メンバー有志が面白いと思った論文を紹介します。
ゼブラフィッシュ初期発生において、Tunneling nanotubes (TNTs)(近隣の細胞間で、細胞質間を連結する細長い構造)様の構造が存在することを示した論文。TNTはこれまで主にin vitro培養細胞で確認/研究されてきたが、初めてin vivoでTNTに構造、機能共に類似した現象を観察した。in vitroでの研究と同様に、TNT様構造はタンパク質だけでなく初期エンドソームやミトコンドリアも輸送することを示している(この点が仮足やCytonemeとは異なる)。in vitroではこうした輸送が特定の細胞型の維持や細胞分化、細胞死などに関与することが知られており、今後、in vivoでの機能研究が進むことが期待される。
(文責: N)
ゼブラフィッシュの初期発生において、モルフォゲンであるWnt5a/bがどのようにして細胞間を伝達されるのか?という論文。
(濃度勾配ではなく)仮足(Cytoneme)によるモルフォゲン分子輸送の最新例であると共に、標的細胞がレセプターを発現していなくても、リガンドとレセプターが結合したまま標的細胞に輸送されてシグナル伝達経路を活性化するというこれまでの常識を覆す現象の初めての報告。
(文責: N)
アオウミウシの卵から成体までの発生過程を飼育下で初めて記載した論文。
chromodorids(イロウミウシ科)では初めてのことで、ウミウシの発生を理解できるようになるか?
(文責: N)
生物には肺や血管といった分岐構造が多く存在する。分岐構造の形成機構については、実験的研究から遺伝子発現パターンや座屈の関与などが調べられてきた。一方、理論的研究からは機械的力と化学/分子シグナルの相互作用の重要性が示唆されていた。しかし、その実証例はほとんどなかった。本研究では、肺の分岐構造をモデルに、(1)組織の曲率が高いと、その場所の上皮細胞でERKが活性化して細胞形態が変化して機械的力を生み出し、組織の曲率が低くなる、という負のフィールドバックループが存在すること、(2)各上皮細胞でこのフィードバックループが働くだけで分岐構造が自発的に形成されること、を示した。
力、シグナル、分子、細胞形態という異なる階層間の相互作用が複雑な組織形態を創出する仕組みを具体的に明らかにした点で意義深い。
(文責: N)