グラウンドアンカー残存緊張力の振動方式測定システムVIBRES(ビブリス)
NETIS登録番号(CB-230025-A)
グラウンドアンカー残存緊張力の振動方式測定システムVIBRES(ビブリス)
NETIS登録番号(CB-230025-A)
グラウンドアンカーとは?
グラウンドアンカーは、アンカー体と呼ばれる定着部をグラウント材(セメント)によって地盤内に造成し、地表面との間を引張 り材(テンドンと呼ばれる鋼材)でつないで、デンドン自由長に緊張力をかけ、アンカー頭部と受圧構造物によってその緊張力を保持することで斜面・のり面の安定化を図る構造物です(図-1)。グラウンドアンカーは、一つの斜面・のり面において数十本~数百本を面的に施工して(写真-1)、崩壊や地すべりを抑える働きがあり、高速道路には少なくとも120,000本のグラウンドアンカーが施工されています。
グラウンドアンカー緊張力の点検・維持管理とその課題
緊張力の働きによって斜面・のり面の安定化を図るグラウンドアンカーは、緊張力の点検・維持管理が必要な構造物です。グラウ ンドアンカー緊張力の点検はこれまで、油圧ジャッキ(センターホールジャッキ)を用いたリフトオフ試験が行われてきました(写真 -2)。リフトオフ試験は、地表面にあるアンカーの頭部を掴んで、それを油圧ジャッキで引っ張って(持ち上げて)、緊張力を測定するものです。(図-2)。リフトオフ試験に用いる油圧ジャッキは、重量が40~120kgと重く大型の装置であり、場合によっては仮設足場(写真-3)が必要になる手間とコストがかかる試験です。このため、従来から行われてきたリフトオフ試験に代わる簡易で安全な緊張力の測定技術の開発が、グラウンドアンカー点検の効率化の課題となっていました。
VIBRES®システムの原理
緊張力が作用するテンドン自由長部は、ギターの弦のように高い緊張力では高い周波数で、低い緊張力では低い周波数で振動し ます(図-3)。緊張力と振動周波数の関係は、式(1)の物理式で表されます。グラウンドアンカーのデンドン自由長(m)、テンドン自由長の、線密度(kg/m)は、設計・施工図からわかっているため、振動周波数(Hz)の測定ができれば、緊張力(N)を求めることができます。VIBRES®システムは、緊張力によって変化するテンドン自由長部(弦)の振動周波数を測定することを原理とした技術です。
VIBRES®システムによる緊張力の測定方法
グラウンドアンカーのテンドン自由長部は地盤内にあるため、振動周波数を直接測定することはできません。そこで、VIBRES®システムでは、アンカー余長部に小型バイブレータと加速度計を取り付け(写真-4)、小型バイブレータによって時間とともに徐々に高くなる「スウィープ振動(図-4)」を加えます(加振します)。高くなっていく周波数とデンドン自由長部の振動周波数とが一致すると、共振して振動をし始めます。この共振点(図-4)の周波数を加速度計によって測定(受振)し、式(1)から緊張力を求めます。
測定作業には、余長部に取り付けた小型バイブレータ(570g)と加速度計(25g)の他に、測定ユニットとノートパソコンを用います。測定ユニットは、縦40cm×横50cmのコンパクトなケースに収納されています。これらに、解析ソフトをインストールしたノートパソコンとを接続することで、グランドアンカー緊張力の測定を行うことができます(写真-5)。VIBRES®システムの緊張力の測定時間は、1回あたり2分(任意の設定可能)と、従来のリフトオフ試験よりも短い時間で測定ができます。
VIBRES®システムは、従来のリフトオフ試験のように大型の装置や仮設足場などの大掛かりな機材を必要としないため、測定作業の時間短縮が可能となり、効率的に緊張力を求める事が可能です。さらにアンカー頭部を引っ張らないためグラウンドアンカーが破断して飛び出す恐れがなく、作業者および通行車両など第三者の安全性が向上します。
VIBRES®システムによる緊張力測定の精度
現場の法面にある様々な規格のグラウンドアンカーにおけるVIBRES®システムと従来のリフトオフ試験を比較します(図-5)。
VIBRES®システムで測定した緊張力は、リフトオフ試験の緊 張力に対しておおむね±15%の範囲に入りました。また、グラウンドアンカー維持管理マニュアルに定められている、グラウンドアンカー緊張力の目安において両者の評価に差はなく、VIBRES®システムがグラウンドアンカー緊張力の点検作業の効 率的化に有効であることが確認できました。
VIBRES®システムは、グラウンドアンカー緊張力測定に振動を用いることで、点検の効率化と安全性向上を実現しようとする画期的で独創的な技術です。