1 音楽の学びに役立つ
好きな作曲家は誰ですか? これから勉強していきたい曲のタイトルや歌詞は何語ですか? 好きな曲の楽語は何語で書かれていますか? 憧れの演奏家やオーケストラの活動拠点はどこですか? 研修や留学をするならどこに行きたいですか?
その答えのうち複数がドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイスの一部)と関わるようでしたら、ぜひドイツ語を勉強しましょう。バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームス、ヴァーグナー、ブルックナー、メンデルスゾーン、マーラー、シュトラウス…いずれもドイツ語圏の作曲家ですし、ヴィーン、ザルツブルク、ベルリーン、ミュンヒェン、ハンブルク、ボン、ライプツィヒ、ドレースデン、バイロイト、ツューリヒ、バーゼル、ルツェルンなど、音楽との関係が深いこれらの街はいずれもドイツ語圏です。
2 教養が深まる
世界にはさまざまな言語があります。高校までに学習した外国語といえば英語という人が多いでしょう。けれどもヨーロッパの国々では、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語など、それぞれの国の言語を使って日々の暮らしを送っています。さらに詳しく言えば、それらの言語のなかにもそれぞれの地域の言葉があります。
最近はヨーロッパ諸国でも英語を使えば用事が足りるということが多くなっては来ましたが、それぞれの地域の歴史や文化、人々の生活に深い関心を抱くのであれば、その地域の言語を抜きに考えることはできません。広い視野、深い知識を身につけるためには、できれば大学生のうちに英語以外の外国語も学び、その言語特有の世界の把握の仕方を知ることが大切です。
たとえば、英語には「名詞の性(グループ分け)」がありませんので特に気にする必要がなかったと思いますが、英語のmoon、すなわち「月」のことをフランス語では la lune (ラ リュン)という女性名詞として把握し、イタリア語でも同じく女性名詞の la luna(ラ ルーナ)といいます。ところが、ドイツ語では男性名詞 der Mond(デァ モーント)です。同じ夜空を見上げているようでも、その把握の仕方は言語によって違うのですね。
こうしたさまざまな世界観から生まれた芸術作品は、まだインターネットもメールもなかった昔から互いに影響しあってそれぞれの文化を豊かにしていきました。音楽や絵画や文学や哲学に関してより広く深く知るための鍵としても、ドイツ語はきっと役に立つことでしょう。
3 就職や留学に役立つ
英語に英検などの語学能力証明試験があるように、ドイツ語にも大まかにいって2つの試験があります。日本のドイツ語学習者のために実施されている「ドイツ語技能検定試験」(通称「独検(どっけん)」、ドイツ語名称 Diplom Deutsch in Japan)と、全世界のドイツ語学習者のためにゲーテ・インスティトゥート(本部はドイツ・ミュンヒェン)が実施している、いわゆる「ゲーテ・ドイツ語検定試験」です。
独検ホームページ http://www.dokken.or.jp
ゲーテ・インスティトゥートドイツ語検定試験ホームページ(日本語) https://www.goethe.de/ins/jp/ja/sta/tok/prf.html
独検は5級から1級まであり、3級で初級修了程度の証明になります。そのため、就職活動で履歴書に記載すると有利なのは2級以上と言われています。筆記試験は年2回、夏(6月)と冬(12月)に実施されています。授業で得た知識を深め、語彙を増やし、自分で実際に使えるように、早い段階から積極的に受験することをお勧めします。必修で週2回ドイツ語を学んでいれば、1年目の冬には4級、2年目の夏には3級に対応できます。自習でもっと早く上のレベルの試験に合格することも可能です。
ゲーテ・ドイツ語検定試験にはヨーロッパ共通の基準による言語レベルA1からC2までの試験があります。必要な学習時間という点で独検2級に近いB1以上ですと履歴書の記載に相応しいでしょう。ただし、日本の企業や団体での認知度は独検のほうが一般的に高いようです。
ドイツ語圏の音楽大学に留学するためにはB2が必要なことが多いようです。専攻やそれぞれの学校によって条件が異なりますので、将来、特に正規学生としての留学を希望する場合は、あらかじめ時間に余裕をもって必要な語学能力レベルをリサーチしておきましょう。
これまでの学生の例を見ると、必修ドイツ語の学習を終え、選択ドイツ語で中・上級科目を受講しつつ、2ヶ月の短期語学留学の締めくくりにB1レベルの試験に合格したケースが複数ありました。そして、その上でB2に日本あるいは留学先でチャレンジするというパターンが多いようです。
まだこれからドイツ語を始めようという皆さんにとっては、雲の上のように遠い話に思えるかもしれませんね。でも、皆さんの先輩も大学でドイツ語に初めて触れた人ばかりでしたし、英語が苦手という人も少なくありませんでした。勇気と根気と憧れが原動力です!