安定なシステムのインパルス応答は,多くの場合指数収束する性質を示します.
この指数収束性を組み込んでインパルス応答を推定する手法は,(機械学習のカーネル法の考え方を用いていることから)カーネル正則化と呼ばれています.
カーネル正則化は,二乗誤差と二次正則化項の和からなる評価関数を最小化することでインパルス応答を推定します.
特に注目している具体的な研究内容として,
正則化項の設計
特に大規模系における効率的な最適化
入力信号設計
音響系,機械系への応用
が挙げられます.
下図は音響系でカーネル正則化を用いた例となっています.詳細については,
Yusuke Fujimoto, Yuki Okamoto, Ken Takaki: Efficient Implementation of Kernel Regularization based on ADMM and Its Application to Room Impulse Response Estimation, IEEE Access, Vol. 12, pp. 152721--152729, 2024. (open access)
をご覧ください.
カーネル法を用いて推定されたインパルス応答のスペクトログラム.
右図と比較すると,指数収束性を加味することでノイズの影響が軽減されている
最小二乗法を用いて推定されたインパルス応答のスペクトログラム.
非線形ひずみによるパルスの影響と,全体的なノイズの影響が見える.
https://github.com/yfujimoto1990/matlab-kernel-based-regularization
モデルを構築することなく,観測データから直接制御器を構成する方法をデータ駆動制御と呼びます.
データ駆動制御は
モデル化誤差の考慮が不要
モデルを構築・推定する工数を削減できる
実稼働中データからの改善が可能
などの利点があることから,近年注目を集めています.
特に,一度の予備実験から制御器を調整する手法はOne-shotと呼ばれます.
これまでに行ってきた研究として,
One-shot予備実験からのフィードバック制御器の調整
One-shot予備実験からのフィードフォワード制御器の調整
One-shot予備実験からの最急制御を達成するフィードフォワード入力設計
などが挙げられます.
下の図は,入力上下限の存在下で最も早く目標値へ収束させるフィードフォワード入力を,One-shotの予備実験データから計算する研究の結果です.
なお,この結果は実際のモータで得られたものとなっています.
詳細については
小薗貴寛,藤本悠介:入力制約下で最適サーボ系を実現するデータ駆動型フィードフォワード入力設計,計測自動制御学会論文集,Vol. 59, No. 3, pp. 153--161, 2023. (open access )
をご覧ください.
入力信号を表すグラフ.横軸は時間,縦軸は電圧.
学習後の入力信号は,上限いっぱいの電圧を印加した後に急制動を行うものとなっている.
出力(角度)を表すグラフ.横軸は時間,縦軸はrad単位の角度.
学習後の結果では,出力が目標値である90度へ急速に収束する様子が確認できる.