研究の視点
Ⅲ 研究の視点について
本研究会では、研究主題「自らの生活を豊かに創造する子どもの育成」に迫るため、次の研究の視点をもって研究を進めていきます。
視点1 家庭科におけるカリキュラム・マネジメント
家庭科では、家族の一員として生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度を育成することが、教科の最終目標として明確に示されています。つまり、身に付けた知識及び技能を活用して、家族や地域の人々との関わりの中で、生活をよりよくしようと工夫する能力と進んで実践しようとする意欲的・実践的な態度を育てることが重要です。
そのために、教師が子どもの実態を把握し、小中5年間の見通しをもち、教科目標に示された資質・能力やそれらの育成につながる指導の在り方を的確に捉え、家庭科で目指す資質・能力の系統や学びの過程について考えていく必要があります。
まず、題材配列では、学習の効果を高めるため、基礎的な内容から応用的な内容へ、簡単な内容から難しい内容へ、段階的に配列します。反復が必要なものについては、題材での位置付けを明確にして指導計画に盛り込む工夫や、A~Cの指導内容の関連を図った題材構成の工夫なども大切です。次に、学びの過程では、子どもが「見方・考え方」を働かせ、題材を通して見通しをもち、日常生活における課題の発見や解決に取り組んだり、知識・技能の習得に粘り強く取り組んだり、実践を振り返って新たな課題を見付けたりする、主体的態度を育むようにすることで、日常生活と結び付けた問題解決的な学習を効果的に取り入れることができます。このような学びを通して、子どもが学ぶ意味を理解し、自分の具体的な課題をもち、知識・技能を活用して解決方法を考え、実験・実習等の計画を立てるといった問題解決の過程の工夫や改善をし、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の充実を図っていくことができると考えます。さらに、学習したことを家庭生活に生かし、自分にもできるようになったという達成感を味わったり、家族や周りの人の役に立ったりした経験が、継続的に実践しようとする意欲や態度につながると考えます。
また、学校や地域の実態を適切に把握し、教科横断的な視点で組み立てていくことや、教育課程の実施に必要な人的・物的資源等を確保するとともにその改善をはかり、社会に開かれた学びの実現を目指すことも大切です。
このように、子どもや地域の実態を把握しながら、題材配列を工夫し、小中5年間の見通しをもった指導計画を立てた家庭科におけるカリキュラム・マネジメントに取り組みます。
視点2 学習指導と評価の工夫
家庭科では、従前より問題解決的な学習を重視していますが、これからは学びの過程がより明確に示され、一層の充実が求められています。新学習指導要領の第3の1(1)には次のように示されています。
題材など内容のまとまりを見通して、その中で育む資質・能力の育成に向けて、児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際、生活の営みに係る見方・考え方を働かせ、知識を生活経験等と関連付けてより深く理解するとともに、日常生活の中から問題を見いだして様々な解決方法を考え、他者と意見交流し、実践を評価・改善して、新たな課題を見いだす過程を重視した学習の充実を図ること。
この配慮事項では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業の改善に当たり、家庭科の学習を新たな視点から見直して改善し、各題材の内容や時間のまとまりを見通しながら資質・能力を育成する三つの柱「何を理解しているか・何ができるか(知識及び技能)」「理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力・人間性等)」が偏りなく実現するよう授業の質を高めていく工夫が求められています。
主体的な学びの実現においては、見通しや振り返り、新たな課題発見がキーワードとなります。対話的な学びの実現においては、家族や身近な他者との関わりを通して子ども自身が自分の考えを広げ、深めることができるようにします。つまり、身近な生活から問題を見付け、課題を設定し、解決方法を考え、実習や実験、観察を通してその課題を解決し、解決方法や結果を評価・改善する一連の学習過程の中で、「生活の営みに係る見方・考え方」を働かせることを通じて、より質の高い深い学びにつなげることが重要です。
「生活の営みにかかる見方・考え方を働かせ」とは、家庭科が学習対象としている家族や家庭、衣食住、消費や環境などに係る生活事象を「協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承、持続可能な社会の構築」等の視点で捉え、生涯にわたって、よりよい生活を工夫することを示しています。この視点は、家庭科で扱うすべての内容に共通する視点であり、相互に関わり合うものです。題材構成や年間指導計画を立てる際にはいずれの視点を重視するのかを適切に定めることが重要です。
また、これまでのように衣食住などの生活の中の様々な言葉を、実感を伴って理解する学習活動や、生活の課題を解決するために、言葉や図表などを用いて考えたり根拠を明らかにして説明したりする言語活動の充実を図り、考えた過程を大切にします。その際、ICT機器を効果的に活用することも有効です。このような過程を通して、家庭科が目指す思考力・判断力・表現力等も豊かなものとなると考えます。
学習評価については、教科目標の実現状況を見ると同時に、指導計画や評価方法等を見直して学習指導の改善に生かす、すなわち指導に生かす評価を工夫して、指導と評価の一体化を図ることが重要です。学習評価を通じて、家庭科で「何が身に付いたのか」を的確にとらえ、子ども自身の学習改善につなげると共に、学習指導の在り方を見直すことや個に応じた指導の充実を図ることも大切です。PDCAサイクルを確立し、指導と評価の一体的な取組を通じて、子ども一人一人に確実に資質・能力を育んでいきます。
視点3 今日的な課題への対応
家庭科における学習内容の定着を図り、一人一人の個性を生かし伸ばすようにするためには、子どもたちの特性や文化的背景、生活体験などを把握し、誰もが安心して豊かに学べる授業づくりに取り組むことが大切です。時には、ティームティーチングや少人数指導を取り入れたり、教材・教具を工夫したりするなど、個に応じた指導を充実することも必要です。また、一人一人が自らの学習課題をもち、興味・関心等に応じて学習コースを選択することにより、意欲的に追究する学習を進めることも考えます。その際、ICT機器を適切に活用することも有効です。
また、現在のコロナ禍における家庭科指導の充実と改善に当たっては、各学校が学校や子どもの実態に応じて、意図的・計画的な2年間の指導計画を立てカリキュラム・マネジメントを行っていくことが一層大切になってきます。これまでも家庭科で大切にしてきた、題材構成や題材配列の工夫、小中の系統性に加え、ガイドラインに沿った実習の実施や感染症予防のための工夫も必要不可欠です。