地域における新たな普及啓発方法の開発に関する研究
「厚生労働省の健康科学総合研究事業」の分担研究者として参画。そこからの参考情報です。
「分担研究報告書」の詳細は、こちらをご覧下さい。以下に、その概要を、主な図面で示します。
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図 地域における新たな普及啓発方法の展開・深化に向けた情報ネットワーク・アーキテクチャ(案)
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図 地域における新たな普及啓発に向けた(情報安心社会システム)研究のイメージ
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図 各デザイン方法論の特質と新たなデザイン方法論の基本コンセプト(案)
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図 普及啓発を支援する社会構成主義デザイン(ABCD)の概念アーキテクチャ
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図 普及啓発のための社会構成主義デザイン(ABCD)実践システムの構成例
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図 基本的確認事項への詳細化・深化の必要性【例】
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図 地域健康危機管理研究事業における関連研究課題
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図 今後の課題(例)
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(参考:研究計画、途中経過、他の方の報告書などの資料類「1」「2」「3」「4」)(別途)
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厚生労働科学研究費補助金(健康科学総合研究事業)
地域における新たな普及啓発方法の開発に関する研究
分担研究報告書
World Wide Web等のInternet網における実態調査
分担研究者 遠藤隆也
[研究要旨]
2004年度、2005年度に得られた知見の総合化に加えて、Web、Blog、SNSのモデル構築検討、アンケート調査研究への協力を進め、情報の具体例を対象に、行政施策に活かせる、社会的視点からの情報ネットワーク・アーキテクチャ、情報総合デザイン方法論、行政施策への反映方法を見出した。
A.研究目的
本研究は、World Wide Web等のInternet網における諸研究の実態を調査・分析し、地域における新たな普及啓発方法の開発に資する方法論を得ると共に、情報の提供、伝達、検索、変容等に関する具体的手法を実験し、ソーシャルサイコロジー的指針の策定に資する知見を提供することを目的とする。
B.研究方法
2004年度は、基本的な事項に関連して、
・基本的課題の抽出・整理
・ユーザモデルの調査・分析
・コミュニケーションモデルの調査・分析
・健康危機情報伝達時の基本ユーザモデル案
・健康危機情報伝達時の基本コミュニケーションモデル案
・情報アーキテクチャ研究と情報デザイン研究の必要性
・情報の検索、変容の基本実験と情報の伝達、変容に関するメジャー
について研究した。(詳細は【付属資料1】参照】
2005年度は、
・Webが生み出す関係構造と社会ネットワーク分析の動向調査
・米国における検索エンジン戦争の歴史的分析と最新技術動向調査
・地域情報化ならびに地域ポータル・サイトの動向調査
・米国における健康情報ポータルの動向
・厚生労働省の緊急情報関連の情報アーキテクチャ(例:リンク構造)の現状分析
を行い、それらの中から、
・地域における新たな普及啓発の方法論
を探った。
次に、検索プログラムインタフェースを用いて、新聞などのテキスト情報を対象にして、
・情報の検索・変容の基本実験と情報の伝達・変容に関するメジャーの再考
について、クライアント-サーバからなる小規模ローカルネットワーク上で行いながら、地域に根ざした普及啓発のシステムの実現方法について探った。(詳細は【付属資料2】参照)
これらの研究経過を受けて、最終年度は、
・これまでに得られた知見の総合化
に加えて、
・Web、Blog、SNSのモデル構築検討 ・アンケート調査研究への協力
情報の具体例を対象に、新しいNetwork Science、Community Communication、Crisis and Emergency Risk Communicationなどの考え方などを参考にしながら、行政施策に活かせる、社会的視点からの
・情報ネットワーク・アーキテクチャ
・情報総合デザイン
・行政施策への反映方法論
について探ることにした。(図1 参照)
図1 分担研究の概要
C.結果
(1) これまでに得られた知見の総合化
「地域における新たな普及啓発の方法論」を具現化するための、ICT(Information Communication Technology)システム論の知見から考えられうるシステムの実現方法の案について、以下に示す。
・まず、基本的に、最近のWeb2.0と言われている動きを利活用していくことにする。
例えば、オープン・ソースであるソフトウェア・諸技術・運用技術(lightweight software、lightweight business model などの用語で表されているもの)を用いて、健康危機情報の集約Webサイト(利用者にとっては自分から情報を取りにいくという点からはプル型の情報)と、情報の推移を時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)(利用者にとっては、RSSリーダによって自動的に情報が配信されるという点からはプッシュ型の情報)と、信頼性や専門性などをバックアップするためのSNSも併せて構築する。
・これに、「ドキュメントマイニングシステム(DMS)」を併設し、ネットワークの中における関連する情
報の伝達、変容に関する時間的推移・空間的推移などを、適宜抽出・観察することを持続しておこなう。
(なお、2005年度に検索プログラムインタフェースを用いて、新聞などのテキスト情報を対象にして、情報の検索・変容の基本実験を行い、情報の伝達、検索、変容に関するメジャーの一案として、文書の「類似度」と「概念キーワード群」に加えて、時間軸概念を用いていくことの有用性について検討した。)
・このようにして、地域において信頼に足る総合的な「健康危機情報ポータル・サイト」に関する総合的な健康危機情報ネットワークの構築を進めていくことが可能である。
このようなICTシステム論からの知見に、共同研究者からのSocial Psychology 並びにSocial Evaluation の知見を総合化することにより、「地域における新たな普及啓発方法」は図2の案のように構成される。
図2 「地域における新たな普及啓発方法」の構成(案)
(2) ブログの実験用モデル構築検討(アンケート調査研究への協力)とその評価
「地域における新たな普及啓発の方法論」を具現化するための実験用モデル構築検討の第1歩として、情報の推移を時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)(利用者にとっては、RSSリーダによって自動的に情報が配信されるという点からはプッシュ型の情報)を作成し、共同研究者のアンケート調査研究に資することにした。
具体的には、
・健康危機情報の例を収集し、データ・ファイルとして時間順に整理し、
・利用者が馴染みやすいQ&A形式的なタイトルとその概要、リンク先のURLを記述した文章
として、加工した。
次に、図3の【左:kenkoukiki.exblog.jp(非公開用)】に示すような情報内容の事前チェック用に非公開用のブログを作成した。
このブログには、関係者のみがIDとパスワードで、ログインし、情報内容の適切さをチェックし、情報内容を精査の上、適切かつ必要なもののみを、図3の右側の 【右:blog.goo.ne.jp/kenkoukiki(公開用)】に示すサイトに、同様に、ログインし、カット&ペーストで、公開用のブログを作成する手順をとることにした。
このサイトと、従来からのWebサイト(利用者にとっては自分から情報を取りにいくという点からはプル型の情報)などを用いて、「地域における新たな普及啓発の方法論」に関する知見を得るためのアンケート調査研究が行われた。(実験用ブログの評価概要については、【付属資料3】参照)
図3 具体的なブログの作成【上:kenkoukiki.exblog.jp(非公開用)】【下:blog.goo.ne.jp/kenkoukiki(公開用)】
(3)地域における新たな普及啓発方法の展開・深化に向けた情報ネットワーク・アーキテクチャの検討
上述の今回の試行では、従来からのWebサイト(利用者にとっては自分から情報を取りにいくという点からはプル型の情報)に、第1歩として、情報の推移を時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)(利用者にとっては、RSSリーダによって自動的に情報が配信されるという点からはプッシュ型の情報)を付加したものであるが、それは情報ネットワーク・アーキテクチャの視点からみると、情報の(プッシュによる)「周知」、ブログ形式に社会的に再構築することによる「普及」・「共有拡大」を図ろうとするものであるといえる。
これにさらに、上記(1)項で示した信頼性や専門性などをバックアップするためのSNSも併せて構築すると、情報ネットワーク・アーキテクチャの視点からみると、さらに、情報の「信頼」と地域における「啓発」を支援することになる。
これにさらに、上記(1)項で示した「ドキュメントマイニングシステム(DMS)」を併設し、ネットワークの中における関連する情報の伝達、変容に関する時間的推移・空間的推移などを、適宜抽出・観察することを持続しておこなうと、情報ネットワーク・アーキテクチャの視点からみると、さらに、情報の「観察」と「評価」を支援することになる。
これらは、総合的にみると、情報ネットワークにおける「ソーシャル・マイニング」につながり、地域において信頼に足る総合的な「健康危機情報ポータル・サイト」のネットワークに展開していくことが可能となる。このようにして、これらが地域における普及啓発のための情報ネットワーク・アーキテクチャとなり、情報安心社会のデザインへとつながっていく。この展開イメージを、図4の「地域における新たな普及啓発方法の展開・深化に向けた情報ネットワーク・アーキテクチャ(案)」に示す。
図4 地域における新たな普及啓発方法の展開・深化に向けた情報ネットワーク・アーキテクチャ(案)
ここで示した今後の展開・深化に向けたイメージを実際の研究プロジェクトとして進めていくことは、厚生労働省の行政施策として極めて重要であると思われる。このことは、現在、国の各省が進めている情報研究の動向と照らし合わせてみると、その重要性がより明白になってくる。
現在、経済産業省では、「情報大航海」プロジェクトを進めているが、これは、情報の「検索」に、また総務省の関連の「情報分析研究」では、情報の「分析」に焦点を当てたものといえる。(図4参照)
これに対して、ここで示している研究は、国民・市民・住民の健康・安全・安心のための「地域における新たな普及啓発に向けた(情報安心社会システム)研究」であり、情報の「周知」、「普及」、「共有」、「信頼」、「啓発」、「観察」、「評価」に焦点をあてたものといえ、情報安心社会に向けて、本研究は、国が主体的に行政施策として、本来おこなうべき研究であると思われる。(図5、図6参照)
図5 今後の展開に向けて(国の各種情報研究の動向と新たな研究に向けて)
図6 地域における新たな普及啓発に向けた(情報安心社会システム)研究のイメージ
D.考察: 新しい情報総合デザイン方法論の必要性
「地域における新たな普及啓発方法」を開発していくためには、新たな開発方法論(デザイン方法論)が必要になってくる。
以下に、その試案を示す。
・従来からのICTやインターネットなどに関連したデザイン方法の流れと、「地域における新たな普及啓発方法の開発」に関する新しいデザイン方法(案)の関係のイメージを
図7 新たな開発方法論(デザイン方法論)に向けて(案)
に、また、これまでの各デザイン方法論の特質との関係を、とりまとめて、
図8 各デザイン方法論の特質と新たなデザイン方法論の基本コンセプト(案)
に示す。
「地域における新たな普及啓発方法の開発」に関する新しいデザイン方法(以下、ABCD方法と略称する)
とは、(実世界の健康危機対応実体の)諸活動に基づいた(地域の/ローカルな)新たな普及啓発をおこなう活動体(ここでは普及啓発コミュニティと仮称)、そのコミュニティ(を支援する)デザイン方法という意味での:ABCD (Activity Based Community Design)と、(実世界の健康危機対応実体の)諸活動に基づいて(地域の/ローカルな普及啓発コミュニティを)社会構成主義(の考え方によって構築していくという)デザイン方法という意味での:ABCD (Activity Based Constructionism Design)の2つの意味を包含している。
・2番目の略称が示しているように、ここで述べている新しいデザイン方法の案は、社会構成主義の考え方・流れを基底としている。
図7 新たな開発方法論(デザイン方法論)に向けて(案)
図8 各デザイン方法論の特質と新たなデザイン方法論の基本コンセプト(案)
・「地域における新たな普及啓発方法の開発」に向けて、現時点での予備的検討から想定される概念アーキテクチャとしてとりまとめたものを、
図9 普及啓発を支援する社会構成主義デザイン(ABCD)の概念アーキテクチャ
に示す。
・ABCD方法では、その概念として、「物語」、「コミュニティ」、「コミュニティ基盤」を大枠としての基本的な構成要素とするアーキテクチャとする。
・「(普及啓発)コミュニティ」には、それを構成する「参与者」、「関連者」、「Designer」がおり、様々な「活動」を日々おこなっている。
コミュニティの「物語」は、現状から将来にむけて、Narrative中心の方向付けがなされていき、参与者、関連者、Designerは、その物語を相互参照、自己参照していく。
これらの緒活動を、コミュニティ基盤が、周知共有、変化共有、経過体験共有、専門知深化などの視点から支援していく。
・これらを総合していくときに、“Narrative Centered Orientation”、“Activity-based Design”、“Social Constructionism Design”、“Architecture of Participation“、“Computers as Theater”、 “Data is the Next Intel Inside”、“Use of Ubiquitous Technologies” という諸コンセプトが融合されていく。
(図9参照)
図9 普及啓発を支援する社会構成主義デザイン(ABCD)の概念アーキテクチャ
・図9で示した概念アーキテクチャを、具体的な実践システムとしてインプリメントしていく場合の例を、
図10 普及啓発のためのABCD実践システムの構成例
に示す。
・ “Narrative Centered Orientation” を実践していくためには、例えば、Narrative Based Image Co-authoring などが、 “Activity-based Design” を実践していくためには、例えば、Activity Representation、Contextual Inquiry、Cognitive Image Conceptualization などが、
“Social Constructionism Design” を実践していくためには、例えば、Communitycability (Sociability) Construction Guidelines などが、“Architecture of Participation“や“Computers as Theater” を実践していくためには、例えば、 Computers as Theater Interface などの様々な工夫が必要と思われる。
・そして、これらの(普及啓発)活動を、コミュニティ基盤が、周知共有、変化共有、経過体験共有、 専門知深化などの視点から支援していくためには、ものごとの周知を基本としたWebだけではなくて、経過や体験の分かち合いを支援するBlog、専門家などによる情報の信頼性をたかめるSNSなどを、総合的に提供していく必要があると思われる。
・すなわち、 “Data is the Next Intel Inside” を実践していくためには、例えば、Web、 Video-Web、 Video-RSS、 Blog、 Video-Blog、 OurCommunityBits、SNS、Video-SNS などを、 Web2.0、Lightweight Software のツール類を利活用しながら、構成していく必要があると思われる。
・“Use of Ubiquitous Technologies” を実践していくためには、例えば、Tagged Mobile Uploading、Ubiquitous ICT などが必要であると思われる。
図10 普及啓発のためのABCD実践システムの構成例
E.結論
以上、2004年度並びに2005年度に得られた知見の総合化、ブログの実験用モデル構築検討(アンケート調査研究への協力)、地域における新たな普及啓発方法の展開・深化に向けた情報ネットワーク・アーキテクチャの検討をおこない、それらの具現化のための基盤となる新しい情報総合デザイン方法論の必要性について考察した。
今後の行政施策の企画・具体化に際しては、まず図11に示す基本的確認事項をひとつひとつ確認し、それらの詳細化・深化をはかりながら、本報告書で示した枠組みを参考に進めていくことが肝要である。
また、「地域における新たな普及啓発方法の開発に関する研究」に関連したテーマとして、厚生労働省においては、図12に示すような地域健康危機管理研究事業における関連研究が行われている。これらの諸研究課題の基盤を支え、行政として総合化していく研究としても、図6に示した「地域における新たな普及啓発に向けた(情報安心社会システム)研究のイメージ」を深化させていくことが必要であると思われる。
なお、本研究テーマについては、図13に示すような将来的課題(例)の実行に向けて、継続して研究開発をしていく必要がある。
図11 基本的確認事項への詳細化・深化の必要性【例】
図12 地域健康危機管理研究事業における関連研究課題
図13 将来的課題(例)
F. 研究発表、G. 知的所有権の取得状況
なし
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【付属資料1】2004年度 分担研究報告
[研究要旨]
Internet網などのサイバースペースにおけるユーザモデル研究と、コミュニケーションモデル研究の実態を調査・分析し、サイバースペースにおける健康危機情報伝達時における基本ユーザモデル案と、基本コミュニケーションモデル案を創出すると共に、新たに情報アーキテクチャ研究と情報デザイン研究の必要性を見出した。また、検索プログラムインタフェースを作成し、情報の検索、変容の基本実験を行い、情報の伝達、変容に関するメジャーの一案として、文書の類似度、概念キーワード群を用いることを試みた。
A.研究目的
本研究は、World Wide Web等のInternet網における諸研究の実態を調査・分析し、地域における新たな普及啓発方法の開発に資する方法論を得ると共に、情報の提供、伝達、検索、変容等に関する具体的手法を実験し、ソーシャルサイコロジー的指針の策定に資する知見を提供すること目的とする。
B.研究方法
本年度は、「World Wide Web等のInternet網における実態調査」として、関連分野における研究自体の中に参考となる考え方、参考となる方法論がないかどうかについて、Internet研究やHuman Interface/Interaction研究、Human Communication研究、言語情報処理研究などの研究分野について、文献調査・Internet調査により、広くサーベイすることにした。
次に、検索プログラムインタフェースを用いて、新聞などのテキスト情報を対象にして、情報の検索、変容の基本実験を、クライアント-サーバからなる小規模ローカルネットワーク上でおこなうことにした。
C.結果
(1)基本的課題の抽出・整理:
・ミクロレベルの基本的課題として、まずは、個体レベルのユーザモデルを再考する必要があること、個体間レベルのコミュニケーションモデルを再考する必要があることがわかった。
・情報の伝達・変容・(質量)と検索に関する基本的課題として、何を何のメジャーとするかについて明確にしていく必要がある。
・人(H)と情報(I)に関する総合デザインの視点からは、扱う情報のアーキテクチャはどうなっているのか、また、情報をどのようにデザインしていけばよいのかについて検討する必要がある。
・ネットワークの形態・特質などを含めて、ミクロマクロ問題として、ミクロな諸要素と、社会全体としてのマクロをどのように架橋していくかというミクロマクロ・ブリッジング(MMB)技法を検討する必要がある。
・問題解決のための基本的なコンセプトとして、社会的に分散された認知(Socially Distributed Cognition)という考え方をどのように利活用していくかという視点が大切であり、また、ネットワークによるネットワーク問題への対応法というアイディアも考えられることが示唆されてきた。
上述の抽出・整理された基本的課題に対し、今年度は最初の2項に注力することにした。以下にその結果を示す。
(2) ユーザモデルの調査・分析:
ユーザとコンピュータとのインタフェース/インタラクションのモデル例としてTriple Agent Modelがあり、ユーザの頭の中にある思い(これもある種のエージェント)と、インタフェースを代行・実行する機能群(エージェント)と、要求されているタスクを実行・代行する機能群(エージェント)とから成るモデルが考えられている。これらのモデルでは、ユーザの評価における深淵(gulf)とユーザの実行における深淵(gulf)が問題にされ、ユーザのメンタルモデルを支援する概念設計(conceptual design)という視点が必要であり、その中では、様々なモデル群(例:デザインモデル、システムモデル、システムイメージ、ユーザのもつメンタルモデル、ユーザモデル)が考えられている。
本研究を進めていく上では、これらの考え方を参考にしながら、様々なユーザに関連した新たな様々なモデルを考えていかなければならない。
(3) コミュニケーションモデルの調査・分析:
原初的なコミュニケーションモデルとしては、送り手・受け手モデル、情報の投げ込みモデルなどがある。送り手・受けてモデルでは、既有知識(命題的知識、スキーマスクリプトなど)をメッセージの送信内容として記号化して送ると、受け手は、手がかり情報をもとにして送り手のメンタルモデルや自己のもつ既有知識(命題的知識、スキーマスクリプトなど)などから内容を解読していくことになる。
一方、現象学的な視点からの研究では、人は現実に前にある状況と対話しているだけではなく、前に相手と対話したときの反応や前にタスクを行ったときの経験を思い出したり、前に操作したときの人工物である機器やシステムの応答との関係などの、いろいろな個人内部での対話を実行していることが観察されている。このことは、相手との現在ならびに過去のコミュニケーションのみならず、人の個人内部での認知的過程ならびに共通のタスクや人工物である機器やシステムの中に埋め込まれている知識の認知的活用なども含めた、いわば社会的に分散された認知(SDC: Socially Distributed Cognition)の機構でのコミュニケーションをおこなっていることが示唆されている。このことから、人工物を介した人と人とのコミュニケーションの対話モデルとしては、「自己との対話ループ(SDL)」と「相手との対話のループ(PDL)」と「タスクとの対話のループ(TDL)」からなる「Triple Loop Model(TLM)」が考えられている。
また、Webから人間関係ネットワークを抽出する試みもなされている。
(4) 健康危機情報伝達時の基本ユーザモデル案:
上記(2)で示したユーザモデル研究では、主として、人の認知的側面(以下では、Cognitive(C)側面)に焦点をあてているが、健康危機情報伝達時のユーザモデル案としては不十分である。人をもっと総合的にとらえて、例えば、人は、Affective System(A)とBehavioral System (B)とCognitive System(C)の各サブシステムからなる総合的な人間システム(A-B-C System)であり、これらの各サブシステムには、「Healthyな状態」と「Averageな状態」と「Unhealthyな状態」のレイヤー(H-A-Uレイヤー)があり、外的要因や内的要因によって、このレイヤー間をダイナミックに動いていると考えられる。そしてこれらのサブシステムの各々は、例えば、Aが「見棄てられた(Abandoned)」と感じると「不安(Anxiety)」になり、Cが「無視された(Neglected)」と考えると「怖れ(Fear)」になり、Bが「拒否された(Rejected)」と体感されると「怒り(Anger)」となって現れてくることが観察される。しかも、これらのA、B、Cの間は相互に影響し合っており、例えば、不安(A)à怖れ(F)à怒り(A)à不安(A)à・・・のダイナミックな遷移プロセス(ここでは、A-F-Aサイクル仮説と呼んでおく)も観察される。これらをまとめて、健康危機情報伝達時のユーザモデル案として、「A-B-C人間情報システムモデル(「A-B-C System」と「H-A-Uレイヤー」と「A-F-Aサイクル仮説」の考え方からなるモデル)」を創出した。
このモデルは、例えば、社会心理学研究の中で行われている、情報伝達の速度は、「不安の程度」と「曖昧度」と「信用度」によって左右されるという考え方も、各々AとCとBに対応していると考えることができ、社会において、不安が次の状態に遷移していくのをどのようにして縮小させていくのがよいのか、などの課題を検討するときの、参照モデルとなる可能性も内在していると考えられる。
(5) 健康危機情報伝達時の基本コミュニケーションモデル案:
健康危機情報伝達時の基本コミュニケーションモデル案としては、前項の「A-B-C人間情報システムモデル」からなる人同士が対峙し、「自己との対話ループ(SDL)」と「相手との対話のループ(PDL)」と「タスクとの対話のループ(TDL)」からなる「Triple Loop Model(TLM)」がダイナミックになされつつあるモデルである「A-B-C/TLMコミュニケーションモデル」を創出した。この基本モデルの「相手との対話のループ(PDL)」を、組織や社会システムに展開していくことで、今後の一般モデルへ導くフレームワークとする予定である。
また一方では、今後の参考とするために、Internet上での各地域のリスクコミュニケーションへの取り組みの実態を調査する中から、発信者と受信者の関係をいくつかのステップで変遷・成長していくダイナミック・モデルを考え、リスク情報に対する人々の捉え方も変化すると共に、関与者と非関与者の関係から協調的に社会的に問題を解決していく関係に変化していくといったダイナミックな「発展的コミュニケーションモデル」の必要性を見出した。
(6)情報アーキテクチャ研究と情報デザイン研究の必要性:
WWWなどが広く普及するにつれて、どのようにするとあるWebサイトへのアクセス数を増やすことができるか、ということが課題となってきた。その中から、ホームページのデザイン方法、関連情報へのリンク構造、全体としての情報の構造、全体を俯瞰できるマップ構造などのサイト構成方法などが具体的な問題になり、それを一般化する形で、インターネットの世界における、「情報デザイン研究」ならびに「情報アーキテクチャ研究」が活発になってきた。これらの研究実態を調査・分析していく中から、インターネットの世界だけではなく、全体として、情報危機情報の発信、流通、認識、再発信等に関する情報アーキテクチャはどのようになっており、それをどのような情報アーキテクチャにしておき、それらをどのように情報デザインしていくと、適切にナビゲートしたり、不安を少なくし、安心を与え、地域・社会を安定させていくことが出来るのか、といった研究が必要であることを見出した。
(7)情報の検索、変容の基本実験と情報の伝達、変容に関するメジャー:
インターネットや言語情報処理研究における情報の検索の実態調査をする中から、情報の伝達・検索・変容などの検討を進めるためには、単なる(キーワード)検索の研究を利用するのではなく、大量の文書情報から有用な知識を発見していくというテキストマイニングと概念ベースの研究・考え方を利活用していくことにした。具体的には、「ドキュメントマイニングシステム(DMS)」(NTT)を利活用することにした。
DMSでは、まず、対象とする分野の多くの文章を収集し、文章の形態素解析をおこない、自立語を抽出し、その自立語がお互いに共起する関係のマトリックス(単語2万語×2万語の共起マトリックス)を作成し、これを主成分分析して、2万語の単語ベクトルからなる概念ベースを得る。次に、収集した各々の文章を構成する単語の生起する頻度を統計し、それらの頻度を合計すると1になるように正規化して、文章ベクトルを作成する。このようにしておくと、ある一つの単語を入力したときに、「与えられた単語×概念ベース」のように、2万のベクトルとの内積をとって距離を算出し、距離の近い順にリスト出力することで、ある一つの単語(キーワード)が与えられたときに、対象とする情報の分野で、共起してくる単語(関連キーワード)を連想することもできる。また、「与えられた単語×文章ベクトル」のように内積をとり、距離の近い順にリスト出力すると類似度に応じた検索となり、「与えられた文章×文章ベクトル」のように内積をとり、距離の近い順にリスト出力すると、与えられた文章に類似した順に文章を並べることができる。さらに、対象とする文章群に、カテゴリー数を与えて、与えられた数のカテゴリーに文章群を分けること、すなわち似たもの同士を集めて分類することも可能となる。
このような機能を、クライアント-サーバ構成のローカルエリアネットワーク上にインプリメントし、具体的な文章群として、ある1年間の新聞記事(約14,500件)をとりあげ、その概念ベースを作成し、基本実験をおこなった。その結果、例えば、「地震、阪神」や「健康」というキーワードに対して、共起する様々な単語群(以下ここでは概念キーワード群と呼ぶ)が得られ、類似度(0~1の数字で表されたもの)の順に似た文章をリスト化された。また、カテゴリー分けをしてみると、例えば、「地震、阪神」に関しては、「震度、・・・など」と「義援金、・・・など」と「損保、・・・など」に関するものにカテゴライズされ、「健康」に関しては、「相談、・・・など」と「家族、・・・など」と「福祉、・・・など」にカテゴライズすることも実験できた。
これらのことより、情報の伝達、検索、変容に関するメジャーの一案として、文書の「類似度」と「概念キーワード群」を用いることの有用性が見えてきた。
D.考察
情報の伝達、変容に関するメジャーの一案として、文書の「類似度」と「概念キーワード群」を用いることの有用性について述べたが、時間軸で捉えた情報質量の変化のメジャーとして、前述の「A-B-C人間情報システムモデル」の「A-F-Aサイクル仮説」と連動させることにより、例えば、時間軸に対応して、新聞記事群やWWW文章情報群の概念キーワード群が「不安、怖れ、・・・など」から「怒り、・・・など」へ、そして「安心、・・・など」へと変化する様子などを、抽出・観察できる可能性も考えられる。また、カテゴライズされた文章ベクトル群の重心ベクトルとそれからの距離を観察・分析することで、情報のオリジンとそれからのコピー具合いなどについても抽出・観察できる可能性も推察される。
E.結論
以上、サイバースペースにおける健康危機情報伝達時における基本ユーザモデル案と、基本コミュニケーションモデル案を創出すると共に、新たに情報アーキテクチャ研究と情報デザイン研究の必要性を見出した。また、検索プログラムインタフェースを作成し、情報の検索、変容の基本実験を行い、情報の伝達、変容に関するメジャーの一案として、文書の類似度、概念キーワード群を用いることの有用性を示した。
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【付属資料2】2005年度 分担研究報告
[研究要旨]
Webが生み出す関係構造と社会ネットワーク分析の動向調査、米国における検索エンジン戦争の歴史的分析と最新技術動向調査、地域情報化ならびに地域ポータル・サイトの動向調査、米国における健康情報ポータルの動向、厚生労働省の緊急情報関連の情報アーキテクチャ(例:リンク構造)の現状分析を行うと共に、これらを参考にしつつ、新聞における健康関連情報などを収集し、その情報の検索、伝達と変容に関するメジャーの一案として、文書の類似度、概念キーワード群を用いることの基本実験を進めた。これらの動向調査と基本実験を進める中から、地域における新たな普及啓発方法の一案として、地域において信頼に足る総合的な「健康危機情報ポータル・サイト」に関するネットワーク構築が必要であることを見出した。
A.研究目的
本研究は、World Wide Web等のInternet網における諸研究の実態を調査・分析し、地域における新たな普及啓発方法の開発に資する方法論を得ると共に、情報の提供、伝達、検索、変容等に関する具体的手法を実験し、ソーシャルサイコロジー的指針の策定に資する知見を提供することを目的とする。
B.研究方法
昨年度は、基本的な事項に関連して、
・ 基本的課題の抽出・整理
・ ユーザモデルの調査・分析
・ コミュニケーションモデルの調査・分析
・ 健康危機情報伝達時の基本ユーザモデル案
・ 健康危機情報伝達時の基本コミュニケーションモデル案
・ 情報アーキテクチャ研究と情報デザイン研究の必要性
・ 情報の検索、変容の基本実験と情報の伝達、変容に関するメジャー
について研究した。
本年度は、まず、
・ Webが生み出す関係構造と社会ネットワーク分析の動向調査
・ 米国における検索エンジン戦争の歴史的分析と最新技術動向調査
・ 地域情報化ならびに地域ポータル・サイトの動向調査
・ 米国における健康情報ポータルの動向
・ 厚生労働省の緊急情報関連の情報アーキテクチャ(例:リンク構造)の現状分析
を行い、それらの中から、
・ 地域における新たな普及啓発の方法論
を探ることにした。
次に、検索プログラムインタフェースを用いて、新聞などのテキスト情報を対象にして、
・ 情報の検索・変容の基本実験と情報の伝達・
変容に関するメジャーの再考
について、クライアント-サーバからなる小規模ローカルネットワーク上で行いながら、地域に根ざした普及啓発のシステムの実現方法について探ることにした。
C.結果
(1) Webが生み出す関係構造と社会ネットワーク分析の動向調査:
・2005年9月に行われた社会情報学フェア2005では、上記表題のワークショップが行われ、特に最近話題になっているSNS(Social Networking Service)が中心的にとりあげられている。
・そこでは、SNSを基盤とした情報流通シミュレーション、SNSにおける関係形成の原理、SNSがWebサービスと異なる点、招待制や実名推奨による信頼感の高さ、などについて研究されている。
・また、Webネットワークにおけるクチコミ効果、
モバイルITにおける社会ネットワーク構造、Web上の情報を用いた企業間関係の抽出(検索エンジンを利用した関係抽出)などの研究も行われている。
・これらの動向より、地域における新たな普及啓発方法として、周知のためのWWW(Web)だけではなく、最近急増している時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)や、信頼性や専門性などをバックアップするためのSNSも併せて、総合的に利活用していくことの必要性が示唆される。
(2)米国における検索エンジン戦争の歴史的分析と最新技術動向調査:
・検索エンジン/ポータルとしての大きな流れが、最近、質的に変わろうとしてきている。
・最初に、質的変換の動きを見せたのは、Google で、その後も変化の動きを牽引し続けている。Google は当初のホームページの検索という考えから、Google News、Froogle (商品検索)を新たに提供し、検索対象を拡大・詳細化すると共に、Google Alert(プッシュ型メディアへの展開)、Google Web API(ウェブサービスへの接近)を提供し、従来のプル型に加えてプッシュ型メディアとして展開させたり、検索エンジンを中核としたあらたなビジネスモデルへの布石を次々と打ち出している。
・また、検索の基本単位がキーワードであった検索エンジンの考え方を、AmazonのA9.comは、Search Inside The Bookによって、フルテキスト検索へと展開させ、Google も続いて、Google Print
で、フルテキスト検索に追随している。
・また、Yahoo! のマイヤフー(RSSヘッドライン)、ヤフービデオサーチ(メディアRSS)の中でも使われているように、各種のウェブサイトの更新情報を簡単にまとめ、配信するための RSS(RDF (Resource Description Framework) Site Summery)を用いた各種サービスが進展しており、プル型からプッシュ型メディアとしても展開する様相を帯びてきている。
・このような個別の質的変化の中で、昨年より大きな潮流として現れてきたのが、インターネットの特徴であったグローバルな世界の情報の検索という考え方から、身近な生活に役立つインターネット、すなわちローカルなエリアを対象とした検索サービスという考え方へ変わってきた点があげられる。
昨年から今年にかけて、Google、Yahoo!、MSNが次々と、Local Searchを今後のビジネス・モデルの中核とすべく、打ち上げてきている。
・そして、この Local Search の機能を、地図、電話帳、携帯と組み合わせたものへと、急展開してきている。
・これらの動向より、地域における新たな普及啓発方法として、従来のようにホームページにわざわざアクセスして情報を取得するというプル型から、緊急情報や更新情報を(テレビと同じように)アクセスせずとも受身でいても受けられるように、プッシュ型メディア化していく方法や、地域に密着したローカルなエリアを対象としたサービスにしていく方法としていくことの必要性が示唆される。
(3) 地域情報化ならびに地域ポータルサイトの動向調査:
・e-Government(電子政府)の流れの中で、電子自治体ポータルの動きが急である。
・この動きの中で、地域の活性化に、また地元の再発見に、地域ポータル・サイトは新たな地域の魅力を生み出していくものとして期待されつつある。
・その地域ポータル・サイトのあり方に関して、地域ポータル・サイトは民産学官が協働して育てること、NPO法人が主導する地域ポータル・サイトの有効性、運営者が自治体の場合の意義と課題克服への取り組み、ボランティアでサイトを運営する場合の熱意、などについて議論がされている。
・これらの動向より、地域における新たな普及啓発方法として、地域情報化の緒活動と呼応しながら、健康危機情報に関する地域ポータル・サイトを立ち上げることの必要性が示唆される。
(4)米国における健康情報ポータルの動向:
・米国においては、有料の健康ケア関連ポータルサービスが着実に展開しており、生活習慣病予防サービスを健康食品販売の付加価値サービスとして展開(例:エリア別栄養士が地域に根ざしたアドバイスを提供)したり、地域社会に関連した健康ケアサービスを展開(例:フィラデルフィア市が、2000年度の肥満都市に選ばれたことがきっかけで市長がフィットネス専門家を招いてはじめた健康キャンペーン)したりと、健康情報に関する動きは急である。
・また、セルフメディケーションでは、各人のサイトを作り意見交換するコミュニティの構築サービスなども進められている。
・これらの動向より、地域における新たな普及啓発方法として、日本においてもいずれ流行するであろうこれらの健康ケア関連ポータルならびに関連コミュニティと協働もしくは相互に利活用する啓発システムを創出していくことの必要性が示唆される。
(5) 厚生労働省の緊急情報関連の情報アーキテクチャ(例:リンク構造)の現状分析:
・現在(2006年2月3日現在)の厚生労働省の緊急情報に関する情報アーキテクチャの例を【ここでは、まずリンク構造に着目して】調査してみた。
・「ホームページ」(http://www.mhlw.go.jp/)のトップページに「緊急情報」を出すようになっている点は評価される。この厚生省ホームページへのリンク数は6090件ある(ただし、サイト内部からのリンク数が大多数を占めており、政府関連約8割、など)。
・そこから1クリックで「新型インフルエンザ対策関連情報」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/
kekkaku-kansenshou04/index.html)へリンクされているが、このページへの他のページからの直接リンク数は33件(ブログ・個人ページ11件、企業・検索サイト8件、政府関連3件、都道府県4件など)すぎない。
・そのページから再び1クリックで「新型インフルエンザに関するQ&A」(http://www.mhlw.go.jp/
bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html )
へリンクされているが、このページへの他のページからの直接リンク数は2件(1件はサイト内、もう1件は横浜市衛生研究所)にすぎない。
・一方、「新型インフルエンザ対策関連情報」のページの最下段のメニューから、「鳥インフルエンザに関する情報」(http://www.mhlw.go.jp/ houdou/
0111/h1112-1f.html )へリンクされており、このページへの他のページからの直接リンク数は81件(ブログ・個人ページ10件、企業9件、政府関連19件、18都道府県20件、市9件、町1件など)ある。
・そのページの7番目のメニューから「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」のページ
(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1f-4.html )へリンクされているが、このページへの他のページからの直接リンク数は9件(ブログ・個人ページ4件、掲示板、秋田市・岐阜市・広島県・東京都の行政サイト)にすぎない。
・なお、8つ地方厚生局のホームページの中には、上述の「緊急情報」関連の情報は見当たらない。
・これらの現状分析より、地域における新たな普及啓発方法として、情報アーキテクチャの観点より、より多くの人がアクセスしやすいリンク構造に改善したり、ワンストップで必要な情報に出会えるようなサイトを構築したり、モバイルでも容易に入手できる形態のサービスへと発展させていくことの必要性が示唆される。
(6) 地域における新たな普及啓発の方法論:
上述の調査研究をまとめてみると、「地域における新たな普及啓発方法の開発」に関して、以下の点が示唆された。
・周知のためのWWW(Web)だけではなく、最近急増している時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)や、信頼性や専門性などをバックアップするためのSNSも併せて、総合的に利活用していくこと
・従来のようにホームページにわざわざアクセスして情報を取得するというプル型から、緊急情報や更新情報を(テレビと同じように)アクセスせずとも受身でいても受けられるように、プッシュ型メディア化していく方法や、地域に密着したローカルなエリアを対象としたサービスにしていく方法としていくこと
・地域情報化の緒活動と呼応しながら、健康危機情報に関する地域ポータル・サイトを立ち上げること
・日本においてもいずれ流行するであろう健康ケア関連ポータルならびに関連コミュニティと協働もしくは相互に利活用する啓発システムを創出していくこと
・情報アーキテクチャの観点より、より多くの人がアクセスしやすいリンク構造に改善したり、ワンストップで必要な情報に出会えるようなサイトを構築したり、モバイルでも容易に入手できる形態のサービスへと発展させていくこと
(7)情報の検索・変容の基本実験と情報の伝達・変容に関するメジャーの再考:
・昨年、情報の伝達・検索・変容などの検討を進めるためには、単なる(キーワード)検索の研究を利用するのではなく、大量の文書情報から有用な知識を発見していくというテキストマイニングと概念ベースの研究・考え方を利活用していくことにした。具体的には、「ドキュメントマイニングシステム(DMS)」(NTT-AT)を利活用することにした。
DMSでは、まず、対象とする分野の多くの文章を収集し、文章の形態素解析、自立語の抽出、自立語がお互いに共起する関係のマトリックス(単語2万語×2万語の共起マトリックス)の作成、2万語の単語ベクトルからなる概念ベースの作成、収集した各々の文章の文章ベクトルの作成、ある一つの単語を入力したときに距離の近い順にリスト出力すること、ある一つの単語(キーワード)が与えられたときに、対象とする情報の分野で、共起してくる単語(関連キーワード)の連想、類似度に応じた検索、与えられた文章に類似した順に文章を並べること、与えられた数のカテゴリーに文章群を分けること、すなわち似たもの同士を集めて分類すること、などをおこなう。
このような機能を、クライアント-サーバ構成のローカルエリアネットワーク上にインプリメントし、具体的な文章群として、ある新聞記事(約14,500件)をとりあげ、その概念ベースを作成し、基本実験をおこなった。
今年度は、特に時間的経緯に焦点をあてて、年月日の期間をも同時に指定できるインタフェースを付加した実験を進めた。例えば、「地震、阪神」や「健康」というキーワードに対して、時間軸に対応して、「震度、・・・など」、「症状、・・・など」から「損保、・・・など」、「福祉、・・・など」へと、すなわち、時間軸に対応して、「不安、怖れ、・・・など」から「安心、・・・など」へと変化する様子などを、抽出・観察できた。今後、カテゴリー化された文章ベクトル群の重心ベクトルとそれからの距離を観察・分析することで、情報のオリジンとそれからのコピー具合いなどについても抽出・観察できる可能性もでてきた。
これらのことより、情報の伝達、検索、変容に関するメジャーの一案として、文書の「類似度」と「概念キーワード群」に加えて、時間軸概念を用いていくことの有用性が見えてきた。
D.考察
・上述の(1)~(5)項から示唆された事項をとりまとめた(6)「地域における新たな普及啓発の方法論」を具現化するための、システムの実現方法についても検討をおこなった。現時点で考えられうる素案について、以下に示す。
・まず、基本的に、最近のWeb2.0と言われている動きを利活用していくことにする。例えば、オープン・ソースであるソフトウェア・諸技術・運用技術(lightweight software、lightweight business model などの用語で表されているもの)を用いて、健康危機情報の集約サイトと、情報の推移を時系列的に状況をわかってもらえるブログ(Weblog)と、信頼性や専門性などをバックアップするためのSNSも併せて構築する。
・これに、(7)項で述べた「ドキュメントマイニングシステム(DMS)」を併設し、ネットワークの中における関連する情報の伝達、変容に関する時間的推移・空間的推移などを、適宜抽出・観察することを持続しておこなう。
・このようにして、地域において信頼に足る総合的な「健康危機情報ポータル・サイト」に関するネットワーク構築を進めていくことが可能である。
E.結論
以上、Webが生み出す関係構造と社会ネットワーク分析の動向調査、米国における検索エンジン戦争の歴史的分析と最新技術動向調査、地域情報化ならびに地域ポータル・サイトの動向調査、米国における健康情報ポータルの動向、厚生労働省の緊急情報関連の情報アーキテクチャ(例:リンク構造)の現状分析、を行い、それらの中から、地域における新たな普及啓発の方法論についての示唆される事項をとりまとめた。
また、検索プログラムインタフェースを用いて、新聞などのテキスト情報を対象にして、情報の検索・変容の基本実験を行い、情報の伝達、検索、変容に関するメジャーの一案として、文書の「類似度」と「概念キーワード群」に加えて、時間軸概念を用いていくことの有用性について検討した。
これらの動向調査と基本実験を進める中から、地域における新たな普及啓発方法の実現方法の一案として、地域において信頼に足る総合的な「健康危機情報ポータル・サイト」に関するネットワーク構築が必要であることを見出した。
今後は、具体的な情報の中味の具体例を対象に、Crisis and Emergency Risk Communicationの考え方などを参考にしながら、情報アーキテクチャ研究に加えて、情報デザイン研究も進めていく必要があるものと思われる。
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【付属資料3】実験用ブログに対する評価概要
(1)実験ブログへの総体的評価:
・下図に示すように、実験ブログには、約3割の方々が便利さを感じているが、その管理上、情報の安全・安心には4割以上の方々が注意が必要であることを指摘している。
(2)実際に利用した上での総体的評価:
・下図に示すように、そのコンテンツがプロトタイプ的な実験ブログであったため、情報数が少ないこと、テレビ、ラジオ及び新聞より情報の量が少ないことなどが指摘されている。
一方で、民間からの健康危機情報に興味をもたれた方も多かった。
(3)自由記述による意見・コメント
新しい試みに対して、
・なかなか興味深い
・このブログを利用したい
・色々な情報が入手できる
・初めて読んだ 面白かった
・かなりの情報が得られ、見やすい
・新聞、厚生労働省の情報があって、信頼できる
・個人の感想だけではないので、良いんじゃないかな
・リンクが良くできている
などと、肯定的な意見がある。
一方で、
・さらにクリックしないとみれないので面倒くさい
・(リンク先の)お役所文書で読むのに疲れる
・(リンク先の)お役所のページは読みづらい。ポイントがつかめない
・情報の信頼性が担保されているか疑問
・情報が信用できるかどうか不明
・カラー、絵がない
・トラックバックはともかくコメントはどうするのか気になった(変なコメントも多そうだし)
などの問題点・課題が指摘された。
また、
・予防・対策情報がない
・地域別の情報や年齢別などの情報がない
・罹りやすい人の情報ももっと載せて欲しい。
・健康情報が少ない
・病名検索でツアー情報はいかがなものか?
など、コンテンツと今後の展開への要望なども見られた。
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