今やほとんどの会社でコンピュータシステムが使われてます。しかし、それでもなぜ仕事は紙が中心なのでしょうか?それが不祥事の原因になっているのかもしれません。
不祥事が起きたときの会社トップの言葉:
「私は知らなかった。」「報告がなかった。」
判で押したように、繰り返される謝罪の言葉となってますが、上席が都合の悪い情報を待ちの姿勢でいいのでしょうか?これは自分が悪いのではなく、現場の担当者の問題と責任回避としか響きません。
自分のミスや都合の悪いことを上席に言いづらいのは人情です。
・原因がわかってから、解決してから・・
人は間違いを起こします。
上席がそのミスをあげつらい、人の問題として「二度と同じ間違いをしないように!」と言っても、業務は改善できません。
・報告しなくてもバレなかった。これからも黙っていよう。
担当者がこのように思ってしまったら、返って悪い方向、すなわち、ますます隠すようになるのではないでしょうか?(図-1 参照)
現場の担当者は決して悪いことをしようと思って、データ(情報)を隠蔽したり改ざんしているわけではないです。
どんな人でも「二度と同じ間違いをしないように!」と上席から𠮟責されたからと言って、ミスを撲滅することはできないです。
しかし、業務で無理な売り上げ増や増産を求められたら、プレッシャーの中では現場は疲弊します。
このような状況では、ミス等がより発生しやすくなりますし、担当者がミスに気が付かずそれを次のステップに回してしまうこともあります。
図-1 会社の不祥事とクオリティカルチャーの醸成
製品品質に関する不祥事が起きたとき、判で押したように「クオリティカルチャーの醸成」が言われます。
会社として「品質向上のための教育が足りなかった」から、不祥事が起きたのだと、よく言われます。
作業は人がするので、担当者に「品質が重要」だから「SOP等に従い業務を遂行」することを教育するのは非常に重要です。
しかし、それでは何かが欠けてしまうと思います。(図-2 参照)
その「何か」とは、変化への対応、すなわち、業務をよりよくするための改善への意欲がだんだんなくなることです。
言い換えれば「現状維持思考」。
日本の製品品質はいいんだと言う錯覚から、失われた30年とも言われている、今の日本の状況を作ってしまったといえるのではないでしょうか。
「クオリティカルチャーの醸成」とは、悪いことを隠さず、間違いを次の発展につなげる活動と言えます。
米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の有名なモットー:
「Good intention doesn’t work, onlymechanism works!」
「善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」
社員のハート(善意)だけに頼って、仕組みは変えない。
これで無理な売り上げ増や急な増産対応にはできないでしょう。
この仕組みを変えるためには、道具であるコンピュータシステムを上手に活用することす。
多くの会社は業務を適切に遂行するためSOP(Standard Operating Procedures 標準作業手順書 )を作成し、それを順守することが求められていると思います。
SOPがあることで作業を標準化できるため、人によって手順の違いや品質のバラつきを防ぐようしてます。いわば、会社の業務ルールと言えます。見方を変えれば、SOPが会社の業務の仕組みと言えます。
しかし、そのSOPが紙中心で業務を遂行することを求めたら、仕組みは非効率のままで、さらなる高品質や多品種生産などに対応するためにSOPを改訂が必要です。それだと業務を変えていこうとするのに時間がかかりすぎ、不祥事の一因ともなります。
さらに、担当者は場合によっては良かれ、もしくは、前からやっていたからと、それが問題だと思っても、担当者だけでなくそれを引きついだ担当者もSOPからの逸脱を続けてしまいます。逸脱が起きていることは、紙では共有化するのが難しいです。
図-2 紙業務の問題点
業務を紙から電子化移行する時、コンピュータ化システム バリデーション(CSV)が必要です。どのようなCSV活動するかについては、厚労省CSVガイドラインにあるので、どのようにCSV活動をすればいいか参考にはなります。
しかし、CSV活動を「当局対応のため」と言って、厚労省CSVガイドラインに忠実に従えば、指摘は受けないかもしれません。しかし、指摘を受けないからそれで本当にいいのでしょうか?
車の運転に例えれば、お酒を飲んで運転しても、「捕まらなかったからよかった。」と同じと言えます。
ミスや間違いを隠さず、それを二度と起こさない仕組みを作っていくことです。
不祥事を起こしてしまったジェネリックメーカでも当然のことながら業務でシステムは使われていたはずです。さらに当局対応のためのCSV活動が行われていたのだと思われ、指摘を受けなかったと思います。しかし、当局対応を意識しすぎた活動の結果、システムを品質向上に向けた活用ができず不祥事を招いたかもしれません。
CSV活動が面倒だからとシステム外の紙業務で逸脱が日常的に行われていたら、時間とともに常態化してしまいます。また紙業務を残すことは、システムを活用した業務効率向上はできません。
仕組みの一つ、例えば、測定器からのデータを紙に記載する方法から、自動的にシステムに取り込まれるようにしたらどうでしょう。これで仕組みが変わり、作業者の負担は減るでしょう。さらに、自動的に適正なデータがシステムに取り込まれていることを事前に検証していたら、そのデータは適正と言えます。(図-3 参照)
しかし、そのシステムが適切に動作しなかったら、もしくは、システム内で簡単に修正(削除)できてしまったら、そのデータの信頼性は確保できません。そこで電子データの信頼性を確保するための厚労省ER/ESガイドラインがあり、それへの対応が必要ですが、ER/ESガイドラインに対応していることもCSV活動で示す必要があります。
例えば、測定器からシステムが正しくデータを受け取り、処理し、保管して出力(データライフサイクル)する。この一連の流れをシステムを使う前に検証し稼働したシステムを使って適切な業務を遂行する。このことを第三者にわかる形で文書として残すことがCSV活動で、電子データが信頼おけるものであるER/ESガイドラインに対応していることもCSV活動の一環として行います。
図-3 作業をコンピュータに一部置き換えたときに必要なCSV活動