四日目

四日目。天気はあいにくの雨模様ですが……。

この日の目標は「熊野古道を行けるところまで探訪し、熊野本宮大社へ参拝すること」です。

前日断念した熊野本宮大社への参拝を組み入れましたが、それでも(比較的)余裕のある日程になっているはず。

まずはここ湯の峰温泉から今日の宿泊先である川湯温泉の宿へ、不要な荷物を預けに向かいます。朝のバスに揺られること20分程度で川湯温泉へ。

文字通り、川を少し掘ると温泉が出るので川湯温泉。夏場は川遊びをしながら温泉に入るという一見矛盾した体験をすることができます。

宿に荷物を置かせてもらいバスを待とうと思ったところ、なんと宿の仲居さんに車を出していただけることになりました。ご厚意に感謝し、熊野本宮前までショートカット。

参拝は戻ってきてからにし、午前のうちに熊野古道探索を始めます。

まずは山中から大斎原の大鳥居を写す有名な構図を押さえ、さらにその先の伏拝王子を目指します。

本宮から伏拝王子までは約3.3キロ、時間にしておよそ1時間程度の道のり。登り坂が続きます。

先程までのコンクリートで舗装された道から一変、突如古道らしさが満点の道が姿を表しました。

ガシガシ登っていきます。

その道のりのちょうど中間あたりにこんな看板が。

地図にも載っているこの展望台から、大鳥居を写真に収めたいと思います。

朝までの雨でぬかるんだ坂道を登って行くと……

かの有名な(?)撮影スポットに到着。新宮川と大斎原の鳥居を望む。

素晴らしい。

朝までの雨が嘘のように日が差してきました。

恐ろしい湿度と温度に見舞われながら、伏拝王子を目指して歩みを進めます。

日本人は神聖な空間に石を積みがち

熊野古道は登る一方ではなく、下り坂も多々。

さらに進んで伏拝王子跡の休憩所に到着。

あまりの暑さと湿度に、死にそうな状況だったので、このタイミングでの休憩所はまさにオアシス。早速飲み物を注文します。

店員のおばちゃんに伏拝王子を目指して熊野本宮大社から登ってきたと話すと、「逆順なんやね~」と言われる。熊野古道はもともと、熊野本宮大社へ参るまでの参道であり、正規ルートは自分の来た道とは逆らしい。

といっている間に頼んでいた温泉コーヒーが到着。これがとても美味しい。容赦なくミルクと砂糖を入れてなお美味しい。

あまりに疲労していたため、追加で「しそジュース」が到着。キリッとした冷たさと、しその酸味が体に染みていきます… そして何より鮮烈な赤が夏!

ここまで来てよかった…

ひとしきり休憩した後、休憩所近くの伏拝王子跡へ行ってみました。

伏拝王子は小高い丘の上にありました。来た道を振り返ると、なかなか高い所まで来ていたことがわかります。

山々の間にわずかに見えるのが、昨日訪れた大斎原です。かつて、この熊野古道を通り熊野本宮大社を目指した人々は、この伏拝王子から聖地である大斎原(熊野本宮大社)を見て、感動のあまりひれ伏し拝んだと言われています。

さて、ここで引き返すのも手だったのですが、休憩所に貼ってあったバス時刻表を確認したところ、次のチェックポイントである発心門王子でちょうどいい時間にバスがやってくる模様。往路と復路は絶対に別のルートにしたいというこだわりを持つうずまのよどみとしては、先に進むの一択です。

伏拝王子を跡にし、発心門王子を目指し歩みを進めていきます。

発心門王子方面へ少し歩くと下り坂になりました。

正規ルートで来た人々は長い道のりの後、この丘を登り、先の眺望に出会ったのですから、その感動はひとしおだったのでしょう。

ひまわりが咲いていて、まさに夏。直射日光がジリジリ照りつけてアツい…

こんなところにも集落はあります。一体どんな暮らしなのだろう…

道中、遺棄された謎のバーベキューレストラン的施設やプール等を抜けると、水呑王子に到着。この時点で伏拝王子から発心門王子まであと半分の地点です。

八咫烏が正規ルートを教えてくれます。残念ながら私は逆順なので、それとは逆向きへ進みます。

道は農村部に続いていました。棚田など山間部特有の立体的でダイナミックな土地利用が楽しい。

Japanese Typical ばあちゃんちみたいな家屋を横目に更に上を目指して歩みを進めていきます。

そしてついに発心門王子に到着。ここまで長かった…

時間を確認すると、さきほど伏拝王子の休憩所で確認したバスの発車時間はもうすぐです。しかし、ここで発心門王子バス停の表示を確認すると……

貴様、謀ったなッ………

休憩所に記載してあったバスの時刻表の情報は古く、実際の発心門王子初のバスはあと一時間後のようです。

マジかよ…………

ということで、ここからさらにひとつ先のチェックポイントである、猪鼻王子まで行ってみることにします。

ガイドブックには約1km程度と書いてあったものの、進んだ先にあったのは極めて勾配の急な坂道アンド崖。バスの時間までになんとか戻ってくるために、バスの発車時刻まで残り1/3になった時点でアラームが鳴るようセットします。

ひたすら山を下っていきます。道中、右は崖、左は渓流みたいな細道をどんどん進みます。

ようやく到着したのが上の写真の猪鼻王子です。ということで、今回の熊野古道探索はここが最深部。急いでバス停まで引き返します。

猪鼻王子から発心門王子に帰る折、上り坂を登った後に見えた景色はなかなかに神聖でした。

難なくバスに乗れていたら、この構図を見ることはなかったでしょう。

発心門王子まで戻ってきましたが、バスの発車まで時間があったため、ひとつ先のバス停へ。

Japanese Typical ばあちゃんち付近でいろいろ写真を撮った後、龍神バスがやってきました。乗り込むとバスは凄まじいスピードで山を駆け下りていき、これが化石燃料の力かと、文明を噛み締めました……

そしてあっという間に熊野本宮大社へ到着。ここまで無事に戻ってこれたことを感謝すべく、参拝させていただきました。

再び旅館の仲居さんに車で送ってもらい、本日の宿、亀屋旅館にやってまいりました。

ここで外の方を見ると、川で外国人さんチームが遊びまくっている…

先程まで地獄のような山登りをしていた身としては、これに加わらない手はない。

川湯温泉を流れる大塔川。川湯温泉はその名の通り、川自体が温泉なのです。川原の石でダムを作り、そこで川底を掘れば底から温泉が湧き出してきて俺温泉が完成し、そして何もしないでも川自体が温水プール状態になっているという、極めて珍しい場所です。

完璧な天気と鮮やかな緑、そして輝く水面に今までの登山でたまった疲労が流れてゆく。

泳いでみたり、流れが急な場所でウォータースライダーをやってみたり、これぞ日本の夏と言っても過言ではない…

最高である。

しばらく川で遊んでいたら、いつの間にか夕方です。険しい山々に遮られ、日はすぐ落ちていきました。

宿に戻りましょう。

かめや旅館は見ての通り、素晴らしい木造建築のお宿です。二階の部屋からは川を常に見下ろすことができます。他の宿と比べやや値ははりますが、公式Webサイトを見た瞬間、ここに泊まるしかないと確信していた宿です。

玄関からこの雰囲気です。

お待ちかね、旅館の広縁との対面。もう文句なしです。

亀屋旅館は夕食も有名。地元の食材に拘った薬膳料理をいただきます。

お釜でご飯が炊けるこぽこぽという音、そして窓を開ければ川の流れる音と虫の音が入り込んできます。なんて贅沢な時間。音のソノリティをありがたがって視聴している場合ではありません。

そうしているうちに、どんどん料理が運び込まれてきます。

どの料理も彩豊で絶品。さらにどれもなんとなく健康に良さそう!

ここでたまらず、缶ビールを一本注文。二人で分けてちょうどいい。一日猛暑の中、山道をあるき通したり、川遊びをしたりした疲れが一気に溶けていきます…

ここまで来てよかった、本当に良かった…

夕食後、星を観に屋外へ。

宿がある地点から少し歩き、光の少ない広場で目を慣らしてから上空を見上げると、山々の間から美しい星空が見えました。空気が澄む冬はなおのこと美しいのだろうなと思いながらしばらく空を見上げていました。

部屋に戻ってTwitterを眺めていると、驚きの情報が流れてきました。

かの熊野交通、三巫女キーホルダーがなんと明日、熊野交通新宮営業所限定で販売開始されるというのだ。

しかも残数は各キャラごとに10個のみ。おそらく初期ロットゆえの控えめオーダーでしょう。紀伊半島の先端である新宮で残数10とは… 仮に東京から始発で出ても新宮駅に到着するのは最速で11:30。これは神が我々に与えた好機としか考えられません。

この機を逃すわけには行かないと、バスで紀伊田辺まで向かう予定を変更。新宮駅まで始発の熊野交通バスで向かうことに。

目指すは待機列の先頭です。

五日目へ続きます。