地域とのつながりを紡ぐ「ぽかぽか」の活動
交流活動や震災伝承に取り組む東北大学生に聞く、学生ボランティアの実践
交流活動や震災伝承に取り組む東北大学生に聞く、学生ボランティアの実践
文学部3年 / 東北大学陸前高田応援サークル ぽかぽか 所属
S.S さん
2026.04.01
Introduction 紹介文
岩手県陸前高田市に寄り添い、地域と深い信頼関係を築いてきた「東北大学陸前高田応援サークル ぽかぽか」(以下、ぽかぽか)元代表のSさん。
活動を通じて得られた学びや、学生ならではの視点を活かした取り組みについて詳しくお伺いしました。
地域との関係を一歩深めた、和野地区でのサロン活動
——篠原さんがこれまで取り組んできた活動の全体像を教えてください。
ぽかぽかの活動にメインで取り組んできました。ぽかぽかは「交流機会の創出」「地域活動の支援」「伝承・情報発信」という3本柱を軸に、多岐にわたる活動を展開しています。
住民の方々の日常に寄り添う活動として、高齢者向けのサロン活動や子ども向けのイベントの開催に取り組んできました。サロン活動では、お茶を飲んだり工作をしたりしながら、住民の方同士が交流する機会を創出し、外出のきっかけになるようなイベントを開催しています。また、子どもの遊び場が少ない陸前高田市において、季節にちなんだイベントを開いて、子どもたちが学びや楽しさを得られるようにしています。
震災の記憶を伝承する活動にも注力しています。その中心となるスタディツアーでは、東北大学生を陸前高田市へ案内し、ぽかぽかに所属する学生の立場から震災遺構の説明を行い、住民の方々の想いを広めています。1年生の時には、東北大学図書館で語り部の方による講演会や写真展を企画し、地域の方々からお借りした写真を通じて当時の記憶を共有する場を作りました。
こうしたぽかぽか独自の企画に加えて、陸前高田市和野地区の「うごく七夕」や無病息災を祈る「虎舞」といった伝統行事のお手伝いにも長く関わってきました。他にも、子どもの居場所づくりなどを目的とした「たかた☆ゆめキッチン」での見守り活動、3.11に合わせた追悼イベントである「つむぐイルミネーション」のお手伝いなど、多くの地域行事に参加しています。これらの地域行事に参加することで、今一度東日本大震災や復興について考えるきっかけを得ています。
陸前高田市高田町和野地区での『うごく七夕』運営補助
——その中で特に力を入れた活動は何ですか?
一番力を入れたのは、団体として初めて和野地区でサロン活動を実施したことです。私が1年生の時に、サークル内で次年度の計画を話し合う場で「和野地区でぽかぽかが主催するイベントを開きたい」ということを提案しました。
和野地区とは地域行事の支援などを通じて長く関係を築いてきました。しかし、お祭りなどの地域行事当日だけの関わりだとゆっくり話す時間が取れず、深い交流が難しいです。そこで、よりアットホームに住民の方のニーズを汲み取れるよう、ぽかぽか主催で交流の場を設けました。
準備の段階から積極的に住民の方と連絡を取り合い、無事に開催することができました。地域の方々とぽかぽかメンバーとが名前で呼び合ったり、以前よりも一層和やかな雰囲気で交流したりしている様子を見られて、とても嬉しく思いました。私自身の交流はもちろん、団体として全体的に地域との関わりを深められたのかなと思えて、「頑張ったな!」と達成感を抱いたことを覚えています。
親しさと節度、そのバランスを大切に
——住民の方と深い関係を築くことは大変だと思います。意識していたことや篠原さんなりに工夫していたことはありますか?
とても初歩的なことかもしれませんが、住民の方を名前で呼ぶことや挨拶をしっかりすることを心がけていました。ただ、距離を詰めすぎると失礼になってしまうこともあるので、ボランティアの立場を忘れず、節度を持って接するようにしています。
親しみを持って関わりたい気持ちは強いですが、あくまで外からお手伝いに伺う立場として、できる範囲で積極的に声をかけてお手伝いし、適切な距離感を保つことを意識していました。そのバランスが信頼関係の構築につながると考えています。
子ども食堂『たかた☆ゆめキッチン』での見守り活動
——活動を続ける中で難しかったことや課題に感じたことはありましたか?
一番悩んだのは、活動が「本当に求められているのか」という点です。ぽかぽかの活動は相手方からの依頼を待つのではなく、相手方のニーズを考えて自分たちで企画を考えて実行することが多いです。サロン活動や子ども向けのイベントでも現地のニーズとずれていないかということは常に考えています。
また、陸前高田市は広いため活動場所がどうしても限られ、さまざまな地域や公営住宅への裾野を広げるのが難しいと感じます。今年は少しずつ活動範囲を広げるよう努力していますが、やはり難しいです。
学生の強みを生かして、地域とつながる入口をつくる
——活動先の地域や住民の方が抱えていると感じる課題があれば教えてください。
スタディツアーの際、ガイドさんから聞いた「陸前高田市で生まれる子どもの数がとても少ない」という言葉が、今も強く印象に残っています。実際に、子ども向けの活動でも顔なじみの子ばかりで、母数が少ないことを実感します。
大学生としてこのような課題にどこまでアプローチできるのか難しさも感じています。私たちの活動は「今、地域に暮らしている方々のため」が中心になり、将来を見据えた地域課題の根本的な解決にはすぐにはつながりにくいため、そこにもどかしさを感じることもあります。
また、お店や交通手段が少ない、車がないと移動することが難しいなど、暮らしの面での課題も目に入ります。私自身は今の陸前高田の街並みや風景が大好きです。住民の方が面白くて優しくて温かい、とても素敵な町なので、陸前高田市に行き来する人が増えたらいいなと願っています。
——そうした課題に対して難しい面もあるとは思いますが、学生の立場からはどのようなアプローチができると考えていますか?
ぽかぽかとして設立当初から続けているのがスタディツアーです。東北大学の学生を陸前高田市に案内し、現地の方の話を聞きながら震災遺構を訪ねることで、まずは震災についてや震災後の地域の現状を知ってもらう入口を作っています。
加えて、意識的に力を入れているのがSNSです。2年次からはInstagramでの広報を担当していて、昨年度は特に頑張りました。これまでの投稿を見ると、正直自己満足のような投稿になっているのではないかと感じていました。ただの活動報告になってしまって、初めて見る人には内容が伝わりにくくなっていました。
そこで今年は、ぽかぽか所属メンバーが好きな飲食店やおすすめスポットをまとめた投稿や、活動の様子をリアルタイムで発信する試み、実際に利用した様子を紹介する投稿など、「ライト層」を意識した発信に変えてみました。Instagramの利用者は若年層が中心で、深く知りたい人だけでなくちょっと気になるくらいの人も自然に情報に触れることができると思います。だからこそ、陸前高田市やぽかぽかの活動について、日常の延長で興味を持ってもらえるような内容を意識しています。
Instagramがきっかけで地元の方から直接ご相談をいただくこともありました。その一つが、地元企業である「キャピタルホテル1000」さんからの防災宿泊プラン作りの依頼です。地元の方や企業と一緒に企画する中で、学生だけではできない課題解決に貢献できている実感があります。
企業には、資金力やネットワーク、発信力など学生にはない強みがある一方で、学生にはフットワークの軽さや時間の余裕など、学生にしかない強みがあります。また、若者が関わっているという事実だけで、地域の方の励みになる側面があります。
学生だけでできることには限りがありますが、これまで築いた人脈を活かして地域全体の課題にアプローチしていきたいなと思っています。
さまざまな人との出会いが、続ける理由にも成長のきっかけにもなった
——これまでたくさん大変なことや難しかったこともあった中で、ここまで活動を続けてこられた理由があれば教えてください。
とにかく楽しいからです。大学に入学する前は、ボランティアと聞くとごみ拾いや草むしりのようなイメージが強くて、「誰かの役には立つんだろうけど、対象が広く誰のための活動なのかわかりづらいな」という感じでした。
でもぽかぽかに入ってみると、目の前にいる住民の方と一緒に時間を過ごして、一緒にいないときもその人たちのことを思い浮かべながら活動することができます。活動先の方々のおかげで自分も楽しめていて、先輩や後輩、同期のメンバーも本当に良い人ばかりでとにかく楽しいです。
——ボランティアを通して、自分自身が成長したなと感じる部分はありますか?
一番大きいのはコミュニケーションの面です。もともと初対面の人と話すのがあまり得意ではなくて、どちらかというと人見知りしてしまうタイプでした。でもボランティアで常に新しい人と関わっていく中で、初対面の方や年長の方へ身構える感じがなくなっていきました。これは、活動の場だけでなく、普段の授業やグループワークなどでも生きていると思います。
他にも、計画性が身についたと思います。ボランティア活動では、事前の準備から当日の運営まで細かく段取りを立てることが求められます。そのようなことを考えられるようになったのは大きな成長ではないかと思います。ボランティア活動の側面以外でも、レポートや課題の締め切りなどはちゃんと守れるようになりました(笑)。
みなさんへメッセージ
——最後に、ボランティアに興味はあるけど、まだ一歩踏み出せていない方に向けてメッセージをお願いします。
「いきなりサークルに入るのはハードルが高い」と感じるのは、当然のことだと思います。まずはInstagramなどのSNSを覗いてみたり、体験会やスタディツアーに参加してみたり、自分が安心できる距離感で関わってみるだけで十分です。
とにかく自分の目で現地の「今」を確かめてほしいです。SNSや体験会など、そのための手段はたくさんあります。
「ハードルが高い」と思い詰める必要はありません。自分だけで動き出すのは難しいと思いますが、その一歩を温かく受け入れてくれる場所や仲間は、必ず存在します。
大学生でいられる時間はあっという間ですし、早く始めるほど地域や住民の方との関係性ができてもっと楽しくなるはずです。東北大学には魅力的なボランティアサークルがたくさんあり、サークルには入らなくてもスタディツアーや体験会などの機会が豊富にあります。「とりあえずやってみよう」という軽い気持ちで、ぜひ一歩を踏み出してみてください!