パキスタン洪水被害に係る国際緊急援助隊医療チーム派遣
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国際緊急援助隊医療チーム派遣(2010年9月3日~9月16日)
広域医療搬送訓練 9月01日(水)
DMAT(災害派遣医療チーム)の広域医療搬送実働訓練のため、救命のO先生の愛車ハマーで静岡県の愛鷹運動公園へ。
自衛隊のCH-47回転翼機(チヌーク)を使用して、実際に模擬患者を入間基地に航空搬送する訓練に参加。
私はSCU本部のクロノロ担当。
しかし、”今日、パキスタンのFネットが流れる”との情報があったため、携帯電話を何度も確認…
そして、14:01自動転送されたメールを携帯電話で受信。
「パキスタン・イスラム共和国における洪水によって、死者1600人以上・被災者1700万人以上の被害が発生しているため、9月3日から2週間、23名体制の医療チームを派遣」
同日21時頃、国際緊急援助隊事務局より”私を薬剤師として派遣する”との連絡があり、関係者への連絡や荷造りを始める。
しかし、ニュースで「パンジャブ州ラホールで3件の連続爆弾テロ事件が発生」を報じる。
医療チームが派遣されるのはパンジャブ州。
チリに続いて2回連続での派遣中止という事態が頭をよぎる…
派遣前夜 9月2日(木)
当院から派遣されることになった救命のO先生と手術室看護師のSさんとともに病院長に派遣のご挨拶。
翌朝8時に成田空港集合のため、成田市内のホテルに前泊。
結団式 9月03日(金)
早朝にホテルを出ると、見慣れたJICA関係者の面々が。
同じホテルに泊まっていたらしく、一緒に成田空港へ。
今回は標準の医薬品に加えて、事前調査を行ったパキスタンJICA事務所スタッフの報告を参考に追加の医薬品を携行。
さらに洪水被害のため内科系疾患の患者が多く薬剤師の負担が大きくなるだろうという判断から薬剤師を2名派遣。
成田空港内で結団式。
現地はラマダンによる断食期間中。
しかし、病人・妊婦・旅人は飲食を行ってもいいらしい。
パキスタンのテロリストは大きく2つに分けられる。
1つは海外の援助関係者も攻撃対象にしているがパンジャブ州にはいない。
1つはインドやシーア派を攻撃対象にしていて、パンジャブ州を拠点としている。
テロリストの関心を集めないよう、医療チームの活動に関するメディア規制を行っていく。
バンコク経由でイスラマバードに到着したのは現地時間22時(日本の-4時間)。
146個(2.93トン)におよぶ資機材をピックアップしてホテルに向かい、ブリーフィング終了後にベッドに入ったのは2時過ぎ…
移動日 9月04日(土)
イスラマバードからパンジャブ州のムルタンまで車で移動。
運転はかなり荒いようで、事故を起こしている車両を5~6回見かける。
途中、トラックに幅寄せされて路肩に乗り上げそうになる。
日中は断食をしているため、空腹で気が立っているらしい…
8時に出発して19時に到着。
滞在するホテルシンドバッドでは無線LANでwebにアクセス可能。
しかし、私の部屋では電波が弱いのでフロント近くで接続…
(電波が弱いというよりは、私のPCの問題か…)
夕食は油がたっぷり浮いているカレーを堪能したが、この後もずっとカレーを食べ続けることになるとは思いもせず…
そして、このカレーの油で激しい水様便に悩まされる隊員がいるとは…
診療初日 9月05日(日)
午前6時10分、活動サイトのサナワンに向けて車列を組んで出発。
テロリストの標的になることを避けるため、
①活動サイトは「ムルタン周辺」とだけ公表。
②日が昇ってから出発し、日暮れまでにはホテルに戻る。
③移動中は自動小銃を持った現地警察官の車両が前後を護衛。
(活動サイトでもホテルでも常に現地警察の警備がありました)
途中、近道をするために警察車両が中央分離帯のある片道2車線の道路を100メートルほど逆走する。
2時間弱で活動サイトのルーラルヘルスセンター(RHC)に到着。
RHC内の薬局担当者に薬局の一画を使用する許可を得て薬剤関連資機材を搬入。
しかし、JDRとRHCスタッフそれぞれが独立して診療を行ったため、RHC薬局内にJDRの薬局を配置することは彼らの動線を断ち切る結果となり、配置後1~2時間ほどでテントを設営して移転。
RHC薬局担当者との関係は良好で、RHC採用薬の一覧を提供していただき、重症の喘息患者に対して使用するデキサメタゾン注射薬の供与も受けた。
RHCの薬局では医薬品お渡し窓口が男女別になっておりイスラム女性への配慮がなされていたが、多数の患者に対応するためJDRの薬局では男女混合としたが、現地女性がボランティアで通訳をしてくれいていたため目立った支障はなかった。
写真…上段はRHCの薬局(真ん中の写真の左側は男性用お薬お渡し窓口で正面は女性用)、下段はJDRの薬局テント
医薬品購入&1次隊調剤集計(9月5日~9月12日)
JDR医療チームは日本から約100種類の医薬品を携行しますが、種類・数量の不足により現地での購入も欠かせません。
麻薬(ケタミン)はJICAが麻薬輸出業者免許を取得したために日本からの携行が可能ですが、向精神薬や本邦未承認の抗マラリア薬等を購入するため、私&JICAパキスタン事務所職員&JICA現地スタッフ&運転手の4人でムルタン市内にある薬問屋に行きました。
ジアゼパム注射剤やアーテメーター/ルメファントリン等、必要な医薬品を十分量購入することが出来ました。
通訳&薬局ボランティア
自衛隊部隊が8月後半から同地域で国際緊急援助活動を開始していたため、医療チームは日本語⇔ウルドゥー語通訳をあまり確保できませんでした。
薬局ではJICA現地スタッフのFarooquiさんに英語⇔ウルドゥー語の通訳をお願いしたり、患者としてRHCで受診した患者さんに通訳(英語⇔ウルドゥー語)や調剤の補助をしてもらいました。
バラ錠や散剤の小分け、錠剤の粉砕調剤も彼らに手伝ってもらえたおかげで、多くの小児患者への調剤にも対応出来ました。