EDLから編集点マーカー作成
制作背景
映像制作の流れは「企画、脚本、撮影、編集、MAが基本だ!」なんて学校では習うけど、アニメ業界では編集もFIXしないままProTools作業に入り、最悪コンテしか出来てないのに先にMAが終わる。音響に合わせて撮影をしなければならない。
だがしかし。現場は、従来の(というか理想の)ワークフローを固持しすぎていて、大量の無駄が生じている。
スポッティングリテイクの流れ。
音とタイミングがズレているタイムシートに合わせて撮影する
編集でやっと音ずれに気づいてリテイクが出る(口パクが合わない、動きのタイミングが合わないなど)
制作が「カット〇〇の△△のキャラが何コマ目~何コマ目で喋ってるという情報」(SP)をくださいと、編集に問い合わせ
編集が編集タイムラインで確認しながら該当カットのそれを手書きで紙に書き出す
編集からFAXで送られてきた手書きのメモを見ながら手書きでタイムシートを書き換え
リテイクが撮入れされて、新しいタイムシート通りにシートを見ながら打ち直す
リテイクに割ける時間が決して多くもない中、作画修正よりもSPリテイクばかり優先になっている。(こんなリテイク、最初から音聞いて作業してたら出るはずないやん...無駄な時間やな~)と思いながらシート打ち直し続ける。
アナログセルアニメは好きだが、仕事として「昔ながらのやり方」への思い入れはないので今の状況で最善の方法を取りたい。
で、一瞬で作業中カットの音が引けるように、これを作った。
事前準備
本撮作業に入る前にAEPを作成しておきます。1.EDLと音のMIXデータ、ムービーデータの3つを用意します
最初にして最大の関門。編集からEDLをもらいます。AvidだったらAAFファイルになります。もらうのに銭が発生するかもしれません。それが出せない場合は諦めて、このページを閉じ、ムービーを見ながら手動で延々とマーカーを打ちます。
音響からWAVデータを貰います。理想はDialog、SE、Mで分かれているとよいです。なければALLMIXだけでもいいですが、ALLMIXはムービーの音声として付いているはずなので、ALLMIXのWAVは結局必要ありません。MEはMUSICとSEを1本にしたMIXです。これは必要ありません。
ムービーデータは音響作業時に使用したものを用意します。
2.AfterEffectsにインポートします
●音データ
普通にプロジェクトにドロップして読み込み。MEはいらないです。DIALOG,MUSIC,SEの3つを読み込んでください。
●EDL
ファイル/読み込み/Pro Import AfterEffects... を実行します。
読み込み前の設定は初期状態で大丈夫です。不安だったら「Modify Setting」をクリックした後「restore」ボタンで初期化します。
EDL(AAF)ファイルを選択して実行すると、EDLを元にAfterEffects内で自動でコンポを組み始めます。アラートウィンドウが出るまで待ってください。逆に言うと、ウィンドウが出ていない間はまだ進行中ということです。1~5分くらい待ちます。
💡EDLをデスクトップ等から読み込むと早いです。
進行中、急に進捗ウィンドウが消えることがありますが、AfterEffectsの後ろに回ってしまって見えないだけです。この間もAfterEffectsは操作できてしまいますが、事故の元です。タスクバーなどから探し出して、終わるまで確実に進捗を監視します。
完了時に英語で「素材が見つかりません!」的なことを複数回言われますが無視します。なぜなら今回は編集点情報が欲しいので、レイヤーのイン/アウト点が分かれば十分だからです。見つからない素材は仮素材に自動的に置き換えられます。
「Pro Import AfterEffects」を使わずに、AfterEffectsのプロジェクトパネルにドロップでも読み込めます。この場合は待っていれば同じように読み込めますが、進捗のウィンドウが出ず不安になりますのでオススメしません。
3-1.スクリプトを実行します
EDL(コンポとフォルダ)とmov、wavを読み込んだ状態でスクリプトを実行します。5秒位待ちます。
編集点に合わせてマーカーが打たれます。
実行前にスクリプトが必要に応じて、フレームレートを変更することがあります。
実行後に「EDLのコンポと素材を消しますか?」と聞かれるので、特に理由がなければそのまま消して問題ないです。
「#01」のように話数名になっているコンポが作成され、この中にwavのレイヤーがあります。セリフ(DIALOG)とSEの音だけがONになっているはずです。確認してください。
3-2.重複しているマーカーを選択します
同じフレームに複数のマーカーが見つかった場合、このようなウィンドウが表示されます。
フレーム毎に使用するものを1つずつ選択します。ラジオボタンをクリックして使用するマーカーをそれぞれ選択してください。
表示されている情報だけでは決めかねる、という時にはムービーの画を確認しながら設定していきます。左側にある数字のボタンをクリックするとそのフレームまでジャンプできます。
ジャンプ後、コンポビュワーに該当箇所の画が表示されますが、タイムラインの表示はスクロールされません(スクリプトでは無理)。タイムラインパネルでインジケータの位置までスクロールするには、ズームの最大/最小切り替え(メイン側の「+」キー)を1回もしくは2回行うか、PageUp/PageDownキーなどでインジケータを動かすと、インジケーターの位置までスクロールされます。
1kHzと3秒前を揃える
4.ムービーと音データの尺が違う時
普通、映像と音のシンクを取るために本編開始の3秒前に音データに印「ピー音」(1kHz)をつけます。
映像はカウントダウンが「3」になったフレーム(1HスタートだったらTC 00:57:00:00)。
音はピー音が1フレーム分入っている部分。
それを目印に、音のレイヤーをずらして合わせます。映像をずらしてはダメです。マーカーと一致しなくなります。
ウェーブフォームはショートカット「LL」(Lキーを2回)で表示できますが、生成に時間がかかることがあります。30min分のレイヤー4つ(ALL,Dialog,SE,M)を一度に表示させようとすると、「応答なし」になってしまう可能性が高いです。待ってれば帰ってきますが、面倒なのでタイムラインを最大まで拡大(ショートカット「+」キー)して、ウェーブフォームは1レイヤーだけ表示すると無難です。
5.AEPを保存します
既定の場所にAEPを保存します。ファイル名は撮影作業時の話数フォルダに合わせておいてください。
これで準備が整いました。
0KB~100KB程度のファイルが大量に作られる
6.後片付け
「Pro Import AfterEffects」実行後、EDL(AAF)と同じ場所にフォルダが出来て、大量のファイルが入っています。
EDLからコンポを組む際、編集で使っていたムービーデータが存在しないので、その代わりに使用されるダミーファイルです。なので本当は意味のあるファイルなのですが、もう使用しないので削除しておきましょう。
実際読み込むとき
DBボタン
準備しておいたAEPが読み込まれ、コンポの一番上に敷かれます。作業中のカットに合わせて頭出しされていますので、再生すればすぐに音が確認できます。また、設定画面で「DBムービー」をONにしておけばハコヨミと同時に読み込むことも可能です。
レンダリング設定を行っていれば、音付きでムービーを書き出すことが出来ます。
「DBムービー」ONでハコヨミと同時に読み込みが可能に
こんなに便利
1.毎日のラッシュが音付きで見れる。
音付きでラッシュすることで、「オールラッシュで音確認」など後回しにされがちなリテイクの判断をその場で下すことが出来ます。
2.スポッティングリテイクが激減
Take1のときから撮影でシートを直すことで、大きなパクズレやその他スポッティングリテイクを回避できます。
3.エフェクトのタイミングが取りやすい
撮影のエフェクトなども音に合わせたタイミングが取りやすくなります。
Pro Import After EffectsでAAFファイルを読み込めない問題
症状
Pro Importを使用してAAFファイルを読み込む際に「Unable to open selected file.」とメッセージが出て、コンポを生成せずに終了する。
原因
Pro ImportはAAFファイルから一旦xmlファイルを生成し、それを元にコンポを構成していく。そのxmlの中にUTF-8でない文字コードが含まれるときにxmlの解析に失敗して発生する?編集で作成したセリフボールドのフォント名が原因で発生することがあるのを確認済み。
対策
編集で
問題発生するフォントを使わない
ボールドを配置しているビデオトラックを削除してからAAF出力してもらう
撮影で
XMLを手動で修正する