葉を加工する昆虫「オトシブミ」に対する葉のかたちの影響

植物の葉は様々な形を示しますが、自然界ではどのように作用しているのでしょうか。昆虫による食害はときに植物に大きな被害をあたえます。昆虫の食害に対して葉の形がそれを防ぐようなことはあるのでしょうか。

植食性昆虫のなかには葉を食べるだけでなく、加工するものもいます。葉の形はこうした昆虫による葉の加工を妨げるかもしれません。私は葉を加工する昆虫のなかでも複雑な加工を行うオトシブミの加工が葉の形によって妨げられるのか調べています。オトシブミはメスが産卵の際に葉を一枚丸ごと巻き上げて子供のための「揺籃」と呼ばれる円筒状の葉巻きをつくります。そのうちの1種であるムツモンオトシブミにおいて、寄主植物であるシソ科ヤマハッカ属のなかでも例外的に切れ込んだハクサンカメバヒキオコシの葉がメスの揺籃づくりを妨げることを明らかにしました(Higuchi & Kawakita, 2019)。

オトシブミの仲間は葉を加工する前に葉が揺籃に適切か調べる踏査を行います。メスは切れ込んだ葉では踏査をうまく完了できず、以降の加工が妨げられていました。

これまでにも葉の形が寄主選択に影響することは視覚を利用するいくつかの昆虫で知られていましたが、本研究で葉の形が新たに植食性昆虫の加工行動を妨げることがわかりました。葉を加工する習性はいくつかの節足動物の分類群で知られます。葉を加工する昆虫にとって、母材である葉の形は加工しやすさに影響する重要な要素かもしれません。

Yumiko Higuchi, Atsushi Kawakita (2019) Leaf shape deters plant processing by an herbivorous weevil. Nature Plants, 5: 959–964.樋口裕美子(2020)「昆虫の加工を妨げる葉の形」生態学研究センターニュース 樋口裕美子(2019)「オトシブミと葉のかたちの関係をさぐる」小石川植物園後援会 ニュースレター 第58号