研究課題「DNAを標的とする天然抗酸化物質のスクリーニングとその作用機序の解明」が採択されました。
イソチオシアネートの一種であるスルフォラファンの細胞毒性について解析をしました。スルフォラファンは細胞内にとりこまれると、還元物質グルタチオンの還元型と酸化型の割合を変化させることがわかりました。これにより細胞内に活性酸素種が蓄積し、DNA損傷を招いていることが示唆されます。本研究はGenes to Cells 誌(IF: 1.3)に掲載予定です。
掲載誌:Genes to Cells
論文名:Sulforaphane induced transient reactive oxigen species-mediated DNA damage in HeLa cells
著者:Sakine Kobayashi, Seiya Nishiba, Chinatsu Sato, Kazuya Toriumi, Yuduki Someya, Noritaka Adachi, Shigeki Takeda, Aya Kurosawa
フラボノイドの一種であるケルセチンには細胞毒性作用があることが知られていますが、詳細は不明でした。以前の解析から、私たちはケルセチンにDNA二本鎖切断を誘発する作用があることを示唆するデータを得ていました。本研究ではヒト細胞より作製したDNA二本鎖切断修復欠損細胞のケルセチン感受性や外来遺伝子挿入におけるケルセチンの影響を解析し、ケルセチンによってDNA二本鎖切断が生じていることを明らかにしました。また、ケルセチンで処理した細胞から活性酸素種の蓄積が観察されたことから、このDNA二本鎖切断の誘発には活性酸素種が関与している可能性があることも明らかにしました。本研究は横浜市立大学との共同研究によって実施され、Biochem Biophys Res Commun. 誌(IF: 2.5)に掲載予定です。
掲載誌:Biochem Biophys Res Commun.
論文名:Quercetin exhibits cytotoxicity in cancer cells by inducing two-ended DNA double-strand breaks
著者:Yuduki Someya, Shinta Saito, Shigeki Takeda, Noritaka Adachi, Aya Kurosawa
URL: https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2024.150977
来年度卒業研究を行う3年生が配属されました。
第77回日本酸化ストレス学会 第23回日本NO学会合同学術集会にて、口頭発表を行いました。
発表タイトル:ケルセチンによるDNA二本鎖切断誘発とその修復の機構の解析
著者:黒沢 綾1,2,3, 染谷 柚月1, 斎藤慎太3, 武田 茂樹1, 足立 典隆3
所属:1群馬大学 大学院理工学府 2群馬大学 食健康科学教育研究センター 3横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科
日本環境変異原ゲノム学会第52回大会(2023年11月11-12日、福岡)にて、修士2年の染谷さんと修士1年の藤田さんがポスター発表を行いました。
発表タイトル:食品由来フラボノイドケルセチンのDNA二本鎖切断誘発作用の解析
著者:染谷 柚月1, 小林 咲音2, 斎藤慎太3, 武田 茂樹1, 足立 典隆3, 黒沢 綾1,2,3,4
所属:1群馬大学 大学院理工学府 2群馬大学 理工学部 3横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究 4群馬大学 食健康科学教育研究センター
発表タイトル:ゲニステインの細胞毒性機構の解析
著者:藤田 真尋1, 染谷 柚月1, 小林 咲音2, 西場 晟也1, 鳥海 一也1, 武田 茂樹1,2, 足立 典隆3, 黒沢 綾1,2,3,4
所属:1群馬大学 大学院理工学府 2群馬大学 理工学部 3横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究 4群馬大学 食健康科学教育研究センター
来年度卒業研究を行う3年生が配属されました。
重金属の一種であるヒ素にはDNA損傷誘発作用やDNA修復阻害の作用があることが示唆されていますが、詳細は不明でした。DNAは抗がん剤の標的の一つであることから、天然抗酸化物質のなかには、DNA損傷誘発能をもつものがある可能性があります。そこでヒト細胞より作製したDNA二本鎖切断修復欠損細胞のヒ素感受性や外来遺伝子挿入におけるヒ素の影響を調べたところ、ヒ素が相同組換えと一本鎖アニーリングと呼ばれるDNA二本鎖切断修復経路を阻害していることが示唆されました。本研究は横浜市立大学との共同研究によって実施され、FEBS J誌(IF: 5.622)に掲載されました。
掲載誌:The FEBS Journal
論文名:Arsenic affects homologous recombination and single-strand annealing but not end-joining pathways during DNA double-strand break repair
著者:Aya Kurosawa, Shinta Saito, Mikiko Sakurai, Mizuki Shinozuka, Yuduki Someya, Noritaka Adachi
URL: https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/febs.16922
天然抗酸化物質の代表的な生理活性の一つに抗腫瘍活性がありますが、どの天然抗酸化物質においても抗腫瘍活性のメカニズムは十分にわかっていません。DNAは抗がん剤の標的の一つであることから、天然抗酸化物質のなかには、DNA損傷誘発能をもつものがある可能性があります。そこで本研究では、ヒト遺伝子破壊株やDNA修復阻害剤を用いて、任意の天然抗酸化物質がDNA損傷誘発能を有するかを評価する系を構築しました。これにより、任意の天然抗酸化物質によるDNA損傷誘発機構の解析を行う上で有用な情報を再現良く簡便に得られることが期待されます。本研究は横浜市立大学との共同研究によって実施され、その成果がGenes誌(IF: 4.141)に掲載されました。
掲載誌:Genes
論文名:A cell system-assisted strategy for evaluating the natural anti-oxidant-induced double-stranded DNA break (DSB) style
著者:Yuduki Someya, Sakine Kobayashi, Kazuya Toriumi, Shigeki Takeda, Noritaka Adachi, Aya Kurosawa
令和4年度 日本化学会関東支部 群馬地区研究交流発表(2022年12月3日、ウェブ)にて学部4年生の小林さんがポスター発表を行いました。
発表タイトル:スルフォラファンの細胞毒性作用の解析
著者:小林 咲音1, 染谷 柚月2, 西場 晟也2, 鳥海 一也2, 武田 茂樹1,2, 黒沢 綾1,2,3
所属:1群馬大学 理工学部 2群馬大学 大学院理工学府 3群馬大学 食健康科学教育研究センター
来年度卒業研究を行う3年生が配属されました。
日本環境変異原ゲノム学会第51回大会(2022年11月15-16日、広島)にて、修士1年の染谷さんと学部4年生の小林さんがポスター発表を行いました。
発表タイトル:食品由来フラボノイドケルセチンのDNA二本鎖切断誘発作用の解析
著者:染谷 柚月1, 小林 咲音2, 斎藤慎太3, 鳥海 一也1, 武田 茂樹1, 足立 典隆3, 黒沢 綾1,2,3,4
所属:1群馬大学 大学院理工学府 2群馬大学 理工学部 3横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究 4群馬大学 食健康科学教育研究センター
発表タイトル:スルフォラファンの細胞毒性機構の解析
著者:小林 咲音1, 染谷 柚月2, 西場 晟也2, 鳥海 一也2, 武田 茂樹1,2, 黒沢 綾1,2,3
所属:1群馬大学 理工学部 2群馬大学 大学院理工学府 3群馬大学 食健康科学教育研究センター
第75回日本酸化ストレス学会学術集会(2022年5月25-26日)にて、修士1年の染谷さんが抗酸化剤ケルセチンの作用に関するポスター発表を行いました。
ケルセチンはタマネギなどに含まれるフラボノイドの一種であり、抗酸化作用にくわえ、抗腫瘍作用を持つことが知られています。抗酸化作用には遺伝情報を守る作用があるため、両者をうまく作用させれば、体に負担の少ないがん治療につながると期待されます。抗腫瘍作用の分子メカニズムの解明を目標に、ケルセチンの作用を遺伝学的に解析した結果を発表しました。
発表タイトル:食品由来フラボノイドケルセチンのDNA二本鎖切断誘発作用
著者:染谷 柚月1, 鳥海 一也1, 武田 茂樹1, 足立 典隆2, 黒沢 綾1,2,3
所属:1群馬大学 大学院理工学府 2 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 3 群馬大学 食健康科学教育研究センター
基盤研究(C)(研究期間:2022年4月-2025年3月予定)に採択されました。
2021年9月7日より8日まで開催された日本食品工学会第22回年次大会にて、4年生の染谷さんが抗酸化剤ケルセチンの作用に関する発表を行いました。
ケルセチンはタマネギなどに含まれるフラボノイドの一種であり、抗酸化作用にくわえ、抗腫瘍作用を持つことが知られています。抗酸化作用には遺伝情報を守る作用があるため、両者をうまく作用させれば、体に負担の少ないがん治療につながると期待されます。そこで、抗腫瘍作用の分子メカニズムの解明を目標に、ケルセチンによって細胞内でどのようなことが起きているかを解析し、報告しました。
発表タイトル:DNA損傷に着目したケルセチンによる抗腫瘍作用のメカニズムの解析
著者:染谷 柚月1, 鳥海 一也1, 武田 茂樹1, 黒沢 綾1,2
所属:1群馬大学 理工学部 2 群馬大学 食健康科学教育研究センター
GenesにDNA-PKに関する総説が掲載されました。
本総説は、Genes誌(Impact Factor 4.096)の特集号 "Role of ATM and MRE11 in Genomic Stability and Oxidative Stress Responses"の論文の一つです。DNA損傷に応答し、細胞周期の進行の制御の中心を担うATMキナーゼと同じファミリーに属するDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-dependent protein kinase: DNA-PK)の自己リン酸化とその役割、DNA-PKの活性化に関する近年の報告をまとめたものです。
掲載誌:Genes
論文名:Autophosphorylation and Self-Activation of DNA-Dependent Protein Kinase
著者:Aya Kurosawa
本学ダイバーシティ推進センター共同研究促進事業【A型】に採択されました。
上智大学 川口准教授との共同研究課題が採択されました。本助成は群馬大学における研究者が学際的・挑戦的な共同研究のリーダーへと経験を広げるためのポジティブ・アクションに基づくものです。
2019.12.11
第7回国際フードファクター会議(ICoFF2019)/第12回国際機能性食品学会(ISNFF2019)にて、抗酸化剤スルフォラファンの毒性作用に関する発表を行いました。
食健康科学教育研究センターの黒沢助教らの研究グループは、2019年12月1日より5日まで神戸国際会議場で開催された第7回国際フードファクター会議(ICoFF2019)/第12回国際機能性食品学会(ISNFF2019)にて、抗酸化剤スルフォラファンの毒性作用に関する発表を行いました。
スルフォラファンはブロッコリースプラウトなどに含まれるイソチオシアネートであり、抗酸化作用にくわえ、細胞死誘導作用や放射線増感作用などを持つことが知られています。抗酸化作用には遺伝情報を守る作用がありますが、放射線増感作用は遺伝情報の変化や消失を助ける作用です。こうした矛盾を明らかにするため、培養細胞を用いてスルフォラファンの毒性作用の解析を行いました。
本研究は、CERI公募型研究助成のもと、横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 足立典隆教授との共同研究により行われました。
発表タイトル:Analysis of the cytotoxic mechanisms of sulforaphane
著者:Seiya Nishiba1, Shigeki Takeda1, Noritaka Adachi2, Aya Kurosawa1,2,3
所属:1Div.of Mol. Sci., Grad. Sch. of Sci. Tech., Gunma Univ., Japan 2 Grad. Sch. of Nanobiosci., Yokohama City Univ., Japan 3Gunma Univ., Cent. Food Sci. Wellness, Gunma Univ., Japan
2019.8.25-29
16th International Congress of Radiation Researchにてポスター発表を行いました。
2019年8月25-29日に英国マンチェスターで開催された16th International Congress of Radiation Researchにてポスター発表を行いました。本会議は放射線生物学に関する国際会議です。
発表タイトル:Complex genetic interactions between DNA polymerase beta and the NHEJ ligase.
著者:Aya Kurosawa, Noritaka Adachi.
2019.7.29
The FEBS JournalにDNAポリメラーゼβとNHEJとの関係を解析した論文が掲載されました。
塩基損傷は、DNA損傷のなかでも日常的に生じている損傷の一つであり、塩基除去修復(Base Excision Repair: BER)によって修復されます。BER異常により核内に塩基損傷が蓄積すると、DNA二本鎖切断に変換され、DNA二本鎖切断修復経路によって修復されると考えられます。本研究では、BERにおいて中心的にはたらくDNAポリメラーゼβとDNA二本鎖切断修復経路の一つである非相同末端連結においてDNA鎖の連結を担うDNAリガーゼIVをそれぞれはたらかないようにした細胞株(遺伝子破壊株)を作製し、塩基損傷をふくむ様々なDNA損傷に対し、これらの細胞株がどのような表現型を示すかを解析しました。その結果、塩基損傷誘発剤(アルキル化剤)で細胞を処理すると、BER欠損を非相同末端連結がバックアップしていることがわかりました。一方、一本鎖切断を誘発するDNAトポイソメラーゼI阻害剤カンプトテシンに対しては、両経路ともむしろ細胞の生存にとって不利にはたらくことがわかりました。また、塩基損傷やDNA二本鎖切断など様々なDNA損傷を誘発するX線に対しては、BERが非相同末端連結によるDNA二本鎖切断の修復を阻害している可能性があることが示唆されました。これらの結果から、DNA修復経路間にはバックアップや競合といった複雑な相互作用が生じていることが世界で初めて遺伝学的に示されました。
掲載誌:The FEBS Journal
論文名:Complex genetic interactions between DNA polymerase β and the NHEJ ligase
著者:Aya Kurosawa, Hiroyuki Kuboshima, Noritaka Adachi
URL:https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/febs.15012
2018.9.12
本学大学院理工学府若手教員を対象とした海外派遣事業に採択されました。
本事業は群馬大学大学院理工学府の若手教員を海外の研究機関等に派遣することにより、研究の発展、研究意欲及び国際性を向上させることを目的とします。
研修期間:2019年3月15日-2019年12月27日
研修機関:ダルムシュタット工科大学(ドイツ連邦共和国)、Markus Löbrich教授
研究内容:DNA二本鎖切断修復機構の解析
2017.9.5
公益財団法人 日揮・実吉奨学会の研究助成に採択されました。
「ヒト神経幹細胞におけるDNA二本鎖切断修復機構の解析」への研究助成(2,000千円、期間1年)をいただきました。
2017.6.30
放射線生物研究(Radiation Biology Research Communications)に非相同末端連結とその阻害剤に関する総説が掲載されました。
DNA二本鎖切断修復経路の一つである非相同末端連結の活性の亢進は放射線や抗がん剤を用いたがん治療の効率低下の一因とされています。本総説では、現在までに報告されている非相同末端連結因子に対する特異的阻害剤とその効果、問題点についてまとめました。
掲載誌:放射線生物研究 Radiation Biology Research Communications
論文名:非相同末端連結とその阻害剤
著者:黒沢 綾、足立 典隆
2016.5.12
Journal of Human Genetics誌にXRCC4遺伝子の変異を原因とする免疫不全を伴わない原発性小人症に関する総説が掲載されました。
全エクソームシーケンス解析により、原発性小人症の原因の一つがDNA二本鎖切断修復因子XRCC4をコードする遺伝子の変異によることが2014-2015年にかけて相次いで報告されました。本総説ではXRCC4変異とDNA二本鎖切断修復への影響などについてまとめました。
掲載誌:Journal of Human Genetics
論文名:Mutations in XRCC4 cause primordial dwarfism without causing immunodeficyency
著者:*Shinta Saito, *Aya Kurosawa, Noritaka Adachi (* Equal contribution)
2015.4.25
DNA Repair誌に代替末端連結によるDNA二本鎖切断修復におけるArtemisヌクレアーゼの役割に関する論文が掲載されました。
本研究はドイツ連邦共和国 エッセン大学のGeorge Iliakis教授の研究グループとの共同研究により行われ、ヒト遺伝子破壊株を用いた解析から、ArtemisヌクレアーゼがDNA二本鎖切断修復において代替末端連結経路にも関わる可能性が示唆されたことを報告しました。
掲載誌:DNA Repair
論文名:Role for Artemis nuclease in the repair of radiatin-induced DNA double strand breaks by alternative end joining
著者:Mario Moscariello, Radi Wieloch, Aya Kurosawa, Fanghua Li, Noritaka Adachi, Emil Mladenov, Geroge Iliakis
2014.9.24
PLoS One誌に外来遺伝子挿入機構に関する論文が掲載されました。
外来遺伝子挿入(遺伝子組換え)はDNA二本鎖切断修復経路によって行われますが、外来遺伝子中に含まれる配列の特徴と遺伝子挿入、遺伝子組換えとの関係性は不明でした。本研究では、ヒト遺伝子破壊株を用いて、ゲノムとの相同な配列を含むさまざまな特徴をもった外来遺伝子の挿入頻度を解析し、その関係性を明らかにしました。
掲載誌:PLoS One
論文名:Analysis of the Role of Homology Arms in Gene-Targeting Vectors in Human Cells
著者:Ayako Ishii*, Aya Kurosawa*, Shinta Saito, Noritaka Adachi (*Equal contribution)
2014.4.1
群馬大学に着任しました。
群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門に助教として着任しました。