中学3年の夏休み、部活動も勝負の県大会に近づいてきて、その先の高校受験が迫ってきていた。暑さ対策で朝から部活動をして、夕方から塾の夏期講習に参加する。そういう生活をしていた。塾にいた社会の先生も、学校の社会の先生も面白くて、暗記は苦手だったが中3でやる公民が大好きだった。塾の先生が塾の近くを選挙カーが通ったときに、「公民で今選挙制度についてやっているし、開票速報とか見ると面白いよ。」と言っていたのもあって、2019年7月21日の夜はリビングで参議院選挙の開票特番を見ていた(以前から選挙がある日は投票も行くし、開票特番もかかっている家だったが)。全然政治の話は分からないし、特定のイシューに関心もなかった。それでも、このお祭りに参加したいと思っていたのは覚えている。
3年後、高校3年の日曜日、2022年の参議院選挙。私は自分の部屋でTBSラジオの開票特番を聞いていた。その3年で、スマホを持ちSNSを使い、社会に接続され、LGBTQ+の運動に少しコミットしたり、フェミニズムを観測したりするようになった。私は、その日、Facebookにこのようなことを書いている。
数日前のセンセーショナルな事件の後、私のTwitterのタイムラインでは「民主主義の擁護のために選挙に行こう」という内容の投稿がよく見られた。 だが私は、そのわかりやすい民主主義を擁護する手法を取ることができない。私は、民主主義を擁護したい。 非暴力的なデモ、イベント、創作など取れる手法は多分ある。だけど選挙よりも明らかに身近でないし、個人的には危険が伴う可能性があるから避けたい(実際にStand for LGBTQ+ Lifeのデモは中止している)。 私たちは知らなすぎる。選挙以外の民主主義の手段を。知れる状況でなくてはいけない。(何をするべきなのだろうか) 選挙という民主主義の手段の難しさを感じる。(中略)
選挙に関心を持つような"政治的な関心がある人"が"政党に関心がある"、"外交、安全保障に興味がある"、"政治思想に興味がある"という意味になってしまっているように感じる。 また多数決である選挙では、マイノリティイシューに関しては取り上げられにくい。(数的じゃなくても討論会で女性活躍などに関しても取り上げられない) 一番身近な民主主義の手法でマイノリティは負け確のように感じる。正直政治が変わるという希望を持てなくなって当然だと思う。そしてどんどん諦めによって投票率が下がるという負のループ。何によってこれが変わるんだろうか。(当時FaceBookに書いたものの一部)
上からもわかるように、強く投票権が欲しいと思っていた。それと同時に、「選挙」に対する難しさと選挙以外の民主主義の手段を考えていた。
大学受験も終わり、2023年4月に統一地方選挙が、私の初めての投票だった。県議会議員と市長・市議会議員。今までほしいと願っていた選挙権を得たわけだが、正直辛かった。あるイシューに対しての願望はあるけど、どの人を選べばいいかはわからなかった。多分今後も選挙があれば投票し続けるだろうけど、これで私の望む政策が行われているように感じないだろう。
そのあと、国会の中で「入管法改正(改悪)」「LGBT理解増進法」が通った。それに対して反対するスタンディングが各所で行われていた。それでも、通ってしまった。私たちの意見は、どこへ消えて行ってしまったのだろうか。「LGBT理解増進法」に関して言うと(私がこれについて関心があるので)、さらに踏み込んだ差別禁止法もできずに、実際の法的利益をもたらす同性婚の法制化もされず、理解増進法の中身も実質無意味どころか、この議論の中でトランスジェンダーに対するヘイトスピーチが拡散されたり、文言に関しても後退したと私は考えている。同性婚を法制化してほしい、もっと言うと性同一性障害特例法の性別変更の要件を緩和してほしい、私の意見はどこへ言えばいいのだろうか。
「選挙」への絶望と、国会に対しての無力感の中で、たまたまある東京新聞の記事に出会った。
この記事はイニシアティブ制度を求める国民発議プロジェクト(以下INIT)の共同代表を務める弁護士の水上貴央さんのインタビューだ。以前、ジャーナリストの今井一さんが倉持麟太郎弁護士の番組でイニシアティブ制度について話していた動画を見たことがあり、これが日本にもあればいいなと遠い世界のものとして考えてはいた。東京新聞の記事を読み、初めてINITというグループが日本に導入することを目指して活動していること、そして資金を求めるためにクラウドファンディングをしていることを知った。
イニシアティブ制度とは、私たち自身が直接、政府や国会に対して[拒否権・発案権・決定権]を行使できる仕組みのこと。国によってルールは多少異なるが、政府に提案し、提案の合法性が第三者機関によって検討され、問題がなければ、署名が集められ、国民投票がなされたりや必ず議会で話し合われたりする。(クラウドファンディングのページより)
私の「選挙」への絶望と、唯一の立法機関である国会に対する無力感を超えて、よりより民主主義を実施する手段として、私は国民発議、イニシアティブ制度を支持する。そしてこの制度の導入を求める運動に対してコミットする。(実際2回ほど賛同者による会合にも参加しているし、そのためにこの文章を書いている。)
もちろん、この制度に対して懸念がないわけでもない。実際海外で「同性婚の禁止」(クロアチア、カリフォルニア州)がイニシアティブ制度を利用してなされたことがある。(参考:諸外国でのイニシアティブの事例) だからと言って私は、この制度に反対しない。今「同性婚を禁止する法律を求める発議」が起こっても、私は反対派として、反対多数で棄却されるように熟議と対話の努力するし、通ってしまっても、戦い続ける。それが私が思う「よく機能した民主主義の形」だと思うからである。もちろん、この国には一応基本的人権を尊重する憲法があり、それに反する法律を作ることはできない(憲法を改正することはできるが)。それにより最低限、守るべきものは守られると思っている(守られないのであれば憲法を改正して守ればいいと考えている)。この点に対してはまだ学習と思索が足りないが、その時の民意によって変えられるべきではないと合意がされている価値は憲法によって比較的強く保護しながら、今の「選挙民主主義」の問題を改善、補完するものとしてイニシアティブ制度(や選挙以外の制度)を利用し民主主義を行うというのが私の今の解だ。(補足的な話だが、カリフォルニア州では、連邦最高裁の違憲判決を受けて現在同性婚を認めている。)
最後に
イニシアティブ制度ができたら、やってくれないことをYESといい、やって欲しくないことにNOということができる。あの法案は通って欲しくない、この制度を法律で作って欲しい、この制度を変えて欲しい、そういうあなたの思いをそのまま政治に反映させるために、選挙以外の時も主権者でいるために、一緒にイニシアティブ制度を作りませんか?そして、政治のこと、社会のこと、私たちのことを自分たちで決めて、自分たちで責任を取りませんか?
INITのクラウドファンディング
私たち主権者が[拒否権・発案権・決定権]を行使できるイニシアティブ制度の導入を
INITのHP
INIT 国民発議プロジェクト
投稿 2023/07/15
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