急にフーとなる。目の前が真っ暗になって倒れそうになると言うのは脳貧血の症状である
「めまい」がすると訴えられる方のうち、例えば急にフーとなるとか、頭または体がふわっとする、目の前が急に暗くなる(立ちくらみ)、一瞬気が遠くなると言うような症状を訴えられる方があります。これは脳貧血、すなわち脳への血液の流れが一瞬、途切れることによって起こる症状で、急に血圧が下がった時、あるいは心臓や血管系に問題がある時に起ります。
頭に行く4本の血管のうちのひとつである椎骨動脈は、頭の中に入って脳底動脈というという動脈になり、その先は後大脳動脈という動脈につながって終わります。この。そこで、脳へ行く血液の流れが悪くなった際に、動脈の一番先にある部分の症状が真っ先に出ることになるのですが それが後大脳動脈が血液を送っている後頭葉にある視覚中枢です、この視覚中枢の血液の流れが悪くなった時の症状が、目の前が真っ暗になったり(眼前暗黒感)、目の前が真っ白になったりする症状なのです。そして、さらに血液の流れが悪い状態が続きますと、より心臓に近い脳底動脈の部分の症状が出ることになるのですが、この脳底動脈が血液を送っているのが脳幹部というところで、ここには平衡感覚を司る前庭神経核、あるいは意識の中枢などがあります。そこで、この脳幹部の血流が悪くなるとフラフラしたり、めまいがしたりしますし、ひどい時には意識を失って倒れたりすることになります。
この脳貧血により気を失って倒れた場合、これを失神(しっしん)と呼びます。この脳貧血症状の原因は、若い方と年配の方では異なっており、分けて考える必要があります。
年配の方では、頭へゆく血管に動脈硬化のせいで狭いところが出来て、そのせいで血液の流れが悪くなって起こるような場合を考えておかねばなりません。あるいは、心臓に不整脈が起こり、そのせいで、時々、心臓が止まってしまうような場合もあり、そうなりますと脳へ血液がゆかなくなってフーッとなったり、失神を起こしたりすることになります。
一方、若い方では、頭に行く動脈に、ひどい動脈硬化が起こっているとは普通、考えられません。そこで、その原因としては、例えば起立性低血圧(急に立った時に血圧が下がって、脳貧血の症状からフーとなる。自律神経の弱い方に起こりやすい)あるいは朝礼で長い間立っていた時に脳貧血(自律神経の緊張が急に弱くなって、末梢の血管が開くため血液が下半身にたまって、脳への血液の流れが減ることによる)を起こす場合などが考えられます。
それ以外に若い男性で、夜中に排尿した途端に血圧が下がって失神をきたす場合(排尿時失神)、あるいはもともと低血圧で普段から立ちくらみがある方で、お風呂で長湯(血管が拡がって血圧が下がります)をして湯船から出た途端に失神をきたす場合などがよくみられ、特にアルコール飲酒(血管が広がって血圧が下がります)の後にしばしば起こります。
しかし、稀には不整脈などで一瞬心臓が止ることによる場合(洞不全症候群など)もありますので、一度は心臓を含めての精密検査を受ける必要があります。