
6.地方中核都市における中心市街地活性化対策と商店街による「まちづくり」の可能性
7.地方小都市中心市街地における歴史的資産を活用した「まちづくり」
8.「まちなみまちづくり」における景観への一考察-景観条例の運用を主軸に-
2001年度後期提出
1.総合計画策定過程におけるワークショップ-住民の「まちづくり」活動への展開を視野に入れて-
2.住民主体の「まちづくり」の展開と行政・専門家の役割-アドバイザー派遣制度を中心に-
3.計画的住宅団地におけるコミュニティ形成と住環境維持管理
※番号は公刊年月順。
11.「総合計画策定過程における市民討議会の活用状況 盛岡市、高崎市、水戸市、船橋市、岐阜市を中心に」(橋本暁・今西一男)、『2016年度日本建築学会大会学術講演梗概集』、pp.625-626、2016年7月
10.「総合計画策定過程における『討議』的住民参加手法の取り組み状況に関する調査」(橋本暁 ・今西一男)、『日本建築学会東北支部研究報告集計画系』第79号、pp.123-126、2016年6月
9.「中核市並びに三鷹市における『市民討議会』の活用状況」(橋本暁 ・今西一男)、『2015年度日本建築学会大会学術講演梗概集』、pp.167-168、2015年7月
8.「行政との『協働』をめぐる『まちづくり』の課題 -下北沢駅周辺地区の再開発の事例から-」(遠藤章弘・ 今西一男)、『2010年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.187-188、2010年7月
7.「新潟県村上市における地域資源を活かした『まちづくり』に存する尊崇の念の研究」(関根正人 ・ 今西一男)、『2009年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.773-774、2009年7月
6.「地域資源を活かした「まちづくり」に見える尊崇の念 新潟市小さな美術館季の取り組み」(関根正人 ・今西一男)、『日本建築学会東北支部研究報告集計画系』第72号、pp.177-180、2009年6月
5.「伝統を生かしたまちづくりにおける尊崇の念を生み出す空間」(関根正人 ・ 今西一男)、『2008年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.351-352、2008年7月
4.「福島市蓬莱住宅地における公共施設の利・活用に対する住民組織からの提案に関する研究-成熟型住宅地におけるコミュニティによる『まちづくり』-」(犬飼むつみ ・ 今西一男)、『2005年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.1137-1138、2005年7月
3.「福島市蓬莱住宅地における住民による地域の問題発見と解決のための活動の意義-成熟型住宅地におけるコミュニティによる『まちづくり』の意義」(犬飼むつみ ・ 今西一男)、『2004年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.689-670、2004年7月
2.「福島市蓬莱住宅地における成熟型住宅地のコミュニティの形態 成熟型住宅地における居住環境維持・向上のための活動に関する研究・その2」(犬飼むつみ ・今西一男)、『日本建築学会東北支部研究報告集計画系』第67号、pp.335-338、2004年6月
1.「成熟型住宅地におけるコミュニティの形態-仙台市鶴ヶ谷住宅地を事例に-」(犬飼むつみ ・ 今西一男)、『2003年度日本建築学会大会学術講演梗概集F-1』、pp.797-798、2003年7月
福島大学行政政策学類社会調査論研究室
〒960-1296 福島市金谷川1 福島大学行政政策学類
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