アダプテッド・スポーツ科学専門領域

Japan Society for Adapted Sport Sciences

代表挨拶

 令和元年の定時総会において、日本体育学会は日本体育・スポーツ・健康学会へと名称変更されることが決まりました。社会に目を向けると新しい学習指導要領のもとで教育も動き出し、2020東京オリンピック・パラリンピック開催決定以降加速した本領域を取り巻く環境の変化、注目度の高まりを一層強く感じます。しかし、学会の専門領域として、それらの期待にまだ十分応えられていないことも事実です。そのためにも、アダプテッド・スポーツ科学に関する知の蓄積をはかること、アダプテッド・スポーツに関する実践・事例報告での情報共有を進めること、国内外の新しい知見を提供しながらアダプテッド・スポーツ科学をとりまく人びとの有機的な連携を築くことが不可欠であり、研究者集団として社会へメッセージを継続して発信していかなければなりません。

 本専門領域で2014年から取り組んできた、「教員養成課程におけるアダプテッド体育関連科目必修化」へのロードマップは、「保健体育科の教員養成課程を有する大学において障害者スポーツに係る指導者養成カリキュラムの導入を推進する(障害者のスポーツ活動推進プラン, 2019, 3, 22 文部科学省)」が示されたことで、大きな一歩となるでしょう。今後は特にカリキュラム内容・方法・担当者育成などの具体的な課題に対してエビデンスベースで、スピード感を持って取り組んでいくことになります。また、オンラインジャーナルのJ-STAGE公開も始まりました。2005年の専門領域設立から着実に進めてきた方向性をしっかりと継続し、発展させていきたいと思いますので、みなさまのご協力をよろしくお願いいたします。

アダプテッド・スポーツ科学専門領域 代表 齊藤まゆみ

本会設立の趣旨 ~2008/01/15~


 我が国における障害者の体育・スポーツは、年々めざましい発展を遂げてきました。その社会的背景には、1964年の東京パラリンピックと1998年の長野冬季オリンピックの開催および1979年の養護学校の義務教育化があります。これが今日の障害者の体育・スポーツ振興の礎を築いたといえます。


 障害者の体育・スポーツは、障害者体育、障害者スポーツと呼ばれますが、一部に特別な配慮や工夫、対応が必要とされることから「アダプテッド・スポーツ(Adapted sport)」とも呼ばれます。この「アダプテッド・スポーツ」への科学的支援は、体育学の進歩普及を図る(社)日本体育学会が深く関わりをもって、その発展に寄与すべき大きな社会的課題ということができます。かつて、(社)日本体育学会において「アダプテッド・スポーツ」に関する研究は、運動生理学、運動心理学、バイオメカニクス、体育社会学、測定評価など、すでに専門分科会として確立されている分野の中で発表や意見交換が行われてきました。しかし、そのような場においては、それぞれの分科会の設置主旨の流れの中で討論が行われるので、社会的課題としての「アダプテッド・スポーツ」の推進を統合的に討議し、解決を模索する場としては十分な状態ではないと発起人一同は長年考えてきました。


 そこで、我が国における障害者,高齢者、低体力者の体育・スポーツ科学に関する研究・実践内容を一層深め,社会的課題の解決を推進するため、有志の協力を得ながら、専門分科会「アダプテッド・スポーツ科学」の設置を平成16年2月に(社)日本体育学会に申請しました。その結果、平成17年11月に筑波大学で開かれた日本体育学会第56回大会平成17年度臨時総会において「アダプテッド・スポーツ科学」の専門分科会新設が承認され、同年12月1日付の(社)日本体育学会小林寛道会長名の通知でもって「アダプテッド・スポーツ科学専門分科会新設」が正式承認の運びとなりました。これを受けて平成17年12月23日に発起人会が開かれ、「アダプテッド・スポーツ科学専門分科会」を正式な決定事項とすることが了承されました。平成18年11月に会長選挙が行われ、会長として中田英雄(筑波大学)、事務局として齊藤まゆみ(筑波大学)が選出され、併せて副会長、評議員、監査が選出されました。以上がアダプテッド・スポーツ科学専門分科会設立から現在までの経過です。


 本会の発展のために誠心誠意努力して大任を果たしますので,役職員、会員皆様のご協力をお願いします。


初代代表 中田英雄