大腸菌メタロペプチダーゼBepAによるβ-バレル型タンパク質の

選択的分解を支える可逆的な自己活性抑制機構

概要

 大腸菌のペリプラズム空間で働く亜鉛メタロペプチダーゼBepAは、リポ多糖の生合成に働くβ-バレル型タンパク質であるLptDの外膜へのアセンブリを促進するとともに、アセンブリが阻害された場合はLptDを分解除去することで外膜の頑健性維持に働く。しかし、BepAの活性がどのように制御されているかは明らかにされていなかった。最近決定されたBepAの結晶構造では、BepAのプロテアーゼの活性部位が第9ヘリックス(α9)を含むループ状の構造によって覆われているとともに、このループ中にある246番目のHis残基(His-246)が活性中心のZn2+イオンに配位し、基質の分解に必要な水分子の結合を妨げていた。今回、α9を含むループ(α9/H246ループ)に欠失変異を導入したBepAや、His-246を他のアミノ酸に置換したBepAを作製したところ、これらのBepA変異体は恒常的にLptDを分解するようになった。反対に、ジスルフィド結合を導入してα9/H246ループの動きを制限すると、LptDの分解は抑制された。これらの結果から、野生型BepAでは通常はα9/H246ループがプロテアーゼ活性の発現を抑制しており、LptDを分解する際にはα9/H246ループの可逆的な構造変化“ヒスチジンスイッチ”が起こってBepAのプロテアーゼ活性が誘導されるものと考えられる。