ここ何年か情報の整理をあまりしていなかったこともあり、久々にレンズ、カメラなどの現状を偵察したので有益そうな情報をまとめておく。
2023年3月9日の段階での情報。実際には2022年の春に公開しようと思って調べてある程度書いてあったが、気がついたら2023年になってしまっていた。
2023年の2月末にオリンパスから単体で2倍、テレコンを使うと4倍まで撮影可能という M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROというマクロレンズが発売されたのでそこまでの倍率の範囲で高倍率マクロを楽しみたいという人にはこれで十分という選択肢ができた。これを買えばカメラ内の機能で深度合成も可能なので大掛かりな周辺機材を揃える必要もない。CanonのMP-E 65mm以来の純正超高倍率マクロなので少なくとも今後10年はこのレンズでよさそうに思う。焦点距離はテレコンをつけるとさらに長くなり作動距離も十分に長く確保できて、照明も容易で使いやすさと言う点でもかなり優れた製品に見える。オリンパスのカメラの操作性やフォーカスリミットスイッチの使い勝手は私の好みには合わないが、そんなことは些細な問題である。高倍率撮影ではF値が5以上に制限されるなどやや不安に思えるところもあるが、最高倍率での作例や解像力テストなどのレビューが増えてくれば判断もしやすくなるはず。
オリンパス以外のカメラであっても、電子シャッターが使えるレンズ交換式デジタルカメラ、Laowaの2倍までのマクロレンズ(いくつも選択肢があるが個人的なおすすめはLaowa 85mm F5.6 2x Ultra Macro APO)と2.5倍から5倍のLAOWA 25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACROで高倍率域をカバー可能であるが、オリンパスに比べると焦点距離が短いので作動距離が短い(私の感覚からすれば何の問題もないくらい長いが、初心者にはそう思えない時もある)とか、カメラ内機能の深度合成が使えず深度合成をしたければ別途装置を買う必要があるなどのデメリットがある。
5倍以上の高倍率撮影についてはメーカー純正の選択肢が存在しないのは変わらないが、電子シャッターの使えるカメラの選択肢が十分に増えてきた、焦点深度合成をしたければWemacroからレール等の機材が安値で売られているのでこれを買えば済む、といった理由でかなり敷居が下がった。5倍と10倍の対物レンズとそれを使うためのシステムも同様にWemacroで売られているので購入して説明書の通りに組み立てれば最安でほぼ最高の高倍率撮影システムが揃う。使ってみて不満があれば対物レンズをより良いとされるものに変えればよいが、それよりは照明の質や光の当て方などの優先度が高い。室内の安定した環境で撮影するのであればスタンドもWemacroで売られているもので問題ない。カメラのシャッターのようなブレの原因になる機構を排除して撮影が可能な時代になったおかげで固くて重い撮影台でミリ秒単位の振動の減衰について苦心する必要もなくなった。
以下参考
Laowa https://www.laowa.jp/product/
Wemacro https://www.wemacro.com/
マニアックなレンズのテストなど
情報収集として見ることが多いサイト。様々なレンズの性能テストが見られるが結局は一定の性能に届いていれば問題ない。入手性の低い昔の変なレンズを使うのはもはや趣味の話であり、実用を目的にするなら知る必要すらないが、セットアップのコツや性能を引き出すヒントなどは多く得られる。レンズではないが、ストロボ用のパーツに穴を開けてディフューザーに転用するアイディアは便利で真似している。
https://www.closeuphotography.com/
https://coinimaging.com/macro_lens_tests.html
現状の私の機材
古き(良き)ベローズを使ったシステムと有限系対物レンズでほぼ撮影システムが完成していたため、最新のマクロレンズを使ったシステムへ移行せず古いシステムをずっと使っている。ベローズをやめてしまえば新しいシステムに移行できるが、混在させると不便になるためしばらくは古いシステムを使うことになりそう。性能面において利点はほぼないが、現状に慣れていることと、新しいものの性能がよいと言ってもわざわざコストをかけて入れ替えるほどの違いがないことが理由。自由度が高いので新しい撮影条件やセッティングを改造なしで試せるのもありがたいが、実用上あまり意味はない。低倍率用と高倍率用の2系統で運用している。高倍率はこれまでのスタイルのままでいいように感じているが、低倍率用はレールも省略できることもあってオリンパスのカメラ+M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROに置き換えてもよさそうである。
カメラ
Lumix S5:Lマウントフルサイズ。フルサイズ機はマイクロフォーサーズに比べるとセンサーサイズの大きさを感じられることが多くて良い。特に、少し古いマクロレンズに対する印象がかなり変わった。等倍周辺から最大でも5倍くらいまでの低倍率をカバーすることを目的に2021年に導入。解像性能の高いレンズを使う時はハイレゾショットで9600万画素相当の写真を撮ることもできるので高画素機を買わなくてもいいと判断した。振動の発生しない電子シャッターも当然使うことができ、時代の変化を感じる。Nikkor AM ED 120mm F5.6、Printing Nikkor 95mm F2.8、CANON MACRO PHOTO LENS 35mm f/2.8の3つのレンズをベローズで運用している。
Lumix G9:マイクロフォーサーズカメラ。主に高倍率用でNikon Plan Apo 4x/0.2、Nikon BD PLAN 10 0.25 210/0(Dの光路を塞ぐ改造をしてある)を使うことが多い。対物レンズ、特に4倍はフルサイズのセンサーをカバーしないのでセンサーの小さいG9での利用になる。中心部の画質は本当に素晴らしい。10倍の対物レンズは倍率を多少上げ下げしてもあまり像が悪くならず、ベローズとの併用で便利。20倍、40倍、60倍、100倍の対物レンズも使用可能なので高倍率は限界まで撮影可能ではあるが、20倍以上を使うことは稀。
フォーカス移動の自動化
S5はWemacroのレールで運用し、G9はWemacroのMicroMateを改造してオリンパスの金属顕微鏡用のフォーカスブロックに取り付けている。フォーカスブロックにMicroMateを取り付けるとアプリの設定値の1/10の移動量で動くので0,5マイクロメートルのような非常に小さな単位からピント送りができる。
Wemacroの純正レールは精度や移動幅などから最大でも10倍程度までの倍率での運用が向いている。
オリンパスのフォーカスブロック(BXFM-Fというものらしいがどこまでをユニットとしているのか不明)は今も現役の新しい製品のようだが、かなりの重量物を支えられる代わりに装置自体も大きくて重い。古い製品のBHMJがサイズも手頃である。
今の撮影システムはカメラを動かすシステムになっているが、以前手動で撮影していた時は被写体を動かすシステムだった。移動量自体が小さいこともあってどちらでも大きな違いはないが、被写体を動かす方法では移動によって照明と被写体の位置関係が変化する。現実の見た目からのズレの小ささという点ではカメラを動かしたほうがいい。ただしどちらであっても被写体の移動量が小さいので大きな違いはなさそうである。私としては重くなりすぎた撮影システムを軽く簡素にしていきたいので、そのために被写体を動かすやり方に戻ってもいいと思っている。
照明
照明については決定打がないが、演色性の高いLED光源を使うのが様々な面から最適になりつつあるように感じる。近紫外光と3色蛍光体を使ったものが可視光のカバー域が広いが値段が高く既製品のバリエーションが少ない。青色光と2色蛍光体を使ったものは様々な選択肢がある。可視光のカバー域の違いによる撮影結果への影響はあるにはあるので、厳密な色の評価を頻繁にするのであれば良いものを使ったほうがよいだろう。定常光のLED光源については一般電球型あるいはボール電球型と呼ばれているものよりもビームランプ型やハロゲン電球型と呼ばれている形状のものを選ぶことをすすめたい。撮影時に強い光を直視することが多くなるので夜間に撮影していると体内リズムがひどくずれるし、私の場合は撮影を行うのはだいたい夜間なため、翌日以降の生活に支障をきたしがちになる。一般電球型のような半球型の拡散パーツが付いている光源はどうしても明るい部位が視界に入るが、ビームランプ型は発光面を直視しなくていいセットアップをしやすい。さらに広範囲に拡散させる光源より方向性のあるビーム光が出せる光源のほうが同じ明るさの光源でも被写体を明るくできるというメリットもある。最近は超高演色LEDの素子を買ってそれをドライブできる回路とともにイケアのワークランプに組み込んだものを使っているが、改造のベースにしているイケアのライトが販売終了になってしまい困っている。