派遣準備~管理人のアドバイス~
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実際に国際緊急援助隊で活動するための準備や薬剤師としてやるべきこと
海外で大規模な災害が発生し、国際緊急援助隊医療チームの派遣が決定。
そんな時に円滑に活動するために必要なことを、ミャンマーとパキスタンとフィリピンでの経験を基に記述します。
フィリピンではいろいろな便利グッズを携行したので、「ドラえもんのポケットみたい」とお褒めの言葉をいただきました。
しかし、荷物が多すぎてスーツケースやポーチの中はまったく整理整頓されていません…
そんなところも「ドラえもんのポケットみたい」だそうです。
生活面
汗疹(あせも)
ミャンマーでは活動サイト到着後、高温多湿な環境で水浴びがあまりできなかったため、全身に汗疹が出来てしまいました。
私はアルコールの含まれている手指消毒用のジェルとシーブリーズを持っていたのでそれを全身に塗布して、痒みの強い部位にはムヒを塗っていました。
薬局等で汗疹用の塗布剤を購入しておくといいでしょう。
ファブリーズ
特定の商品を推奨するつもりはありません。類似商品でも問題ないかと思います。
衣類を洗濯できない場合やシーツや枕が「ちょっと臭う…」というときにシュッと一吹き。
体に直接吹きかけても問題なし(個人の感想です…)
ポリエステルの衣類
洗濯した後にすぐに乾いてくれます。
使い捨ての衣類
ミャンマー派遣以降、着古した衣類や穴の開いた靴下を溜めておき、パキスタン派遣時に携行しました。
1回着用したらそのまま廃棄。
しかし、綿パンでも同じことをしたところ、尻の部位が大きく裂けてしまいました…
水着・ビーチサンダル
スコールの際に水浴びできます。
降雨量を見誤ると、泡だらけの状態で雨が止んでしまいます…
日焼け止め・サングラス
紫外線からお肌や角膜を守りましょう。
黒いポリ袋
現地空港から被災地(活動地域)への長時間の移動は借り上げたマイクロバスを使用することが多いですが、カーテンがついていないことがあり、直射日光を浴び続けてしまいます。
養生テープで固定しましょう。
ネッククーラー?アイススカーフ?
いろいろな呼び名があるようですが、水を高分子ポリマーに蓄えて首に巻き、熱中症を予防するグッズです。
特に最初の十字テントの設営時は熱中症に要注意です。
←現地の暑さにまだ慣れていない状態での炎天下の活動になることが多いです。
防蚊
マラリア・デング熱・西ナイル熱・日本脳炎・黄熱など蚊が媒介する感染症はたくさんあります。
国際緊急援助隊事務局も蚊帳・蚊取り線香・蚊よけスプレーを準備しています。
私は腕にはめる電池式の蚊よけを持参していましたが、事務局でも準備していました。
今後は事務局の標準装備になると思います。→2010年パキスタン派遣時には携行していなかったようです。
個人としては長袖シャツの携行や蚊の活動時間帯の把握が必要になると思います。
締め切ったテントの中で蚊取り線香を焚くとのどを痛めます。
次回、「蚊がいなくなるスプレー」を試してみます。
防ダニ
現地ホテル等のベッドのダニに悩まされることがあります。
2010年のパキスタンではネズミも出没していたようです(私の部屋には来ませんでした)。
爪切り・歯ブラシ・シャンプー・トリートメント・ボディーソープ・髭剃り・タオル
ふたの外れやすいシャンプーをスーツケースに入れない。
ぎゅうぎゅうに荷物を詰め込んだ結果、惨事が起きました。
ウエットティッシュで拭いとろうとしても、泡立つばかり…
帰国後、風呂場でシャワーをかけ続けました。。。
チャック付ポリ袋
危険なシャンプーはこの中に入れましょう。
ウエットティッシュ(でっかいサイズ)
何かと重宝します。
風呂に入れないときには体を拭いてリフレッシュ。
こぼれたシャンプーには効果なし…
ボックスティッシュ・トイレットペーパー
下痢をしている時にも心にゆとりができます。
マスク着用(N95?)
私はLabuttaからYangonに戻るバス(約13時間の行程)の中で眠っていたため、バスの空調でのどを痛めました。
翌日から熱発し、帰国後も最大38.8度の熱と咳に悩まされました。
移動中、特に寝るときにはマスクを着用したほうがいいでしょう。
常備薬・酔い止め
しっかり休む
海外への災害派遣時には士気高揚して頑張りすぎてしまうことがあります。
そのため、体力があるためにあまり休憩を取らずに仕事をしていると、「オーバーワークをしている」と勘違いされてしまうことも…
周りの人を安心させるためにも、しっかりと休んでいる姿を見せておく必要があります。
パキスタン派遣時には成田空港で、見送ってくれた2人の医師から「お前は頑張らなくていいからな」「休憩を取らないのは救護者ストレスのひとつだよ」と注意されてしまいました…
食生活
ミャンマーではアルファ米・JALのカップ麺・缶詰、パキスタンではホテルの油たっぷりのカレーを主に食していました。
診療活動中の約10日間はこの生活が続きます。
油たっぷりカレーでは”パキ腹”と呼ばれる下痢(水様便)に悩まされる隊員が複数いました。
選択肢は少ないですが、自分の体に合ったものを摂りましょう。
私は”「からだ全体が疲れてる」と感じた…その時!”に服用する”滋養強壮・肉体疲労時の栄養補給”のための第②類医薬品を携行しています。
ミャンマーでは体重60kg→56kg(体脂肪率4%減)となりましたが、パキスタンでは油たっぷりカレーをおいしくいただいていたので体重は1~2kg(体脂肪不明)しか減りませんでした。
軽食・お菓子
ミャンマーミッションは過酷な食生活だったため、気分転換には最適です。
また、子どもたちにあげると大変に喜ばれます。
缶切り・栓抜き・コルク抜き
現地の商店で缶詰等を購入できることもあります。
100均で3つの機能のあるものを売っています。
(十徳ツールの缶切りはかなり使いづらいです)
米ドルの細かい紙幣を持参
1~10米ドル紙幣を持参しておくと何かと便利です。
現地紙幣
空港で20~50米ドル程度両替しましょう。
高額紙幣は小さなお店では受け取ってくれませんので、small billにしておきましょう。
100均で扇子を購入
現地のお世話になった方へのお礼用です。
安くてかさばらないのにとても喜ばれます。
秋冬には売っていないことが多いので、要注意。
フィリピンでは男性が扇子を使用していると勘違いをされることがあるそうです。
100均のLEDライト
S字フック、ハンガー、カラビナ
変圧器・コンセント変換プラグ
電源延長ケーブル・多口電源タップ・USBモバイル電源
スマホやデジカメを充電したいのに、他の人たちが使っていてコンセントが空いていない…
そんなときにも不自由しません。
USB卓上扇風機
ガムテープ・養生テープ
JICAの資機材の中にもありますが、取り出すのは活動サイトについてからです。
それ以前に必要になることもあるので、自分で持参したほうがいいかも…
軍手・皮手袋
テントの設営や資機材の移動の際に手を保護しましょう。
耳栓
パキスタンはほぼ個室で過ごせましたが、他のミッションは雑魚寝です。
いびきの嵐の中でも安眠できます。
アイマスク
安眠のための必需品です。
ロープ
オーバーヒートした資機材搬送用トラックの荷物を軽くするため、隊員が乗るバスにスーツケースを詰め込んだため、悪路を走行していると荷物が崩れてきました。
耐荷重200㎏程度のロープでしっかり固定しましょう。
私の近所のホームセンターでは耐荷重160㎏のロープが30円/mで量り売りしています。
わだちにはまった車を人力で出そうとしない
もう一台のバスとわだちにはまったバス(共に推定200馬力程度)を鎖でつないで引っ張り出そうとしましたが、鎖が切れて何度も失敗しました。
その際、4~5名がバスを押していますが、成人男性は4~5名で1馬力…
400馬力が401馬力になっても、残念ながら意味がありません。
体力を温存しましょう。
バスは後輪駆動が多いので、みんなで後部座席に移動するといいかも…
パスポートの有効期限
有効期限は6ヶ月以上必要です。
所属先の同意
派遣には所属先の同意が必要です。
所属先の上司に「今は忙しい時期だから、いなくなられると困るよ」と言われないように、日頃から理解を得られるよういろいろなアプローチをしておきましょう。
薬剤師としてやるべきこと
携行医薬品の把握
医薬品名・数量・保管場所を把握しましょう。
当サイトの医薬品資料を参照(医薬品の棚卸をする時にも重宝します) (資料は最新ではありません)
上記資料には禁忌や小児薬用量や妊婦・授乳婦への投与に関する情報も含まれています。
現地調達する医薬品の把握
向精神薬は日本から携行できません。
また、ORS(経口補水塩)も現地調達です。
いつ・どこで・誰が調達するのか現地到着前にロジスティックのメンバーと確認しておきましょう。
麻薬の管理
詳しくは登録者用ホームページをご覧ください。
冷所保存
ワクチン・トキソイド・坐剤は日本出発から現地活動中にどのように温度管理するのか、成田空港でロジスティックのメンバーと確認しておきましょう。
冷蔵庫や保冷剤の確保が必要です。
巡回診療パック・隊員健康管理パック・蘇生パック
この中にも医薬品が入っています。
どこにあるのか、何が入っているのか確認しておきましょう。
医薬品の使用期限
国際緊急援助隊事務局が定期的に棚卸をして、在庫・使用期限を確認することになっています。
しかし、使用期限は必ず自分で確認しましょう。
相棒の教育
ミャンマーでは薬局の専属スタッフは2名でした。
しかし、大人の事情で薬剤師は1名しかいません。
もう1名のスタッフに調剤ができるようになってもらわなければなりません。
しかし、調剤過誤があれば、当然のことながらその責任はすべて薬剤師にあります。
(パキスタンとフィリピンのミッションでは薬剤師が2名派遣されています)
処方箋監査
禁忌、用法用量、妊娠・授乳の有無等のチェックは必ず薬剤師が行いましょう。
在庫管理
よく使う医薬品は在庫がなくなる前に、現地調達を検討しましょう。
一般名での医薬品の理解が役立ちます。
2008年10月作成
2015年05月追記