オーストラリア東部はオースティンマーで観察できる2億5000万年前の大量絶滅時の地層です(2019年9月6日撮影)。写真(左or上)中央の黒色層(石炭層)の上限がP-T境界になります。カンブリア紀以降では最大の大量絶滅です。
右(or下)の写真はP-T境界(石炭層の上限)の接写です。石炭層の上に(かなり風化していますが)泥岩層が重なっています。オースティンマーより電車で北に10分程行くとCoal Cliffという崖があり、そこではもっと綺麗なP-T境界地層が観察できるようです。写真は第13回国際古海洋学会(in シドニー)に参加した際に撮影しました。
茨城日立市の5億500万年前の火山岩脈です。茨城大学の田切実智夫先生が発見した日本最古の岩石です。この地層はなんと高速道路高架下の公園の入り口にあるのです。我々が住んでいる身近な場所にも、学術価値の高い地層が人知れず存在するのかも知れません。
日本最古の岩石は5億3300万年前の日立鉱山産銅鉱石(宮田不動川)です。
茨城日立市東連津川林道に露出するカンブリア紀の花崗岩(沢の左下)と石炭紀の礫岩層(沢の右上)の境界です。花崗岩の年代はU/Pb年代測定から、礫岩層の年代は含まれる化石の種類から求めたそうです。また、石炭紀の礫岩層にはカンブリア紀の花崗岩も含まれているそうです。
幅2mにも満たない沢をまたぐだけで1億5千万年のタイムトリップができると考えると壮大な気持ちになります。
埼玉県秩父市長瀞町。変成岩の割れ目に石英や方解石などの白色鉱物が晶出し、まるで鳥の雁(がん)が並んで飛んでいるようです。この独特な並びの割れ目は、岩石にある方向に力(応力)がかかることで出来たものです。割れ目の形状や方向から、岩石にどのような力が加わったのかを推定することが可能です。ちなみに、秩父は「日本地質学発祥の地」と呼ばれており、面白い岩石や地層が数多く保存されています。
千葉県鴨川市天面の海岸(江見層群)。これは付加体に特有の低角断層です。画像の中央を横切る黒い層は、断層運動によって上盤と下盤の岩石が擦れ合って粘土化したものです。また、黒い粘土層の中には周りの岩石がいくつも取り込まれ、変形しています。この取り込まれた岩塊の形から断層の運動方向を推定できるのですが…。いかがでしょうか?
千葉県市原市田淵の養老川沿い。約80万年前〜約77万年前の地層で塊状のシルト岩と薄い砂層から成ります。産出する有孔虫化石の化学分析から、当時の水深は約500mだと思われます。千葉セクションの地層の最上部には、Byk-E(白尾)火山灰層が挟まっています。
約77万2700年前(±7200年)の火山灰で、古御嶽山から噴出したと考えられています(Suganuma et al., 2015; Takeshita et al., 2016)。Byk-E火山灰層の上位1.1mに、最も新しい地磁気逆転である「松山ーブルン地磁気逆転」の境界層があります(Okada et al., 2017)。
千葉セクションの地層はほとんど堆積構造がない塊状シルト岩から構成されているため、地質学に馴染みがない方には退屈かもしれません。そんな時は、養老川の河床に目を向けてください。シルト岩の中にところどころ白い模様が見えます。これは地層が堆積した当時に海底に生息していた底生生物の巣穴の跡です。
底生生物の活動は堆積物をかき混ぜ(生物擾乱)、地質記録をなめす(平滑化)効果があります。これは堆積速度(泥が降り積もる速さ)が遅いほど顕著になります。しかし、千葉セクションの堆積速度は平均2m/千年であり、通常の海底堆積物の10〜100倍も速いのです。それゆえに、千葉セクションは平滑化されていない実際の地質記録を保存している例外的な素晴らしい地層なのです。
約530万年前〜450万年前の地層に入った脆性断層。砂岩泥岩互層がズタズタに切れています。
千葉県富津市寺尾の湊川沿いとその沢沿いで観察できます。約320万年前の地層に挟まった海底地滑りの跡。シルト岩の偽礫の上に凝灰岩のラミナ(葉理)構造が確認できます。左の写真は、シルト岩偽礫が大きく屈曲しており、未固結の地層が流れてきたと考えられます。三浦半島の同じ時代の地層にも同様のスランプ層が報告されており、かなり大規模な海底地滑りの可能性があります。実際、富津市岩本の志駒川沿いの安野層では、このスランプ層による地層の削剥は約9万年分に及びます(Haneda and Okada, 2019)。スケールのツルハシは長さ30cmです。