患者さんからの質問
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血液検査
1, 日頃、脂っこいものはほとんど食べていないのに、血液検査でコレステロールが高いと言われました。なぜですか?
2, 健康診断を受けたところ、LDLコレステロールが高いので動脈硬化の危険があると言われました。LDLコレステロールってなんですか?
3,血液検査でHDLコレステロールが低いので動脈硬化になりやすいと
言われました。HDLコレステロールってなんですか?
4,HbA1cが高いので糖尿病と言われました。血液検査の際に食事をし
てきてしまいましたが、この食事のせいではないでしょうか?
5,普段、甘いものは食べないのに糖尿病にかかっていると言われました。
糖尿病にかかっていると言われたので「甘いものは控えます」
6,血液検査でガンも分かりますか?血液検査するなら、ついでにガン
の検査も入れておいてください。
7,最近、血液検査の紙をもらったらeGFRという項目がありますが、
これは何ですか?
8,血液検査の項目のうちNT-proBNPというのは何ですか?
9,血液検査でアミラーゼが高いと言われました
10.血液検査で尿酸が高いと言われました
11.血液検査でGOT(AST),GPT(ALT)が高く脂肪肝と言われまし
た。
12,血液検査でγ-GTPが高いと言われました。
薬
13,市販の薬と病院でもらう薬の強さは同じなのでしょうか?
14.「 副作用のない薬をください 」、「 この薬には副作用はありま
せんか? 」
15、ジエネリック医薬品 (後発医薬品)をください
16、家で血圧を測ってノートに付けてくるように言われました。
17,血圧が下がったら、もう薬は服用しなくてもよいのでしょうか?
18,血圧の薬、一生飲み続けないとダメなのでしょうか?
19、テレビで宣伝しているコラーゲンやグルコサミンは膝の痛みに効
くのでしょうか?
20、動悸、息切れに救心?
21、お腹の調子が悪いと正露丸?
22、風邪をひいたので抗生物質をください。
23、血圧が高いと言われましたが、サプリメントを飲んでいるから大
丈夫です。
24,うつ病でもないのに抗うつ剤をもらった?
25,「てんかん」でもないのにてんかんの薬をもらった?
26,痛み止めといっしょに胃薬も出しておきますね?
症状
27、咳がとまりません
28、足がむくみます
29,こむら返りがよく起こります。
30、立ち眩み(くらみ)がします
31、胸が痛いので病院へ行ったら肋間神経痛と言われました。
32、調子が悪いので血圧を測ると170もありました。大丈夫でしょう
か
33,下痢をした時のスポーツドリンクは何がよいのでしょうか
その他
34,診察なしで処方箋だけを出して貰えませんか?
35, 交通事故で健康保険は使えますか?
1,日頃、脂っこいものはほとんど食べないし、食べ過ぎてもいないのに、血液検査でコレステロールが高いと言われました。なぜでしょうか?
① 遺伝性の「家族性高コレステロール血症」の疑いも
血液中のコレステロ-ルの80%は、実は食事中のコレステロールからではなく、肝臓で合成されたもので、これを内因性コレステロールと言います。このコレステロールを合成する酵素が生まれつき多い人がいます。その場合、脂っこいものをほとんど食べないのに、血液中のコレステロールが高くなったりします。食事に気を配っているにもかかわらず髙い場合は、遺伝的にコレステロールが高くなる家族性高コレステロール血症の可能性も考えられます。特に、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が180mg/dl以上である場合、LDLコレステロールを肝臓で取り込む受容体に関係する遺伝子などに異常があるためで、若いときから動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞になりやすいと言われます。
② 男性にはない、年配の女性に特有な現象なのですが、閉経後には、女性ホルモンの分泌が低下することによりコレステロール値が次第に高くなってきます。そこで食事とは関係なく、すなわち脂っこいものばかり食べている分けではないのに、コレステロールが上がってくることになります。
女性ホルモンの働きには動脈硬化の予防や内臓脂肪の分解をしやす
くするなどがあり、男性と異なり女性は動脈硬化による生活習慣病 の発症が抑えられています。しかし更年期を過ぎ閉経期以降は女性
ホルモンの分泌が低下してくることにより、その保護(コレステロ
ール低下作用)がなくなって、そのせいでコレステロールの値がど
んどん高くなり、動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞などにかかる可
能性が高くなってくるのです。
2,健康診断で LDLコレステロールが高いので動脈硬化にかかる危険があると言わ
れました。LDLコレステロールってなんですか?
血液中のコレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールとがあります。そのうちのLDLコレステロールが増えると、動脈硬化などの原因になることから、悪玉コレステロールと呼ばれるのです。LDLコレステロールは本来、細胞内に取り込まれて、ホルモン産生、細胞膜の形成などの役割を担います。しかし血中に多く存在すると血管壁に沈着、蓄積し、血管の壁で炎症反応を起こして血管の内壁を傷つけ、動脈硬化が進み、それに起因する心筋梗塞や脳梗塞などの引き金となることが知られています。
3、血液検査でHDLコレステロールが低いので動脈硬化になりにくいと言われ
ました。HDLコレステロールってなんですか?
HDLコレステロールには動脈硬化のもとになる血液中のLDLコレステロールを回収し肝臓に運んで燃やしてしまうという働きがあります。そこで、血液中にHDLコレステロールが多いと動脈硬化の予防になることから、善玉コレステロールと呼ばれています。一方、HDL-コレステロールが低い(40mg/dl未満)と、動脈硬化性疾患になりやすいと言われ、HDL-コレステロール値の低下に伴い冠動脈疾患の発症率が上昇します。特に 40mg/dL 未満になると 冠動脈疾患の発症の危険性が急に上昇します。
HDLコレステロールは軽い運動を続けると増えますが、運動不足、喫煙、肥満などで減少します。HDLコレステロールを増やすには食生活を見直し、食べすぎをやめて、腹八分目にして適正体重に保つ、そして定期的な運動習慣が大切です。
なお、最近の研究で、HDLコレステロールが極端に高い場合は、むしろ動脈硬化による病気が増え総死亡率も高くなることが分かりました。HDLコレステロールが100mg/dLを超える場合には、CETP欠損症を疑います。高すぎてもいけない分けです。
4,HbA1cが高いので糖尿病と言われました。血液検査の際に食事をしてきて
しまいましたが、この食事のせいではないでしょうか?
糖尿病にかかっているかどうかを調べる際。血糖を測っても、測った時間により高かったり、低かったり、さまざまな値となります。すなわち食事の影響を受け、食後には高くなり空腹時には低くなります。一方、血糖と違ってHbA1c(ヘモグロビンA1C)は、血液検査をした日から過去1ヶ月月間の血糖の状態を現し、血糖の高い状態が続くと高い値になりますが、直前の食事の影響は受けません。したがって糖尿病にかかっているかどうかを判断するには、HbA1c検査を行います。正常値は6.4%まで、6.5%以上なら糖尿病と考えて間違いありません。なお糖尿病の方では、その後に起こる合併症を防ぐためHbA1cを7%以下に保つことが大切です。
5,普段、甘いものは食べないのに糖尿病にかかっていると言われました。
糖尿病になると、尿に糖が出てきます。そこで糖尿病という名前が付いたのですが、糖という名前がついていますので、甘いものの食べ過ぎたら糖尿病になると誤解している方がたくさんおられます。あるいは 甘いものを控えたら糖尿病が治ると思っている方も多いようです。
膵臓から出る血糖を下げる働きのあるインスリンの分泌量にくらべ食事の摂取量が多い(食べ過ぎ)、また運動量が少ない(運動不足)ときに血糖が高い状態が続いて糖尿病状態となります。
したがって、甘いものの食べすぎではなくて、そもそも「食べ過ぎ」や「運動不足」が糖尿病の原因なのです。甘いものを控えるだけでは、糖尿病は治りません。
糖尿病の予防には 1に食事 2に運動 3.4がなくて 5に薬と言われます。
1、 過食(食べ過ぎ)、肥満、いわゆるダイエット、そして運動不足(なるべく歩く)を解消する。
2、間食のとり過ぎ、アルコールの飲み過ぎを避け、腹八分目に心がける。
3、運動は糖尿病の予防には有効。毎日、歩くのがもっとも良い運動になります。
6,血液検査でガンも分かりますか?
血液検査をする際に、「ついでに癌の検査も入れておいて下さい」と言われたりすることがあります。
血液検査のなかに腫瘍マーカーと言うものがあります。癌になると
大量に産生され、そのせいで血液中に増えるのですが、癌以外の原
因で上がることもあります。そこで、この値が高いからと言って、
必ず癌があると断言することはできません。また、逆に癌になれば
これらの物質が必ず増えるというわけでもありません。すなわち陰
性であったからと言って癌が完全に否定出来るわけでもないので
す。これら腫瘍マーカーは通常、癌があると分かっている方につい
て、治療効果を判定する際に使われます。現時点では血液検査で癌
の有無を判定出来るまでには至っていないのです。
実は、この腫瘍マーカーには何十種類もあるのですが、その一つ一つで陽性になる癌が違うのです。例えば、CEAだったら消化器系の癌、肺癌など、SCCだったら皮膚癌や肺癌、子宮頚癌など、CA19-9だったら膵臓癌、卵巣癌などと言うわけです。
だったら、腫瘍マーカーを全部、検査したらいいんじゃないですか?
ところが全部やったとしても、腫瘍マーカーを出さない癌もたくさんありますし、また腫瘍マーカーを出すことの多い癌であっても、その癌にかかっている方のうち、何割かの方では腫瘍マーカーが陰性です。つまり陰性だからといって癌にかかっていないとも言えません。また陽性の結果が出ても、全員に癌が見つかるわけでもないのです。そんなことで、現時点では、腫瘍マーカー検査は癌の早期発見にあまり役立たないと言われます。
腫瘍マーカー検査は高価なこともあり、健康保険で行う場合、レントゲン検査などの結果、癌が強く疑われる場合のみしか、その測定は認められていません。健康保険での診療ではガンの疑いもないのに、ガンの検査をすることはできないのです。 結局、腫瘍マーカー検査は、癌にかかった方の治療の際、癌の再発を早目に発見する目的で測定されるもので、その際に限って健康保険が使えるのです。
それではどうしたら良いのですか?
癌の早期発見には、例えば肺がんなら胸部CT、胃がんには胃カメラ、大腸がんには大腸ファイバー検査、乳がんにはマンモグラフイー検査というように、個別に検査を受けて頂く必要があります。最近では、ガンの早期発見のため健康診断のひとつとしてPET検査を受ける方も増えてきました(保険は使えません)。
7,最近、血液検査の紙をもらったらeGFRという項目がありますが、これは
何ですか?
腎臓の働きを知るための値がeGFR(推算糸球体濾過量)です。eGFRは血液から直接測定しているのではなくて、血液検査で測った血清クレアチニン値と年齢と性別から計算して記載してあります。この数値は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。
腎臓は一日中、血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排泄し、体の中を常にきれいに保つ働きをしています。この腎臓の機能を表す指標として、血液中のBUN(尿素窒素)とクレアチニン値がありますが、いずれも腎機能が正常の1/3程度にまで下がらないと上昇しないのです。そこでこの検査値だけで判断していますと、腎機能が相当悪くなってからでないと分かりません。そこで登場したのがeGFRです。腎機能の悪化を早期に知るための目的で、血清クレアチニン値をもとにeGFRを計算し用います。このGFRは糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値です。健康な人では腎臓の働き(GFR)は100mL/分/1.73㎡前後ですが、このGFRが健康な人の60%以下に低下する(GFRが60m?/分/1.73㎡未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を、CKD(慢性腎臓病)と言います。年をとると腎機能は低下していきますから、高齢者になるほどCKDの方が多くなります。CKDは、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気の危険因子になります。つまり、腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにもつながるのです。
8,血液検査の項目のうちNT-proBNPというのは何ですか?
さまざまな心臓の病気が原因で心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器が必要としている血液を十分に送り出すことができなくなった状態を心不全と言います。つまり心不全とは病気の名前ではなく、心臓が衰えた状態をあらわす言葉なのです。この状態が急激に起こった場合を急性心不全と言い、心臓機能が徐々に低下していく場合を慢性心不全といいます。
最近、心不全にかかっているかどうかを血液検査で調べることができるようになりました。それがNT-proBNPです。心不全などによって心筋細胞に障害が起きると、NT-proBNPが血中に現れ、病気の進行と共に血中濃度が高まることが知られています。健常人のNT-proBNP血中濃度は極めて低く、心不全の重症度に応じて血中濃度が上昇するのです。
心不全になると、初期には坂道を上ったり、階段を上がったりする
と「息切れ」が出たりします。ひどくなると平地での歩行でも、あ
るいは安静にしている時でも息苦しくなり、呼吸困難が起こりま
す。また、体の各部分、例えば足に「むくみ」を生じたりします
が、これを浮腫と言います。
9,血液検査でアミラーゼ値が高いと言われました
アミラーゼは消化酵素の一種で、でんぷんなどの糖分を分解するはたらきがあり、以前はジアスターゼと呼ばれていました。おもに膵臓と唾液腺から分泌され、膵臓の病気などを発見したり、経過を観察するための指標として用いられています。
膵炎や膵臓がんなど膵臓の病気が起こると、膵臓内の膵管が詰まり、アミラーゼの流れが阻害されるため血中アミラーゼが上昇します。急性膵炎の場合は激しい腹痛を起こします。一方、慢性膵炎やすい臓がんでは自覚症状に乏しい場合があります。
なお急性耳下腺炎や唾石症など、唾液腺の病気でも血清アミラーゼは上昇します。アミラーゼの高値がみられた場合、その原因が膵臓なのか、唾液腺なのかを調べるため膵型アミラーゼ(Pアミラーゼ)検査を行います。
マクロアミラーゼとは何ですか?
膵臓やだ液腺の病気がないのに、血液検査でアミラーゼが高値となる人がいます。その原因のひとつがマクロアミラーゼ血症で、マクロ型といって分子が巨大化した変り種アミラーゼのためです。マクロアミラーゼ血症は、全人口の0.1~0.2%、高アミラーゼ血症の人の0.5~2.5%にみられます。アミラーゼ分子が大きいため、腎臓(糸球体)を容易に通過できなくなり、血中アミラーゼが高値になります。マクロアミラーゼと疾患との間に明らかな因果関係はなく、健常者にもみられ、病的意義はまずありません。そこで定期的に血清アミラーゼ検査を行って経過観察するのが普通です。
10.血液検査で尿酸が高いと言われました
尿酸が高くなる原因は①食べ過ぎ、肥満、②酒(アルコール)の飲み過ぎ、③激しい運動、④ストレス、⑤高血圧などで、尿酸値が高いと痛風発作(とても痛い関節炎)が起こります。痛風の患者さんの60%には、肥満があり、肥満の度合いが大きいほど尿酸値は高くなります。なお約20%ぐらいの患者さんでは、腎臓からの尿酸の排泄が弱いなどの、遺伝的体質が関連します。尿酸の高い方では、食事を減らし(腹八分目)、よく歩き、標準体重を守ることが大切です。
血液検査で尿酸値が7.0mg/dl以上の場合を高尿酸血症と診断します。8.0mg/dl以上では薬物療法が必要です。そして薬で尿酸値を6以下にすることが目標となります。
尿酸値が高いと 痛風という発作(ひどい関節の痛み)が起こりますが、痛みのない状況でも尿酸値が高い状態が続くと心臓や腎臓が障害されてしまうと言われます。
11.血液検査でGOT(AST),GPT(ALT)が高く脂肪肝と言われました。
40までが正常値。どちらも肝細胞の中に含まれる酵素(こうそ)で、普通でもごく少量は血液中に漏れ出ていますが、その場合は40を越えません。肝炎などで肝細胞が傷ついて破壊されますと、血液の中に大量に漏れ出てきて血液中の値が上昇します。GOTは肝臓ばかりではなく、心臓の筋肉の細胞にも含まれていますので、心筋梗塞などの際にも高くなります。しかし肝臓病の場合、GPTの方が肝臓に多く含まれている関係で、GOTの値よりGPTの値の方が高くなるという特徴があります。一方、肝臓病が進行して肝硬変になるとGOTの方がGPTより高くなってきます(GOT、GPTの逆転)。
肝臓疾患でGOT GPTが上昇する場合。ウイルス性肝炎(A型。B型、C型)の場合あるいは、アルコール性の場合もありますが、最近、増えているのが脂肪肝です。
脂肪肝とは肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態で,肝臓内の肝細胞の30%以上に脂肪が認められる状態を言います。
脂肪肝、放っておいたら知らない間に肝硬変、 肝癌なんてことにならないために
酒を飲まない人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言います。NAFLDには進行せず良性の経過をたどる単純性脂肪肝と肝硬変、肝癌へと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎 (NASHナッシュ)とがあり、NASHは国内に約100~200万人いると推定されています。これまで脂肪肝は,ほとんど進行せず重篤な病態にはならないと考えられていました。しかしNASHでは慢性の肝障害が進行し,末期には肝硬変や肝癌へと進行することがあります。NASHと診断され、経過を中にALTが低下し、同時に血小板数が低下してくると肝臓の線維化、すなわち肝硬変への進行が疑われ要注意です。
肝癌の多くはB型やC型肝炎ウイルスに感染している患者さんから(約90%)ですが、このところ肝炎ウイルスに感染していない肝癌患者が増加しています。その原因としてNASH由来の肝癌が疑われています。肝臓は沈黙の臓器とも言われ、脂肪肝にかかっても、初期には症状はほとんどありません。人間ドック受診者の20?30%に脂肪肝が見つかるとの報告もあります。早期発見には肝機能検査が有用です。
肥満は肝癌の発症の危険因子?
NAFLDの原因としては,肥満,糖尿病,高脂血症があげられます。すなわちメタボリックシンドローム(内臓への脂肪蓄積)です。日本では中高年の940万人がメタボリックシンドロームで,さらにその予備軍が1020万人いると推定されています。メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣としては,暴飲暴食,過剰な間食,過剰な糖分摂取,濃い味付け,緑黄色野菜の不足,運動不足などがあげられ、こういった生活習慣の改善が最も大切です。
なかでも肥満が重要で、体重の目安としてBMI:体重(kg)/身長(m)2がよく使われます。BMI 25?30kg/m2の軽度の肥満では50%に脂肪肝が認められ,BMI 30kg/m2以上の高度肥満では75%に脂肪肝が認められるとの報告があります。体重減少はNASHの病態改善に有効であることが証明されておりBMI25以上の場合10%の体重減少を図ります。
なお糖尿病患者の8 人に1 人が肝疾患(肝癌、肝硬変)で死亡しているとの報告が日本糖尿病学会から発表され、これらの中にはNASHが原因となっている例が存在すると推察されています。
12,γ-GTPが高いと言われました。
お酒の飲みすぎで肝臓が悪くなると、γ-GTP(ガンマジーピイテイ)という酵素の値が高くなります。γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)は、肝臓の解毒作用に関係している酵素です。肝臓や胆管の細胞が壊れると血液中にγ-GTPが血液の中に流れ出てくることから、「逸脱酵素」といわれ、その値が増えると肝臓や胆管の細胞が壊れていることが分かります。
γ-GTPが高くなる病気には、肝臓の細胞が破壊される肝炎、そして肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝などがあり、また胆石や胆道がんなどで胆道がつまった場合にも高くなります。そのうち最も重要なのが脂肪肝です。とくにアルコールを飲む中年男性の場合、飲みすぎによるアルコール性脂肪肝が問題になり、その指標として、このγ-GTPの値をチエックしておくことが必用です。
薬
13,市販の薬と病院でもらう薬の強さは違うのでしょうか?
薬局で買える市販薬( OTCと言います)は、病院薬の1/3以下の薬効と決められています。つまり同じ名前の薬を処方箋なしで薬局で買えたとすると、その薬はOTCであり、効き目は病院でもらう薬の三分の一以下であるということになります。
したがって、病気の治療のためには、病院でもらう薬の効果を超えるものではありません。
なお、最近、医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬(OTC医薬品)に転用(スイッチ)したものとして、薬局やドラッグストアで買えるようになりました。これを「スイッチOTC医薬品」と言い、これは医師が処方しているものと同じものです。
14.「 副作用のない薬をください 」、「 この薬には副作用はありませんか? 」
実際のところ副作用が全くない薬はありません。漢方薬も例外ではありません。病気や症状に対しよく働く薬の効果が主作用、必要のない薬効や好ましくない作用が副作用と呼ばれます。風邪薬や蕁麻疹の薬で眠くなるのは、一般的には副作用ですが、よく眠れて風邪が治った方にとっては眠気を主作用と呼んでも間違いではありません。痛み止めも、痛い時には有難い薬ですが、飲みすぎると胃を荒らしたりします。抗生物質もなくてはならない薬で、それで命が助かる人も多いのですが、そのせいで下痢をしたりすることもあります。薬の副作用のなかで気をつけたいのは「薬疹」、アレルギー反応であらわれる発疹や皮疹で、どなたにも、またどの薬にもその可能性があり、飲んでみないと分からない、つまり飲む前に副作用が出るかどうかを予測することは出来ないのです。もし薬を飲んだあとに変わった症状が出た場合は、すぐに医師に相談するようにしましょう。なお、副作用の中には自覚症状がない場合もあります。調子が良くても定期的に検査を受けることも大切です。
15、ジエネリック医薬品 (後発医薬品)にして下さい。
ジエネリック薬品とは、最初に開発された薬(先発品)の特許が終わった後に、特許が公開され、それを元に別の会社が作った薬のことです。最近、「同じ薬が安く手に入る」と盛んに宣伝されています。本当にそうなのでしょうか?。
実際は、「先発品と同じ成分で,同じ効き目の薬」ではないという事実は報道されていません。患者さんの健康を預かる医療機関として、飲んで頂くものなので、「安かろう悪かろう」では、患者さんの信頼に答えられません。但し、安心なメーカーの品質が保証されたジエネリック薬については、お勧めしてゆくつもりです。しかし、安全の点から、安易なジエネリック薬品の使用には慎重にならざるを得ません。
実は、ジエネリック薬品と先発品とは全く同じ薬ではなく、薬の効果や、副作用も同じではありません。ジエネリック薬品が先発品と同じなのは有効成分のみです。それ以外に薬に含まれる安定化剤、吸収補助剤などは先発品と同じである必要はないので、違っている場合が多いのです。しかし、この主成分以外の成分が薬が十分な効果を現す際にとても大切なのです。
例えば、静岡県立大学薬学部の後発品についての調査では、ある薬では、服用した後の血液中の濃度は、先発品を100%とすると18%~148%と大きな差が見られたと報告しています。血中濃度が18%ということは、なんと、先発品の5倍以上飲まないと同じ効果が得られないということです。 これが例えば、血圧の薬などでしたら大変なことになります。実際、後発品を使用したが効果がないので先発品に戻したというような事例も報告されています。このような事例がすべてではありませんが、使用にあたっては十分な検討が必要なのです。
さらに注意が必要な点は、全く同じ薬ではないのに、先発品のような臨床試験や市販後調査を行う必要がなく、そもそも有効性や安全性のチエックが十分になされていないという点です。結局、薬の効果にしても、副作用にしても飲んでみないと分からないという点が最も心配な点です。先発品にはなかった副作用が出て、結局、先発品に戻したというような事例の報告もあります。
さらに、ジェネリックの会社には中小業者も多く、短期間のうちに、製造・販売を中止をするような無責任な会社もみられ、長く同じ薬を服薬していただけない場合もあります。また、副作用が起こった頃、会社自体が無くなってしまっているような場合もないとは言えません、またどこの薬局にでも常備されていれば良いのですが、販売ルートや配送体制に問題のあることも多く、必要な時に、必要な量の薬が手に入らないという場合も多いのです。
16,家で血圧を測ってノートに付けてくるように言われました。
高血圧は脳卒中や心筋梗塞につながる動脈硬化の大きな原因です。高血圧があってもほとんど症状は出ません。しかし症状がなくても危険です。高血圧の治療を受けている方、血圧が高目の方では、ふだんから血圧を測る習慣をつけ、自分で血圧の管理を行うことが大切です。
家庭血圧を測定しないと分からない高血圧
血圧は、季節や測る環境によって変動し、高くなったり、低くなったりします。したがって、1カ月に一度診察の際に測った血圧の値だけでは、たまたま高かったのか、低かったのか、本当の血圧がどれぐらいなのか、分からないことが多いのです。
血圧はズーッと同じと思っている方が多いのですが、実は血圧は心臓が拍動するたびに出来るものなので、そのたびに上がったり、下がったりします。例えば心臓は1日に10万回以上、拍動していますので、血圧はそのたびに極端な話、10万回以上変動するのです。したがって測るたびに血圧が上がったり、下がったり違ってくるのはそのためです。ただし、体には血圧が大きく変動しないように調節する機能が備わっていますので、普通は大きく変動しないようになっていますが。
血圧には季節変動があり、夏には低く、冬には高くなる傾向があります。
家庭血圧が正常でも、緊張などで診察室に入ると血圧が上がってしまうのが、白衣高血圧です。特に治療は必要ありません。高血圧と間違えて薬を飲むと、血圧が下がり過ぎる場合もあります。
診察室での血圧が正常でも、家庭血圧が高い仮面高血圧は、家庭血圧を測定していないと見逃されてしまいます。しかし、危険度は持続性の高血圧と同じか、それ以上で、たとえば脳卒中に約3倍なりやすいというデーターもあり、治療が必要です。
朝と夜に起こる「早朝、夜間高血圧」、どちらも脳卒中や、心筋梗塞の発症が明らかに増えますが、病院での昼間の血圧測定だけでは分からないのです。
お薬を飲んでいる方でも、十分に下がっていない場合や、逆に下がり過ぎている場合もあり、薬の種類を変えたり、薬の量を調節してもらう必要があることもありますが、医療機関で月に1~2回 昼間の血圧を測るだけでは、本当の血圧の状態を知ることができません。ふだん測定した血圧の値を記録しておいて、診察の際に主治医に見てもらいましょう。
17,血圧が下がったら、もう薬は服用しなくてもよいのでしょうか?
血圧が下がったからといって薬をやめてはいけません。継続して服用することが大切です。血圧の薬は、高血圧そのものを治す薬ではありません。薬を飲んでいる間、その効果で血圧が下がっているだけで、薬をやめれば血圧は元の高い状態に戻ってしまいます。
なお、食生活や生活習慣の改善、すなわち「塩分を控える」。「腹八分目にしてダイエットする」。「毎朝30分ぐらい歩くといった運動を続ける」などの自己努力根気よく行った方では、薬の量を減らしたり、薬を辞めることができることもあります。しかし、自己判断は禁物で、必ず医師の指示を受けてからにしましょう。
18、血圧の薬、一生飲み続けないとダメなのでしょうか?
患者さんの中には「近所のおばちゃんに、医者が血圧の薬を飲めと言っても、一旦飲んだら辞められなくなるから、飲んだらいかん」と言われたなんて方がおられます。
果たしてそうなのでしょうか? 血圧の薬は、減らしたり、止められる場合もあります。かつては、血圧の薬は「一生飲み続けないとダメ」などと考える人が多くいました。しかし生活習慣(食生活や運動不足)を改善することで血圧が下がった場合には。薬の量を減らしたり、場合によっては、薬を止めたり出来ることもあるのです。しかし 食事や運動など生活習慣の改善を行う自己努力がないと、すなわち何も努力をなさらないとそうはゆきません。
そもそも「血圧の薬」は、そんなに悪者なのでしょうか
高血圧を放置していますと、血管がやられて脳卒中や心臓病など重大な病気につながり、死亡率が高くなります。脳卒中にかかるリスクは血圧が10mmHg上昇すると男性で約20%、女性で約15%高くなる。心疾患(心筋梗塞や狭心症)のリスクも血圧が10mmHg高くなると約15%増加すると言われます。一方、上の血圧を10、または下の血圧を5下げると、脳卒中の発症リスクは30~40%、心筋梗塞の発症リスクは20%下がることが知られています。
血圧が高くても痛くも、かゆくもない
通常、血圧が高くても症状が出ることはまずありません。そんなことで「血圧が高いので、お薬を飲まれた方がよいですよ」と申し上げても、「特に症状はないし」と飲む気になられない方が多いようです。しかし、「症状がないので飲む気になりにくい」、そこが高血圧の怖いところで、油断してはいけません。症状がなくても、血圧が高い状態が続くと、気づかないうちに血管がやられて。結局、脳卒中や心臓病にかかることになってしまうのです。
高血圧の薬は、長生きのサプリである
遺伝的に高血圧症のリスクを持っている人は、40歳くらいから血圧が高くなります。治療を受けなければ20~30年で、動脈硬化がひどくなって脳梗塞や心筋梗塞で亡くなってしまう方が多いのです。昭和30年代くらいまでは、日本人は癌になる前に、み
んな脳卒中で亡くなっていました。日本人の国民病とも言える高血圧が原因でした。
その後1日1回飲むだけで血圧を下げる薬が開発されたおかげで、遺伝的に高血圧症のリスクがある人でも、薬の服用によって血圧が下がって、日本人の寿命が急速に伸びたのです。したがって高血圧の薬は長生きのための薬と言って差し支えなく、むしろ有難い薬なのです。
遺伝子が同じ一卵性双生児について高血圧を調べた研究結果から、発症には、遺伝因子が60%、生活習慣の問題(食事、運動)が40%関係していることがわかってきました。
両親などが高血圧で、遺伝的に高血圧になりやすい体質の人でも、生活習慣の改善、すなわち塩分の制限、節酒、肥満の改善、適度の運動などを行えば高血圧の発症を防いだり、発症を遅らせたり、上がった血圧を下げたりすることができるのです。
19、テレビで宣伝しているコラーゲンがグルコサミンは膝の痛みに効くのでし
ょうか?
人体の水分維持に大いに貢献し、関節軟骨の機能の維持に重要な役割をはたしているヒアルロン酸ですが、巷にあふれる健康食品やサプリメントの中には、それを補う効能を謳った商品が多く宣伝されています。
しかしヒアルロン酸の経口摂取によるヒトでの有効性については、信頼できるデータは見当たらず、疑似科学の可能性があると言われています。 経口摂取されたヒアルロン酸は体内に吸収される前に、胃液や膵臓から出る消化酵素アミラーゼによって完全に分解されてしまいます。そのため、経口摂取によって軟骨やコラーゲン組織に補充されるという考えは生化学者の大半が否定しているのです。例えるなら「頭髪を食べれば毛が生え、脱毛症は治る」と言った類のものと言われています。
「口から食べたものは、胃液や膵液で消化分解されてから吸収されますね。 ヒアルロン酸も、分解されてから吸収されるんです。 そのままの形では残らないのに、関節に届くはずがないですよねえ。」と専門家は言う。テレビのコマーシャルなどにダマサれて、高い買い物をなさらないよう、くれぐれも注意して下さい。
メーカーが決して言わない、サプリメントの「不都合な真実」。
これだけ新聞やテレビで大々的に宣伝しているんだから効くのだろう。そう信じて飲み続けてきたのに……。
メーカーの宣伝には『痛みが消えた』『歩くのが楽しくなった』という使用者の声が多数掲載されているが、それが本当かどうか確かめるすべはない。そもそも痛みは数値化できるものではないので、本人の思い込みによる部分が大きく、エビデンス(医学的証拠)に乏しい。
膝の痛みに効く?
膝が痛む。そんな変形性膝関節症を抱える中高年に「関節痛を和らげる」「擦り減った軟骨が再生する」と喧伝されているサプリがグルコサミンとコンドロイチンだ。
だが、武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹院長は「飲んでもほとんど効果はない」と語る。「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません。
グルコサミンやコンドロイチンは、糖やアミノ酸からできており、体内に入ると分解される。それが、再びグルコサミンやコンドロイチンに再合成され、膝の軟骨になるとは考えづらい。髪の毛の成分を飲んだからといって髪は生えないのと同じで、軟骨の成分を飲んだからといって、軟骨は再生されないのです。
その上、膝などの軟骨部分には血管が少なく、摂取したものが届くのかも不明だ。
'10年9月には英国医師会誌『BMJ』に「グルコサミン、コンドロイチンが関節や股関節の痛みに効くという明確な結果は得られなかった」という研究報告が掲載された。
また世界的権威のある医学総合誌『ニューイングランド・ジャーナル』('06年)でも「1583人を4グループに分け、コンドロイチン単体、グルコサミン単体、その両方を6ヵ月間投与したが、はっきりとした差は出なかった」との報告が発表されている。「本当にその症状に効くというデータが実証されれば、医薬品として承認されるはず。しかし、グルコサミンやコンドロイチンのサプリに、今のところそんな気配はまったくありません」(名郷氏)
グルコサミン同様、変形性膝関節症に効くと言われているヒアルロン酸も、国立健康・栄養研究所の報告では「ヒアルロン酸注射(関節内投与)については一定の効果が認められているが、経口摂取によるヒトでの有効性について信頼できるデータは見当たらない」と断言されている。
20、動悸、息切れに救心?
救心とは六神丸のことで、主要成分は漢方で使われる生薬成分、その内容はセンソ(下薬)/ゴオウ(上薬)/ジャコウ/ニンジン/レイヨウカク末/真珠/リュウノウ/動物胆などですが、主成分の蟾酥(せんそ)はアジアヒキガエルやヘリグロヒキガエルの耳腺分泌物を集め乾燥させたものとのことです。
すなわち「救心」の成分にはカエルから抽出したジゴキシン様成分(心不全に使われる)が含まれているわけですが、このセンソで脈が速くなったりすることもあり、そのせいで頻脈発作が起こったり、なかには心筋梗塞を起こしたとの報告も散見されます。
脈が早くても、遅くても、息が苦しくても、脈が乱れても「動悸」 と言われますが、そもそも何にでも効く薬といったものが、あるはずがありません。「動悸や息切れ」などの訴えの中には「本物の心臓の病気」による場合があり、なかには「心配な病気」の場合も少なくありません。
大切なことは「動悸や息切れ」の原因に、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患が隠れていないかをちゃんと診断し、手遅れにならないうち適切な治療を受けることなのです。例えば狭心症症状を「救心」でごまかしていた患者さんが、心筋梗塞を起こされ、手遅れになったというような事例は枚挙にいとまがありません。
21、お腹の調子が悪いと正露丸?
お腹が痛くなったら『正露丸』、歯が痛くなっても『正露丸』と、『正露丸』は万能薬として使われています。元々「正露丸」は、日露戦争のとき「腹痛で戦えない場合に、お腹をマヒさせて痛みを感じないようにし、一時的に戦えるようにする」ために作られた薬なのです。
正露丸の主成分は日局木クレオソート(にっきょく・もくクレオソート)という消毒剤の一種です。正露丸は常用量の2倍量程度の服用で腸管壊死をきたし腸切除にいたったなどの事例が発生しています。 また通常用量の4倍量を服用して、麻痺性イレウスと腸壊死、貧血および腎不全のため手術および透析を実施した例(放置されれば死亡した可能性が強い)が報告されています。一般薬として市販されていますが、この程度の服用量で重篤な副作用をきたす可能性がある危険な薬との認識を持つことが必要です。
食あたりなどによる下痢は本来、消化吸収してはいけない体にとって悪いものを排出するための体の防衛反応です。薬で下痢を強制的に止めてしまうと、体に有害なものを吸収してしまい、病状を悪化させることにつながりかねません。
22、風邪をひいたので抗生物質をください。
抗生物質は風邪に効くのか?
風邪の原因の約90%以上はウイルスが原因です。細菌を殺すための薬である抗生物質はウイルスには全く効果がありません。ところで、もともと体の中には、いろいろなタイプの細菌が住んでいます。これを常在細菌叢といい、いろいろな感染から体を守ってくれています。例えば、お腹の中にいる乳酸菌などがそれです。
抗生物質は体の外から侵入して感染症を起こす細菌を殺す作用もありますが、良いところばかりではなく、大切な常在細菌叢にも殺菌作用を及ぼし、細菌感染などから身を守る抵抗力を奪う場合もあります。風邪を引いて常在細菌叢がウイルスと戦っている時、その大事な善玉菌を抗生物質で殺してしまうのは考え物です。かえって症状が悪くなってしまう可能性も考えられます。
23,血圧が高いと言われましたが、サプリメントを飲んでいるから大丈夫です。
血圧を下げるというサプリメントの宣伝が、テレビやインターネット上で目立ちます。特に3年連続売り上げ1位の大手製薬メーカーの商品は、大宣伝を繰り広げています。
メーカーは「血圧が高めの方に適し、血圧がおだやかになる傾向を確認」と宣伝します。実はトマト酢を使った血圧サプリが、「血圧低下作用がある」と宣伝して消費者庁から勧告を受けて以来、同様の製品を販売している会社の宣伝は「血圧が下がる」ではなく、「血圧がおだやかになる傾向」という、効くのか、効かないのか、よくわからない表現に変わりました。2016年、消費者庁はライオン株式会社に対し、健康増進法に基づく勧告を行いました。特定保健用食品「トマト酢生活」の宣伝に“驚きの「血圧低下作用」”と、あたかも血圧を下げる効果があるように表示したこと、薬物治療によらず改善効果が得られるかのように表示したことについて、「著しく人を誤認させる」としました
医学的根拠のある血圧降下作用をもつサプリは存在しません。血圧を下げるには総合的な生活習慣の改善が必要で、それだけでは下がらない場合に血圧の薬「降圧剤」の服用が勧められます。生活習慣の改善とは、減塩・運動・減量・節酒などで、特に減塩が重要です。これまで報告されているかぎり、血圧を下げるサプリメント類の効果はきわめて限定的です。サプリメントを飲むだけでは、けっして高血圧に対する十分な対策にはならないのです。血圧を下げるには、食事や運動などの生活習慣を地道に改善し、必要な場合には、適切に服薬を行うのが一番の対策です。きちんと治療に取り組むことを強くおすすめします。
24,うつ病でもないのに抗うつ剤をもらった?
ドグマチール めまいに効果
一般に、うつ病、うつ状態の薬と認識されている薬剤ですが、もともと、フランスで1967年胃微小循環改善させる胃潰瘍治療剤として開発された経緯がある。成書をひもとくと、当時、京大 二木先生のところに藤沢製薬から、この薬は、フランスでは抗めまい剤として一番の売れ筋なので、とのことにて、めまいに対する治験の依頼があったとの記載があります。その後、胃薬として売り出された(藤沢製薬)。そもそも海外では「抗めまい剤」として使われているので、なんらかの中枢性の効めまい作用があるものと推測されます。なぜか添付文書の副作用欄に「めまいがでることがある」なんて書いてありますが、そんなことはありません。
デパス 健康保険適応 筋収縮性頭痛(緊張型頭痛)
筋弛緩作用を持ち緊張型頭痛に健保適用となっています。チエノジアゼピン系抗不安薬 脳内のベンゾジアゼピン系受容体と結合することによりGABA神経系の作用を増強する。筋弛緩作用を持つことから「肩こり」からくる緊張型頭痛に有効なのです。
トリプタノール 片頭痛の予防に有効
トリプタノール(三環系抗うつ薬、アミトリプチリン)は片頭痛の予防に有用とされています。慢性頭痛患者はしばしば抑うつ状態を併発していますが、臨床的に抑うつ状態に無い症例においても、アミトリプチリンの片頭痛予防効果がみとめられています。
社会保険診療報酬支払基金 審査情報提供事例(薬剤) 275アミトリプチリン塩酸塩(2)(神経24)原則として、「アミトリプチリン塩酸塩【内服薬】」を「片頭痛」、「緊張型頭痛」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める。
サインバルタ( デュロキセチン) 健康保険適応 慢性腰痛症に伴う疼痛
「慢性腰痛症にサインバルタ」と聞くと、抑うつ症状を伴う腰痛患者への処方を思い浮かべがちだが、同薬は、うつ症状の改善とは異なる機序で鎮痛効果を発揮する。 処方箋を見て、うつ病だと早合点しないよう注意が必要である。
「疼痛が慢性化した患者では、この下行性の疼痛抑制系が異常を来し、本来痛いと感じる必要のない刺激を痛みとして感じている」と福島県立医科大学整形外科教授で日本腰痛学会理事長を務める紺野愼一氏は説明しています。
デュロキセチンの国内治験は鎮痛剤「NSAIDs」の効果が不十分な慢性腰痛患者を対象として行われ、プラセボ群に対する優越性が示されている。また50週間の長期投与試験でも、鎮痛効果の維持が確認された。
うつ病の薬(抗うつ剤)が原因不明の痛みに効果
人間の脳にはセロとニン系、ノルアドレナリン系、ドパミン系という3つの大きな神経ネットワークがあります。そのうち、セトロニン系とノルアドレナリン系の神経ネットワークは、感情や痛みの調節を司る脳内の網様体、下降性疼痛抑制系、感覚皮質や大脳辺縁系などと深くかかわっています。
このセロトニン系とノルアドレナリン系の神経ネットワークがうまく働かなくなると2つのことが起こる可能性があります。ひとつは感情に影響して「うつ病」のようになったり、そして、もうひとつは、痛みの感じかたが変わってちょっとした痛みでも、それを耐えがたく感じたり、あるいは何も原因がないのに体のどこかに慢性の痛みが起こるようになったりするのです。実際、原因不明の痛みには「抗うつ薬」がよく効くことが分かっています。そこで、痛み止めが効かないような原因不明の痛みの治療に、うつ病でもないのに抗うつ剤が使われることもあるのです。
25,「てんかん」でもないのにてんかんの薬をもらった?
デパケン(バルプロム酸) 片頭痛の予防薬として健康保険適応
抗てんかん薬としても使用されますが、片頭痛予防効果について良質なエビデンスがあります。欧米では片頭痛治療薬として約 20年の使用経験が蓄積されており、第一選択薬のひとつです。
テグレトール(カルバマゼピン) 神経痛、三叉神経痛、顔面けいれんに使われる
「三叉神経痛、「後頭神経痛」などの神経痛の特効薬として、一番よく使われるお薬がテグレトールと言うお薬です。てんかんの薬としても使用されますが、神経痛、三叉神経痛、顔面けいれんの治療に使われます。またアルツハイマー病などの認知症の周辺症状(BPSD)、なかでも抗精神病薬に反応しない精神病症状や焦燥性興奮に有効である報告がされています
社会保険診療報酬支払基金 審査情報提供事例 原則として、「カルバマゼピン」を「抗痙攣薬の神経因性疼痛、各種神経原性疼痛、がん性疼痛」に対し処方した場合、当該使用事例を審査上認める
26.痛み止めといっしょに胃薬も出しておきますね?
痛み止めのうち、最も有名な薬 アスピリンは、非ステロイド系抗炎症薬に属し、痛み止めや解熱剤として広く使用されています。古代エジプト人は、関節の赤みや痛みを和らげるためヤナギのエキスを使用していました。1700年代に、英国でヤナギの樹皮の粉末がマラリアの痛みと熱に効果があることが発見されました。その後、ドイツのバイエル社がこのヤナギの成分アセチルサリチル酸の合成に成功、バイエル、アスピリンの名で、またたく間に、リウマチ、頭痛、風邪から術後の痛みにまで世界中で使用されるようになったのです。なお、アスピリンはピリン系の薬ではありません。最近では、炎症を鎮めたり、痛み止めとしての効果以外に、抗血小板効果、すなわち脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ作用があることも分かり、その目的で使用される方が多いぐらいとなっています。アスピリン以後、イブプロフエン、インドメタシン、その他多くの薬が開発されました。これら薬の副作用のひとつが、胃の粘膜を荒らし、ひどい時には胃潰瘍を起こしたりする点で、たいてい胃薬と一緒に処方されるのはこのためです。
痛みを感じるには、プロスタグランジンという「痛み・熱・腫れ」を引き起こす原因物質が関係していますプロスタグランジンが体内で作られると、神経が過敏になり刺激され、プロスタグランジンの発痛効果を強めてしまいます。ロキソニンやバファリンといった鎮痛剤は、このような症状を抑えることができます。鎮痛剤には、このプロスタグランジンが出来るのを抑える効果があるからです。
しかし、この原因物質、プロスタグランジンには胃や大腸などの消化管の粘膜を保護する作用があります。そのため、ロキソニンでプロスタグランジンの生成が抑えられると、胃の粘膜が荒れて、ひどい時は胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍が起こりやすくなります。そこで、胃の粘膜を守るため胃薬といっしょに飲む必要があるのです。
セレコキシブ
プラスタグランジンは、「シクロオキシゲナーゼ(COX)」とよばれる酵素によって作られるのですが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することによって、効果を発揮します。セレコキシブは、ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が胃を荒らす副作用があるということから、それを改善するために開発された薬です。こうした痛み止めが本来持っている欠点を解消した薬なのです。
実は、シクロオキシゲナーゼ(COX)には「COX-1」と「COX-2」の2種類があります。COX-1は胃粘膜の保護効果があり、COX-2は炎症や発熱、痛みを引き起こします。COX-1まで阻害してしまうと、胃粘膜の保護効果を失うため、結果的に胃を荒らしてしまう可能性があります。セレコックスは、COX-1には作用せず、COX-2を選択的に阻害するように開発されました。そのため、胃を荒らすことなく、炎症や痛みを抑えることができます。
日本医科大学の消化器内科の教授、坂本氏の学会発表では、ロキソニンを2週間飲み続けた患者さんのグループと、セレコックスを同じく2週間飲み続けた患者さんのグループを、内視鏡検査で比較したところ、有意にセレコックスの方が十二指腸潰瘍の発生率が低かったとしています。
症状
27、咳がとまりません
長引く咳、しっこい咳、何の咳?
咳は、ウィルス、ほこり、煙、食べ物などの異物から、肺、気管、気管支を守るために起こる防御反応です。咳は、気道にたまった痰 (たん) を外に出す役割も担っています。しかし、ひどい咳は苦しいものです。咳が出はじめた頃の原因としては感染症が多く、最近はマイコプラズマ感染症や百日咳、クラミジア感染なども注目されています。
風邪が治ったのに、咳だけが続く咳が3週間以上続く場合、感染症の可能性は少なくなってきます。そこまで続いた場合は、結核や肺癌、間質性肺炎などのチエックのため胸部レントゲン撮影を受けておいたほうが良いでしょう。
それ以外の原因には、胃液の食道への逆流による刺激で起こる胃食道逆流症、副鼻腔炎により鼻汁が気管に流れこむ後鼻漏による副鼻腔気管支症候群もあります。
また、「かぜ」は治ったはずなのに、咳がちっとも治まらない、そんな状態が続く場合、咳喘息やアトピー咳嗽かも知れません。
咳喘息
咳喘息は、一カ月以上、空咳(からぜき)が続く気管支の病気です。アレルギー反応によって、気道が炎症を起こすため、夜中から明け方に激しい咳が出たり、室内外の温度差や、たばこの煙、運動、飲酒、ストレスなどのほか、ホコリやダニなどのいわゆるハウスダストが原因になるといわれます。普通の喘息と同様、気道(呼吸をするときに空気の通る道)が狭くなり、いろいろな刺激に対して過敏になって、炎症や咳の発作が起こります。ただし、喘息に見られるゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴(ぜいめい)や呼吸困難は起こりません。また、発熱や痰(たん)などの症状はほとんど出ません。
咳喘息は、喘息の前段階ともいわれます。咳喘息を放置すると、放っておくと3~4割は喘息に移行することがあるので、その前に正しい治療を受けることが大切です。
アトピー咳嗽
アトピー咳嗽は、アレルギーの関与により気道にある「咳の神経」が敏感(過敏)になることが原因で起こります。すなわち咳をするための感度が亢進しすぎて、ちょっとしたことで咳をしてしまうのです。いつも同じ時期に咳が出るとか、ほかにアトピー性皮膚炎や花粉症をお持ちの場合には、アトピー咳嗽である可能性が高くなります。
咳喘息との違いは、喘息の代表的な治療薬である気管支拡張薬は効かず、抗ヒスタミン作用を有する薬剤、いわゆる抗アレルギー薬の効果がみられることです。治療に際し、吸入ステロイド薬が併用されることも少なくありません。なおアトピー咳嗽は喘息に移行することはありません。
28、足がむくみます
「足のむくみ(浮腫)」は誰でも経験することで、通常は重力の影響で足の皮膚の下に水分が貯まることで起こる現象です。例えば、立ち仕事や座り仕事を長くすると血液が、その重さのため心臓に戻りにくくなり、足に溜まって、足がむくんできます。むくんでいる部分を指で押して、指の形にへこめば、むくんでいる証拠です。あるいは足に靴下の痕がつく場合もむくんでいます。夕方に強くなるけれど、一晩寝て、翌朝にはむくみが消えているような場合は心配ないでしょう。
むくみが一日中、あるいは何日も続く。急に体重が増えた。顔やまぶたがむくむ。尿の出が悪い。坂道や階段で息が切れる、疲れやすいなどと言う症状を伴う時は、心配なむくみの場合があります。なんらかの原因で、細胞の間に余分な水分がたまると むくみが起こります。
1)、心不全では心臓から全身へ血液を送り出すポンプの力が弱まるため静脈のうっ血を起こし、余分な水分が血管外に出て、足にむくみを起こします。
2)、腎臓病や肝臓病では、血液中のタンパク質が不足し血管の外に水分が出てゆくので足がむくみます。心臓が原因のむくみは足に起こりやすく、腎臓や肝臓病では全身(顔、手足、腹部)に起こりやすい特徴があります。
3)足の静脈瘤では、静脈の流れが障害されて足がむくみます。静脈瘤の場合、外から見てみみずのように曲がりくねった静脈が見えるので、それとすぐに分かります。片側の足だけがむくむ場合は、静脈が詰まっている場合や、骨盤の中に出来た「できもの」でリンパ管が圧迫され。リンパ液の流れが障害されてむくんでいる場合もあり、注意が必要です。
4)甲状腺のホルモンが不足した場合(甲状腺機能低下症)も足がむくみます。このむくみは、指で押してもすぐに元に戻り、指の跡が残りません。
5)、更年期を過ぎた女性がむくみやすくなる理由は?
女性ホルモンの影響と考えられています。女性は生理前に黄体ホルモンが分泌され、すると体に余分な水分がたまりやすいのですが、更年期を過ぎると女性ホルモンの減少に伴い、バランスが乱れるためむくみやすくなるのです。
むくみの解消には、寝ている時に、足枕を用いて足を上げるのもひとつの方法です。足の筋肉は、ポンプとして働いて、血液やリンパ液を心臓に戻す働きをしています。足の屈伸運動で足の筋肉、特にふくらはぎを動かすと、血液循環が改善され、むくみを軽くできます。結局、一番効果があるのは足の屈伸運動ということが分かりました。
29,こむら返りがよく起こります。
「こむら返り」とは、「ふくらはぎ」の筋肉(腓腹筋)が急激に収縮し、「足がつった」状態になり強い痛みを伴います。激しいスポーツなどの際によく起こりますが、これは筋肉疲労に加え、多量の発汗により血液中の水分が不足し(脱水)、また電解質(カリウムやナトリウムなど)のバランスが崩れ、一時的に筋肉の異常収縮が起きることによります。
一方、夜間就寝中に起こるものは、筋肉の腱の中にあって、筋肉が収縮しないように指令をだす筋紡錘と腱紡錘という組織が、長時間刺激がないせいで働かなくなり、夢だとか寝返りなどがキッカケで、ふくらはぎの筋肉が収縮すると、ブレーキが利かなくなって”足がつる”ためと考えられています。
こむら返りのなかには「危険なこむら返り」があります。これは「閉塞性動脈硬化症(慢性動脈閉塞症)」という病気によって起こる「こむら返り」です。「閉塞性動脈硬化症」とは、動脈硬化のせいで脚へ行く太い動脈が狭くなったり、詰ってしまったため、下肢に血液が流れにくくなる病気で、最悪、下肢の壊疽(腐る)を生じて、切断に至る場合もあります。
30、立ち眩み(くらみ)がします
起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)
人は起立(立ち上がる)すると、一般に多少なりとも血圧が低下します。人体には、これを防ぐための防御機構が備わっており、一瞬にして自律神経系の一つである交感神経が興奮し全身の血管を収縮させて血圧が下がらないように働くのです(血管迷走神経反射)。また、同時に心臓の拍動が増加して心拍出量を上げ、血圧を維持するように働きます。ところが起立性調節障害を持っている方ではこれらの代償機構がうまく働きません。そのせいで血圧は低下し、脳の活動に必要な脳への血流が維持されなくなる。すなわち脳貧血を起こして、「立ちくらみ」や「ふらつき感」などの症状が起こってくるのです。
つまり、急に立ち上がった時に、血圧が下がって脳に必要な血液供給が間に合わない際に起こり、いわゆる脳貧血状態が起こるのですが、症状としては、立ち上がった時の「眼前暗黒感、目の前が真っ暗になる」、「ぐらぐらするめまい、立ちくらみ」などが上げられます 。
急にフーとなる。目の前が真っ暗になって倒れそうになると言うのは脳貧血の症状である。
「めまい」がすると訴えられる方のうち、例えば急にフーとなるとか、頭または体がふわっとする、目の前が急に暗くなる(立ちくらみ)、一瞬気が遠くなると言うような症状を訴えられる方があります。これは脳貧血、すなわち脳への血液の流れが一瞬、途切れることによって起こる症状で、急に血圧が下がった時、あるいは心臓や血管系に問題がある時に起ります。
頭に行く4本の血管のうちのひとつである椎骨動脈は、頭の中に入って脳底動脈というという動脈になり、その先は後大脳動脈という動脈につながって終わります。この後大脳動脈が血液を送っているのが後頭葉にある視覚中枢です。そこで、脳へ行く血液の流れが悪くなった際に、動脈の一番先にある部分の症状が真っ先に出ることになるのですが、この視覚中枢の血液の流れが悪くなった時の症状が、目の前が真っ暗になったり(眼前暗黒感)、目の前が真っ白になったりする症状なのです。そして、さらに血液の流れが悪い状態が続きますと、後大脳動脈より心臓に近い脳底動脈の部分の症状が出ることになるのですが、この脳底動脈が血液を送っているのが脳幹部というところで、ここには平衡感覚を司る前庭神経核、あるいは意識の中枢などがあります。そこで、この脳幹部の血流が悪くなるとフラフラしたり、めまいがしたりしますし、ひどい時には意識を失って倒れたりすることになります。
この脳貧血により気を失って倒れた場合、これを失神(しっしん)と呼びます。
31、胸が痛いので病院へ行ったら肋間神経痛と言われました。
肋骨に沿って走っている神経を肋間神経と呼びます。この肋間神経が痛む症状を肋間神経痛と言います。痛みの起こる場所は背中から脇腹、胸の前面にかけ、肋骨に沿って「急に電気が走るような痛み」すなわち鋭い短時間の痛みを繰りかえします。
痛みが持続性、すなわち ずーッと痛いのなら神経痛ではありません。
肋間神経痛の原因は、変形性脊椎症、胸椎椎間板ヘルニア、脊椎腫瘍など脊椎に原因がある場合、そして肋骨骨折や肋骨の腫瘍が原因となる場合があります。それ以外に注意が必要な病気は帯状疱疹(ヘルペス)です。帯状疱疹は、帯状疱疹ウイルスが神経の中を通って皮膚に達して皮疹を起こす疾患ですが、胸部に発症すると肋間神経痛を起こします。
心臓(狭心症や心筋梗塞)、太い血管(胸部大動脈解離)や肺など、内臓の疾患が原因で起こる胸の痛みの場合、肋間神経痛と違って痛む場所や範囲がはっきりしておらず、持続的な痛みを感じます。
ヘルペスにご注意!
ヘルペス(帯状包疹 たいじょうほうしん)とは、水泡をともなった発疹を生じ、それが、ひどく痛む病気です。片側の胸や腰、あるいは背中や額(ひたい)などによく起こります。原因は、水痘帯状疱疹ウイルスによるもので、実は、このウイルスは子供さんがかかる水痘(水ボウソウ)と同じウイルスです。
ヘルペスウイルスに大人がかかった場合、これが何年もの間、神経に隠れていて、体の抵抗力が弱った時をねらって活動を始めます。すると、ウイルスが潜んでいた神経の領域に沿って、鋭い痛みが走るようになり、2~3日してから、その部分に発疹が現われます。発疹を生じる前は痛みしかありませんので、例えば、胸なら、肋間神経痛、額なら頭痛などと間違えられたりします。何日かして、痛んだ場所に、いくつもの赤い斑点状の発疹が出現し、続いて、それぞれの発疹の上に小さな水泡が現われます。しばらくの間は、痛みが激しく、しばしば夜も眠れないほどです。
ヘルペスにかかった場合、一刻も早く治療を始めないといけません、なぜなら、治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛と言う後遺症のせいで、激しい痛みが何年も続くからです。また額に起こった場合、帯状疱疹眼症と言って視力に影響が出る場合がありますから、やはり注意が必要です。
32、調子が悪いので血圧を測ると170もありました。救急車を呼んだ方が良いでしょうか?
血圧不安症候群―調子が悪いとなんでも血圧のせいー
頭が痛いとか、ふらふらした場合、たいていの方は真っ先に血圧を計られます。すると普段より血圧が上がっていることがほとんどです。そんな場合、患者さんは、きっと血圧が上がったせいだと考えられるようです。
本当のところ、血圧が高くても症状は出ないと言って差し支えないのです。だからこそ血圧が上がっていても、それに気づかないことが多いのです。それが高血圧の怖いところです。血圧が高いのに気づかず、長く放置していると、脳梗塞や心筋梗塞になったり、腎臓や心臓がやられたりします。これは本当です。
一時的な血圧上昇では、たとえ200ぐらいに上がってもまず症状は出ません。つまり血圧が上がったせいで頭痛、ふらつき、めまいが起こっているのではなくて、実は痛みや「めまい」のせいで血圧が上がっているのです。そして何度も計っているうちに不安が増して、どんどん血圧が上がってゆきます。また 一時的な血圧上昇なら たとえ180mmhgぐらいまでなら、特に心配ありません。気持ちを落ち着けて、しばらく安静にしていたら下がることがほとんどです。
高血圧で血圧を下げる薬を飲んでいる方に多いのですが、寒い冬の夜などに、たまたま血圧を計ったら、いつもより高いという場合、たいていその後、何度も血圧を測られます。すると心配のせいで、計るたびにどんどん血圧が上って200位なることも珍しくありません。このままでは頭の中の血管が切れるのではないかと不安になられ、普段もらっている血圧の薬を余分に飲んでみたり、それでもダメなら最後に救急車を呼んだりする方もあります。
血圧の数値が気になって一日に何回も測らないと気が済まなくなる「血圧不安症」が、高齢者に目立っている。高ければいつまでも測り続ける人がいて、それはもう血圧に振り回されている一種のノイローゼ。
測る→「高い」→測る→「上がった」→測る・・・毎日→10回、20回 朝日新聞(98-01-28)から引用
「血圧不安定症」の例
東京都老人医療センター循環器科部長の桑島巌さんによると、高齢者の患者で最近、家庭などで自動血圧計を使って測っているうちに、その都度、数値が上がり、不安に在って来院する患者が目立つ。昨年は1ヶ月に10人近くもいた。
めまいが起こると血圧が上がる
めまいが起こると血圧は上がります。血圧が上がって「めまい」がしたと勘違いする方もありますが、血圧が上がって「めまい」が起こることはありません。めまいが起こったので、そのせいで血圧が上がっているのです。
血圧が高かったからと言って、すぐに血圧の薬を飲むのは危険です。なぜなら、めまいは脳への血液の流れが悪くなって起こる場合が多く、そう言った場合、体に備わっている安全装置が働き、血圧を上げて流れの悪い部分の流れをよくしようとしているのです。無理やり血圧を下げると、症状がかえって悪くなったり、あるいは血液の流れが悪くなってひどい時は、脳梗塞を起こしたりすることもあります。
血圧の薬の効き過ぎて、血圧が下がってふらついたり、「めまい」がしていることもある
血圧が下がった時に「めまい」がよく起こります。血圧が下ると、そのせいで脳の血液の流れが悪くなるからです。血圧の薬を飲んでいる患者さんが「最近どうもフラフラする」、「めまい」がするといった場合、血圧の下がりすぎが原因の場合が少なくありません。
ところで、以前から高血圧の方では140/90mmHg未満が推奨されています。しかし75歳以上の方の場合、低すぎる血圧は脳の血流の低下をまねき、「ふらつき」や転倒、認知機能低下の原因となります。そこで脳卒中治療ガイドライン2015では高齢者の方の降圧目標が、150/90mmHg未満に緩和されました。
33,下痢をした時のスポーツドリンクは何がよいのでしょうか
下痢をしたり、熱中症で脱水になった際、病院へ行かなくても、手軽に口から水分や電解質を補給できるためよく使われるのが「経口補水液」です。たとえば大塚製薬工場の「OS-1」、大塚製薬の「ポカリスエット」があります。経口補水液の起源は、コレラなどの感染症に対処するため発展途上国で成功した「経口補水療法」にあります。口から水分や電解質を補給する方法で1970年代に発展途上国で有効性と安全性が確認され、先進国に「逆輸入」されました。
ポカリとOS-1。どちらも点滴に関係した商品ですが、違いはどこにあるのでしょうか?
ポカリスエットは、清涼飲料として日常生活の中で発汗などにより失われる水分と電解質を速やかに補給する飲料として開発されました。なので、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどの電解質は、汗の成分に近い組成となっています。水分や塩分の吸収については糖質が重要な働きを持っています。ポカリスエットはおいしく飲める味となるような分量で糖質が配合されています。一方、OS-1は経口補水液なので、それよりも電解質濃度が高く、糖質濃度が低く設定されています。
健康な状態で発汗したときにはポカリスエットを、一方、軽度から中等度の脱水状態の方の水分や電解質を補給するには、すなわち感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐(おうと)・発熱を伴う脱水状態、高齢者の食事量不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態の際にはOS-1を飲まれるのが良いでしょう。
その他
35,診察なしで処方箋だけを出して貰えませんか?
処方箋をお出しする際は必ず医師の診察を受けて頂かねばなりません。全国どこでも、病院でも、診療所でもそうなのです。
なぜなら医師は患者さんと対面で診察をしなければ処方箋を出してはいけないと法律で取り決められています。そのため処方箋をご希望の際は必ず受診し医師の診察を受けて頂く必要があります。
医師法20条では、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付してはならない。」と規定されており、無診察診療の禁止が規定されています。この規定に違反した場合、50万円以下の罰金という刑罰が定められています(医師法33条の2)。無診察診療を禁止する趣旨は、治療の安全性を確保することにあります。
このような趣旨からすると、医師は直接患者本人を診察したうえで薬剤を処方することが原則です。しかし、やむを得ない事情がある場合には、例外的に看護にあたっている者から本人の様子を確認して処方することが認められていると考えられます。
36, 交通事故で健康保険は使えますか?
交通事故など第三者(加害者)の行為によってケガをしたときの医療費は、原則として加害者が負担すべきものです。したがって基本的には健康保険ではなくて自費診療となりますが、健康保険が使えないわけではありません。その場合はお持ちの健康保険の保険者の許可をとり、所定の届出を済ませて頂かねばなりません。すなわち交通事故など、第三者の行為による負傷で、健康保険で治療を受けたときには「第三者行為による傷病届」の提出が必要です。医療機関は保険者に診療費を請求する際に、第三者加害行為として請求書を提出します。すなわち交通事故で健康保険で治療を受けた場合、医療費は一時的に保険者が負担し、代わって加害者に請求することになります。
※届書をすぐに提出できないときは、取り急ぎ事故等の状況をお電話等によりお知らせいただき、後日、できるだけ早く届書のご提出をお願いします。