Recent Papers
矢島研からの最近の研究成果の簡単な紹介(矢島研が責任著者のみ)です。
矢島研からの最近の研究成果の簡単な紹介(矢島研が責任著者のみ)です。
・Sumiyoshi et al. Cytoskeleton 2025, Sumiyoshi et al. MethodsX 2025
【キネシン】キネシンの運動性がモーターコア内に存在することを実証したTether-Scanning法(PNAS 2024)の第2弾とそのmethod系の論文です。Tetherとして2本鎖DNAに加え異なる長さの1本鎖DNAやPEGといった柔軟性の高い物質も適用し、(1)ネックリンカーはTetherによる増幅作用がなく、(2)柔らかいTetherによってもモーターコア自体に運動性が存在することが再現され、(3)Tetherの種類によって運動方向が逆転するといった新しいタイプのキネシンの「両方向性運動現象」をみつけました。今後、「運動の駆動力は何か、方向性はどうやって決まるのか」を実証する必要があります。
・Marumo et al. Journal of Cell Science 2025, Press Release
【繊毛】【3次元計測】繊毛虫テトラヒメナに多数存在する運動小器官・繊毛のうち、「1本」の繊毛先端の3次元運動を高速度・高精度で可視化することに成功しました。繊毛を真上付近から観察した場合、その先端は円弧と弦を組み合わせたような軌跡を描き、停止することなく連続的かつ高速に運動していることが明らかとなりました。低レイノルズ数環境で非慣性的に動く単細胞微生物の遊泳メカニズムの解明に繋がります。今後は繊毛全体の動きの可視化と繊毛間での協調性のしくみの理解、そしてそもそも繊毛を構成するタンパク質がどうやって動きを生み出し、出力や波形を制御しているかを解明することが課題となります。
・Sato et al. Langmuir 2025, Sato et al. MethodsX 2026
【ミオシン/アクチン】【人工細胞】細胞サイズ(5~50 μm)のW/O Droplet (液滴)内に、アクチンフィラメント、及び、膜とダイナミックに結合解離するミオシン-IC/IDを内封し、ミオシンによって駆動されるアクチンフィラメントの運動アッセイ "In droplet gliding assay"を確立しました。 ミオシン-IDは細胞サイズの液滴内でアクチンの滑り速度を上昇させました。細胞サイズ程度の閉鎖空間は、生物物理的現象に対して何か影響を与えるのでしょうか? Droplet内での3次元イメージングによって、ミオシンの拡散過程を含む分子プロセスを明らかにする必要があります。
東京農工大 林さんとの共同研究です。ありがとうございました!
・Ishii et al. Scientific Reports 2024,
【キネシン】【繊毛】【3次元計測】真核単細胞繊毛虫テトラヒメナkinesin-9サブファミリーの"kinesin-9A/9B"のin vitroにおける運動特性を1分子及び多分子で定量しました。蛍光タンパク質StayGoldを融合した9A/9Bは無負荷な状態ではprocessivityを有していましたが、他のサブファミリーと異なり、特に9Aでは顕著に運動速度(1 nm/s)やATP加水分解速度が遅いことがわかりました。繊毛のある生物特異的に発現する9Aや9Bがテトラヒメナの遊泳や生存戦略にどのようにかかわるのかを明らかにすることが今後の課題です。
・Sumiyoshi et al. PNAS 2024, PressRelease
【キネシン】キネシンの運動を生じる最小構成単位であるモータードメインのあらゆるループ領域に、2本鎖DNAオリゴマーを結合させて自在に運動支点をデザインする"テザースキャニング(Tether-Scanning)法"を開発し、(1)ほとんどの運動支点でキネシンが力発生でき、(2)いくつかの支点では運動方向がなんと逆転し、一方向力発生の根源となりうる運動性の計測に成功しました。ネックリンカードメインの構造変化が力発生の起源と考えられていた従来モデルを大きく修正する必要が生じ、キネシンと微小管が結合する際に力発生する運動モデルを提案しました。今後、モデルの実証が必要となります。
学習院大学 西坂さん、NICT古田さん、Warwick大学 Rob Crossとの共同研究です。ありがとうございました!
・Matsuda et al. Cytoskeleton 2024, Matsuda et al. FEBS letter 2020
【ミオシン/アクチン】【集団運動】"アクチン/ミオシン/アニリン"からなる物理的分子ネットワークを自律的に形成・変化させ、細胞骨格系の力学機能の原理に迫りました。細胞骨格ネットワークの大変形にはアクトミオシン系の伸長・収縮力だけではなく、細胞骨格の切断が大きな役割を果たし、細胞スケールの高次機能を自己組織化しうるプラットフォーム機能の一端を示しました。
現順天堂大学 小林さん、金沢大学 古寺さん、Purdue大学 Kimさんとの共同研究です。ありがとうございました!
・Sato et al. Scientific Reports 2023, Sato et al. BBRC 2024
【ミオシン】【3次元計測】細胞形態の左右非対称性/ホモキラリティにかかわる"Myosin-IC"が、細胞膜をミミックした流動性のある脂質展開膜上でアクチンフィラメントをコークスクリュー様運動(アクチンの長軸に沿って並進運動させつつ、長軸周りに回転運動させる)をさせる性質が備わっていることを明らかにしました。細胞や組織の形態のホモキラリティが決まる力学的分子機構の解明の手掛かりになる可能性があります。
千葉大学 伊藤研との共同研究です。ありがとうございました!
・Sugawa et al. Communications Biology 2022, PressRelease
【キネシン】【偏光計測】4次元(xyzθ)単粒子トラッキング光学顕微システムにより、”キネシンチーム"が細胞骨格微小管上を螺旋運動(Yajima&Cross. Nat. Chem.Biol. 2005)するばかりか、予想外にも自転(上下軸方向の回転、ヨーイング)運動をすることを初めて明らかにしました。キネシンが結合した金ナノロッドが微小管上で自転しつつ螺旋運動する現象をノイズで駆動されるラチェット機構によってモデル化しました。自転する分子機構は未解明です。
Warwick大学 Rob Crossとの共同研究です。ありがとうございました!
・Yamagishi et al. Scientific Reports 2022
【キネシン】微小管のマイナス端方向にのみ進むと考えられていた”逆行性キネシン”(kinesin-14、教科書ではNcdと記載されることが多い)が、運動支点を変えることで微小管のプラス端方向に進む順行性キネシンにもなり得ることを明らかにし、キネシンの運動方向において通説とは異なる結果を報告しました。キネシンの運動方向を決定する分子機構は解明できていない謎の一つです。kinesin-5の分子数に応じて運動方向が決定する機構(Yamagishi et al. BBRC 2021)も謎です。
九州大学 Doug Durmmond教授との共同研究です。ありがとうございました!
・Yamaguchi et al. Scientific Reports 2022
【ダイニン】【3次元計測】繊毛を構成するエンジンとなる”軸糸外腕ダイニン”が、微小管の長軸に沿って右巻き螺旋運動をすることを、3次元位置検出光学顕微システム(tPOT, Yajima et al. Nat.Struct.Mol.Biol. 2008)により明らかにしました。リニアモーターのトルク発生は、しなやかな繊毛運動とのかかわりが想像されますが、その関連性については不明です。
・Marumo et al. Communications Biology 2021, PressRelease
【繊毛虫】【3次元計測】低レイノルズ数の世界で生きる真核単細胞繊毛虫”テトラヒメナ”は、螺旋遊泳することが100年以上も前から観察されていましたが、錯視により右巻か左巻きかは判別がつきませんでした。3次元位置検出光学顕微システム(tPOT)により、右巻きであることを明らかにし、螺旋遊泳はCa2+によって制御されることを明らかにしました。繊毛虫の遊泳モデルの構築に大きく貢献できます。
・Maruyama et al. Communications Biology 2021, Yamagishi et al. Cytoskeleton 2020
【キネシン】【3次元計測】細胞の中では、10nmほどのタンパク質からなるバイオナノマシンが働いています。人間が作るマシンとどことなく似ているようにも見えますが、その動く仕組みは似て非なるものです。細胞分裂期"kiesin-6"が微小管上を前後・左右方向に確率的にステップし、そのステップ方向にバイアスがあることを明らかにしました。人工マシンのようなステップ方向が決定的な機構とは異なり、kinesin-6のステップの左右性の選択には揺らぎが内在します。左右対称性を破り、一方向性運動を創発させる機構は未解明です。
Warwick大学 三嶋さんとの共同研究です。コロナ禍での毎週のzoom会議も含め、ありがとうございました!