photo by SAKATA Yasuno
鎌倉「自家焙煎珈琲 Shadore」 7/17-8/16. 2024
①展示概要
結崎剛展 EXhibition de YOUQUI Go
〈歌の展開──短歌・印刷・翻訳〉
会場|自家焙煎珈琲Shadore
会期|2024年7月17日(水)–8月16日(金)
時間|日─金:12:00–18:00/土:10:00–18:00(ご来店は17:45まで)
*おひとりさまにつき1点、お飲物のご注文をお願い致します。
自家焙煎珈琲Shadoreにて、歌人・結崎剛展を開催致します。「現代短歌」の渦中から遠く、極小の現在のみを足場に、独り古今東西の詩歌と呼び交わしてきた結崎の歌作は、港の人刊行の歌集『幸福な王子』として、昨年ついにその姿を現しました。
しかし、ようやくその横顔[profil]を見せたばかりのこの短歌の蕩児[prodigue]の孤心の全容は、いまなお明らかではありません。
本展では、歌作・翻訳における新旧作を展示することで、みずからデザインをも手がける印刷物製作者、さらにはアルチュール・ランボー全詩翻訳出版の宿望をもつ翻訳者という側面を照らし出し、求心的に結実した歌をもう一度印刷・翻訳へ遠心的に展開させ、結崎の実践の絶えざる回転運動を全方位へ開示することを試みます。
結崎剛(ゆうき・ごう)
1985年東京生。18歳で歌人・福島泰樹と出会い、短歌を書き始める。
その後アルチュール・ランボー全訳に着手。鳩目で点綴・展開する葉書大の造本形態《Study in Eyelet》を案出し、翻訳詩集や歌集を自主制作する。
さらに歌論やエッセイの寄稿を続ける傍ら、MANDARAKEにてトークショー「天体の反映」(17)、「彼等(THEY)」(19)を主催。2021年2月、田浦「atelier vagabund」にて初のパステル画展「Pastel, Pixel, Poēsie」を開催。2022年3月、ポスター形態の紙上詩「POPOPO」を発行。同4月、「Shadore」他三店舗にて村田文佳個展「floating」を企画。
2023年2月、港の人より歌集『幸福な王子』を刊行。2024年3月、南浦和「ゆとぴやぶっくす」にて個展「幸福な王子」を開催。鎌倉在住。
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第1歌集『少年の頃の友達』(2015)、1st Single歌集『青空の函』(2017)、2nd Single歌集『蕩児』(2019)
[以上ktr版行、自装]
第2歌集『幸福な王子』(2023年)
[刊行 港の人|書容設計・装画 羽良多平󠄁吉]
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展示内容
①:旧作(歌集)|港の人刊行、羽良多平吉の書容設計・装画による最新第2歌集『幸福な王子』(2023)はもちろんのこと、学生時代に編集・発行した合同歌集『彫墓歌』(2004)、著者設計・制作・版行の第1歌集『少年の頃の友達』(2015)、1st Single歌集『青空の函』(2017)、2nd Single歌集『蕩児』(2019)など、現在入手困難な貴重資料を展観。歌人としての現在までの歩みを一望できます。
②:旧作(翻訳)|ヴェルレーヌ、マラルメ、ボードレールらの詩と呼び交わす、鳩目で点綴・展開する葉書大の造本形態《Study in Eyelet》シリーズをはじめ、ポスター形態の紙上詩《POPOPO》、ランボーの詩をスペード・ハート・クローバー・ダイヤになぞらえ、トランプ形態としてまず現れた初期の作品集(2008)などを公開。極小の発表形式を模索しつつついに「回転する書物」へとスライドする翻訳者―印刷物製作者としての側面を開示します。ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』の翻訳など未発表の訳稿を放出。
③:短歌(新作)|作歌のごく初期より、年間50から100首にわたる連作の制作をみずからに課している結崎剛の、『幸福な王子』以降の新作を、あらたな形式で発表。短歌3首を3葉のアートワークとして吊架する。3rd Single歌集のプレデモテープとして会場に初出。
④:翻訳(新作)|結崎剛は短歌を中心に、翻訳と印刷物制作とを遠心的に展開し、「あたらしい日本語韻文詩」の可能性を模索してきました。本展では、短歌とともにその翻訳を展観することによって、歌人の言語に対するアプローチを可視化します。新進気鋭のデザイナー吉見嶺によるWork in Progressで「ランボーのポエジー」を現出。
イベント①:7/27(土)矢崎麦ヴァイオリン演奏会*予約不要
11:30開始[20–30分程度]1ドリンクオーダーにて入場可|
「生まれながらの詩人でなければなりません、ですからこうして自分自身が詩人であることが、私に了解されたのでした。そういうのはもう私のせいなどでは断じてありません。」
多くの音楽家が輩出しながら、クラシック音楽を身近に楽しめる場が少ない鎌倉で、地域の文化と自然に根ざした演奏活動を展開している矢崎麦は、幼少期から歌人・結崎剛を知るヴァイオリン奏者です。
「私とは他者なのです。木材が気づいたらヴァイオリンになっていたってお気の毒さまというだけのこと、無自覚な奴らなど軽蔑することです、自分自身知らないことがらに関してばかりごねているような奴らなんてね!」
そんな若き音楽家と、歌作・翻訳を独自の出版活動により開示してきた文学者との交響を、古民家木材が生まれ変わってできた珈琲屋Shadoreの空間でお楽しみください。結崎剛展〈歌の展開〉開展記念催事第1弾として、矢崎麦によるヴァイオリン演奏会を開催致します。
「私はみずからの思想の孵化にいま立ち合い、見つめ、耳を澄ましています。楽弓をちょっと弾いたとたんに、交響楽が奥深くで鳴り響き、舞台のうえへと躍り出したりしてしまうありさまなんです。」
【引用:アルチュール・ランボー(結崎剛訳)「見者の手紙」】
イベント②:7/31(水) ロシア語詩の夕べ feat. 結崎剛
第8回 ミハイル・レールモントフ*要予約
16:00開場 16:15開始[18:00頃終了予定]¥2,500[Event + Special Blend Coffee]|毎月最終水曜日開催の〈ロシア語詩の夕べ〉は、Shadore焙煎士が当夜限定でブレンドした自家焙煎のネルドリップ・コーヒーを味わい、日本語訳の稀少なロシア語詩1篇について語らう、昼と夜の隙間の夕べの濃密なひとときです。今回は店内で〈歌の展開〉展を開展中の歌人・フランス語詩翻訳者である結崎剛をゲストとしてお招きし、参加者も交えて「翻訳の詩学」を廻る対話の場を展開します。
イベント③:2024年8月14日(水)結崎剛+澤直哉対談〈版・翻・転〉
16:00開場 16:15開始[18:00頃終了予定]*要予約¥2,500[Event + Special Blend Coffee]|『彼等(THEY)』、《POPOPO》他、数多く協働してきたロシア文学研究者・澤直哉との対談。同様に印刷物製作者として版行を重ねつつ共に翻訳を通じ、しかしまったく異なる角度から日本語詩を、その言語を革命しようとする両者は、これまでも多くの対話を交わしてきました。そのテーマはいよいよ本命の《印刷・翻訳・詩》。
対談前に、モジュラーシンセ奏者・安永桃瀬による詩と電子音の新作〈版翻展する空〉を演奏します。15:00開場 15:30演奏開始