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都市経済学における商業集積とはどのような現象ですか。本文中の例を2つ(同業種集積と異業種集積から1つずつ)挙げて説明してください。
複数の店舗が近くに集まることで双方の集客力を上げる効果を何と呼びますか。
消費者の購買行動である「ぴったり買い」と「ついで買い」は、それぞれどのような商業集積の形成メカニズムと関連していますか。
集客力の高い有名店が顧客を引きつけ、その周辺の店が利益を得るという理論を何と呼びますか。
商業集積の実証研究において、なぜ「専門店の周りに多くの店があると売上が高い」という事実だけでは、ショッピング外部性の証明にならないのですか。第5章で詳しく説明される経済学の用語を使って説明してください。
筆者たちの研究が、この問題(問題5)を乗り越えるために利用した、東京築地市場のユニークな制度とは何ですか。
築地市場の研究から明らかになった、扱う魚種を特化している仲卸のパフォーマンスと、その店舗が立地するエリアの多様性との関係について説明してください。
筆者たちの研究では、近隣店舗からの効果が「ショッピング外部性」によるものであることをより確実にするため、どのような店舗間の位置関係に着目して分析しましたか。
オンラインショッピングの拡大は、消費者のオフラインでの消費行動にどのような影響を与えることが研究から示唆されていますか。特に「節約された時間」の観点から説明してください。
イオンモールむさし村山のような大型ショッピングモールは、ショッピング外部性を最大化するために、テナント配置においてどのような工夫をしていますか。
あなたの身近な「街」を分析する あなたがよく利用する商店街やショッピングエリアは、「ぴったり買い」と「ついで買い」のどちらの魅力で主に人を集めていると考えられますか。そのエリアの店舗配置や品揃えの具体例を挙げながら、その魅力がどのように作られているか、また、さらに魅力的な場所にするにはどうすれば良いか議論してください。
オンライン時代における商業集積の未来 本文では、オンラインで代替不可能な財・サービス(飲食店、美容室など)が今後の商業集積の鍵になる可能性が示唆されました。今後10年で、私たちが知る繁華街やショッピングモールの姿はどのように変化していくでしょうか。生き残る店舗、衰退する店舗はどのようなものか、未来の「魅力的な街」の姿を想像しながら議論してください。
計画的集積 vs. 自然発生的集積 築地市場の店舗配置は「抽選」というランダムな要素で決まっていた一方、ショッピングモールはデベロッパーが「計画的」に店舗を配置します。こうした「自然発生的・分権的」な集積と、「計画的・中央集権的」な集積のメリットとデメリットは何でしょうか。日本の多くの商店街が活性化に苦しむ中で、ショッピングモールの計画的なアプローチから学べることはあるか、またその際に失われる可能性のある商店街の良さとは何かを議論してください。
集積モデルについて(ホテリングモデル) ある一本道(区間[0,1])にコンビニが2社出店を計画しており、消費者は道の上に均等に存在し、必ず最寄りの店を利用するとします。この場合、両社が競争した結果、2社とも真ん中の地点(0.5)に立地するのが均衡となります。
まず、なぜ両社が中央に集まるのが均衡となるのか、そのメカニズムを考えてみましょう。
次に、このモデルが集積を説明する一つの理由だとしても、なぜこれだけでは「秋葉原は電気街」「神保町は古書店街」といった、業種ごとに異なる場所に集積が生まれる現実の都市構造を説明するには不十分なのでしょうか。このモデルの限界と、本章で学んだ「ショッピング外部性」の考え方の本質的な違いについて議論してください。
経済学における集積の経済とはどのような現象ですか。本文中の例を2つ(製造業と情報通信業から1つずつ)挙げて説明してください。
アルフレッド・マーシャルが提唱した集積の経済の3つのメカニズム、**「シェアリング」「マッチング」「ラーニング」**とは、それぞれどのようなものか簡潔に説明してください。
都市が際限なく成長し続けるのではなく、ある規模で均衡するのはなぜですか。その際に働くマイナスの効果を、本文中の用語を使って説明してください。
本文のモデルにおいて、住民の便益を最大化する都市人口(n∗)と、人々の自由な移動によって決まる均衡人口(n)の間には、なぜ乖離が生まれるのですか。そのメカニズムを説明してください。
集積の経済に関する実証研究において、なぜ「工場が集積している地域の生産性が高い」という事実だけでは、集積の経済の存在証明にならないのですか。企業のある選択行動の問題に着目して説明してください。
Greenstone et al. (2010)は、この問題(問題5)を乗り越えるために、どのようなユニークな比較対象(「勝者」と「敗者」)に着目しましたか。
Kodak社の事例を分析した研究 Moretti (2021) から明らかになった、「ラーニング」のメカニズムの重要性について説明してください。
集積の経済の3つのメカニズムは、効果が及ぶ地理的範囲が異なるとされています。どのメカニズムが最も範囲が広く、どれが最も狭いと考えられていますか。
近年の研究 Giroud et al. (2024) は、ラーニングの空間スケールに関する従来の定説をどのように覆す可能性を示しましたか。
本文で紹介されている、企業間の知識の伝播(ラーニング)などを分析するために利用される「インタラクションデータ」の例を2つ挙げてください。
あなたの身近な「産業集積」を分析する
この章の事例である渋谷ビットバレー(情報通信業)や東大阪(製造業)のように、あなたがご存知の、特定の業種が集まるオフィス街や工業地帯を思い浮かべてください。そこでは、本章で学んだ生産面での集積の経済(シェアリング、マッチング、ラーニング)は、どのように働いていると考えられますか?具体的な企業や人々の活動を例に挙げて、それぞれのメカニズムが観察できる場面を説明してください。
製造業と情報通信業における集積メカニズムの違い
この章では、東大阪のような製造業の集積地と、渋谷ビットバレーのような情報通信業の集積地が対比されています。この2つの産業では、「シェアリング」「マッチング」「ラーニング」の3つのメカニズムの重要性にどのような違いがあると考えられますか?例えば、物理的な部品の「シェアリング」と、対面での「ラーニング」では、どちらがそれぞれの産業の集積にとってより決定的でしょうか?
リモートワークと集積の経済の未来
リモートワークの普及は、「ラーニング」のメカニズムを弱める一方で、専門人材との「マッチング」を地理的制約から解放する可能性があります。この変化は、渋谷ビットバレーのようなIT企業の集積地と、東大阪のような製造業の集積地に、それぞれどのような異なる影響を与えるでしょうか?
「大きすぎる都市」への政策的介入
本文のモデルが示唆するように、もし東京のような大都市が社会的に最適な規模を超えているとしたら、どのような政策が考えられるでしょうか?例えば、「ふるさと納税」のような制度は、都市と地方の経済的関係にどのような影響を与え、この問題に対して有効だと思いますか?
Alonso-Muth-Millsモデルによれば、なぜ都心の地価は郊外よりも高くなるのでしょうか。通勤費用と人々の満足度という2つのキーワードを使って説明してください。
Alonso-Muth-Millsモデルは、都心からの距離に応じて地価だけでなく、住宅の広さにも規則性が生まれると予測しています。それはどのような規則性ですか。また、なぜそうなるのかを簡潔に説明してください。
都市経済学における空間均衡とは、どのような状態を指しますか。
地主が家賃を設定する際の基準となるとされる付け値地代とは何か、説明してください。
19世紀のロンドンで世界初の地下鉄が開業した際、都市の人口分布にはどのような変化が起きましたか。中心部と郊外部の夜間人口の変化に着目して説明してください。
Heblich et al. (2020) は、19世紀ロンドンの通勤パターンを分析するために、ある紳士服店の歴史的資料を利用しました。それはどのような資料で、どのように活用されたのでしょうか。
ロンドンの地下鉄路線図は、実際の地理的な位置関係を正確に反映していないことがあります。この地理的錯覚が、人々の通勤経路の選択にどのような影響を与えていることが、ストライキを分析した研究 [Larcom et al. 2017] から明らかになりましたか。
上記(問題7)の研究では、なぜストライキという出来事が、人々の非効率な通勤経路を明らかにする上で有効だったのでしょうか。
Xiao (2021)によると、通勤距離の増加は、研究者の生産性にどのような影響を与えますか。特許の数や質に着目して具体的に説明してください。
鉄道会社が駅周辺の宅地開発や商業施設の運営を同時に行うことが多いのはなぜですか。本章のコラムで紹介された相補性という概念を用いて説明してください。
あなたの現在の通勤・通学経路や、過去に経験した経路を思い浮かべてください。その経路の選択には、路線図から受ける印象(距離や乗り換えの容易さなど)がどの程度影響していましたか?また、その印象と実際の所要時間や距離にギャップを感じた経験はありますか?もし、より効率的な代替経路が存在するとしたら、なぜあなたは現在の経路を選び続けているのでしょうか。経路探索にかかる手間や心理的なコスト、あるいは経路の快適性など、本章で学んだ視点から自身の行動を分析してください。
コロナ禍を経てリモートワークが普及し、毎日通勤する必要のない働き方が増えました。この「通勤の減少」は、Alonso-Muth-Millsモデルが説明する「都心の地価は高く、郊外は安い」という都市構造に、今後どのような影響を与えると考えられますか?例えば、都心に住むメリットは相対的に低下し、郊外や地方の魅力は高まるでしょうか。あるいは、対面でのコミュニケーションの価値が見直され、結局は都心への集中は変わらないでしょうか。
本文では、梅田の地下街の複雑さが駅名の不一致に起因する可能性が指摘されています。もしあなたが都市計画家や鉄道会社の担当者だとしたら、この「ラビリンス」問題を解決するためにどのような提案をしますか?例えば、駅名を実態に合わせて変更する、案内表示やデジタルサイネージを工夫する、あるいはスマートフォンのナビアプリと連携するなど、複数の観点から具体的な解決策を考えてみてください。
本文では、通勤距離が伸びると生産性が下がるという研究が紹介されていました。一方で、通勤時間があることで仕事とプライベートの切り替えができる、通勤中に読書や学習ができるといったプラスの側面を挙げる人もいます。あなたにとって、通勤は生産性やウェルビーイングに対してプラスに働いていますか、それともマイナスに働いていますか?また、企業や社会は、通勤がもたらす負の影響を軽減するために、どのような制度(例:フレックスタイム、時差出勤、交通費補助のあり方)を導入すべきでしょうか。
1. 本章では、居住地選択を考える上で機会費用が重要な概念として登場します。この通勤における機会費用とは何か、簡潔に説明してください。
2. では、通勤の機会費用は、なぜ所得が高い人ほど大きくなると考えられますか。時給を例に説明してください。
3. 所得階層によって通勤にかかる費用が異なる結果、高所得者と低所得者の**付け値地代**曲線は、都心からの距離に応じてそれぞれどのような形状になりますか。
4. 都心部において、オフィスビルではなくタワーマンションが建設されるのはなぜですか。企業の論理と高所得者層の住宅需要の観点から説明してください。
5. かつての米国の都市において、都心に低所得者、郊-郊外に高所得者が住むという住み分けパターンが見られた主な理由は何ですか。**モータリゼーション**という言葉を使って説明してください。
6. 近年、米国の都市で観察されるジェントリフィケーションとはどのような現象ですか。また、その要因として本文で挙げられているものを2つ説明してください。
7. パワーカップルの増加が、高所得者の都心回帰を促す一因となるのはなぜですか。
8. 東京圏では、欧米の都市ほど所得階層による住み分けが明確でなく、混住する傾向にあるとされています。その理由として考えられる日本の社会経済的な特徴を2つ挙げてください。
9. 高所得者が都心に惹きつけられる要因の一つである消費アメニティとは何ですか。具体的な例を挙げて説明してください。
10. 景気変動は、都心の土地利用にどのような影響を与えますか。景気上昇期と下降期において、オフィス需要と住宅需要のどちらが相対的に強まるか説明してください。
あなたの街の「タワーマンション」を分析する
あなたの身の回りや知っている街にあるタワーマンションや、比較的新しい大規模マンションを思い浮かべてください。どのような場所に建てられていますか?(例:駅の近く、商業施設の隣、景色の良いウォーターフロントなど)。そこには、どのような人々が住んでいると想像しますか?本章で学んだ「通勤の機会費用」や「都市のアメニティ」といった観点から、なぜその場所にマンションが建てられ、人々がそこに住むのかを分析・議論してください。
日本の「混住」と欧米の「住み分け」:どちらが望ましいか?
本文では、公共交通機関の発達などから所得階層が比較的混ざり合って住む日本の都市と、所得によって居住地が分かれる傾向のある欧米の都市が対比されています。それぞれの都市構造が持つメリットとデメリットは何だと思いますか?例えば、教育、治安、コミュニティ形成、社会的な公平性といった観点から、どちらの都市のあり方がより望ましいと考えるか、理由とともに議論してください。
リモートワークは都市の風景を変えるか?
リモートワークの普及は、多くの人にとって「通勤」の概念を大きく変えました。これにより、通勤の機会費用は大幅に下がったと考えられます。この変化は、高所得者層の都心居住へのインセンティブにどのような影響を与えるでしょうか?今後、人々は都心のタワーマンションを離れ、郊外や地方へ移り住むようになると思いますか?それとも、都心のアメニティの魅力は依然として人々を引きつけ続けるでしょうか?3章での議論は4章を読んだ後ではどのように変わるでしょうか?
「タワーマンション規制」の是非を問う
本文の最後で、神戸市がタワーマンションの新規建設を規制した事例が紹介されました。このような規制は、都市にどのような影響をもたらす可能性があるでしょうか?例えば、景観の維持や既存コミュニティの保護といったプラスの効果と、住宅価格の高騰や新たな住民の流入抑制といったマイナスの効果が考えられます。都市の魅力と持続可能性の観点から、このような政策を評価し、その是非について議論してください。
都市が海や山に挟まれている場合、土地の供給が制限されることで、経済にどのような影響が及ぶと考えられますか。本文で紹介されたSaiz (2010)の研究を基に説明してください。
Rosen-Robackモデルは、都市間の人々の居住選択をどのように説明していますか。「空間均衡」の考え方を用いて、地形が歪で通勤費用が高い都市が、他の都市と同等の満足度(効用)を住民に与えるために、どのような特徴を持つ必要があるか説明してください。
Harari (2020)によるインドの都市の研究は、都市の「形」が住民にどのような経済的影響を与えることを示しましたか。
経済学における内生性の問題とは何ですか。高速道路の建設が地域経済に与える影響を例に挙げて説明してください。
内生性の問題を克服する手法として紹介された自然実験的アプローチとは、どのような考え方ですか。また、その際に用いられる手法の1つである操作変数は、どのような条件を満たす必要がありますか。
鉄道網や港湾施設の整備といったインフラ投資の効果を測定する際に、「地形」が有効な操作変数として利用できるのはなぜですか。本文の例を基に説明してください。
Brooks et al. (2023}の研究では、港の「水深」を操作変数として、何が経済に与えた影響を分析しましたか。また、その分析からどのようなことが明らかになりましたか。
アフリカの都市に関する研究 Baruah et al. (2021)によると、旧イギリス植民地と旧フランス植民地では、都市の構造にどのような違いが見られますか。また、その違いが現代のインフラアクセスにどのような影響を与えていると述べられていますか。
ニューヨーク・マンハッタン島を対象とした研究 O'grady (2014} は、格子状の計画的市街地と、自然発生的な不規則な市街地を比較して、都市計画についてどのような示唆を得ましたか。
神戸市がその地形的制約を克服するために行ってきた政策・事業の例を2つ挙げてください。
1. あなたの身近な都市の「カタチ」を分析する
あなたの住んでいる、あるいはよく知っている都市の「カタチ」を思い浮かべてください。その都市の発展は、山、川、海、湖といった地理的条件か らどのような影響を受けてきたでしょうか? 例えば、特定の方向に市街地が伸びていたり、橋やトンネルが交通の要所になっていたりしませんか? 本章で議論された神戸や長崎のように、その都市が地理的制約を克服するために行ってきた工夫や大規模なプロジェクト(埋め立て、ニュータウン開発など)があれば、それについても考えてみてください。
2. 地理的制約は「呪い」か「恵み」か?
本章では、神戸や長崎が天然の良港という「恵み」を持つ一方で、山がちな地形という「呪い」によって発展が制約されてきた側面が描かれています。歴史を通じて見ると、これらの都市にとって地理的条件は、総合的に見てプラスとマイナスのどちらに働いたと思いますか?また、グローバルな貿易や人口減少といった現代的な変化の中で、その「恵み」と「呪い」のバランスは今後どのように変わっていくでしょうか?
3. ハードなインフラ整備 vs. ソフトな政策誘導
地形的な制約を抱える都市は、大規模な土木事業によって物理的に土地を拡張する「ハードな」対策と、交通網の利便性向上や税制優遇などで人の流れを誘導する「ソフトな」政策の両方を検討します。人口減少・高齢化の時代において、これらの都市が取るべき戦略として、どちらのアプローチがより有効だと考えられますか?それぞれのメリット・デメリットを議論してみてください。
4. 歴史経済学の視点から見る日本の都市
コラムでは、歴史的事象が経済に与える長期的な影響を分析する「歴史経済学」が紹介されました。この視点に立ち、現代の日本の都市間関係や経済格差に長期的影響を与えているような歴史的経緯はあるか、あるとしたらどのような影響を与えているか議論してみてください。
博多駅前のように、あるエリアのビルが規制で定められた上限の高さで揃っているという事実は、規制がなければ開発業者が本来どのように行動したかったことを示唆していますか。その経済学的な意味を説明してください。
都市開発における「負の外部性(外部不経済)」とはどのような現象ですか。本文中の例を2つ挙げて説明してください。
土地利用規制の一種である「容積率規制」について、例えば「容積率200%」の土地ではどのような建物が建てられるのかを具体的に説明してください。
土地の需要が高い地域ほど規制が緩められる傾向があるため、規制が緩い地域の地価と厳しい地域の地価を単純に比較しても、規制の効果を正しく測れないのはなぜですか。この問題(内生性)について説明してください。
研究者が内生性の問題を乗り越えるために用いる「空間的回帰不連続デザイン」とはどのような分析方法ですか。本文で紹介された福岡市の事例を用いて説明してください。
ニューヨーク・マンハッタンの事例から、都市全体の住宅供給量に対して土地利用規制が与える影響と、それが住宅価格にどのようにつながるかを説明してください。
サンフランシスコの事例が示す、家賃の値上げ規制がもたらした長期的な「意図せざる結果」とは何でしたか。
Glaeserらの研究では、規制の直接的な指標を使わずに、その「強さ」をどのように測定しましたか。「ちょうどいい」ビルの高さという概念を用いて説明してください。
ボックスコラムで紹介された、19世紀のロンドンやシカゴの事例は、都市化に伴う負の外部性(特に公衆衛生の悪化)が、都市の構造や人々の健康にどのような影響を与えたかを示していますか。
福岡市で進められている再開発プロジェクト「天神ビッグバン」は、本章で議論された土地利用規制の文脈において、どのような動きを象徴していますか。
1. あなたの街で規制が影響している風景を探す
あなたの住んでいる街やよく知っている街を思い浮かべてください。そこには、景観を維持するための高さ制限、特定の用途の建物を禁止する用途地域、あるいは日当たりを確保するための斜線制限など、何らかの土地利用規制が存在するはずです。
具体的にどのような場所で、どのような規制の影響が見られると思いますか?(例:駅前の商業地域と少し離れた低層住宅街の境界、歴史的な街並みが保存されている地区など)
その規制は、どのような「負の外部性」を防ぐために導入されたと考えられますか?
一方で、その規制があることによって、どのような経済的なコスト(例:住宅価格の上昇、商業活動の制限など)が発生している可能性があるでしょうか?
2. 規制の目的と経済的コストのトレードオフ
福岡市の航空法による高さ規制は、「航空機の安全」という非常に重要な便益をもたらしています。しかし、本章で示されたように、都心部の開発を抑制し、地価を下げるという経済的なコストも伴います。
このような「安全」や「景観」といった金銭に換算しにくい便益と、開発機会の損失という経済的コストのバランスを、政策決定者はどのように取るべきでしょうか?
もしあなたが福岡市長で、航空会社から「安全基準を維持したまま規制を一部緩和できる新しい技術が導入された」という提案を受けたとします。規制緩和を進めるかどうかの判断にあたり、どのような情報を集め、誰の意見を聞きますか?
3. 規制緩和は誰のためになるのか?
本章の最後で触れられているように、近年は「天神ビッグバン」のような規制緩和の動きが注目されています。規制が緩和されれば、より高層のビルが建設可能になり、都市の床面積が増加します。
このような規制緩和によって、最も利益を得るのは誰だと考えられますか?(例:土地所有者、デベロッパー、オフィスを借りる企業、住民、来街者など)
逆に、不利益を被る可能性があるのは誰でしょうか?
規制緩和がもたらす便益を、都市の住民全体に広く行き渡らせるためには、どのような工夫が必要だと思いますか?
4. リモートワーク時代の土地利用規制
リモートワークの普及により、人々が職場の近くに住む必要性が低下し、オフィスのあり方も変わりつつあります。このような変化は、都心部における土地利用規制の考え方にどのような影響を与えるでしょうか?例えば、オフィス需要の減少が見込まれる中で、容積率規制を緩和してまでオフィス床を増やす必要はあるのでしょうか?逆に、郊外や地方都市では、移住者の増加を見越して、住宅地の規制を緩和したり、新たな用途地域を設定したりする必要が出てくるかもしれません。リモートワーク時代に即した、新しい都市の姿と、それに伴う土地利用規制のあり方について議論してください。
観光業がある地域に与える影響を考える上で重要な2つの効果、「波及効果」と「資源の取り合い」とは、それぞれどのような現象ですか。本文中の例を挙げて説明してください。
観光業が地域経済に与える影響を分析する際に生じる「内生性の問題」とは何ですか。なぜ、観光が盛んな都市とそうでない都市を単純に比較するだけでは、観光業の真の効果を測れないのでしょうか。
Faber and Gaubert (2019) は、メキシコの観光業の効果を測定するために、どのような「自然実験的アプローチ」を用いましたか。観光業の成長を測る代理変数として、どのような地理的特徴に着目しましたか。
Faber and Gaubert (2019)の分析から、メキシコの沿岸部において観光業は地域経済にどのような正の波及効果をもたらしたことがわかりましたか。
先進国の大都市では、メキシコの研究とは異なり、観光業の成長が「資源の取り合い」による負の効果をもたらす可能性が指摘されています。なぜ、発展途上国の沿岸部と先進国の大都市で影響が異なると考えられますか。
Garcia-López et al. (2020) は、バルセロナにおけるAirbnbの拡大が不動産市場に与えた影響を分析するために、「差の差分析(DID)」の考え方を応用しました。どのような観光スポットの地理的な特徴を利用して、Airbnbの影響を特定しようとしましたか。
差の差分析において重要となる「平行トレンドの仮定」とは何ですか。Garcia-López et al. (2020) は、この仮定が満たされていることをどのように確認しましたか。
Almagro and Domínguez-Iino (2025)がアムステルダムの事例から明らかにした、観光客の増加が住民向けサービスと住民構成に与えた影響とは何ですか。
コラム「空から学ぶ経済学」で紹介されている夜間光データは、経済学研究でどのように活用されていますか。なぜ、特に開発途上国の分析において価値が大きいのでしょうか。
衛星画像の他に、コラムではどのようなリモートセンシングデータが紹介されていますか。そのデータを用いた研究の例を1つ挙げてください。
あなたの身近な「観光地」を分析する
本文の京都・清水坂のように、あなたがよく知る観光地(国内外問わず)を一つ思い浮かべてください。そこでは、本章で学んだ観光業の「正の波及効果」(例:新たなビジネスの創出、関連産業の発展)と、「負の効果(資源の取り合い)」(例:交通混雑、家賃の高騰、住民向け店舗の減少)が、それぞれどのように現れていると考えられますか?あなたの具体的な経験や観察に基づいて説明してください。
Airbnbは都市にとって「善」か「悪」か?
本文で紹介されたように、Airbnbのような民泊サービスは、観光客に新たな選択肢を提供する一方で、家賃高騰や地域コミュニティの変化といった負の側面も指摘されています。あなたが市長だとしたら、Airbnbに対してどのような規制やルールを設けますか?観光客の利便性と住民の生活環境のバランスをどのように取るべきか、あなたの考えを述べてください。
「観光公害(オーバーツーリズム)」への処方箋
京都の事例で触れられているように、観光客の過度な集中は「観光公害」とも呼ばれる問題を引き起こします。この問題に対して、本章の最後で示唆されている「容積率の緩和」「民泊規制」「住民向けサービスへの補助金」といった政策の他に、どのような対策が考えられるでしょうか?テクノロジー(例:予約システム、人流データ活用)や観光客へのインセンティブ(例:混雑する時期・場所を避けた観光の推奨)など、多角的な視点からアイデアを出してください。
リモートセンシングデータが変える都市政策
コラムで紹介されたように、衛星画像やドローンを使えば、これまで把握が難しかった経済活動や環境、人々の生活状況を詳細に捉えることができます。こうした新しいデータは、本章のテーマである「観光が都市に与える影響」の分析や、それに基づく政策立案にどのように活用できるでしょうか?例えば、観光客と住民の動線を分離する都市計画や、環境負荷を最小限に抑える観光開発など、具体的な活用法を想像してみてください。
なぜ名古屋の100m道路や広島の平和大通りといった大規模な道路は、戦後の復興期に建設が可能になったのでしょうか。その背景にある「破壊」が果たした役割を説明してください。
Davis and Weinstein (2002) は、第二次世界大戦で空襲を受けた日本の都市の人口を分析し、どのような結論を導き出しましたか。この結果は、都市の発展における何(どのような要因)の重要性を示唆していますか。
本文で説明されている、破壊が再開発を促す3つの要因のうち、特に複数の建物が同時に破壊されることで強く働く**「協調メカニズム」**とはどのようなものか、地主Aと地主Bの例を参考に説明してください。
ボストン大火を分析した Hornbeck and Keniston (2017) は、「協調メカニズム」の実在を証明するために、どのような比較を行いましたか。
ロンドン空襲を分析した Dericks and Koster (2021) によると、空爆された地域は現代において高層化が進んでいるとされています。その理由として、どのようなメカニズムが指摘されていますか。
ワシントンD.C.の暴動を分析した Brooks et al. (2022) は、これまでの研究とは異なり、破壊が地域の発展につながらなかったことを示しました。このことから、破壊が「創造的破壊」となるためには、どのようなマクロ的条件が必要だと考えられますか。
本文では、建物の破壊のような「ハード面」の破壊と、生活環境や評判といった「ソフト面」の破壊が区別されています。「ソフト面」の破壊がもたらす長期的な悪影響について、本文で挙げられている事例(東京大空襲またはロンドンのコレラ)を1つ挙げて説明してください。
広島の復興を分析した Takeda and Yamagishi (2024) が指摘した、復興プロセスにおける「期待」の役割とはどのようなものか、簡潔に説明してください。
本章の結論で、都市における破壊と再生の関係を総括する言葉として用いられている創造的破壊とは、どのような現象を指しますか。
関東大震災の後、東京で建設された重要な幹線道路の例を1つ挙げてください。
あなたの街の「都市更新」を考える
あなたの住んでいる、あるいはよく知っている街で、近年行われた大規模な再開発(駅前の再整備、工場跡地の再利用など)を一つ思い浮かべてください。そこでは多くの場合、古い建物や区画が新しいものへと置き換えられます。本章の議論を参考に、その再開発が街にどのような変化をもたらしたか、また、計画から実現までにどのような困難があったと推測されるか(例えば、多くの土地所有者間の合意形成など)を考えてみましょう。
都市が直面するショックの種類とその影響
本章では、建物の損壊を伴う「ハードなショック」と、コミュニティや評判に影響が及ぶ「ソフトなショック」が区別されました。例えば、地震のような物理的被害が中心の災害と、パンデミックのように人々の行動様式や衛生観念に長期的な影響を与える出来事とでは、都市の空間や経済にどのような異なる影響が及ぶでしょうか。なぜ物理的な復旧が完了した後も、「ソフト」な影響が残り続ける場合があるのか議論してください。
平時における都市の計画的な更新プロセス
本章では、大規模な破壊が、結果として都市の再開発を促すきっかけとなり得るという側面が示されました。これは裏を返せば、平時における都市の更新、特に多くの権利者が関わる大規模な再開発には、合意形成の難しさといった高いハードルが存在することを示唆しています。悲劇的な出来事を経ずして、都市が計画的に新陳代謝を進め、より良い環境へと更新していくためには、どのような政策的アプローチが考えられるでしょうか。例えば、土地の権利集約を円滑にするための法制度や、再開発への参加を促す経済的インセンティブについて、それぞれの長所と短所を議論してください。
「期待」を醸成する都市計画とは 広島の事例では、人々が「中心部は復興するだろう」と期待したことが、実際の復興を後押しした可能性が示唆されました。これから人口減少社会を迎える日本の多くの都市にとって、人々に「この街はこれからも発展する」というポジティブな期待を持たせることは非常に重要です。あなたが都市のプランナーだとしたら、市民の期待を醸成するためにどのような都市計画を提案しますか。それは新しいインフラの建設でしょうか、それとも文化的なイベントの開催でしょうか。
経済学における市場の摩擦とはどのような概念ですか。なぜ不動産市場は「完全競争市場」とは言えないのでしょうか。
土地の区画サイズが都市の発展に与える影響について説明してください。建設技術の進展は、最適な区画サイズをどのように変化させる可能性がありますか。
土地の区画サイズが時代に合わせて最適化されにくい背景には、どのような経済学的要因がありますか。本文中の用語(取引費用、ホールドアウト問題)を使って説明してください。
中古住宅市場における情報の非対称性とは、具体的にどのような問題ですか。売り手と買い手の間の情報の偏りが、どのような結末をもたらす可能性があるか説明してください。
情報の非対称性が引き起こす逆選抜(逆淘汰)のメカニズムを、本文中のAさんとBさんの家の例に沿って説明してください。
不動産市場における流動性の問題とは何ですか。不動産会社のような中間業者は、この問題をどのように解決する役割を果たしていますか。
筆者らの研究(Yamasaki et al. 2023)から、旧大名屋敷地が現代の東京にどのような影響を与えていることが分かりましたか。「区画の永続性」と「地価」の2つの観点から説明してください。
なぜ旧大名屋しき地の地価は、1910年代には低く、2010年代には高くなったのですか。その価値の変化の背景にある技術的な要因は何だと考えられますか。
近年アメリカで出現したiBuyersは、従来の不動産中間業者と比べてどのような点で画期的ですか。そのサービスの利点と欠点をそれぞれ説明してください。
所有権制度が整備されていない開発途上国のスラムでは、なぜ住宅への投資が進まないのですか。また、日本においてこれと類似の問題が指摘されているのはどのようなケースですか。
あなたの身の回りにある「市場の摩擦」
あなたが最近、何かモノやサービスを売買した経験(例えば、フリマアプリでの取引、中古車の売買、アルバイト探しなど)を思い出してください。その取引において、本章で学んだ「情報の非対称性」や「取引費用(交渉や手続きの手間など)」を感じた場面はありましたか?もし感じたとしたら、それは取引の結果にどのような影響を与えましたか?
歴史的経緯が現代の都市利用に与える影響
この章では、江戸時代の大名屋敷の区割りが現代の東京の土地利用に影響を与えている事例が紹介されました。あなたの知っている街(地元やよく訪れる場所など)で、過去の歴史(例えば、城下町、宿場町、工場跡地など)が現在の街並みや土地の使われ方に影響を与えていると感じる場所はありますか?その歴史的背景は、現代の視点から見て、土地の有効利用を促進していると思いますか、それとも妨げていると思いますか?
中古住宅市場を活性化させるには?
日本では、欧米に比べて中古住宅の流通が活発ではないと言われています。本章で議論された「情報の非対称性」や「流動性」の問題を踏まえ、日本の中古住宅市場をより活性化させるためには、どのような制度やサービスが有効だと思いますか?例えば、政府、不動産業者、あるいは新しいテクノロジーはそれぞれどのような役割を果たせるでしょうか。
「計画」か「市場」か:都市開発のあり方
梅田の貨物駅跡地開発のように、広大な土地を一体的に開発する「計画的」なアプローチは、公園のような公共的な施設を生み出しやすいという利点があります。一方で、市場の取引に任せれば、個々の土地がそれぞれの収益性を最大化するように利用されるはずです。都市の中心部における大規模な土地利用について、政府やデベロッパーによる計画的な開発と、市場メカニズムによる自律的な開発とでは、どちらがより望ましい結果を生むと考えられますか?両者のメリット・デメリットを議論してください。
これらの復習問題やディスカッション題材について、より特定のテーマに焦点を当てたい、あるいは難易度を調整したいといったご希望はありますか?
国や自治体の境界が決まる要因として、本文で挙げられている3つのメカニズム(「自然地理的要因」「経済的要因」「政治によるトップダウン要因」)をそれぞれ簡潔に説明してください。
経済学者のAlesina and Spolaore (1997) が提唱した、国の規模が決まる際の「便益」と「費用」とはそれぞれ何ですか。
特定の政治家の利益のために選挙区の境界線を引くことを何と呼びますか。
東京都町田市を含む多摩地域は、もともとどの都道府県に属していましたか。
多摩地域が東京府(現在の東京都)に移管されることになった直接的なきっかけは何でしたか。また、その際、町田市を含む南多摩郡が移管の対象に加えられた背景には、どのような政治的な事情があったと説明されていますか。
アフリカの国境が紛争の一因となっていることについて、Michalopoulos and Papaioannou (2016) の研究はどのように説明していますか。
経済発展の度合いを測る代理指標として、実証研究で広く使われている衛星データは何ですか。
境界線のすぐ近くのデータに着目し、境界をまたぐことで経済的な変数に不連続な変化が生じるかを検証する分析手法を何と呼びますか。
日本の「平成の大合併」を分析した研究 (Motohashi and Toya, 2024) によると、市町村合併は河川の水質にどのような影響を与えましたか。
自治体が分割された後、新たに境界となった川の下流部分で水質汚染が進行する可能性があるのはなぜですか。Lipscomb and Mobarak (2016) の研究が指摘するメカニズムを説明してください。
あなたの身近な「県境・市境」を分析する
あなたの出身地や居住地にある、少し変わった県境や市町村境を思い浮かべてください(例:川を挟んでいる、市街地の真ん中を通っている、駅が境界上にあるなど)。その境界は、本章で学んだ3つの要因(自然地理的、経済的、政治的トップダウン)のうち、どれによって形成されたと考えられますか?また、その境界の存在は、そこに住む人々の生活(市外局番、利用する公共施設、地域アイデンティティなど)にどのような影響を与えているでしょうか?
自治体合併の是非を考える
「平成の大合併」に関する研究では、行政サービスの効率化(規模の経済)が期待通りに進まなかった可能性が示唆されています。あなたの住む地域、あるいは関心のある地域で過去に行われた、あるいは現在議論されている市町村合併について、どのような便益(メリット)と費用(デメリット)が考えられますか?本章で学んだ「公共財の供給」「外部性の内部化」「住民の選好の多様性」といった観点から、その合併の是非を議論してください。
行政境界と生活圏のズレをどう考えるか
本章の町田市の例では、行政上は東京都に属しているにもかかわらず、鉄道路線や市外局番といったインフラによって神奈川県との結びつきが強く、住民の意識や経済的なつながり(生活圏)と行政境界に「ズレ」が生じていることが示唆されました。このようなズレは、行政サービスの効率性や住民の満足度、地域のアイデンティティにどのような影響を与えるでしょうか?また、もしあなたが政策立案者なら、この「ズレ」を解消するために、行政境界を変更(例:町田市が神奈川県に編入)するか、それとも境界を越えた広域連携(例:都と県が共同でインフラ整備)を推進するか、どちらのアプローチを選びますか?その理由も併せて議論してください。
回帰不連続デザインを応用する
本章では、行政境界が「自然実験」として利用できる例として、空間的回帰不連続デザイン法が紹介されました。この手法は、例えば「学区の境界をまたぐと、すぐ隣でも住宅価格が急に変わるか」を分析し、学校の質が価格に与える影響を測るためにも使われます。
このように、ある境界線の片側でだけ特定の政策や制度が適用されている例を、他に考えてみてください。その境界を利用してどのような社会経済的な問いが検証できるか、「①分析対象とする境界」「②境界の片側だけに適用される政策(処置)」「③その結果として変化が予想される変数(アウトカム)」を明確にして説明してください。
ポール・クルーグマンの空間経済学は、大きさの異なる都市が共存する理由をどのような視点から説明していますか。理論の鍵となる3つの要素を挙げてください。
空間経済学のモデルにおいて、企業が工場を建設する際に直面するトレードオフとは何かを説明してください。輸送費用が高い場合と低い場合で、企業の立地戦略はどのように変化しますか。
輸送費用が十分に低い場合、同質だった2つの地域の一方だけが工業都市として発展する「雪だるま式のメカニズム」について、そのプロセスを説明してください。
複数の地域が存在する場合に重要となる市場アクセスという概念を、図11.2を参考に説明してください。なぜ鳥栖市は工場立地にとって魅力的だと言えますか。
市場アクセスが地域の経済規模に与える影響を分析する際になぜ困難が伴うのですか。第5章で学んだ内生性という言葉を使って説明してください。
Redding and Sturm (2008) は、内生性の問題を克服するために、どのような歴史的出来事に着目しましたか。その分析デザインと、明らかになったことを説明してください。
交通インフラの整備は、必ずしも接続された地域の経済を活性化させるとは限りません。Faber (2014) が中国の高速道路網の分析から明らかにした、交通インフラ整備が小都市に与えうる負の影響とはどのようなものですか。
高速交通網による「人流」の促進は、イノベーションにどのような影響を与えますか。本文で紹介された米国の高速道路に関する研究である Agrawal et al. (2017) の結果を基に説明してください。
高速鉄道は、企業「間」の関係構築にも影響を与えます。九州新幹線の事例を分析した Bernard et al. (2019) からは、どのような効果が示されましたか。
交通インフラは、企業「内」の組織にも影響を及ぼします。フランスの高速鉄道を分析した Charnoz et al. (2018) が示した、本社の管理部門と地方工場の関係性の変化について説明してください。
あなたの身近な「交通の結節点」を分析する
本文の鳥栖市のように、あなたの身の回りにある交通の要所(新幹線の駅、高速道路のインターチェンジ、空港、港など)を一つ思い浮かべてください。その交通インフラは、周辺地域の産業(工場の立地、物流倉庫、商業施設など)や人々の働き方(通勤、出張など)にどのような影響を与えていると思いますか?本章で学んだ**「市場アクセス」や「人的交流」**の観点から、具体的に説明してください。
「物流」と「人流」—現代の都市成長のエンジンはどちらか?
本章では、交通インフラがもたらす効果として、企業の生産・販売コストを下げる「物流」の効率化と、知識や信頼関係を伝播させる「人流」の活性化が議論されました。現代の経済において、都市や地域の成長にとって、この2つのうちどちらがより決定的な役割を果たしていると考えられますか?例えば、巨大な物流網を持つEコマース企業と、高度な専門家を抱えるコンサルティング企業では、高速交通網の価値はどのように異なるでしょうか。
リニア新幹線と日本の未来
現在計画が進むリニア中央新幹線は、東京と名古屋・大阪間の移動時間を劇的に短縮します。この巨大プロジェクトは、日本の国土構造にどのような変化をもたらすでしょうか?空間経済学の理論に基づけば、さらなる東京一極集中が進むのでしょうか、それとも名古屋や大阪が新たなハブとして独自の発展を遂げるのでしょうか。また、ビジネスパーソンの働き方や企業の立地戦略はどのように変わると予測しますか。
「ストロー効果」を乗り越えるための交通政策とは?
Faber (2014) が示したように、交通インフラの整備が地方の経済活動を大都市に吸い上げてしまう「ストロー効果」が懸念されています。もしあなたが地方創生を担当する政策立案者だとしたら、高速道路や新幹線を地方に延伸する際に、このリスクを最小限に抑え、地域の持続的な成長につなげるためにどのような工夫をしますか?交通インフラ整備と組み合わせるべき、補完的な政策(例えば、産業誘致、人材育成、土地利用規制など)について議論してください。
経済学的に、個人が移住を決定する際の基本的な判断基準(移住の便益と費用)について説明してください。
移住にかかる費用を「金銭的費用」と「非金銭的費用」に分類し、それぞれ具体例を挙げてください。
日本における外国人住民の構成は時代によって変化しています。1990年代にブラジル国籍住民が急増した背景にある制度的要因は何ですか。
群馬県大泉町や長野県川上村のように、特定の地域に移住者が集まる要因として、本文中で挙げられている2つの主な理由は何ですか。
移住者が同郷の出身者で集まって住むこと(集住)によって得られる「集積の経済」の具体例を3つ挙げてください。
移民の流入が地域経済に与える影響を実証分析する際、「内生性の問題」が生じやすいのはなぜですか。また、研究者はこの問題を克服するためにどのような工夫(分析手法)を用いていますか。
移民ネットワークが国際貿易に与える影響について、Parsons & Vézina (2018)の研究(ベトナム難民の事例)はどのような結論を示しましたか。
移民の流入は、地域のイノベーション(技術革新)にどのような影響を与えると考えられていますか。特に移民のどのような特性が重要だと論じられていますか。
「移民が増加すると犯罪が増える」という言説について、Bianchi et al. (2012)やBell et al. (2013)をはじめとする多くの実証研究が示している一般的な結論は何ですか。
Ajzenman et al. (2023)やTabellini (2020)の研究が示す、移民が地域社会に与える影響についての「事実」と「人々の認識・感情」の間の「ギャップ(乖離)」とはどのようなものか説明してください。
あなたの街のエスニック・コミュニティ 本章の事例(新大久保、西川口、大泉町など)以外で、あなたが知っている「特定の国・地域の出身者が集住している都市・地域」を一つ選びなさい(国内外問わず)。その地域が形成された経緯、主な産業(労働需要)、地域コミュニティの役割について簡潔にまとめ、本章の事例との類似点(例:集住する経済的理由)と相違点(例:形成された歴史的経緯、受け入れ先社会との関係)について考察・議論してください。
短期的なコストと長期的な便益 Battisti et al. (2022)の研究では、同国出身者ネットワーク(コミュニティ)に頼ることは、短期的な就職には役立つものの、長期的な人的資本への投資(言語習得など)を妨げ、結果として賃金が低くなる可能性が示唆されました。これは、移住者が「コミュニティに集まって住む」ことのトレードオフを示しています。受け入れ側の社会(行政や地域住民)として、移住者の短期的な生活安定(集住のメリット)を支援しつつ、長期的な社会への包摂(言語習得やキャリアアップ)を促すためには、どのような政策や取り組みが有効だと思いますか。
経済合理性と社会的感情の対立 Tabellini (2020)の研究では、移民の流入が経済的にプラスの影響(地元住民の雇用増など)をもたらした地域でさえ、政治的には反移民感情が高まったことが示されました。経済的な利益を得ているにもかかわらず、なぜ人々は文化的な反発や排斥的な態度を示すのでしょうか。この「経済合理性」と「社会的感情」のねじれは、どのようなメカニズム(メディア、教育、政治など)によって引き起こされ、また、どうすれば緩和できると考えられますか。
「事実」と「認識」のギャップを埋めるには 多くの実証研究が「移民は犯罪を増やさない」という結果を示す一方で、Alesina et al. (2023)は人々が移民の数を過大評価していること、Ajzenman et al. (2022)は犯罪が増えていなくても治安への不安が高まることを示しました。なぜこのような「事実」と「認識」のギャップが生じるのでしょうか。本文中でも指摘されているメディアの役割のほかに、どのような要因がこのギャップを生み出していると考えられますか。また、このギャップを埋めるために、行政、教育機関、あるいは個人レベルで何ができるでしょうか。