研究

研究分野

実証ミクロ経済学 (政治の経済学、産業組織論、法と経済学) 、計量マーケティング

消費者・患者・医師・地方銀行・投票者・政治家・タクシードライバーといった様々な行動主体のミクロデータを利用した実証的な研究を、産業組織論・政治経済学・法と経済学・計量マーケティングといった分野で行っています。

いわゆる構造推定アプローチといわれる手法を用いてゲーム理論的なモデルを推定した上で、未実施の政策・施策・制度の変更を行った場合にどのような結果が得られるかをシミュレートするタイプの研究と、より記述的に経済学的な因果推論を用いて仮説を検証するタイプの研究の両者を行っています。

ミクロデータが利用可能であれば、政府・企業との共同研究についても積極的に取り組みたいと考えておりますので、ご連絡頂けると幸いです。

査読論文


Designing Cotext-Based Marketing: Product Recommendation under Time Pressure” (with Kohei Kawaguchi and Kosuke Uetake), 

Management Science, 67(9), 2021, pp. 5642-5659.

商品オススメはどのようにデザインするとよいのか?消費者に提示されるメニューがどのように消費者のAttentionに影響するかを、タイムプレッシャーがある状況で、購買行動につながるかのメカニズムを詳細に記述するモデルを推定しました。その上でタイムプレッシャーも考慮した最適オススメデザインに従ったマーケティングを行った場合の反実仮想分析をし、消費者属性によるターゲティングを上回る結果となることを示しています。英語一般向け記事


Voter Turnout and Preference Aggregation” (with Kei Kawai and Yuta Toyama)

American Economic Journal: Microeconomics, 13(4), 2021, pp. 548-586.

自由投票の選挙では、投票コストの低い人や選好の強い人の選好がより強く反映されます。では、その人たちはどのような人たちで、どのような政治的選好を持っているのか?そのための計量的方法論を示しながら、2004年の米国大統領選挙のデータを使い分析しています。


Effectiveness of Product Recommendation under Time and Crowd Pressures” (with Kohei Kawaguchi and Kosuke Uetake), 

Marketing Science, 38(2), 2019, pp.253-273. 

商品のオススメはどのような時により有効なのか?JR東日本の駅にある自動販売機での実験を通して、タイムプレッシャーや周囲の人がいる場合、オススメの有効性がどのように影響をうけるのかを分析しています。日本語一般向け記事


Do Risk Preferences Change?  Evidence from the Great East Japan Earthquake” (with Chie Hanaoka and Hitoshi Shigeoka), 

American Economic Journal: Applied Economics, 10(2), 2018, pp. 298-330. 

多くの経済的な意思決定は、その人がどの程度リスクを取る人なのか(リスク選好)に依存します。このリスク選好、人生を揺るがすほどの強い恐怖に曝されることで変わってしまうのかもしれません。2011年の東日本大震災前から継続されていたパネル調査を用いて分析しています。興味深いことに男性にだけ影響が出ました。日本語一般向け記事


Equity Bargaining with Common Value” (with Makoto Hanazono). 

Economic Theory, 65(2), 2018, pp. 251-292.

山分けするパイの大きさが毎日変わるのに(例えばM&A対象の事業価値)、その大きさについて断片的にしかわからない状態で、どのように情報を共有しながら交渉するのが良いのか?本当にパイが大きいときに合意して、小さいときはお互いに待つことができるのかを考えます。


The Impact of Physician Supply on the Healthcare System: Evidence from Japan’s New Residency Program” (with Toshiaki Iizuka) 

Health Economics, 25(11), 2016, pp. 1433-1447. 

医師の供給は医療にどのような影響を与えるのか?日本における臨床研修医制度変更にともない、これまでの大学医局による医師派遣が崩壊してしまった市場において、医師の賃金や病院へのアクセスにどのような影響がでたのか?結果として患者の健康にどのような影響がでたのか?


Inferring Strategic Voting” (with Kei Kawai)

American Economic Review, 103(2), 2013, pp. 624-662.

好きだけど勝ち目のない候補に投票して死票になるくらいならまぁまぁだけど勝ち目のある候補に投票しよう、という考え方(戦略的投票)をする人はどれくらいいるのか?戦略的投票を許容したモデルの推定方法を提案するとともに、日本の2005年の衆議院選挙のデータを使って分析しています。


Estimating Supermodular Games using Rationalizable Strategies” (with Kosuke Uetake) 

Adanvaces in Econometrics, 31, 2013, Structural Econometrics, edited by Matthew Shum and Eugene Choo.

スーパーモジュラーゲームと呼ばれるゲームではプレイヤーのもっともらしい行動(Rationalizable Strategy)が束(lattice)構造を持ち、弱順序の意味で2つの極端なナッシュ均衡に挟まれていることがしられています。この性質を利用してスーパーモジュラーゲームを推定する方法を提示しています。


Delivering Bad News: Market Responses to Obstetricians’ Negligence” (with David Dranove and Subramaniam Ramanarayanan),

Journal of Law and Economics, 55(1), 2012, pp. 1-25, (Lead Article)

生産者に品質の責任を持たせる方法として、市場によるもの(粗悪品は売れない)と法律によるもの(製造物責任による賠償)があります。しがし無責任な財・サービスを提供した際どのように市場で罰せられるのか(前者)についてはほとんど知られていませんでした。医師のサービス市場のデータでこの効果を分析しています。


A Note on Estimation of Two-Sided Matching Models” (with Kosuke Uetake),

Economics Letters, 116(3), 2012, pp. 535-537.

安定結婚問題(マッチング問題)のモデルをデータを用いて推定する場合に、モデルの解がPre-matchingと呼ばれる写像の不動点となっていることを利用して推定する方法を提示しています。


Influence and Deterrence: How Obstetricians Respond to Litigation against Themselves and Their Colleagues” (with David Dranove)

American Law and Economics Review, 12(1), 2010, pp. 69-94

裁判で訴えられやすいほど、もしもの裁判に備えてより安全な方法で財やサービスを提供しようとするインセンティブがあります。出産においては帝王切開はより安全で医療過誤の起きにくい方法だと考えられており、医師が帝王切開を選ぶ確率が本人と周囲の医療過誤訴訟によってどう影響を受けたのかを分析しています。


Ministerial Weights and Government Formation: Estimation using a Bargaining Model” (with Takanori Adachi) 

Journal of Law, Economics, and Organization, 24(1), 2008, pp. 95-119

政治家は大臣ポストの軽重をどう考えているのか?ゲーム理論的な交渉モデルを用いて計測する方法を提示するとともに、1955年以降の自民党政権の組閣データを用いて計測しました。結果は運輸大臣や建設大臣といった利権の多いポストは法務大臣のようなポストの2倍以上の価値と考えられていたというものです。


Working Papers


“Learning and Bargaining in Dispute Resolution: Theory and Evidence from Medical Malpractice Litigation,” 

Econometrica, Reject and Resubmit


Entry by Merger: Estimates from a Two-sided Matching Model with Externalities” (with Kosuke Uetake). 

RAND Journal of Economics, Revise and Resubmit


“Physician Careers, Entrepreneurship, and Health Outcomes" (with Toshi Iizuka)

Quantitative Economics, Revise and Resubmit


“Yardstick Competition and Electoral Cycles: The Case of Healthcare Subsidy” (with Hitoshi Shigeoka)


"AI, Skill, and Productivity: The Case of Taxi Drivers" (with Kyogo Kanazawa, Daiji Kawaguchi, and Hitoshi Shigeoka)

AIは仕事にどのような影響を与えるのか?特に、AIは生産性にどう影響をあたえ、その影響は労働者のスキルレベルによってどのように異なるのか?仕事間でどのようにインパクトが異なるかの分析はあるものの、特定の職業についてその職業内での詳細な分析は存在していません。ここではタクシーに需要予測AIが導入された際の詳細なミクロデータ(個々の空車走行に関する詳細なデータ)を用いて分析しています。


“Estimating the Degree of Experts’ Agency Problem: The Case of Medical Malpractice Lawyers”