つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
毎年、トマト、キュウリ、なす、ピーマン、スイカ、メロン、、、といった夏野菜を作っています。ここ数年、ようやく苗木に書かれたキャッチコピーの通り、「濃い味」、「甘い!」、「歯ごたえ抜群」、「豊作」、で育てられるようになり、毎日安定的に食することができるようになりました。
実家では祖父母が田畑を作っていましたから、食卓にはいつも季節の野菜が並んでいました。当時当たり前だと思っていたこの光景を、私もこの年になり、自分でも簡単にできるものだと、何となく知ったかぶって野菜作りをはじめましたが、最初の年は、遅霜に見舞われ苗を枯らしてしまったり、肥料の与え過ぎで葉が縮れたり、 受粉が弱く実が着かなかったり、 せっかく実っても虫や鳥に食べられたり、雑草ははびこるは、壁だらけの一年でした。
近所の先輩に聞いたり、 ネットで調べると、それぞれの失敗にはそれぞれきちんとした原因がありました。毎日毎日野菜の成長や変化、状態、異常を察知し、定石どおり、適切なタイミングで適切に対処しなければならなかったのです。
ゴールデンウィークが明け、霜がおりなくなったころ、畑に元肥、石灰、堆肥を入れ耕し、畝をつくります。マルチを敷いて、苗を植えます。苗を植えると1ヶ月に30cmほどの速さでぐんぐんと伸びていきます。トマトは、毎日のように脇芽が出ますが、そのままにしておくと、四方八方に伸び、至る所に花が咲き、実に養分がいきとどかなくなります。水をやりすぎると実が割れてしまいます。定期的な追肥をしないと実が大きくなりません。成長ごとに支柱でしっかり支えないと自重で茎が折れ枯れてしまいます。そして時期遅く咲かせた花の実は熟さずに季節が終わります。
野菜を作りながら、何か子育てに通じるものを感じています。そして、もっと祖父母の手伝いをして野菜作りのノウハウを学んでおけばよかったと感じるのでした。
「算数なんて将来使わないって聞いたから勉強しても意味がない。」
例年通り、算数の授業で応用問題を解いていた時に今年も生徒の一人がぽそりと言いました。確かに専門職に就かない限り計算以外使わないでしょう。日々なんとかして数学の必要性や便利さ楽しさを伝えたく思っています。
庭で友人家族とバーベキューをしながらゆっくりと他愛のない話をするのが好きで、子供らの成長とともに、ウッドデッキや、流しソーメンマシーン?を作ったりしてきました。そんな中、話の勢いでピザ窯を作(らされ)ることになりました。DIYは好きですが、もちろんこれまでにピザ窯など作ったことはありません。設置場所を測量し、窯と窯や薪を雨から守る屋根の全景をラフスケッチし、設計図に落として・・・、完成形の想像を膨らませるこの作業は中はとても楽しい時間です。
設計図をもとにレンガやセメント、材木などのサイズや量をし材料を調達します。庭に搬入してみるとものものしい量となり、塾に来る生徒は「何が始まるのか」と興味津々でした。
まずは地ならしです。地面を掘って、型枠を作って、鉄骨を入れ、コンクリートを練っては流し練っては流し・・・、ブロックを積んでコンクリートで固めて基礎を作りました。
思いのほかの重労働と終わりの見えない作業で、老体が悲鳴をあげるのでした。
基礎が固まるの待って、ようやくピザ窯本体のレンガ積みを行います。レンガに耐火セメントを塗って設計通りに並べ、レンガが水平に並ぶように地味に神経を使いながら、それをひたすら繰り返すといった単調な作業を繰り返していると、どうしても早く先に進みたくなってきてひとつひとつの処理が雑になっていることに気づきます。夜な夜な欲張ってやった作業を翌朝改めて見ると、出来が悪くて結局やり直しすることになり余計な時間と労力をかけることもありました。
「面倒くさいと気が滅入った時こそ、ゆっくりでもいいから、ひとつひとつ確実に積み上げていけば、いつか必ず完成する。」
窯の上部はレンガをアーチ状に積もうと考えました。直方体のレンガで半円を描かねばなりませんが、レンガとレンガの間隔、角度を綺麗に仕上げたいところです。
まず木でかまぼこ型の土台を作り、その上にレンガを乗せていくことにしました。
次に、端材を三角形に切ってクサビ(楔)を作りレンガとレンガの間に入れることにしました。
ここで、数学の登場です。レンガの外周と内周をそれぞれ円周率を使って2πrで求め、その長さの差から三角関数のtanθ(タンジェント)を用いて、間につめるクサビの鋭角の大きさを求めました。
このクサビをはさみながらレンガを等間隔に並べて、隙間にコンクリートを流し込んで完成です。
うまくいきました。
「数学があれば人生が楽しくなるでしょ!」
得意げに生徒に説明したのですが。
「別に将来ピザ窯を作ろうとは思わないし・・・。」
「あのぅ、そういうことじゃなくてね・・・。」
数学の楽しさを伝えること、難しい課題です。